【レビュー】ホラーゲーム『House of Ashes』をプレイ。軍人たちが未知の遺跡に挑む探索型ホラー

電撃オンライン
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 バンダイナムコエンターテインメントより、PS4/PS5/Xbox One/Xbox SreriesX|S/PC(Steam)で2021年10月22日に発売予定のホラー・アドベンチャー『THE DARK PICTURES:House of Ashes(ハウス・オブ・アッシュ)』ベータ版のレビューをお届けします。

 本作は、Supermassive Gamesが開発している『The Dark Pictures Anthology(ザ・ダーク ピクチャーズ アンソロジー)』の3作目。シリーズ物ですが直接的な繋がりはありません。物語の語り手として存在する“キュレーター”が用意したエピソードを見ていくアンソロジー形式のドラマになっています。

 1作目の『Man of Medan(マン・オブ・メダン)』は、ダイビング旅行の最中に幽霊船へと迷い込んでしまった5人の若者たちの境遇を描いたパニックホラー。2作目の『Little Hope(リトル・ホープ)』は、バスの事故で濃霧に包まれた廃墟の街に取り残された教授と学生たちが、迫りくる怪物たちから逃げ惑う物語となっており、登場人物も作品のテイストも異なります。

 本作は武器を持ったプロたちが主役となり、これまた違う味付け。序盤から逃げ回るだけではなく、銃撃戦があるくらい雰囲気が違います。もちろんプロですらどうしようもない相手ということでもあり、ある意味もっとも恐怖を感じる作品かもしれません。

 このようにシリーズ自体の繋がりがなく、独立しているので1作だけ遊んでも問題なし。どの作品からはじめても素直に楽しめるので、自分が興味のあるタイトルから遊ぶのをオススメします。ゲームは、登場人物の行動や判断を選択肢やQTE(クイックタイムイベント)で判定し、物語が分岐していくシネマティックアドベンチャーと呼ばれるジャンル。複雑な操作はなく、良質なホラー映画へ介入するような気分でストーリーを楽しめます。

 このシリーズは基本的にソロプレイで遊ぶシネマティックゲームですが、マルチプレイモードにも対応。オンラインで最大2人。オフラインで最大5人の協力プレイが楽しめます。オンラインは“シェアストーリーモード”。オフラインは“ムービーナイトモード”を選ぶことで、フレンドや家族と一緒に同じ物語を体験できるのが特徴です。1人では怖い……という人は、友人や家族を呼んで一緒にプレイしてみるのもアリ。

 なお、今回のレビューを書くにあたっては、オフラインでのソロプレイモードを基準にしています。シリーズにおけるマルチプレイモードの仕組みや、ソロプレイとの詳細な違いに関しては、前作『リトル・ホープ』のレビューを参照してください。

専門家たちが根源的恐怖に立ち向かう新作ホラー

 『Until Dawn -惨劇の山荘-』や『The Inpatient -闇の病棟-』などのシネマティックホラーやVRホラーなどを作り続け、世に送り出しているSupermassive Games。ホラーゲームにこだわり続けるプロたちが現在手掛けているシリーズ――それが『ザ・ダーク ピクチャーズ アンソロジー』です。

 この記事で紹介するのは3作目ですが、共通して登場するのは語り部のキュレーターのみ。登場人物はもちろんシナリオ自体も発生する怪奇現象も、そして結末もまったく異なります。前作のレビューでは「フジテレビ系列の『世にも奇妙な物語』で、タモリがナレーターとして登場するのに近い感覚」という例えを使ったのですが、今作もまさにそんな感じ。ホラー映画あるあるな1作目、衝撃の展開が待つ2作目と、どちらもまったく違う作風で自由なアンソロジーとなっています。

 『マン オブ メダン』も『リトル・ホープ』も、ホラー好きなら遊んでほしい作品ではあったのですが、最新作の『ハウス・オブ・アッシュ』もこれまたおもしろそう。プレイできたのは冒頭の1時間程度ですが、過去2作よりも訓練された職業の人物が多く、キャラクターたちの恐怖耐性が強いため、怖さだけではなく未知の遺跡に挑むワクワク感も強め。これは過去2作とも違う新鮮さです。もちろん、怖いのには変わりないのですが……!

  • ▲ちなみにβ版だとオープニングで上映している姿が見られるだけで、キュレーターの会話を聞くことはできませんでした。早く今回の彼の煽りを聞きたい……!

 物語の舞台は、2003年のイラク。ザグロス山脈の地下にあると疑われている化学兵器施設の調査に向かったCIAのエリート部隊と、待ち伏せをしていたイラクのパトロール隊が今回の主役となります。不幸にも崩落に巻き込まれ、地下深くに存在していたシュメール神殿の遺跡に落下してしまったCIAとパトロール隊。もちろん、そこはただの遺跡ではなく……という冒頭から始まるのが今回の恐怖体験。

 公式が影響を受けた作品として『エイリアン』や『プレデター』などの映画。そして、ラヴクラフトの『狂気山脈』を挙げていることからも想像できるように、今回の雰囲気はかなりのコズミックホラー。シュメール神殿の遺跡で見つかる怪しげな石板や疫病の悪魔・パズスを象った彫像など、見つかるアイテムも怖さを増幅しています。


