『戦国無双5』キャラ誕生秘話インタビュー! 初出し設定画にも注目
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7年ぶりのナンバリング最新作として、6月24日にPS4、Nintendo Switch、Xbox One、Steamで発売されるコーエーテクモゲームスの“『戦国無双5』”。
(※Steamは7月27日発売、XboxとSteamはダウンロード版のみ)
“新・戦国無双”とキャッチコピーが付けられた本作は、織田信長と明智光秀のふたりを主人公に据えて、参戦武将の顔ぶれやデザインを一新。
さらに、ビジュアルを筆で描かれるような“和”を意識したテイストへ変化させ、既存ファンのみならず歴史ファン、アクションファンからも大きな注目を集めています。
そこで発売まで約1カ月と迫る今回は、『戦国無双5』の制作に携わる河原淳氏、篠原大嗣氏のおふたりへインタビューを敢行。貴重な開発資料なども交えながら、本作の魅力を引き出します。
ぜひ電撃オンラインchで公開中の動画とあわせて記事を読み込んで、「発売まで待てない!」という気持ちを少しでも満たしてもらえれば幸いです。
武将のデザイン変更には大きな手応えあり! だからこそ次も……!?
――まずは『戦国無双5』でどのようなお仕事を担当されているのかうかがえますか?
河原淳氏(以下、敬称略):私はゲーム全体のディレクションを担当しています。シリーズでは初代『戦国無双』から『戦国無双4』まで、プランナーとしてかかわってきました。シリーズのナンバリングを通して、開発に携わってきた形です。
篠原大嗣氏(以下、敬称略):私はCGのディレクションを担当しています。今回どういった表現をしていくか、『戦国無双5』ならではのビジュアルの表現を追求したり、アイデアを出して実際に形にしたりしています。これまでもキャラクターにかかわる仕事が多かったので、本作もだいぶキャラクターに特化した仕事をしている形です。
――これまでも『無双』シリーズには参加されてきたのでしょうか?
篠原:そうですね。『戦国無双』『真・三國無双』の両シリーズだけでなく、コラボ系の『無双』シリーズの多くに参加しています。
河原:篠原が『戦国無双』シリーズに本格的に参加したのは、『戦国無双3』のキャラクターデザインからですね。『戦国無双4』のキャラクターデザインは、ほぼ彼がメインで担当しています。
篠原:だから『戦国無双3』はものすごく想い入れがある作品です。あのタイトル以降、コーエーテクモゲームス内で『無双』のキャラクターデザインを多く担当していけることになったので(笑)。
――キャラクターデザインとなると、キャラクターをイラストとして描かれていると思いますが、シリーズの武将はCGモデルのイメージが強いので、実際にどう作業をされているのか教えていただけますでしょうか。
篠原:キャラクターデザインは実際にここにあるような絵をチームで描いて、開発スタッフと話し合いながら「これだったらいいよね」という形で詰めていきます。
――ではここからゲームについてうかがいたいと思いますが、以前2月に行った鯉沼(久史氏。本作プロデューサー)さんへのインタビュー(前編・後編)は『戦国無双5』の発表前でしたので、発表後の反響を見ての手応えや、率直な感想をお願いします。
河原:賛否、いろいろなご意見をいただいているという感じです。そのなかでも一番目にするお声といえば登場武将でして、今回は初代『戦国無双』をベースに絞っていることもあり、「武将数の数が少ないよね」というお声をいただいています。
ただ、そのなかでも「幅広く武将が選ばれてうれしい」というお声や、新規の武将も「参戦がうれしい」という意見も多くありました。新規武将もそうですが、とくに既存の武将はデザインやビジュアル面の変更について「すごくいい」と、好評なご意見を目にしています。
篠原:私もいろいろなご意見を目にしていますが、想像以上に今回の墨っぽいイラストは好意的に受け止めていただいていて、すごくうれしいです。正直、今回登場しなかった武将についても、このテイストでデザインをやりたいですけどね(笑)。
――もうご自身のなかでは構想が練られているんですね(笑)。
篠原:今回は戦国史でいえば前半から中盤の時代が舞台ですが、それ以降に活躍する武将たちも今回の表現でもしできるならば、さらにおもしろくなるかなと思っています。
――それはぜひ期待したいですね(笑)。ちなみに武将のデザインだけでなく、背景もイラスト調なタッチに調和させるためにガラッと表現を変えているのが特徴ですが、そのあたりの反応は発表まで不安でしたか?
