最後に言っちまうぜ!! イエー!!【O村の漫画野郎#54:最終回】
- 文
- 奥村勝彦
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秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!
最後に言っちまうぜ!! イエー!!
あー。1年間でピッシリ終わる予定だったが、小便して仕舞い忘れたチンコのように2週間ほどオーバーしちまった。
相変わらずツメの甘い俺である。んでまあ、これが最後なんで書きたいことを書いちまおうと思う。
現在、コロナ禍真っ最中なのだが、なんかワクチンが物凄い勢いで打ちまくられているので、あと数カ月であらかた接種されちまいそうだ。
漫画家は基本、社会と没交渉の連中が多いので、コロナに感染した例ってほとんど聞かなかったが、生活が不規則&不摂生な人が大多数なので、いざ感染したら重症化一直線になりそうで不安だったけど、それもどうにか解消されそうだ。
なので、リモートでチマチマ打ち合わせしてねえで、いっそ青空の下でツラ突き合わせ熱くガンガンやってみねえか!? 不要不急とかでコケにされてた分、娯楽の底力を世間に見せつけてやろうじゃねえか!?
……とまあ、テンションを上げつつ、こっからは対象をメインストリーム以外の漫画家、編集者、読者に限定して語っちゃうぞ。なんせ、俺、ビームの編集だったからさあ。
そんで俺が長年、編集やってて確信したことが一つある。それは“我々はフルスイングしなければならない”ということである。
“フルスイング”とは何か? それはマーケティングで作品を絞ったり、ヒット作を模倣、焼きまわしたりすることでは断じてない!! それは、力をセーブして当てにいってるだけである。
せこいヒットなんて狙わねえで、渾身のパワーでボールをブッ叩くのだ!! 漫画でいえば、編集者は漫画家が一番描きたがっている漫画を彼らから引きずり出して描かせる!! 漫画家は結果を考えずにソレを、「もう今後、描けなくなってもかまわねえ!!」ぐらいの覚悟で描き切るのだ!! それが漫画の“フルスイング”なんだよ!!
そんで、その“フルスイング”が目指すモノは何か? それは部数が何部、なんてチンケなモンじゃダメだ!!
狩撫さん的に言えば“永遠のスタンダードナンバー”である。世間のトレンドなんざ完全に無視して、時代や世界を超越して読まれる漫画なんだ!!
考えてもみなよ。もし、アナタがメインストリームにいる人間だったら、マイナーな世界にいる連中が、腰の引けたスイングでヒットを狙いに行ってるのを見て、怖いと思うか?
……ただ馬鹿にするだけだぜ。たまたまヒットになったとしても、屁みてえなもんだよ、そんなもん。
それよりも鬼のような空振りで、相手を震撼させる方が全然マシってもんだよ。そんで、実際、当てにいっても実はそんなに当たらないの。“フルスイング”してる方が、結果が出なくたって周りが一目置く分、結局一生描けちゃったりすんだわ、これが。
野球の話になって恐縮だが、今まで交流戦で“フルスイング”で打つパリーグが、セリーグをボコボコにしてたのを、今年は村上や佐藤の出現で“フルスイング”に目覚めたセの打者たちが互角に打ち合ったじゃないの!! あ、なんか俺、正しいような気がする!!
まあ、なんだかんだ1年間書いてきて、結局俺はこのことだけを書いてたような気がするなあ。そういう意味じゃ全然一般的なコラムでもなんでもなかったが、まあ、本人が片寄った人間なんだから仕方がない。
まったく世界的に騒然とした状況下で1年間、我慢強く読んでくれて本当にありがとう!! ……そんじゃ、バイビー!!
O村の漫画野郎 バックナンバー
イラスト/桜玉吉
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