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後期作品紹介、その2だってば!!【O村の漫画野郎#51】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

後期作品紹介、その2だってば!!

 あー。後期作品紹介、その2!! いよいよ押し迫ってきたなあ。そんじゃいってみよー!!

●『海辺へ行く道シリーズ』(三好銀)

 俺には良い小説とか漫画を読んでて、文章や漫画がスーッと体に沁み込んでくることがある。滅多にあることじゃねえけどな。でもありゃあ本当に気持ちのいい瞬間だ。

 ある日の夜、この漫画のゲラを読んでる時にソレは突然やってきた。そんな反応をするような内容でもねえのに、涙が出そうになって困ったなあ。あれは感動したんだろうか?

 ただ、一つ言えるのは、読者である俺がこんな感覚になるのは、作者がソレを感じさせようとしているってことだ。このタイプの作家は、わかりやすい感情を伝えようとしたりは絶対にしない。例えばあざとく泣かせたりとかね。つまり三好さんは、非常に希少なこのタイプの漫画家さんってことだ。

 まだまだ色々描けただろうに、本当に惜しい漫画家さんを亡くしたね。

●『銃座のウルナ』(伊図透)

 この作家さんの漫画読んでて、読者に安易にわかられてたまるかあ! という思いがビンビン伝わってくるんだよなあ。その姿勢は正しい。安易にわかられちゃうってえのは、ひとつ間違えたらサーッと世間に消費されるだけだからなあ。それは非常に怖い事だもんね。

 もっとも、彼はそんな底の浅い作家ではないけど、そういう部分でヒネクレちゃってる人は大好きだよなあ。知らねえ人に褒められるのは気持ち悪い。むしろケナされてる方が居心地が良かったりする。……ムカつくけどな。

 この人が全身全霊でテレたりしないで、世間の反応なんて全く気にせずに没頭して描きまくれる主題に出会えたら、どんな漫画になるんだろう? これ描いちゃったら、もうどうなっても構わねえ!! ……みたいなね。

 そう思えるくらい実力のある漫画家さんです。もしアナタがそれを感じたければ、彼の短編集を読んでみるといいですぜ。わかるヤツにゃあ、すぐわかるから。

●『ママゴト』(松田洋子)

 この人も、もの凄えテレ屋さんだ。シリアスに泣けてきちゃう場面になると、きっちりギャグでスエーバック!! いい話になりそうになると最悪の状況になったりする。この辺の呼吸が憎いよなあ。

 出てくる連中もクセが強すぎてクサヤの干物状態である。裏ありまくり。……いいねえ。ビジュアルだって全然可愛くねえの。この漫画に出てくる子供だって、デブで天然パーマだったりする。だけんども、読み進めているうちに可愛くってしかたなくなってくるんだ。この辺が作家の力量ってもんである。


 ビームの漫画家さんは松田さんみてえなテレ屋が多いなあ。こういう人に直接会う機会があったりしたら、絶対に社会一般的な褒め方なんて絶対にしないでください。ヘタすると教室でウンコ漏らすより恥ずかしがったりするので。

 マトモに人の眼を見て話せない俺が言ってるんだから間違いない!!

●『そこはいきどまりだよ。』(しりあがり寿)

 言わずと知れた大ベテラン登場だ!! ビームには早い段階から参加してくださって、幻想的かつシリアスかつ馬鹿馬鹿しい素敵な漫画を連発!! 本当にありがたかったなあ。

 こういう先輩がいてくれるので、後輩が安心して好き勝手やれるっつーのは本当にあるんだよ。フットワークの軽さで、時事的な大問題をいつもキッチリ反映してくれたのも嬉しかったなあ。

 ウチの新人賞の審査員も長きに渡って引き受けてくださったし、あ、なんか無茶苦茶世話になっとるやんけ、俺ら。

 ……そうそう、しりあがりさんの大学時代からの盟友、装丁界の鬼才・祖父江慎さんがいつも装丁を引き受けてくださって、毎回毎回、締め切りも含めてアナーキーな仕事をしてくださった。担当の岩井がそのたびに振り回されるのが、ビームの素敵な風物詩であったことを忘れてはならない。


 お、なんか今回のラインナップ、偉えシブイじゃねーの。なんかいいよなあ。次は、もしかしたらビームで一番大きな出来事だった件を語ろうじゃねえか!! 待て!! 次回!!

(次回は6月14日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉

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