『サガ フロンティア リマスター』はシリーズ入門の決定版。初心者にもオススメできる理由を5連携で解説

まさん
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 4月15日にスクウェア・エニックスから発売された『サガ フロンティア リマスター』。本作のプレイレポートをお届けします。

 RPGファンから『サガ』シリーズファンまで多くのユーザーを魅了し続けた初代PSの名作RPG『サガ フロンティア』。本作『サガ フロンティア リマスター』は、その往年の名作をHDリマスター版として現代によみがえらせたタイトルです。

 シリーズ経験者に向けた記事に続いて後編となる今回は、HDリマスター化によって輝きを増した本作の魅力を5つのポイントで紹介。シリーズの初心者に向けて、現代的に生まれ変わった『サガ フロンティア リマスター』の魅力をお届けしていきたいと思います。

魅力その1“物語”:8人の主人公に8通りの物語!

 『サガ フロンティア』は1997年に初代PSで発売された『サガ』シリーズの7作目にあたる作品です。

 シリーズと言っても作品ごとの繋がりはなく、ファンタジーからSFまで世界観も雰囲気もシステムもバラバラ。毎回、どんなものが飛び出すのか想像もつかない挑戦的なシリーズと言えるでしょう。前作が好きな人が続編も同じように好き……とは限らないくらい変化してきたシリーズなのです。

 『サガ フロンティア』でさえ、続編の『サガ フロンティア2』はファンタジー系の大河ドラマ群像劇。何でもアリごった煮SFな本作とはまったくの別物でした。

 そんな変化するシリーズでありながら、これだけ厚い支持を受けているのは作品自体のおもしろさ。どの作品も、そのナンバリングでしか体験できない楽しさが詰まっているからこそ、シリーズを通してファンがついている息の長いIPになっているのです。

 本作は、そんなとがった『サガ』シリーズのなかでも一番“何でもアリ”な1作。“リージョン”と呼ばれる惑星のような地域を渡り歩く設定から、出てくる場所も和風、中華風、SF、ファンタジー、警察署……とまさに“何でもアリ”。カオスで雑多で自由な世界が見どころです。

  • ▲各リージョンはリージョンシップ(宇宙船みたいなもの)で移動。ヒューズ編では専用のシップが新たに登場します。わざわざ、当時の3Dモデル風に新造している芸の細かさ!

 そんな世界を冒険する主人公は、全部で8人。原作では7人だったのですが、今回は誰か1人の物語をクリアすることで当時未実装だったヒューズ編が解禁。8人の物語が楽しめます。キャラクターを選択できるRPGの場合、大まかなルートやラスボスは共通していることが多いのですが、本作はすべて別。

 7人の主人公それぞれのメインストーリーもラスボスも異なり、短編程度の程よい長さ(どんなに長くても1つのルートで10時間もかからない)で各主人公の物語を楽しめます。なお、8人目のヒューズ編は、7人の主人公それぞれのラスボスと戦えるやり込み要素的なルートです。

  • ▲クリアすると、タイトルの主人公選択画面にヒューズが追加。初心者やクリアしていない人が間違って選ばないように配慮されています。

 当時としても異例なボリュームだったのですが、さらに異例なのが主人公による雰囲気の違い。物語はもちろん、システムまで選んだ主人公によって異なります。

 変身ヒーローのレッド編なら、仲間がいない状況に限って最強の変身ヒーロー・アルカイザーにチェンジ可能。ラスボス以外は、ほぼ自由行動で全員共通のフリーイベントしかないリュート編。自分自身がメカという種族で、仲間もメカが多く集まるT260G編……などなど、最初に選んだ主人公次第で『サガ フロンティア』自体の印象も大きく変わるでしょう。

 当時の我々と同じように何も知らない状態で遊んでみるのも楽しいのですが、主人公によっては『サガ』初心者だと少々難しいキャラも……。ということで、あくまでも目安ではありますが、初心者向けのオススメ主人公も掲載しておきます。

主人公ごとのオススメ度

初心者にオススメ

・レッド編:変身ヒーローになれるので主人公自身が強く、最初に選ぶ主人公としてオススメ。目的も明確で専用のボスも多く、物語としても楽しめます。ただし、ザコ戦は変身せずに戦わないと能力を上げられないので注意。

・エミリア編:1回戦闘してから組織のボスに話しかけると物語が進むので、迷いにくい主人公。自由行動中に鍛えたフリーの仲間を連れて行けるのはラストだけですが、ラスボス自体は(他に比べて)弱めです。

・ブルー編:最終的に主人公が強くなり、他の主人公ではフリーイベント扱いの“術の資質”を習得することがメインストーリーに組み込まれています。リージョン間の移動もやりやすく、比較的短時間でクリア可能です。

