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2009年3月24日(火)

プロツアー京都レポート第3弾! 御伽の街で栄光の座に輝いたのは……?

文:電撃オンライン

 2月27日~3月1日にかけて開催された、TCG『マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)』の世界大会“プロツアー京都”。この記事では、3月1日に行われた決勝ラウンドの中から、準決勝と決勝の模様をお届けしていく。

 プロツアー京都は、約2年ぶりでの日本開催となる『MTG』の世界大会。その概要などはこちらの記事を参照のこと。3日間にわたって開催されたプロツアー京都の、最後の戦いの様子をご覧あれ!



■ ルイス・スコット・バーガス選手 VS ブライアン・ロビンソン選手 ■

 準決勝。まずモニターには、先ほど棚橋雅康選手を破ったルイス・スコット・バーガス選手、通称“LSV”と、セドリック・フィリップス選手を破って準決勝へとコマを進めてきたブライアン・ロビンソン選手の姿が映し出される。

 ブライアン選手のデッキは4色のビートダウンデッキ。《包囲の搭、ドラン》や《ロウクスの戦修道士》、《数多のラフィーク》といった低コストかつ高パワーなクリーチャーで攻めたて、そこに要求されるタイトな色マナを《極楽鳥》と《貴族の教主》で補うというわかりやすい構成だが、それに加えて2マナ域にも《ガトック・ティーグ》に《潮の虚ろの漕ぎ手》と強力ながら求める色マナが非常に濃いカードが揃っている。その爆発力はすさまじいものがあるのだろうが、同時に不安定にも見えるデッキと言えよう。

 1戦目。先手のブライアン選手は《貴族の教主》から始動。続いて2ターン目には《包囲の搭、ドラン》。ルイス選手が《苦花》を置いてターンを返すと、続く3ターン目には《数多のラフィーク》をキャストして《包囲の搭、ドラン》でアタック。先攻3ターン目の一撃で14点ものライフを奪ってしまった。これではゲームになっていないと、ルイス選手も《潮の虚ろの漕ぎ手》で《極楽鳥》を取り除くも、この《潮の虚ろの漕ぎ手》はすぐにブロッカーとして散り、そのまま《包囲の搭、ドラン》の効果でパワーを得た《極楽鳥》、《貴族の教主》がルイス選手のライフを削りきった。

 2戦目。先手のルイス選手は2ターン目に《苦花》と上々のすべり出し。対してブライアン選手は《極楽鳥》からの《ガトック・ティーグ》でルイス選手の《黄金のたてがみのアジャニ》や《幽体の行列》を封じ込める。さらに《散弾の射手》で《苦花》のトークンににらみを利かせようとするが、ルイス選手が《栄光の頌歌》を追加したことで、《散弾の射手》ではトークンを破壊できなくなり《苦花》への対抗策を失ってしまう。加えてブライアン選手は思うように土地が伸びず、やっとプレイした《ロウクスの戦修道士》もあっさりと《恐怖》で除去されてしまう。ブライアン選手は《萎れ葉のしもべ》などで攻勢に転じようとするも、毎ターンわき出る2/2飛行の《苦花》トークンが止まらない。この戦いはルイス選手が取り返し、1-1となる。

 3戦目。先手のブライアン選手は再び《極楽鳥》から《包囲の搭、ドラン》という最高のスタートを見せる。しかし、これをルイス選手は《流刑への道》で除去。ブライアン選手は続けて《萎れ葉のしもべ》を展開するが、ルイス選手はこれに対して《台所の嫌がらせ屋》で時間を稼ぐ。さらにルイス選手は《苦花》でブロッカーの安定供給に成功すると《雲山羊のレインジャー》を追加して攻勢に出る構え。ここでブライアン選手は2体目の《萎れ葉のしもべ》を呼び出し、6/6となった1体目の《萎れ葉のしもべ》でアタック。これをルイス選手は《雲山羊のレインジャー》と、それによって生み出されたキスキン・トークンの1体でブロックし、さらに《雲山羊のレインジャー》をパンプアップさせ相打ちさせる。続くブライアン選手の攻め手は《ロウクスの戦修道士》。《萎れ葉のしもべ》で5/6と巨大化しているが、これをルイス選手は盤面に追加した《メドウグレインの騎士》と《台所の嫌がらせ屋》、《苦花》のトークンでブロックし、ここでも相打ちに持ち込む。ここで《メドウグレインの騎士》や《台所の嫌がらせ屋》の能力でライフに余裕ができたルイス選手は《雲山羊のレインジャー》が残していったキスキン・トークンと《苦花》のトークンで攻撃。そのうち2体は《萎れ葉のしもべ》と《極楽鳥》によって落とされてしまうが、1体の攻撃が通ってブライアン選手のライフを削るとともに2枚あった《風立ての高地》の秘匿を解除し、盤面に《雲山羊のレインジャー》《台所の嫌がらせ屋》を追加する。これで大きく有利にたったルイス選手は次のターンから飛行を得た《雲山羊のレインジャー》で攻撃しつづけ、そのまま第3ゲームをものにする。

