最近よく聞く“TRPG”って何!? 会話で物語を紡ぎ出すテーブルトークRPGの魅力を紹介

hororo
公開日時
最終更新

 話題の“TRPG”を紹介する特別企画をお届けします。

 “TRPG”という言葉を聞いたことはあるでしょうか? “TRPG”とは“テーブルトークRPG”の略語で、卓(テーブル)を囲んでトーク(会話)して遊ぶロールプレイングゲーム(RPG)というアナログゲームのジャンルです。

 インターネットが発達した現代ではオンラインで遊ぶことも一般化しているため、必ずしも卓を囲んで遊ぶとは限らないのですが、そこは昔の名残ですね。

 ビデオゲームのRPGと根本的に違うのは、すべての処理を人間が行うこと。TRPGではゲームマスター(ルールによって呼称は変化)を務めるプレイヤーがルールを管理し、物語を読み進めていく進行役となって遊びます。他の参加者はプレイヤーとして自分のキャラクターを作成し、それを操ってゲームに参加するのが一般的です。

 ここ数年間でTRPGの認知度は大きく上昇しました。特にアメリカの作家、ハワード・フィリップス・ラブクラフトが創造した架空の神話体系をモチーフにした『クトゥルフ神話TRPG』などは、セッション(TRPGにおける1ゲームの呼称)内容を動画化して公開しているプレイヤーが多く、著名なYouTuberなどが配信して人気を博しています。

 実際にこういった動画を見てTRPGに興味を持った人も少なくないはず。本記事では、TRPGを始めてみたい人に向けて、TRPGの特徴や魅力を紹介していきます。

会話で進めるゲーム……って具体的にはどんなことをするの?

 すでにセッション動画を視聴したことがある人は、TRPGの遊びかたを大まかに把握しているかもしれませんが、改めて“どのように遊ぶのか”を簡単に説明しましょう。

 前述したように、TRPGは1人のゲームマスター(以下、GM)がゲームの進行を担当します。GMがプレイヤーの置かれた状況を口頭で説明し、それに対して各プレイヤーが“どんなことをしたいか”を決め、GMに伝え、それを処理していく……というのが基本的な流れです。

 場合によっては、GMは事前に用意しておいたマップを広げて見せたり、紙に書いたりして詳細な状況を説明することがあるでしょう。下記は実際のセッションをイメージした例となります。

GM「あなたたちは山賊に持ち去られた食料を取り返すという依頼を受けて、奴らの住処の洞窟へと来ました。洞窟の内部は薄暗く、見える範囲には人影はありません。さあ、どうしますか?」

プレイヤーA「さっさと食料を取り返して報酬をもらいたい。突っ込もう!」

プレイヤーB「待つんだ! 山賊は狡猾だから、罠を張っているかもしれない」

プレイヤーC「私のキャラクターは“暗視”の能力を持っているので、暗い場所でも見えるはず。GM、ざっと見渡して怪しい場所はありますか?」

  • ▲状況がわかるように、ホワイトボードとマーカーで位置関係を表現することもあります。

 このような感じで、会話を中心に物語を進めていくのがTRPGです。細かく口頭で進めていくのは大変だと感じるかもしれませんが、デジタルゲームとは違い、プレイヤーの想像力でいろいろな攻略手段を提案できることがTRPGならではのおもしろいところ。

 また、取った行動が成功するかどうかはダイス(サイコロ)で判定することが多く、運も絡んできます。成功するつもりで行った行動が失敗したり、一縷の望みをかけて起こした行動が成功したりというように、ダイスの出目次第でドラマが生まれるのもTRPGの魅力です。

 運が関係するとはいえ、実際のプレイではキャラクターには能力値が設定されていますし、数々の特殊能力を持っていることも珍しくありません。

 先の例でいえば“暗視”などがそれに当たります。普通の人は暗い所では視界が悪いため、ダイスの出目で5か6が出ないと成功しないシーンであっても、暗闇も見通せる“暗視”持ちであれば、3以上の出目で成功できるかもしれません。このように、キャラクターの長所短所によっても行動の成否は大きく変わってくるのです。

 行動の際に参照する能力値や特殊能力は、進行役であるGMが適宜判断します。「罠を探すなら“知覚”の能力値を参照しよう」とか、「大きな荷物をどかすなら“筋力”判定だね」というように、行動に見合った能力値を提示してくれるはずです。