篠原:不安は……正直作っているときはあまりなかったです。一生懸命になり過ぎていて(笑)。それである程度形になってほっとした瞬間に、少し不安になったことはあります。「ちょっとやりすぎちゃったかな……?」という部分も(苦笑)。
河原:武将たちの見た目などは先に固まったのですが、ステージ側(背景側)との調和という部分は苦労しました。じつは弊社のタイトルでもキャラクターにセルアニメ、セル調のシェーダーを使っていても、背景は従来のCGモデルでの作り方とあまり変わっていないことが多いです。そこを今回はちゃんと調和させようという話になり、武将たちの見せ方がひと段落ついたときに1つ1つ試行錯誤して作っていきました。
――たしかにイベントシーンを見ても、例えば室内での会話シーンなどで武将が背景から浮いているという印象をまったく受けませんでした。そのあたりはすごく苦労されたんじゃないかなと。
河原:そうですね。テクスチャーについては、今回は武将も背景も描き込みレベルで変えました。
篠原:あとは“日本の伝統の色”を使うことに、今回武将もステージもこだわっています。じつは世界各国にはその国が持つ伝統の色があるらしいです。北米ではこういう彩色で、日本ならば彩度が控えめで、アジアの一部では彩度が強めなどですね。
そのあたりを研究して、武将もステージについても日本の伝統の色を意識しながら整えていきました。そのなかで、武将だけは少し目立つような調整を加えています。それもあり、全体的に見ると調和がとれているのかなと。
――彩度を通常よりも落とした方向での調整にしていると?
篠原:そうですね。柔らかいといいますか。それでもハッキリとは見えてくる色にはしています。なかなか難しいのですが、私はたまたま学生時代にそういう勉強もしていたので、そのあたりも活かしつつという感じですね。
――『無双』シリーズは操作したときのアクションのレスポンスであったり、爽快感が一番重要な作品だと思いますが、グラフィックの見せ方を変えたことで例えば表示が重くなるなどの弊害はあったのでしょうか?
河原:若干重くなるかもという心配はありましたが、エフェクト周りの表現なども墨を使ってメリハリが出るようにして、アクションの爽快感が損なわれないようにというバランスをとっていった感じですかね。
――UI周りについても和に寄せるデザインが多く目につきますが、こちらの制作で苦労されたポイントはありますか?
河原:筆のタッチは戦闘中のアクションにも出していますが、そこをUIでも取り入れていこうと考えました。一度はゲームに落とし込んでみて、ゲーム中だとシステムチックな説明のテキストなどはわかりやすい書体にしたほうがいいね、といったバランスはすごく気にしました。
篠原:UIは苦労しましたね。
河原:大きくイメージを変えようと考えて作ってはみたものの、遊びやすさという面では「やはりここは変えてはいけないな」という部分が途中の段階でけっこう出てきまして。そこはやはり元に戻そう、というような試行錯誤をしましたね。
篠原:すべてが筆文字のようになると、「選べない、読めない」になってしまいますので。
人気ランキングに波乱を呼ばせる自信がある本作の武将たち
――シリーズのファンが一番注目している27名の参戦武将たちですが、あらためて選出するにあたっての基準を教えてください。
河原:初代『戦国無双』に登場した15人の武将は、とくに有名な人物を登場させるというコンセプトで選んでいましたが、『戦国無双』シリーズは作品を重ねるごとにストーリー面での評価もいただいており、それに合わせて登場武将も増えていきました。
今回もそのストーリーを大切にするために、どの武将が必要かというのを精査しています。もちろん、武田信玄や上杉謙信といった人気の戦国大名は絶対にはずせないことはわかっていましたので、それらも含めて今回のストーリーに合う武将を選んだ次第です。
――新武将の山中鹿介などはすごく意外でした。
河原:鹿介自体は「いつ出るんだろう」と、すごく多くの方から声をいただいていたんですね。本作ならばちょうど彼が活躍する時代に合っていたし、初代『戦国無双』にはいませんでしたが信長の物語を描くにあたり毛利元就もフィーチャーされるので、そこと合わせる形で登場させました。鹿介の登場で、中国地方の武将も厚くすることもできますし。
――武将については過去シリーズで人気投票を実施していましたが、人気武将を出せないという葛藤などはありましたか?(笑)
河原:そうですね(笑)。やはり石田三成や看板を背負ってきた真田幸村などの武将を、時代的にどうしても出すことができないのが大きいなと感じています。今回は“戦国時代を新たに描き直す”ということで、織田信長をメインにしようということは当初から決めていましたので、そこを押し出すためには申し訳ないのですが「時代的に君たちは今回出られません……」というように、折り合いはつけました。
――むしろ滝川一益などを新規武将として欲しかったなと(笑)。
河原:やはりストーリーを描くうえで、勢力のバランスなども考えるんですね。どうしても織田側が武将の層が厚くなるのは仕方ないとはいえ、そのなかで「柴田勝家や前田利家などはいないとストーリーが成り立たないよね」という基準で武将を選んでいます。
――意外と女性武将が少ないなという印象を受けたのですが、そこは意識して減らしたのではなく、必要な人選で決まったという感じでしょうか?
河原:そうなりますね。やはり女性武将のニーズがあるのはもちろん承知しています。ただ、無理やり女性武将を詰め込んでも……ということもありますし、そもそも初代『戦国無双』でも濃姫、くのいち、阿国、お市くらいでしたよね。
女性武将を入れるとファンタジー色が強くなるので、そこでどうしてもストーリーに弊害が出てきてしまいます。戦国時代を楽しんでもらうために無理やり女性武将を詰め込むのではなく、「この武将がいるとストーリーがおもしろくなるよね」という理由から選んでいます。
篠原:どうしても想い入れの強い武将がいるので、私としては「なぜこの武将が出ないのですか」という想いはありましたね(笑)。
――あ、やはりあるんですね。そこは開発のなかでも喧々諤々した感じでしょうか?(笑)
篠原:そこまでは強くないですが「出ないですかねー?」みたいな感じです(笑)。ただ、やはりゲームとして、ストーリーとしてのおもしろさが優先ですね。
――ちなみに発表武将のなかで、既存、新規を含めて反響が高かった武将は誰になりますか?
河原:やはり既存武将のなかでは、年齢や見た目が大きく変わった家康ですかね。あとは新規武将では意外性の部分で百地三太夫や弥助ですかね。それに先ほどお話した山中鹿介でしょうか。
――弥助は彼を主役にした映像メディアが注目を集めていて、いろいろとタイムリーな武将ですよね。実際操作してみると動かして楽しい武将になっていました。
河原:弥助はいわゆる武闘派の外国人ではなく、本作では文武両道のサムライにあこがれる知的なイメージの武将として描いています。デザインもいろいろなパターンを用意したのですが、最終的にはこの形になりました。
篠原:細身から筋肉質のバージョンもありましたし、服についても鎧をベースにしたものや、肉体をアピールするようなパターンもありました。それで“このタイトルならでは”と考えたときに、やはり文武両道な印象を抱く知的な弥助にしたかったという思いがあります。
――たしかにストーリーを見たうえで今のお話を聞くと「なるほど、こういった武士として描くならばこのデザインだよな」と納得できました。
篠原:弥助のデザインはアフリカの伝統衣装を勉強して、そのあたりのモチーフもふんだんに取り込まれているので、ぜひじっくり見ていただきたいなと。海外のTwitterでは、そこを見抜いてくださっている方もいてうれしかったです。普段はいろいろ勉強して盛り込んでデザインしているのですが、なかなか気づいてもらえないことが多くて(笑)。
河原:あとは既存武将でいえば、毛利元就はこれまでと異なり実際の年齢に近づいたデザインになりました。今までのイメージがあったのでどうなるのかなと心配はしたのですが、すごく好評で手ごたえを感じています。
――そうですよね。若い小早川隆景とうまくバランスが取れていますし、毛利家当主という威厳も感じられてすごくいいデザインだなと感じました。
篠原:必ずしも若返るというわけではないということですよね(笑)。
ヒントになったのは墨絵や浮世絵的な日本の伝統的な絵画
――武将たちの立ち絵はこれまでCG色が強かった方向から、イラスト調で荒々しいタッチへと切り替わり、より“和”を感じさせるデザインになっています。鯉沼さんのインタビューでは、何度かビルドしてかなり方向性が決まるまで難儀したというお話でしたが、これで行こうと決め手になったのは何だったのでしょうか?
