『鬼ノ哭ク邦』世界観レビュー。死を悲しんではいけない希望と歪みが絶妙な、心エグる良ゲー

ハチ
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 スクウェア・エニックスが8月22日に発売するPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用アクションRPG『鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)』のレビューをお届けします。

 リアルタイムでジョブチェンジをしながら戦えるゲームシステムも楽しいのですが、“輪廻転生”をテーマとした独特な世界で繰り広げられる物語も本作の大きな魅力です。

 輪廻転生を理とする“中ノ邦”や“鬼ビ人”、生者の世界“現シ世”と死者の世界“幽リ世”など、本作ならではの世界観の魅力について、実際に遊んだ感想をお届けします。

人の死を悲しんではいけない世界

 本作の舞台は輪廻転生が当たり前の世界“中ノ邦”。人の死を悲しむとその想いが死者を縛り輪廻転生の輪から外れてしまうと考えられているため、死を悲しむことは悪いことだという独特の倫理観があります。

 思い残すことがある死者は“迷イ人(マヨイト)”となって死者の世界“幽リ世”を彷徨い続けることに。

 そんな想いに縛られた死者と生者を救うのが“逝ク人守リ(イクトモリ)”たち。

 生者の世界“現シ世(ウツシヨ)”と死者の世界“幽リ世(カクリヨ)”を行き来することで、生きる者と死せる者の橋渡しとなり救済を行います。

 しかし、生者が死者に会いたいと望めば自らの手を汚し“幽リ世”へ送ることも…。

 輪廻転生を理とする“中ノ邦”ですが、人々には輪廻転生に対する不安が広がっている様子。

 街のあちこちで、来世では家族や恋人と一緒にいられるのか、本当に輪廻転生できるのかといった不満の声が聞こえてきます。

  • ▲輪廻転生を願い、息子の死を表面上は悲しまないようにしていた両親と、自分の死で両親が寂しい想いをしていないか心配で“迷イ人”となってしまった幼い息子。両親が息子のために下した判断とは……。胸が痛くなります。
  • ▲重い病などにかかった場合“ミトリ”という早期に命を絶つ習慣も存在します。いわゆる安楽死ですが、輪廻転生がある世界だからこそ、気軽に選択できる側面もあるのでは?
  • ▲カップルの間では、輪廻転生してもまた一緒になることを願ったお守りが流行っている様子。
  • ▲“黒夜叉”という辻斬りが街を騒がせている様子。“黒夜叉”に斬られると輪廻転生できなくなるという噂があり、人々は斬られることよりも輪廻転生できないことを恐怖に感じているようです。
  • ▲友人や家族、愛する人と一緒に輪廻転生できると語る団体“希望の箱舟”。輪廻転生が当たり前の世界とはいえ、死への不安がまるでない人は少ないようです。そのため、このような団体が信者を集め活動を行っています。

 本作の世界に生きる人々は、決して死を軽んじているわけではなく、怖がっていないわけではありません。

 でも、輪廻転生で次の人生があるという前提があるからこそ、死ぬことが希望につながり、ポジティブな考え方につながっていることもまた事実です。

 「こんなに苦しい現生なら、いっそ死んで輪廻転生をして、来世に望みをかけたほうがワンチャンあるのでは?」なんて、現実世界ではタブー的な考え方も、本作の“中ノ邦”では普通にありうるわけですね。

 こういった死に対するズレと言いますか、“歪み”に近い部分が物語でどのように描かれていくのか? それは間違いなく、本作の大きな見どころであり、人と話し合いたくなるキモの部分と言えるでしょう。

“逝ク人守リ”と2つの世界

 主人公“カガチ”と幼馴染の“マユラ”は彷徨える死者の魂を救済する存在“逝ク人守リ”。

 その任務は、“迷イ人”の未練を絶ち、輪廻転生の輪へ戻すという非常に重要なものです。

 “逝ク人守リ”は、生きる者たちの世界“現シ世”と死せる者たちの世界“幽リ世”を行き来することで “迷イ人”の救済を行います。“現シ世”では“迷イ人”が透明な人影として見えるので“幽リ世”へ行って話しかけましょう!

 “現シ世”と“幽リ世”はボタンひとつで自由に切り替えが可能ですが、初めて訪れる“幽リ世”では、五感が遮断された“幽リ世縛り”状態になっていて探索が困難。

 そのため“現シ世”で“想イ主”という魔物を倒す必要があります。また、“幽リ世”では“攻撃がクリティカルになる”などさまざまな効果の理が発動しているので注意!

  • ▲主人公のカガチ(声優:橋詰知久)は、人の命を来世につなげることこそが自分の使命であると考えている“逝ク人守リ”。任務遂行のためなら自らの手で他者の命を終わらせることにも躊躇しない性格の持ち主です
  • ▲カガチの幼なじみであるマユラ(声優:Lynn)は、他者とのつながりを大切にする心優しき“逝ク人守リ”。ストーリーでも“鬼ビ人”は道具だと考える“カガチ”に比べ“マユラ”は生者と変わらない対応をするほど愛情を持っています。

  • ▲あたたかい雰囲気の生者の世界“現シ世”と冷たい雰囲気の死者の世界“幽リ世”。“幽リ世”では、建物が壊せなかったり宝箱があったりと“現シ世”とは法則が異なっているようです。

 生者の世界と死者の世界をワンボタンで行ったり来たりする感覚は、けっこう新鮮で楽しいです。

 もし仮に、世界を行き来する際に「移動しますか?」みたいなメッセージが出たり、ロード時間がはさまったりしたら、全然違う体験になっていたと思います。本当にシームレスに切り替えができるので、“逝ク人守リ”気分で世界観にひたれるところも大きなポイントです。

“逝ク人守リ”と共に戦う“鬼ビ人”たち

 “鬼ビ人”は、強く純粋な想いを持った“迷イ人”で、記憶を失うかわりに強い力を持っています。

 彼ら(彼女ら)は、“逝ク人守リ”に憑依することで強力な力を発揮! 使用武器や技などが異なり、戦闘中リアルタイムで切り替えも可能なので、戦況に応じてさまざまな戦い方ができます。
(いわゆるジョブですね。体験版レビューにも書きましたが、本作はリアルタイムで鬼ビ人を切り替える=ジョブチェンジして戦えるゲーム部分の完成度が高い作品でもあります)

 “鬼ビ人”を育てていくと新しい技やスキルの修得や能力アップはもちろん、遠い記憶を呼び覚まし過去を知ることができます。それぞれにどんな物語があるのか気になりますね。


  • ▲なぜ彼ら(彼女ら)は命を落とし、“迷イ人”となり、“鬼ビ人”となったのか。そのドラマには胸を打つものが多く、本作をプレイするモチベーションの1つになるはずです。
  • ▲情熱的で愛情深い刀の使い手アイシャ(声優:大空直美)は、カガチが逝ク人守リになった時から、ともに相棒として行動しています。遠い記憶に残るのは、ひとときの幸福と愛への激しい渇望。
  • ▲生真面目で正義感が強く、人の内にある儚さを漂わせる槍の使い手ザーフ(声優:赤羽根健治)。遠い記憶に残るのは、自分に向けられた誰かの憎悪と激しい後悔。
  • ▲斧の使い手ウィル(声優:代永 翼)は明るく親しみやすい性格ですが、前世の影響からか、本心では他者を信じることを恐れています。遠い記憶に残るのは、幸福と混ざり合う憎悪と流浪の日々。
  • ▲生者の言葉や感情をじっと観察し続ける、孤高の鎌使いであるイザナ(声優:豊口めぐみ)。遠い記憶に残るのは、死者の冷たい涙と生者の歪んだ笑顔。
  • ▲丁寧な口調と優雅なふるまいで戦場を舞う、弩と銃を同時に使い、遠距離攻撃が得意なディーア(声優:佐藤聡美)。いつも自分よりも周囲を優先する性格です。遠い記憶に残るのは、闇を彷徨い歩く自分と、手のひらの小さな光。
  • ▲天性のセンスを持ち、双剣の手数の多さを生かして戦うリガン(声優:阿部敦)。遠い記憶に残るのは、差し伸べられたあたたかな手と拒絶する自分。
  • ▲何事にも動じない大胆不敵なガウォード(声優:置鮎龍太郎)は、盾砲(たてほう)という特殊な武器で戦います。遠い記憶に残るのは、愛する者たちと失意の瞳。

 ……どの鬼ビ人も、いろいろと悩んで迷イ人になってしまっただけのことがあり、ハードな過去を背負っていそうな気配。幸せな結末を迎えている鬼ビ人もいるといいのですが……。

まとめ:輪廻転生を是として、死ぬことをポジティブにとらえる歪みの描写が絶妙

 生きる人々の死者への想いや死者の想いは輪廻転生を邪魔してしまう、という切ない世界観は体験版のストーリーですら胸が苦しくなりました。
(ちなみに、体験版の続きのストーリーは、一段と加速度的に面白くなります! ハードルを上げすぎるのもなんですが、とにかくご期待ください!)

 救いを求める人々や輪廻転生を守ろうとする“逝ク人守リ”、さまざまな想いが交差しながら物語は紡がれていきます。

 ダークさやグロテスクさが強いわけではありませんが、遊んでいると心をエグられるような、胸に響く体験を味わいながら遊べる良作だと感じました。

 体験版をプレイして続きが気になった方は、ぜひ製品版でこの世界の未来、と主人公“カガチ”の運命を体験してください!

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Developed by Tokyo RPG Factory.

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鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ARPG
  • 発売日: 2019年8月22日
  • 希望小売価格: 5,800円+税

鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: ARPG
  • 発売日: 2019年8月22日
  • 希望小売価格: 5,800円+税

鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ARPG
  • 配信日: 2019年8月22日
  • 価格: 5,800円+税

鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: ARPG
  • 配信日: 2019年8月22日
  • 価格: 5,800円+税

鬼ノ哭ク邦(オニノナククニ)

  • メーカー:スクウェア・エニックス
  • 対応機種:PC
  • ジャンル:RPG
  • 配信日:2019年8月22日
  • 価格:5,800円+税

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