【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 6】ウマ娘って馬の話でもあるけど、きっと人の話でもあるんだよねってお話

柿ヶ瀬
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 今年も新馬戦が始まって、来年のクラシックの主役候補を探していく季節になりました。これもまた、競馬の大きな楽しみですね。東京の新馬戦を勝利したアライバル号(POG指名馬)の愛嬌のある顔に夢中です。柿ヶ瀬です。

 『ウマ娘』を1.8倍楽しくする当コラム、第6回は、ウマ娘のキャラクターには実在の馬だけでなく、設定やストーリーに関係者のキャラや個性が乗せられてたりするかもねって言うお話です。

 いつも妄想だらけの当コラムですが、今回はいつにも増して筆者の妄想がマシマシかもしれません。ご了承ください。

みんなが知ってる馬主さんだからこそ……の遊び心

 最初に紹介するのは、アニメ2期から登場し、アプリのほうでもサポートSSRで登場したキタちゃんダイヤちゃん。この2人はどちらも馬主さんがネタにされています。

 まずはキタちゃんことキタサンブラック。恐らくこのキタサンブラックの馬主は、『ウマ娘』から競馬を知った人でもご存知な方が多いのではないでしょうか? そう、紅白出場回数最多(2021年現在)の大御所中の大御所、サブちゃんこと演歌歌手北島三郎さんです。正確には北島三郎さんの事務所である大野商事が馬主の名義ですが、実質的な馬主と言って差し支えないでしょう。

 お友だちが恥ずかしがる歌の特訓を手伝うキタサンブラック、一緒に歌おうってことで歌うのがお祭りの歌ということで……。

 いや~これはさすがにさすがに。北島三郎氏はキタサンブラックがG1で勝つと、表彰式で自身の代表曲『まつり』を熱唱するパフォーマンスをしてきたことで(時には負けても歌ったことも)大きな話題になっていましたので、競馬を知らなかった人でもニュースなどで見たこともあるかもしれませんね。

 続いて相方ダイヤちゃんことサトノダイヤモンド。

 サトノダイヤモンドの馬主はサトミホースカンパニー……と言われてもピンと来ないと思います。サトミホースカンパニーは里見治(さとみはじめ)氏の馬主事業を法人化したものですが、その里見治氏はウマ娘をプレイされてる方の多くが知っていると思われる企業、セガサミーホールディングスの代表取締役会長をしておられる方です。サトノダイヤモンドがサポートカード実装された際には『ウマ娘』公式アカウントのツイートをセガ公式アカウントがRTしたことも……。

 さてそんなサトノダイヤモンド、実家が資産家という時点ですでにオーナーの匂いがしていますが、それを反映したような話がストーリーイベントにも用意されています。実はサトノダイヤモンドではなくメジロマックイーンに追加されたイベント、秋シニア三冠制覇イベントです。

 ここに登場するサトノダイヤモンドはとんでもないものをメジロマックイーンにプレゼントしていました。それはクレーンゲーム本体。クレーンゲームと言えば……そう、セガのUFOキャッチャー! いや~そういうやり方か! 確かに『ウマ娘』には、クレーンゲームのイベントもある!

 こんなふうに馬主さんまでウマ娘に取り込んでいく何でもあり感には常にワクワクさせられますね。

ジョッキーの魂のようなものも、ウマ娘に乗っているかもしれない

 例えば、マヤノトップガンの勝利のポーズで投げキッスをするのは、マヤノトップガンの主戦であった田原成貴騎手がマヤノトップガンの菊花賞や有馬記念でゴール直後にガッツポーズの代わりに行ったパフォーマンスから来ているのであろうことは、競馬好きであればすぐに気付くことだったりします。

 例えば、セイウンスカイの飄々(ひょうひょう)とした雰囲気や言動からは考えられないような策士感。そんなところにセイウンスカイとともに菊花賞での知能犯的逃げ切りや、天皇賞(春)のイングランディーレで驚異の大逃げ勝ちを演じた策士・横山典弘騎手を感じている競馬好きも多いのではないでしょうか。

 例えば、エイシンフラッシュがライバルとしてレースに登場した時のパドックで丁寧なお辞儀をする姿。これはエイシンフラッシュが天皇賞(秋)を勝ったあとに、鞍上ミルコ・デムーロ騎手がご観戦されていた天皇皇后両陛下に対して行った最敬礼をモチーフにしたのは想像に難くありません。

 そして筆者がジョッキーを強く乗せていると思っているウマ娘、それはキングヘイローです。

 キングヘイローのストーリーは黄金世代での競争であると同時に、自らの血統という背景から生まれた母と比較されることへの反発、それ故の、キングヘイロー本人が一流であることを証明する……。それが、キングヘイローのストーリーです。

 キングヘイローの主戦――というと高松宮記念を勝った柴田善臣騎手あたりと意見が分かれることも多いのですが、キングヘイローのドラマとしてセットで語られることが多い騎手と言えばやはり福永祐一騎手でしょう。

 福永祐一はデビュー2年目でキングヘイローと出会い、JRA重賞を初制覇(地方重賞はその前に勝っています)。翌年、キングヘイローでダービーに初騎乗するのですが、あまりの緊張から頭が真っ白になった、と本人も述懐するように、本来差し馬であるキングヘイローで逃げてしまい大敗を喫してしまいます。それからの福永祐一とキングヘイローにも色々ドラマはありますが……ここでは割愛させてもらいます。

 福永祐一もまた、キングヘイローと同じく偉大なる親を持った騎手でした。父の名は福永洋一。かつて天才と言われたジョッキーでしたが、落馬事故により引退を余儀なくされました。福永祐一は若手時代そんな偉大な父と比較されて色々言われることも多かったと記憶しています。そう、母と比較され続けるキングヘイローのストーリーにどこか似ているのです。落馬事故で後遺症を負った父・洋一は、キングヘイローの母のようにあれこれ言うことはなかったのは違う点ではありますが……。

 いまや福永祐一は、今年2年連続となる3度目のダービー制覇をするなど、すっかり一流騎手の仲間入りをしています。キングヘイローを一流のウマ娘に育成するたび、福永祐一のことを思い出すという競馬好きは少なくはないのではないかと思います。

 余談ではありますが、騎手は二世が多いです。あの武豊も二世騎手ですし、今年エフフォーリアで皐月賞を勝った横山武史騎手は前述の横山典弘騎手の息子だったりします(実は横山典弘騎手の父も騎手だったので武史騎手は三世騎手)。

ウマ娘とは直接関係ないけど、競馬好きがほぼ全員笑ったあの関係者(?)のシーン

 というわけでもはや恒例になりつつあるオマケです。

 オマケで紹介するのはメジロライアンです。今回のコラムの趣旨は『ウマ娘』のキャラクターデザインやシナリオに競走馬そのものだけではなく、関係者の個性やエピソードなどが乗っているのではないか? というコラムでしたが、メジロライアンのシナリオではライアンには関係なく、関係者ご本人のような方が出ちゃってるのです。そんなことあります?

 あったんです。

 シニア有馬記念勝利のあとのイベントで突然登場するこのおじさん、もといベレー帽の紳士……メジロライアンを知ってる競馬好きはニヤリとするどころか手を叩いて爆笑してしまったまであるのではないでしょうか。

 このベレー帽の紳士の元ネタは、故・大川慶次郎氏。競馬の神様と呼ばれたベレー帽がトレードマークの競馬評論家で、競馬中継での解説などでその当時知らぬものはいないと言っていい方でした。このイベントは、大川氏のもっとも有名なエピソード、オグリキャップの引退レースにして奇跡の復活となった1990年有馬記念での最後の直線、実況アナも視聴者もみんなトップに立ったオグリに注目する中突然「ライアン! ライアン!」と叫びだしたことにちなんだと思われます。

 それだけライアンを推していたのか、ライアンが外から追ってきていることを伝えたかったのか……実際のところはわかりませんが、この出来事は競馬ファンの中では定番ネタになり、メジロライアンが登場する動画などでは必ずコメントに「ライアン! ライアン!」が並ぶことに。その結果が先程のイベント画像です。

 いやホントそんなことあります?

 序盤に紹介したキタサンブラックやサトノダイヤモンドのエピソードもなかなかでしたが、メジロライアンのこのイベントはそれをはるかに越えるウマ娘の中でも堂々トップのド直球ぶりなのではないでしょうか。

 というわけで今回は、ウマ娘のキャラデザやストーリーなんかに組み込まれているかもしれない関係者たちのお話をしていきました。

 実在競走馬のデータをあとから追っているだけではなかなかわからない関係者たちのあれこれ。もちろん今回紹介したもの以外にも色んな関係者要素がウマ娘には取り入れられているでしょう。今回は馬主と騎手のお話をしてきましたが、もう1つ大事な関係者として調教師の存在があります。恐らくは調教師の要素はほとんどがウマ娘ではなくトレーナーに反映されているであろうと考えられますね。

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!


【コラム】ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話

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