篠原:これを最初に描いて、このイラストがそのまま動くようにということを目標に作り始めた感じですね。
篠原:従来の方法と同じCGのシェーダーを使って再現してみたりとか、イラストっぽくマットな感じになるようにしてみたりとか。または線画があったりなかったりと、いくつか試行錯誤しつつ最終的には今回のタッチに落ち着いた形です。キャラクターモデルには線画が入っていまして、より和風の今作らしいタッチが出せるかなと。墨絵や浮世絵的な日本の伝統的なイラスト……、というより絵画ですよね。そこらをモチーフにもしています。
――輪郭などは「ここを強調しよう」という目的で、こういった墨が入っているのでしょうか?
篠原:そうですね。より墨絵っぽく見えるようにしています。シェーダーではなく、やや力技っぽいところもありますけど。
河原:実際にこれらはテクスチャーで描いているものなんですよ。
篠原:この表現が和風で、『戦国無双5』としての表現に合っているだろうと。自社でもいろいろな表現をやっているので、それらをマネしてみるなどもしましたが、最終的にはこういった独自の方法になりましたね。
河原:一般的なトゥーンシェードもそうですし、ガストブランドでもアニメーションなのかイラストなのか線引きが難しい、アナログタッチ的な表現もしていますが、そこも参考にしつつという感じですね。もちろん、他社さんのタイトルを研究するなどもしていますけども。
篠原:「日本らしさをどうしても出したい!」という想いから、このようなタッチが生まれた形ですね。
――プレイしていてとくに目に入ったのが、筋肉の表現ですね。これまでのCGとはまた違う、力強さというか荒々しさを感じます。
篠原:そのあたりに気づいていただけるとうれしいですね。これはモデル担当者の腕にかかっていますので。
河原:ある意味時代をさかのぼった作り方にはなっていますね。
篠原:最新の便利なツールに頼るのではなく、人の腕による作り方をしていたので。
――となると、モデルもいろいろな角度で動かして、例えば「こう見えるからここを調整しよう」みたいに、いわば“職人芸”的に細かく手を加えられていると?
篠原:そうですね。ですので、筋肉などに注目していただけると、すごくモデル担当者が喜ぶと思います(笑)。
――これはすごく下世話な話になりますが、1体制作するうえでのコストはこれまでよりも高くなっているのでしょうか?
河原:今までの作り方では、もともとのポリゴンの数がものすごく高くないとリアルに見えません。ですが、本作の作り方はそこまでリアルさを追求しない方向ですので、そのあたりをトレードオフする感じでしょうか。だから全体的なコストはあまり変わらないと思います。
――先ほども言ったように、『戦国無双5』は方向性が固まるまで何度もビルドしたという経緯がありますが、イラストの方向性が決まったから進んだのか、それともシステムが固まったから進んだのでしょうか?
河原:どちらかと言われると、同時並行で進めていましたね。これは以前鯉沼が語ったように、開発内でも「『戦国無双4』でほぼほぼやりつくしたよね」という意見があり「じゃあ『戦国無双5』はどうしよう」という話が出ていたんです。
そこを考えつつ、ビジュアルなどもどうしようとなったときに「もう一新するしかないよね」と決まり、そこから見た目もストーリーも武将の設定もすべて一新する方向でスタートしました。
すべてが表裏一体でデザインされた信長と光秀
――では27名の武将のなかから、何人かデザインの注目ポイントなどをうかがえますか?
篠原:まずは青年期の織田信長ですが、やはりいろいろありました。
河原:最初にデザインを始めた武将ですからね。
篠原:過去一番にリテイクしたかもしれません(笑)。
――そんなに難産だったんですね。苦労したのは顔でしょうか?