サガシリーズに慣れているならオススメ

・アセルス編:物語は魅力的ですが目的がわかりにくく、特定のポイントでボス戦が発生するので『サガ』慣れした人向け。強力な装備が入手できて引き継げるので、最初に頑張ると2周目以降がグッと楽になります。

2周目以降にオススメ

・T260G編:成長の仕様が独得な“メカ”が主人公。最初はヒューマンの育成に慣れたほうがいいので2周目以降に向いたキャラクターです。砂の器が買えないなど、制限がかかる部分があるのでそういう意味でも2周目以降推奨。

・クーン編:独自のルールで成長する“モンスター”なので、育成が難解。クーン編を最初からしっかり遊ぼうと思う人ほどハマりやすい“ワナ”もあるので、2周目以降で引き継いだ状態がベストかもしれません。

・リュート編:自由度の高さはナンバー1。気が付くとラスボス戦だった……なんて状況にもなりかねないので2周目以降推奨です。ちなみに、リュートは多くの主人公でも仲間に加わるので、引き継ぎ用の仲間としてもオススメ。

・ヒューズ編:7人のうち、誰か1人をクリアすると解禁。ヒューズ編はクリアした主人公のルートが追加されるので、実質7ルートあります。クリアしたらヒューズ編を選び、他の主人公と交互に遊んでいくのがベストです。

魅力その2“バトル”:連携と技の気持ちよさはシリーズ1

 『サガ フロンティア』最大の魅力は5人パーティでド派手に戦うバトル。画面全体を所狭しと暴れまわる技の演出が楽しく、戦闘中に新しい技を覚える“閃き”のランダム性もいいアクセント。本作から加わった“連携”で仲間同士の技が繋がっていくのは爽快です。

  • ▲戦闘中に新たな技を覚える“閃き”は、『サガ』シリーズ特有の快感。技の1つ1つがスピーディでカッコいいので、新しい技を覚えるだけでワクワクしちゃう!

 “連携”はその後のシリーズでも引き継がれていますが、技を1回ずつ出したあとに連携名が表示される形が多く『サガ フロンティア』の連携とは違います。『サガ フロンティア』の場合は、最初にキャラがビカビカビカーと光って連携名が表示され、そこから流れるように技がシューンバキーンガーンドギューンズバーーーーン! と擬音で表したくなるくらいスムーズにつながるのです。

 これがいいんですよ。もう、これがいい!

  • ▲シリーズで“連携”が取り入れられたのは本作が初。初代にして完成形に近く、後発の作品を含めてもシリーズ1の気持ちよさです!

 さらに、リマスター版では移動も戦闘も3倍速まで早送りができるようになり、戦闘自体が一瞬で終わるくらいサックサク。次々に戦いを挑めますし、パラメータも上がりやすい(戦いが終わると、ほぼ確実に誰かが成長するくらいの頻度)ので、気持ちよい部分をつねに味わいながら育成のサイクルを楽しめます。

  • ▲HPも能力もグングン成長して強くなっていきます。1回の戦闘が短く、ガリガリ戦って育成できるので止め時が見つかりません。

 また、PS版にはなかった“退却”のコマンドも追加されており、逃げることで敵のシンボルも消滅します。本作では戦い続けると敵のランクが上昇して強くなってしまうのですが、退却した場合はランクも上がりません。もともとテンポのいいRPGではあったのですが、3倍速の戦闘と合わせてPS版とは比べものにならないほどテンポアップ。初心者の人でも“今の時代に遊ぶRPG”として十分楽しくプレイできると思います。

魅力その3“UI”:現代に合わせて遊びやすく改良済!

 『サガ』シリーズはユーザーに遊びを委ねている部分が魅力的。ですが、はじめて遊ぶ人には難解な部分があるのも事実です。本作はそんなシリーズの入りにくさを解消し、現代へ合わせたブラッシュアップを行っています。

  • ▲マップの入れる場所が、1発でわかる便利機能付き。条件を満たさないと開かないような場所もわかっちゃう!

 オリジナル版当時のRPGは背景を1枚絵で表現していたものがあり、入れる場所や階段などがわかりにくいという弱点がありました。そこもしっかりフォロー。今回は、マップ移動箇所の表示機能付きなのです。だから、どこに入れるのかがひと目でわかります。

 さらに、シナリオチャートまで実装。次に何をするべきかを教えてくれるので、初心者でも迷いにくくなりました。

  • ▲アセルス編は条件を満たすと各地でイベントが発生し、突発的にボス戦が起きるのも楽しさの1つ。こうした場合は、漠然としたヒントに留めて楽しさを損なわない工夫がされています。

 メニュー画面のUIも、当時のイメージを残しつつ改変。装備画面ではマスクデータだったパラメータも表示されるようになり、とても親切になりました。しかも、装備を自動で選んでくれる“おまかせ装備”機能も追加!