 4戦目。もう後がないブライアン選手は、またも《極楽鳥》《貴族の教主》からの《包囲の搭、ドラン》という理想的な立ち上がりを見せる。さらに《ロウクスの戦修道士》を追加し、ルイス選手のプレイした《幽体の行列》には《散弾の射手》で対応しようとする。しかし、ルイス選手はここで《栄光の頌歌》。2/2となったスピリット・トークンで攻撃しはじめる。後手にまわりたくないブライアン選手は《萎れ葉のしもべ》を召喚し、ダメージレースで優位に立とうとするが、続くターン、スピリット・トークン3体の攻撃で条件を満たした《風立ての高地》から《神の怒り》が発動し、場を一掃されてしまう。結局、ルイス選手に多大なアドバンテージをもたらす結果となってしまった。トップデッキによって何とかペースを取り戻したいブライアン選手だったが、引くのは土地ばかり。ルイス選手が流れるように《台所の嫌がらせ屋》、《雲山羊のレインジャー》と脅威を展開すると、ここでブライアン選手がルイス選手に向かって手を差し出し投了。ルイス・スコット・バーガス選手が決勝戦へと名乗りを上げた。

▲驚異的なまわりを見せたブライアン・ロビンソン選手の4色ビートダウンデッキ「Dark Bant」。わずか数分でブライアン選手が一本目を先取した時は、番狂わせの予感も漂ったが、続くゲームは完全にルイス選手のものだった。LSV、圧巻の決勝進出。


■ ガブリエル・ナシフ選手 VS 山本明聖選手 ■

 モニターが切り替わると、そこでは日本勢最後の砦、山本明聖選手と今回優勝候補の最右翼とされるガブリエル・ナシフ選手の第2試合が開始されるところだった。対クリーチャーデッキ用のチューンが施されている山本選手の赤白デッキでは、ナシフ選手の多色コントロールデッキに対しては不利かと思われていたが、ふたを開けてみれば1戦目を取ったのは山本選手。解説によると、山本選手は《復讐のアジャニ》でマナを縛り続け、最終的にナシフ選手は《包囲攻撃の司令官》への対応策を見つけられず、山本選手が下馬評を覆す勝利をものにしたようだ。

 2戦目、先に仕掛けたのは山本選手だった。後手1ターン目に《運命の大立者》。2ターン目には《精神石》でマナを加速させる。ナシフ選手は続く3ターン目まで、何もアクションを起こさずターンを終える。山本選手の第3ターン、ナシフ選手が《羽毛覆い》を構えている可能性は十分に考えられたが、構わず攻撃。これが通り、山本選手は続けて《ブレンタンの炉の世話人》をキャスト。この時、ナシフ選手の手札には《火山の流弾》があったが、ここは《ブレンタンの炉の世話人》を通し、返ってきた自分のターンで《崇敬の壁》をプレイ。長期戦に持ち込む考えを見せる。これに対して山本選手は1ゲーム目で勝利の立役者となった《復讐のアジャニ》を展開。忠誠カウンターを増やしつつナシフ選手の土地を縛る。前のターンにプレイした《崇敬の壁》で、とりあえず一息つける状況になったナシフ選手は《熟考漂い》でドローを加速させると、山本選手はこの厄介な壁を突破するべく《イーオスのレインジャー》をプレイ。《運命の大立者》と《炎族の先触れ》を手札に加える。さらにこの《炎族の先触れ》をプレイして《目覚ましヒバリ》をライブラリーのトップに仕込み、盤面を制圧する準備を着々と整える。この間、ナシフ選手は淡々と《熟考漂い》と《エスパーの魔除け》でドローを加速させ、手札を溜め込んでいく。山本選手は《炎族の先触れ》がもたらした《目覚ましヒバリ》をプレイするが、ここでもカウンターはなし。山本選手は勝負を決するべく、攻撃を加えていく。

 しかし、ここでナシフ選手も動きだす。まず山本選手のターン終了時に《謎めいた命令》で《復讐のアジャニ》をバウンスすると、自分のターンには《若き群れのドラゴン》と2枚目の《崇敬の壁》でライフの回復量を増幅させる。これに対して山本選手も《風立ての高地》に仕込んでいた《流刑への道》で《崇敬の壁》の1体を除去し、ブロックに回った《若き群れのドラゴン》のトークンを《復讐のアジャニ》で破壊するなど、盤面が一気に動く。そしてナシフ選手にターンが返ると、ここで《火山の流弾》を2連発。1枚目こそ《ブレンタンの炉の世話人》で軽減するも、2枚目はどうしようもできず場が一掃される。ナシフ選手は《崇敬の壁》を、山本選手は4/4の《運命の大立者》と《目覚ましヒバリ》をコントロールしている状況だ。続くターンでナシフ選手は《熟考漂い》からカードを引き、《天界の粛清》で《運命の大立者》を除去。《崇敬の壁》と《目覚ましヒバリ》のにらみあいに持ち込む。さらに次のターンでは《残酷な根本原理》をプレイ。ナシフ選手は《若き群れのドラゴン》を回収し、生け贄に捧げられた山本選手の《目覚ましヒバリ》が、墓地の《包囲攻撃の司令官》と《炎族の先触れ》を蘇らせ、再び《目覚ましヒバリ》がライブラリーのトップへと仕込まれる。だが、山本選手がそれをドローしたところで、ナシフ選手の《エスパーの魔除け》により2枚のディスカードを強要し《目覚ましヒバリ》はあえなく墓地へ。ここにきて、大幅に有利な状況に立ったナシフ選手は《若き群れのドラゴン》を召喚し、勝負を決めにかかる。山本選手も《幽体の行列》で対抗、さらに《包囲攻撃の司令官》でゴブリントークンを生け贄に捧げ、《若き群れのドラゴン》を撃墜しようとするも、これには対応して《謎めいた命令》が唱えられ、ドラゴンはナシフ選手の手札へ舞い戻り、そして再び召喚される。これによって4/4飛行トークンがさらに1体追加され、山本選手に打つ手なし。2本目をナシフ選手が取り返す。