「モラル・コンパス」と呼ばれるシリーズ特有のシステムも健在。これは、選んだ選択肢によってキャラクターの性格やその後の反応が変化し、物語に影響を与えていく独自の要素です。ちょっとした選択の積み重ねが、最終的に大きな変化を生むのが魅力の1つでもあり、マルチプレイで遊べば心理テストとしても楽しめます。

ライトを頼りに暗闇の中を探索していく流れも、今回は地下遺跡ということでおっかなびっくり迷うというよりも未知の世界を切り開いていく感覚。落ちているアイテムの中には、これから起こる重大な出来事の「予感」が垣間見えるものもあり、周囲を見渡してしっかり探索する必要があります。

「予感」は、シリーズを通して受け継がれた要素で、生き延びるために欠かせないシステム。生死をわける重大なイベントの一部が見えて、同じ場面に遭遇した時のヒントになります。もっとも、それがいつ起きるのか。誰のパートで起きる物なのか。どうすれば正解なのかは教えてくれません。失敗してから「あっ、あの予感だった!」と気が付くことも過去作ではありました。いつ災難が降りかかってくるのかわかるようでわからない。このもどかしさが、緊張感に繋がっている要素でもあるのです。

敵と味方と……異なる立場で描かれる群像劇

 冒頭部分で登場した操作キャラクターは、ニック、ジェイソン、サリム、レイチェル、エリックの5名。マルチプレイでもこの5人をプレイヤーごとに振り分けて操作できます。職業軍人であるニックとジェイソンは、プロだけあって頼もしいコンビ。逃げ惑いながらも銃で立ち向かえる強さがあり、操作していてどこか安心感を覚えるパートでもあります。一番助かりそう。でも、ホラー映画だと軍人って結構死亡フラグでもあるんですよね……。

 ただ、そんな安定感を引っ掻き回す存在も。序盤で重傷を負っていたマーウィンという軍人を助けるのですが、本当に致命的なほどの大けが。痛みのあまり怪物が迫っているのに大声で叫んでしまうなど、ホラー映画などにおいて“致命的”なレベルのやっちゃいけない行為をしてくれます。とはいえ、私の場合はすぐに窒息死させてしまいましたが……。

 彼の口を塞ぎ、見つからないようにするQTEを連続で成功させたら逆に死んじゃったんですよ。まさか、QTEに成功してはいけない場面もあるなんて……。本当は、彼をちゃんと助けるべきなのかも? しかし、そのせいでより大きな失敗に巻き込まれるかもしれないし……やってしまったことに対する取り返しがつかないぶん、悩んでしまいますね。こうした、正解が見えない選択を突き付ける場面が多そうでゾクゾクします。

 ニックたちと敵対しているイラク側の軍人、サリム中尉も操作キャラクター。冒頭では動かせる場面がほぼありませんでしたが、自分で動かすパートだと息子の誕生日を祝うはずだったのに駆り出された不幸な父親で、気のいい人に見えました。むしろ、映画だったら主役側に見えます。異なる立場の人物たちがどう動くか。協力するのか、敵対するのか。先が気になる話ですね。イラク戦争末期ということで、地下では怪異、地上では人間が恐ろしい敵として存在しているシチュエーションからは、人の業を感じます。


 最後の2人。エリックとレイチェルは元夫婦。関係を修復したいエリックと、新しい人生を踏み出しているレイチェル。複雑な2人が遺跡の謎に迫っていくパートで、選択肢も興味深いものが用意されていました。さらに関係が冷え込むか。寄りを戻そうとするのか。レイチェル側になって気遣ってみましたが、自分の選択のせいか、冒頭だとエリックに対して好感を持ちにくい印象に。なんか寄りを戻してもすぐ離婚しそう。


 イラク側に襲われる場面もあり、立場に寄って異なる視点が冒頭からわかりやすいパートでもあります。遺跡を先に発掘していた先駆者のテープレコーダーに収録された悲劇の音声といった、いかにもな演出もあり、探索していてワクワクできました。そこに待ち受けるラストの場面。ベータ版のラストでは、ロープで繋がれたエリックとレイチェルが二人とも落下しそうになるシチュエーションで究極の決断を迫られます。ものすごく気になるところで終了するんですよ。

 自分のなかのエリックのイメージは、速攻で見捨てる保身ヤロウだったのですぐにロープを切断。レイチェルだけを落としましたが、このあとどうなるんでしょう。やっぱり、レイチェルはもう助からないのかな……。と気になって仕方がありません。これまでのシリーズはなんだかんだと全員を生き残らせるのも難しくはなかったのですが、冒頭だけをプレイしても危険がいっぱい。これまで以上に、ちょっとした選択で命を落としてしまいそうです。

 シリーズ特有の探索要素も、今回はカメラをグリグリと動かして遺跡全体を見まわすのが楽しく、ちょっとした探索アドベンチャー気分。怖さだけではなく、謎を解き明かしたい欲求にも応えてくれそうです。もちろん、プレイヤーの決断で変わっていく物語も気になるところ。ホラーが得意な人はぜひ1人で、ホラーが苦手な方は友だちや家族とマルチプレイで遊んでみてください!

■商品概要

タイトル名:THE DARK PICTURES: HOUSE OF ASHES
発売時期:2021年10月22日
ジャンル:ホラー・アドベンチャー
対応機種:
PlayStaiton(R)5
PlayStaiton(R)4
Xbox Series X|S
Xbox One
STEAM(R)

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