篠原:いえ、衣装ですね。顔は鯉沼のインタビューにもあったように、信長は基本的にどのタイトルでも統一感を持たせるようにしています。どうしても人は年を取ると、どうしても頬のあたりが伸びてくるというか、エラが張ってくるという感じになるのですが、その部分をキュッと上げて、髭を剃っただけになります。なので、いつもの“コーエーテクモゲームスの織田信長”という感じです。衣装はいろいろなバリエーションがあって、決まるまでは時間がかかりました。
河原:いわゆる“傾奇者”のイメージである、着物を着崩している感じはどうかという案もありましたが、それだとよくある信長像になってしまいまして。また、主人公として今回パッケージ画像にも出るだろうという点も意識しつつ、どんなデザインにすると主人公映えするのかという点は、いろいろと試行錯誤しました。
――たしかに単純に甲冑を着させるだけでなく、そこに“主人公感”をプラスするというのは難しいですよね。
篠原:今回はこれまでよりも時代をさかのぼっているという設定なので、いわゆる南蛮具足の西洋甲冑姿ではなく、しっかりと縅(おどし:小札板を革や糸などの緒で上下に結び合わせた装飾)の付いた鎧にしつつも、主人公感を出すために陣羽織などを着せています。
それなりの上の位の人でありつつも、うつけで傾いているような表現も出したかったので、半分脱がせました。ちなみに、信長がメディアで描かれるときはたいていが南蛮甲冑姿で、陣羽織姿をあまり見る機会がないので、そこも楽しんでいただければと思います。ただ、髪を茶筅髷(ちゃせんまげ)で結っているので、いつもの信長らしさは感じられると思います。
――たしかにこの茶筅髷を見ると、シルエットだけでも「あ、これは信長だな」というのがわかりますよね(笑)。
河原:色についてもかなり苦労しましたね。
篠原:ありましたね。
――地味になり過ぎず派手にもなり過ぎず……という感じでしょうか?
篠原:主人公は“赤”がよかったのですが。
――そうですよね。幸村は赤ですごくわかりやすかったですし。
篠原:日本は主人公=赤というのが絶対的な人気ですよね(笑)。
河原:なので当初は赤ベースでデザインを進めてみたのですが、やはりもともとの信長のイメージカラーがあるので、そうなるとやはり黒や紫にしたほうがいいかなと。最終的には赤も入りつつも、今のようなカラーに落ち着いた形です。
篠原:ヒーローらしい赤も使いつつですね。
――『信長の野望』では家紋が青なので、青のイメージもあったのですが。
河原:『戦国無双』シリーズでの織田カラーは紫なんです。
篠原:そこを赤に変えて勢力カラーも変えてしまうと、別人になってしまうのかなと。そうではなくて基本は変えないまま方向性が違うようなデザインにしています。“基本は変えない”という点は、信長もほかの武将も同じですね。
――家紋を胸当てに入れているので、主人公感が伝わってきますね。
篠原:やはり胸や肩の辺りに視線が集まると思うので、信長だけでなくすべての武将たちにはそういったデザインが施されています。明智光秀ならば肩の部分ですね。
――イベントシーンでは、そのあたりにも注目していると「あ、ここまでこだわっているんだ」となりそうですね。
篠原:顔と家紋がスッと目に入ってくるようになっていると思います。
――では壮年期の信長はいかがでしょうか? これまたカッコいいんですよね。
篠原:こちらは従来の信長を踏襲するイメージです。
――髪が長いのもポイントですよね?
篠原:そうです。この髪が長い理由は物語と絡んでいます。
河原:今回は青年期があって壮年期があるので、その差別化というのもありつつ、ストーリーが進むにつれてけっこう性格が変わっていきます。そこの感情の表現をデザインでも出そうということで、髪型や顔つきで表現しています。
――やはり“魔王感”を出しているんでしょうか?
篠原:はい。“魔王感”ですね。
――実際にプレイさせていただいているのですが「この辺りでいよいよ変わるか!?」とドキドキしながら、いざ姿が変わると「おおっ!」となるくらい、このイラストはインパクトがあります。
篠原:性格の違いという意味では、青年期は左右非対称のデザインだったのが、壮年期では左右対称になっています。これは彼のなかで何かが決まっていくんですよね、それまでブレていたものが。
河原:ストーリーでは青年期から壮年期になるにあたり、1本「こうする!」と決めて貫き通すような性格に変わっていくので、そこもデザインに反映させています。
――なるほど。それは興味深いお話です!
篠原:性格の違いなども、わりとデザインに盛り込むのがポイントです。左右対称、非対称というのも含めて。今回は同じ武将ですが、物語の進行で中身の変化があるので、そういった部分を服装の着こなしや衣装のデザインで表現できたのではないでしょうか。そうすることで、より“人間味”が出せるんじゃないかなと。
――信長の肩周りに羽のようなデザインがあしらわれていますが、これは何かモチーフがあるのでしょうか?
篠原:こちらは信長が実際に所有していたとされる陣羽織・黒鳥毛揚羽蝶模様(じんばおり くろとりげあげはちょうもよう)がモチーフになっています。肩や背に黒い羽が付いていて、腰から下が金の布が付いているというめずらしいデザインです。
ただ、陣羽織としてそのまま着せてしまうといつもの信長になってしまうので、そこは赤いマントの代わりにアレンジしたものを着せて、“信長らしさ”の説得力を出しています。
――信長は大太刀を持っていますが、この武器を持たせるというのは最初から決まっていたのでしょうか?
河原:そうですね。デザインの段階で主人公にふさわしい武器を持たせようと考えたときに、「やはり刀だよね」となりました。そこで通常の日本刀よりも、若いころの信長が持つ荒々しさや熱血的な部分を出すために、この特徴的な大太刀を持たせています。あとは初めに操作する武将なので、攻撃範囲が広いなどの使いやすさという点も意識していますね。
――では次はもうひとりの主人公である明智光秀をお願いします。
篠原:光秀については、対になるタイプであることを常に意識していました。青年期は信長の黒に対して白ですね。ただ、鯉沼のインタビューにもありましたが、戦闘のしやすさを考えて今回は髪を結うデザインにしています。壮年期も信長の黒い羽に対して白い羽をあしらっています。デザインも青年期は左右対称であったのが、壮年期は左右非対称なんですね。常に表裏になるように意識しています。
河原:光秀は若いころは石頭と呼ばれるくらい、信じているものに対して曲げずに進むような性格でしたが、壮年期になって成長をすると逆に葛藤が入ってくるようになるんです。そこのブレ的なものをデザインに合わせています。
篠原:ただ、光秀は顔が老けないです。そこが苦労しましたね(笑)
一同:(笑)
――たしかに光秀は髪が少し白くなるくらいで、大きく変わったという印象は受けないですね。
篠原:髭についてはけっこうもめましたよね。
河原:今回は髭を生やすのはどうかなと(笑)。
篠原:ファンの皆さん的にはどうだったのでしょうね。
――頭を薄くする……というのはどうだったんでしょうか。キンカン頭的な(笑)。
篠原:実際に絵には起こさなかったですが、そういった話は出ましたね(笑)。
河原:まあ、対称という意味でも信長が髭を生やしているので、光秀は生やさないほうがいいかなと。
篠原:光秀で一番苦労したのは、壮年期でどう年を取らせるかという点でしたね。
――やはり信長のデザインが固まると、光秀も必然的に固まっていった形ですか?
篠原:青年期は光秀のほうが先に決まっちゃいましたね。
河原:信長は本当に試行錯誤し過ぎていたので、最終的な決定は信長があとになります。とはいえ、全体的なイメージはそこまで大きく変わってはいません。
――ちなみに、赤い信長など途中のデザイン案が世にでることはあるのでしょうか?
