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2008年9月11日(木)

【CEDEC 2008】『テイルズ オブ ヴェスペリア』成功の秘訣とDLC配信のワケ

文:電撃オンライン

 昨日9月10日、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」において、プロデュースセッション「Xbox 360『テイルズ オブ ヴェスペリア』から見たハイデフRPG開発」の講演が行われた。

 本セッションには、バンダイナムコゲームスの『テイルズ オブ ヴェスペリア(以下、TOV)』プロデューサー・郷田努氏、制作プロデューサー・樋口義人氏、ローカライズプロデューサー・三好秀一郎氏の3名が登壇。『TOV』が、いかにして作られたか、いかにしてローカライズされたかを語った。

■今までのよいところ、変えるべきところを明確にしたのが成功の秘訣

 そもそも『TOV』の始まりは、PS2『テイルズ オブ ジ アビス(以下、TOA)』の開発がほとんど終わったころにさかのぼる。『TOA』における作業をほぼ終えたスタッフたちが集まって、次の『テイルズ オブ』として打ち合わせが行われていたのが、コードネーム『テイルズ オブ ヴェスペリア』だという。

『テイルズ オブ ヴェスペリア』 『テイルズ オブ ヴェスペリア』
採算の面から、『TOV』をPS2で作るべきと会社に掛け合ったことを披露した樋口氏は、「普通は逆ですよね」と笑う。本気でハイデフ対応ハードでの制作を決めた後は、新たな『テイルズ オブ』のエントリーモデルとしてのクオリティを実現するため、初期よりも多くの開発期間と開発予算をもらって制作に取り組んだそうだ。

 なお、郷田氏がプロデューサーとして『TOV』に参加したのは開発途中から。『テイルズ オブ』は、シリーズ累計1,000万本のゲームということで、ゲームが好きな人なら誰でも知っていると思っていました。けれどそれって違うよね、ということに気づいたんです」と話す郷田氏。今まで通りではいけないと感じた郷田氏と樋口氏は、他のRPGとは違うアニメ路線を前面に押し出した内容、スペシャルCDなどの予約特典といった「いい部分」は残しつつも、他の部分については最良の手段を1つ1つ考えながら、新しい取り組みを行っていったという。

 「ジャンプフェスタ2007」に始まるPVの公開、Xbox LIVEでの体験版配信、各メディアでのレビュー掲載、プロデューサー両名が積極的に露出しての作品アピールなど、新しい取り組みは多岐にわたる。新しい取り組みの中でも、特に尽力したのが「ワールドワイドでのほぼ同時発売」だと2人は強調していた。

 ここで講演のバトンは三好氏に。ローカライズの日本スタッフは2~3名、現地スタッフは最大2名。その厳しい状況の中、北米スタッフであるピーター氏の八面六臂の活躍により、「日本語版で音声が収録された部分でのボイス完全収録」、「日本版と意味をたがえないテキスト」を達成できたそうだ。

『テイルズ オブ ヴェスペリア』 『テイルズ オブ ヴェスペリア』
三好氏は、最終稿だと送られてきた脚本をもとに音声収録をした後に、脚本の変更が行われたのが一番の苦労だったと話す。北米では、音声収録のコストが日本よりもだいぶ高いそうで、当初2回だった収録が倍の4回になったのは一大事だったとのことだ。郷田氏がサムライだと語るピーター氏。『テイルズ オブ』を愛し、日本を愛し、それを北米の人に伝えようという意思を持っている彼の力があってこそ、北米でのほぼ同時発売は達成されたという。

 一方、『TOV』のゲーム開発自体は、『TOA』を開発したチームがコアスタッフとなり、ほぼ同じ人数で制作されたそうだ。開発費や労力が飛躍的に増している高性能機でのゲーム開発において、PS2のゲームである『TOA』とほぼ同人数で開発できた理由を、「最大の効率化は開発ツールによる恩恵ではなく、『テイルズ オブ』を愛して、気心の知れた仲間同士で作ったこと」にあると郷田氏、樋口氏は語っている。

 こうして開発された『TOV』は、Xbox 360において初週売り上げ1位、累計売り上げは『ブルードラゴン』に続く2位を記録したとのことだ。

■気になるダウンロードコンテンツ配信のわけは――?

 講演の最後に行われた質疑応答では、樋口氏が「聞かれると思っていました(笑)」というダウンロードコンテンツ(DLC)の話題に。レベルやガルド(お金)を販売する是非について、ゲームユーザーの間では議論を呼んでいるが、この反応は「想定していました」とのこと。

 DLCを利用しなければ達成できないゲーム要素はない、というのがコンセプトだと語る郷田氏。樋口氏によれば、「DLCを買うということは、(ユーザーが)ゲームバランスを悪く感じたということになるので、本来であれば利用せずに遊んでもらうのが一番」という。

 ただし昨今のゲームユーザー、特にXbox 360ユーザーは年齢層が高めで、ゲームに割ける時間が少ない。「開発者にとってはゲームを最後まで遊んでもらうのが一番うれしい」と話す樋口氏は、そういったユーザーへの一助としてレベルやガルドのDLC配信を決めたそうだ。

『テイルズ オブ ヴェスペリア』
なお、「これが新しいビジネスの形となるかもしれないし、今後こういったDLCが消えても全然かまわないと思っています」と樋口氏は話している。しかし、DLCの販売数については、「決して無視できない数字」となっていることを明かした。

■「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」概要
【開催日時】2008年9月9日~11日
【会場】東京・昭和女子大学

データ

▼『テイルズ オブ ヴェスペリア』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:RPG
■発売日:発売中(2008年8月7日)
■価格:7,800円(税込)
 
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