 3戦目。先手の山本選手はマリガンをして、初手6枚からスタート。手札が重く、3ターン目にようやく《運命の大立者》をプレイという、鈍い立ち上がりとなってしまう。続くターンで《運命の大立者》の能力を連続して起動、4/4まで育て上げるも、ここでナシフ選手から《恐怖》。さらに次のターン、攻め手を補充しようとプレイした《イーオスのレインジャー》は《砕けた野望》によって無力化し、まったくナシフ選手にプレッシャーをかけられない。土地の引きも芳しくなく、7ターン目にようやく《目覚ましヒバリ》を召喚。これが通るものの、返すターンで《残酷な根本原理》。《目覚ましヒバリ》が生け贄に捧げられ、2枚の《運命の大立者》が場に戻ってくる(そのうちの1枚は先ほどの《砕けた野望》の効果で墓地に落ちていた)。攻め手がない山本選手は、この《運命の大立者》たちをそれぞれ2/2、4/4へと増強させ攻撃するものの、続くナシフ選手の《神の怒り》で除去されてしまう。何とか《幽体の行列》を引き込んだ山本選手だが、ナシフ選手は悠々と《エスパーの魔除け》でドローを加速する。山本選手は《復讐のアジャニ》を展開しようとするも、これには《砕けた野望》で対処される。足の止まった山本選手に対してナシフ選手は《若き群れのドラゴン》でゲームを決めにかかる。山本選手はこれに《流刑への道》で対応し、さらに《イーオスのレインジャー》で巻き返そうとするも、これに対してもナシフ選手は《砕けた野望》で成就させない。それでも山本選手は《風立ての高地》《包囲攻撃の司令官》と連続で引き込み、逆転の道を模索する。しかし《包囲攻撃の司令官》には《天界の粛清》、《風立ての高地》には《真髄の針》と、完璧な回答を見せたナシフ選手がそのまま3本目を取り、決勝進出へリーチをかける。

 4戦目。山本選手は重いカードばかりの初手をマリガン。《炎族の先触れ》や《精神石》といった軽量カードを含む手札でスタートする。1ターン目に展開した《炎族の先触れ》でサーチを行わず、そのまま続けて《精神石》を展開。マナを伸ばし《砕けた野望》をケアした状態で《イーオスのレインジャー》をキャスト。しかし、ここにナシフ選手の《霊魂放逐》が突き刺さる。これで流れを断ち切られてしまったのか、ドローが不振な山本選手を尻目に、ナシフ選手は《蔓延》で場を流したあと、早々に《若き群れのドラゴン》でゲームを決めにかかる。山本選手も《遍歴の騎士、エルズペス》を展開するが、ナシフ選手は構わず山本選手を攻めたてる。山本選手は再び《イーオスのレインジャー》を召喚し《ブレンタンの炉の世話人》を複数サーチすることで時間を稼ごうとするが、当然のようにこれには《謎めいた命令》が飛んでくる。4/4飛行のドラゴン2体によって16点のライフを削られた山本選手は、勝利手段がなくなったことを確認すると、手札に残していた《苦悩火》を自分に打ち込むことで投了の意を表した。

 これで日本勢最後の1人が敗退し、決勝はルイス・スコット・バーガス選手対ガブリエル・ナシフ選手というビッグネーム同士の対戦が実現することとなった。

▲プロツアー初出場にして、ベスト4まで勝ち上がるという快挙を成し遂げた山本明聖選手。その思い切りのいいプレイで、古豪、ナシフ選手を相手に一歩も引かず渡り合った。しかしベスト4まで残る原動力となったクリーチャーデッキに照準を合わせた構成が、準決勝の場では相性の不利を呼び無念の敗北。だが、ここで得た経験は非常に大きなものとなったはず。同じくベスト8に残った棚橋雅康選手とともに、今後の国際舞台での活躍が期待される。

次ページでは決勝の模様と勝利者インタビューを掲載!!

(TEXT by ねこひげ合同会社/ゆば)

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■グランプリ神戸 概要
【開催日程】2009年4月18日~19日
【会場】神戸国際展示場

■プロツアー京都 概要
【開催日程】2009年2月27日~3月1日(※すでに終了)
【会場】京都市伏見区“パルスプラザ”


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