河原:そうですね。こちらはTREASURE BOXのキャラクター設定画集に収録されています。
篠原:たくさんあるため収録しきれていないので、どうしたものかなとは思っています(笑)。
篠原:羽柴秀吉であれば、完全に足軽に寄せたようなデザインなども考えました。ただ、ストーリー後半までこの恰好で行くわけにはいかないだろうということで、採用はしませんでした。
――でも、今回青年期と壮年期で信長と光秀の外見が変わるので、今後続編があるならば秀吉や家康などの変化も見てみたいと思っているファンも多いのかなと。
河原:今後できるならばやってみたいですよね。
――とくに家康は今回少年の姿になるので、従来の恰幅のいい家康をこのタッチで描いたらどうなるのかを見てみたいです(笑)。
篠原:顔のデザインはこのように、目鼻口はこれまでの家康の造形からはずれてはいないんですよ。子どもにはなるので、目の縦幅が少し上がるくらいで、基本的な形状はまったく一緒になっています。鼻もお団子鼻をキュッと寄せているだけで、形自体は変わっていません。右の家康から若返ったということを、最大限に解釈してデザインしています。なので、すごく望まれるのであれば、昔の家康に戻すことは可能です(笑)。
河原:もちろん髪型とかを直す必要はありますけど。
篠原:秀吉もキュっと上がっている口とか、少し釣り目である部分や太い眉などはこれまでと同じパーツですね。大人になってエラが張ってきたり、少しごつくなって髭が生えたりすれば、いつもの秀吉になるかなと。家康ですら戻せますから、秀吉は余裕で戻せますね(笑)。
――もし『戦国無双6』や『戦国無双7』が出て、関ヶ原時代が描かれる場合でも、たぶん昔の家康にはならなさそうですね。このイメージが定着していると思うので。
篠原:きっとどうするのか、いろいろな話し合いがなされるのかなと。
河原:少年姿でイメージが固まっているから、戻すとファンがショックを受けるんじゃないか!? とかいろいろ意見が出ると思います(笑)。
――ちなみに、今回の家康はファンの間ではどういった風に受け止められている印象ですか? けっこう人気が高いように感じますが。
河原:社内も好評価ですし、デザインが発表されてからファンの方からの反響も好意的な意見が多いです。
――ストーリーを進めていると、本多忠勝や服部半蔵に「若、若」と呼ばれているのを見ているうちに、少年姿の家康のほうがしっくりくるのに気づかされます。守られている感じがより伝わるというか(笑)。個人的に三河のメンバーはすごく好きですね(笑)。
篠原:忠勝は今回すごく気に入っています。
――これまでは生真面目でお守り役に徹していたイメージから、荒々しさが感じられるような描き方になっているのが新鮮でした。
河原:今回は“武将たちに感情移入してほしい”という狙いもあります。これまで信長も謙信も忠勝も、悪く言えば人間味が薄いといいますか、カッコいいんだけども共感はしづらいなという部分があったと思うんです。ですので、本作は“等身大のキャラクター”という点を意識して描いています。
――たしかに謙信も感情をむき出しにするセリフがあるなど、意外性があって楽しめました。今回深堀りされた武将たちに触れたあとに人気投票をすると、これまでとは違うランキングになりそうですね。
河原:今までは信長、謙信、信玄ら大名武将は、あまり高い順位に入らなかったんですよね。そういった有名な戦国大名がランクインしないと、こっちはそれはそれで悔しいなと。そこで人気が取れるようにするにはどうしたらいいのか、という点も今回は考えていますね。
――次は新キャラの中から何人かうかがえますか?
篠原:まずはみつきですね。彼女はこういった設定が用意されていまして。みなさんが見ているイラストは全身ピタッとした黒いスーツだと思ますが、じつはこのように細かく設定がされています。
この履物などを見ていただくとわかると思いますが、完全に日本の馬乗り袴になっているんですね。
――架空の着物ではなく、しっかり史実に基づいてデザインがされているんですね! 信長もそうでしたが、そのあたりの研究に脱帽です。
篠原:衣装が極端にピタッとした表現なだけで、服の構造は完全に袴と同じになっています。上着も籠手を組み合わせているなど、一見奇抜に見えて「こんなのあるの?」と思われるかもしれませんが、必ず日本の和の要素を踏襲して、なおかつ内部までデザインされています。
――完成されたイラストだけでは奇抜な印象でしたが、その設定まで伺うと納得できてとてもしっくりきました。ではかなり注目度の高い鹿介はいかがでしょうか?