 つまり、自分のキャラクターの能力値の中で高いものが関係するような行動を取れば、行動の成功率も上がるということ。取りたい行動の能力値が低い場合、その手段を相談して必要な能力値が高いキャラクターにやってもらう、といったチームプレイも生きてきます。

 また、“自分で動かすキャラクターを自分で作る”というのもTRPGの醍醐味。TRPGのルールブックにはキャラクター作成のためのセクションがあり、膨大なデータを頼りに自分のキャラクターを作ることができます。能力値を割り振ったり、クラス(役職)を決めたり、ファンタジーやSFがテーマのTRPGであれば、人間以外の種族を選んだりすることも可能です。

 例えば知力や洞察力に優れた探偵、はたまた頑強な肉体と高い戦闘力を持った元兵士など、自分が遊んでみたいキャラクターの背景をイメージして作っていくのが非常に楽しいのです。

  • ▲『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のキャラクターシート。これにキャラクターの能力値などを記入していきます。

 よりキャラクターに没入したいならば、細かい背景設定を考えてみてもいいでしょう。どんな育ち方をしてきて、どういう思考を持つに至ったのか。それはゲーム中で取る行動の指針にも使えますし、もしかしたらGMがシナリオへの導入に活用してくれるかもしれません。

 ちなみに、TRPGについて少し聞いたことがある方は、ロールプレイ……つまり“役割を演じる”ことが必要であると思う人もいるかもしれません。キャラクターになりきって演技をしながら遊ぶプレイスタイルの人もいますが、必ずしも演技が必要ではないということも覚えておいてください。

 「私はこういう方法を試したいんだけど、誰かできる人いない?」というように、やりたいことを相談できれば、誰でもTRPGを楽しむことができます。セッション風にイメージすると次のような感じでしょうか。

GM「君たちは見事盗賊を無力化して、捕縛に成功した。確かプレイヤーAは幼少期に両親を盗賊に殺されていたよね。では、捕縛した盗賊が、両親を殺した盗賊が入れていたタトゥーと同じものを彫っていることに気付くよ」

プレイヤーA「……! それを見た私は衝動的に盗賊を斬ろうとします! ので、誰か止めてもらっていいですか?」

プレイヤーB「わかりました。それなら“ちょっと待て、殺したら報酬が少なくなるだろう? 俺は金のためにこの依頼を引き受けたんだから、今殺すのはやめてくれ”と言ってプレイヤーAのキャラクターを止めます」

 これはプレイヤーAの考えたキャラクターの設定をGMがシナリオに盛り込み、それを受けたプレイヤーAが、その背景に基づいて行動を決定したシーンと仮定しています。キャラクターとしては盗賊を殺そうとしていますが、プレイヤー的には情報を得るためにも殺したくないという場合は、このようにぶっちゃけてしまい、別の人に止めてもらうという方法もアリです。

 静止役を担ったプレイヤーBも、セリフで演出することで、金を重視する傭兵的なキャラクターを使っていることを表現できます。

 このように会話で物語を構成していくのですが、参加するプレイヤーやGMの判断によって同じシーンでも演出や行動がまったく異なることもあります。参加者だけの独自の物語が創られていくことこそ、TRPG最大の魅力なのです。

 TRPGはデジタルゲームのようにシステムに縛られないため、“どんなことでもできる自由さ”が売りにされることもありますが、個人的には“ひとつのシナリオ(物語)を複数のプレイヤーが会話で紡ぎあげていく遊び”がポイントだと思っています。GMや他のプレイヤーとのコミュニケーションも重要ですので、すべての参加者が楽しめるように意識して遊びましょう。

TRPGを遊んでみたい場合に、何を用意すればいい?

 冒頭でも少し触れたように、現在のTRPGの遊び方はプレイヤーが実際に集まって遊ぶオフラインセッション(通称オフセ)と、インターネットを利用してオンライン上で遊ぶオンラインセッション(通称オンセ)に大別されます。遊ぶ環境に応じて必要なものも少し異なるので、これからTRPGを遊んでみようと思った方は、環境に合わせて準備をしましょう。

 まずTRPGを遊ぶうえで欠かせないのが、タイトルのルールブック。ルールブックは基本的に書籍として本屋やホビーシップで売られていますが、Amazonなどのネットショップでも購入可能です。また、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』など一部のタイトルは、基本的なルール部分を無料で公開している場合もあります。

 なお、TRPGは基本的にルールブックを手元に広げ、細かいルールを確認しながら遊ぶもの。本の隅から隅まですべてを暗記する必要はありません。とはいえ一度も目を通さずに参加するのは、他の参加者の負担になってしまうため、ざっと目を通しておくことをオススメします。