 周回直後は初期装備になっているのですが、この機能を使ってサクッと装備を整えられるので非常に便利です。戦闘中のコマンド選択時にHPとLPが表示されるようにもなりました。このようなちょっとした変更点も、ファンにとってはうれしいところ。初心者にも優しい作りです。

  • ▲必要な情報がわかりやすい装備画面のUI。早送り機能のコマンドなども移動中常に右側に表示されており、非常に遊びやすくなっています。

 シリーズファンだとそのまま移植されたような印象を抱きがちなのですが、比較してみると格段に遊びやすくなりました。現代で、はじめて『サガ』シリーズに触れる人へもファンとして太鼓判を押せます。本当にスキがない!

 粗削りな部分があるのも『サガ』の魅力ではありましたが、荒削りのように見せつつも遊びやすさが増した絶妙なマイルド調整です。リマスターとしても、これまでの作品を大きく超えたといっていいでしょう。

魅力その4“周回”:引継ぎ要素が充実していて遊びやすい!

 『サガ フロンティア』は主人公が8人もいて展開も変わり、周回するのがとても楽しいRPG。前述したように大幅にテンポアップしているので当時のプレイ時間よりも短く1周目が終わります。だからこそ、各主人公の話を気軽に楽しめるのです。

 しかも、今回は「New Game+」による引き継ぎ要素が細かい!

 どんどん引き継いで最強を目指していくのもよし。閃きの楽しさを味わうためにあえて技を引き継がないのもよし。自分の好きなように遊べます。セーブデータの数も多く、イベントごとにセーブをわけておけるのもうれしいところ。

 このシリーズに慣れていない人も、比較的遊びやすい主人公で1周目をクリアすれば、あとは引き継いだサブキャラクターを連れてゴリゴリ進められます。

  • ▲ゲンやリュートなど、他の主人公でも加入させやすいキャラクターを育てておくと周回もカンタン!

魅力その5“愛”:開発陣の愛を感じる丁寧な仕事の結果

 本作における何よりの魅力は開発陣の“愛”。当時から名作RPGとして名高い『サガ フロンティア』ですが、仮にそのまま移植したとしたら現代に合わなかった部分は確実にあったでしょう。例えば、15人の仲間加入上限とか……。こうした制限も廃止されています。

 あえてなくても問題ない改良点ではあるのですが、こうした細かい調整によって初心者にもオススメしやすくなっているのです。

  • ▲仲間が15人以上加入すると“OTHER”欄に移動。ここにいるキャラクターは戦闘に参加できませんが、メニュー画面の“入れ替え”で戦闘パーティに組み込めます。

 オリジナル版を遊んだプレイヤーは当然ながら、令和の時代に遊ぶ新規ユーザーにも優しい。それがリマスター版なのです。とても丁寧なリマスター化の仕事は、まさに“愛”。当時遊んだユーザーが大人になって製作に携わり、そのうえで遊びやすさを追求しています。

 特にうれしいのは、オリジナル版でプレイヤー側にとって有利に働いたバグ……裏技ですね。簡単にゲーム内資金が稼げてしまう裏技なども残存。ゲームとしての問題や遊びにくい部分は修正しつつ、プレイヤー側が利用できる穴はテクニックとして残しているのです。

 これは本当にすごい愛ですよ。普通はいい点であっても、仕様の穴をついたテクニックは修正しちゃうことが多いですからね。こうした要素をきちんと残しているのはまさに愛!

  • ▲お金稼ぎの有名なテクニックもそのまま。ジャンクを漁って種銭を作り、金を転売すれば装備やアイテムに困ることもありません。

 HDリマスター化であってもただの移植ではありません。遊びやすく改良された結果、新作として楽しめる『サガ』になっています。もちろんRPGのなかでも極まったシリーズなので、今のRPGと比べるとテキストやストーリーがぶっきらぼうで、豪快な『サガ』らしい部分も健在。シリーズを知らなかった人は驚くことも多いでしょう。逆にファンからすると、そこがたまらないのですが。

 しかしながら、実際に遊んでみれば「なぜ、『サガ フロンティア』はこんなにも愛されているのか」がよくわかるリマスターになっています。『サガ』シリーズ入門としては、これ以上ないくらいの傑作。特に、これまで『サガ』シリーズに触れたことがない人にこそオススメしたいです。ぜひ遊んでみてください!

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