篠原:鹿介も同じく陣羽織が単に短いだけで、中に着ている鎧も着物も史実をもとにしたアレンジとなってます。
脛当てなどもそうですね。今どきのブーツアレンジにはなってはいますが、しっかりと和をモチーフにしてあります。この和と伝統的な服の構造と、現代の衣装の融合というデザインが弊社の強みだと考えています。とくに『戦国無双』に関しては、そういった特色が強く出ていますね。
河原:こういった史実に基づいたデザインの方向性は、『戦国無双』シリーズではずっと続けてきていまして、当時のデザインを尊重するような設定になっています。
――鹿介のデザインでとくに目を引くのが、ファンの間で“バイザー”と呼ばれている鉢金ですが、こちらはやはり鹿の角をイメージしているのでしょうか?
河原:バイザー風にしたのはデザイン的なアレンジですね。
篠原:今回、忠勝の兜のように直接角が生えるのではなく、バイザーの面に鹿の角があしらわれていて、角の絵の一部から角が出ているというデザインなんですね。鹿の角は根本から幾重にも分かれている作りじゃないですか。その途中までが全部絵で、1本だけが角になっています。ちょっと小技というか遊び心を効かせているんです。普通に角が生えている武将はたくさんいますからね(笑)。なので、ぜひプレイされるときはじっくり見ていただきたいです。
――モデリングを作るときは、これらの設定のように重ねて衣装を着ているのでしょうか? 例えば羽織を脱がせることもできるのでしょうか?
篠原:脱げる箇所もありますね。アクション中に衣装がめくれて見える部分もあるので、そういった部分は全部作ってあります。この辺りはデザイナーもモデル担当も着物や甲冑についてしっかり勉強をしてくれているので、そこは当社の強みだと思います。
――ちなみに衣装の変更も『無双』シリーズでは人気の要素ですが、こちらの対応はいかがでしょうか?
河原:現時点では早期購入特典として織田信長と明智光秀用に大河ドラマ「麒麟がくる」特製衣装、初代『戦国無双』衣装セット衣装を発表しています。それに加えて、各店舗さんで購入されるときの特典衣装がありますね。
篠原:こちらになりますね。
――こういったDLC衣装もイラストとしてしっかり起こしているんですね。
篠原:そうですね。こちらはNHKさんにご監修をいただいて、実際の映像で見るとこんな感じになります。
――大河の衣装をデザインに起こす際に苦労された点はありますか?
篠原:大河の衣装は、どこの国のものでどんな布素材であるかわからない、すごく不思議で魅力的なものが使われていたりするんです。それを和の装丁で裁断して作られている感じで。
――たしかに「麒麟がくる」は、1話目からすごく鮮やかな色彩づかいが話題になりました。
篠原:あまり和では見かけないような生地感なんですね。番組では、我々と違うアプローチから衣裳をデザインしているようで、今回コラボ衣装を担当してみてすごくおもしろかったです。実際には見えないのですが、陣羽織の内側も見たことがないデザインがされていて驚かされました。
――ちなみに、実際に衣装をお借りした形ですか?
篠原:いえ、資料として画像を見せていただいた形です。さまざまな角度のものをご提供いただきました。
――「麒麟がくる」を視聴していた者としては、はやくこれを着せて戦ってみたいですね。
今回のインタビューでは主にゲームのコンセプトや武将のデザインを中心にうかがいました。6月上旬に公開予定のインタビュー後編では、ゲームプレイに関連するアレコレに斬り込んだ記事をお届けする予定です。こうご期待!!
5月27日には第四回公式生放送を配信
第四回公式番組の配信が5月27日(木)に決定しました。この番組にはEXILEメンバーのSHOKICHIさん、世界さん、関口メンディーさんの3名のゲスト出演し、ゲームの新情報発表、楽曲タイアップエピソード、EXILEメンバーの生ゲームプレイなど今回も盛りだくさんの内容になっています。これは見逃せません!
⇒ニコニコ生放送での視聴はコチラから
■戦国無双5(通常版)
■戦国無双5 TREASURE BOX
■戦国無双5 一騎当千BOX
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※画面は開発中のものです。
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