  • ▲『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などのTRPGでは、ミニチュアを使って位置関係を把握する遊びかたも。もちろん、一切ミニチュアを使わずに遊ぶことも可能です。

 オフラインセッションの場合に必要となるなのは、筆記用具といくつかのダイス。筆記用具はキャラクターシートに数値を書きこむだけでなく、状況をメモしてあとで見返すために使用します。キャラクターの成長に従って数値が変化していくため、消せるものを用意しましょう。

 なお、作品によってはキャラクターシート管理ツールのようなものが有志の手で作られており、タブレット端末などで代用できるものもあります。

 ダイスと聞くと6面体を想像するかもしれませんが、TRPGでは4面体、8面体、10面体、12面体、20面体などを使う作品もあるので、事前にルールブックで確認をしておきましょう。

 オンラインセッションでは、Discordなどの通話ツールや、オンセ専用に作られたツールを使うことが多いです。筆記用具やダイスはツール内で処理できるので必要ありませんが、ボイスチャットを使う場合はヘッドセットなどの通話機器が別途必要になります。

 オンラインセッションをどのように行うかは人によってさまざまで、背景や立ち絵を用意してリッチに遊ぶ人がいれば、テキストチャット主体という最低限の準備でロールプレイを楽しむ人もいます。

 そのため一概に「これが必要」と言いにくいのが難しいところ。オンラインセッション用ツールは多様化しているため、オンラインセッションに参加しようと考えている人は、主催者に使うツールや必要なものを確認するのがいいでしょう。

 特にGMの場合はツールの使い方や素材の準備など、オフラインセッションよりも準備が大変かもしれません。

TRPGを原作とするビデオゲームが増加中!

 余談になりますが、実は近年発売されているビデオゲームにも、TRPGを原作としているものが多いのは知っていますか? 有名なところでは、2020年に発売された『サイバーパンク2077』や、今年の5月に発売された『パスファインダー:キングメーカー』などが記憶に新しいですね。

 他にも『コール・オブ・クトゥルフ』(2019年発売)や、『ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟』(2020年発売)、『ワーウルフ:ジ・アポカリプス』(2021年発売)なども同名のTRPGを原作としています。2021年6月には海外で有名TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲーム『Dungeons & Dragons: Dark Alliance』が発売され、ここ数年でTRPG原作のビデオゲーム化の勢いは増していると感じています。

 TRPGのビデオゲーム化のいいところは、何と言ってもGMの口頭で伝えられ、自分の中でイメージしていた情景が、リアルな映像となって楽しめること。活気ある街並みや、湿った薄暗いダンジョン、不気味な森など、その世界の空気感を明確に感じ取ることができます。

 一方でビデオゲームから入った場合は、TRPG版をプレイすることでその世界をより深く楽しむことができるはず。ビデオゲームではシステムの制約上できることとできないことがありますが、TRPGではその制限は遥かに緩くなります。

 自分の分身としてのキャラクターを作り、GMが認める範囲でさまざまな立ち回りが可能なので、“その世界の一員として事件に取り組んでいる没入感”をビデオゲーム以上に感じられるでしょう。

▲『サイバーパンク2077』をプレイすると、舞台となるナイトシティの風景や人物の様子を詳細にイメージできるようになります。

 このように、共通の世界観をビデオゲームとTRPGとで多角的に楽しめるようになってきているのは、その作品のファンからすると非常にうれしいもの。『サイバーパンク2077』の発売を受けて、システムや世界観を刷新したTRPG『Cyberpunk RED』の国内発売が予定されているなど、今後もビデオゲームとTRPGは影響し合っていくかもしれません。

 TRPGには現代を舞台にしたものやファンタジー、SFなどいろいろな世界観の作品が存在します。テーマも超能力バトルやミステリー、ロボットものなど多種多様。今ではプレイ動画を作っているユーザーも多いので、この機会にぜひ気になったものを探してみてください。

 次回の記事では、ハマっているTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の魅力や特徴を紹介します。


企画記事

Dungeons & Dragons, D&D, their respective logos, the dragon ampersand, all other Wizards titles, and characters’ names and distinctive likenesses are property of Wizards of the Coast LLC in the USA and other countries. © 2017 Wizards of the Coast LLC.
CD PROJEKT®, Cyberpunk®, Cyberpunk 2077® are registered trademarks of CD PROJEKT S.A. © 2020 CD PROJEKT S.A. All rights reserved. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら