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2009年3月24日(火)

プロツアー京都レポート第3弾! 御伽の街で栄光の座に輝いたのは……?

文:電撃オンライン

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■ ガブリエル・ナシフ選手 VS ルイス・スコット・バーガス選手 ■

 そして、ついに決勝戦が始まった。決勝の卓につくのはルイス・スコット・バーガス選手とガブリエル・ナシフ選手。どちらも説明不要の強豪であり、名勝負の予感に会場のボルテージも高まっていく。

 決勝の1戦目は静かな立ち上がりとなった。3ターン目にルイス選手が《台所の嫌がらせ屋》をプレイ。続くターンには《変わり谷》とセットで攻撃を開始し、ナシフ選手のライフを削る。ナシフ選手はルイス選手の次なるアクションを警戒し、あえてダメージを受け、ターン終了時に《火山の流弾》。《変わり谷》を除去し、《台所の嫌がらせ屋》も2/1にサイズダウンする。ナシフ選手は自分のターンには土地を置くだけでターンを返し、ルイス選手が《台所の嫌がらせ屋》を追加しようとすると、これを《砕けた野望》でカウンターする。そして自分の土地が6枚になったところで《若き群れのドラゴン》を召喚。対してルイス選手は、まず《潮の虚ろの漕ぎ手》でナシフ選手の手札に迫る。公開された手札は《羽毛覆い》《謎めいた命令》に土地という内容。これを見たルイス選手はさらに《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャストして、ナシフ選手の手札を奪い取り、次のターンには《黄金のたてがみのアジャニ》をプレイしようとするが、ナシフ選手もさるもの、きっちりと《砕けた野望》をトップデッキしており、おまけにここで激突によって公開されたナシフ選手のライブラリートップが《火山の流弾》。間もなくルイス選手の布陣が壊滅し、ナシフ選手が1本目を先取する。

 2戦目。このゲームも、やはり仕掛けたのはルイス選手。先攻2ターン目に《潮の虚ろの漕ぎ手》をプレイする。ナシフ選手の手札は《真髄の針》《若き群れのドラゴン》《噛み付く突風、ウィドウェン》《熟考漂い》《残酷な根本原理》《砕けた野望》《反射池》で、ここから《熟考漂い》を取り除く。そして《砕けた野望》のための1マナを残しながら3ターン目《苦花》、4ターン目《栄光の頌歌》と磐石の体制を築きあげていく。一方のナシフ選手は《熟考漂い》での追加ドローを奪われたため土地を伸ばせない。ルイス選手が5ターン目に追加しようとした《台所の嫌がらせ屋》こそ《霊魂放逐》でカウンターできたものの、毎ターン登場する2/2飛行トークンによってあっという間にライフに赤信号が灯る。やむなくナシフ選手は《噛み付く突風、ウィドウェン》で《潮の虚ろの漕ぎ手》と相打ちを取り《熟考漂い》を取り返す。しかしルイス選手は続けて《雲山羊のレインジャー》をプレイ、ナシフ選手に対応を迫りドローする機会を与えない。ナシフ選手は《蔓延》をプレイして大量のフェアリー・トークンとキスキン・トークンの除去に成功するが、ルイス選手はそれを意に介せず《黄金のたてがみのアジャニ》で《雲山羊のレインジャー》を強化してアタック。ナシフ選手のライフを1にまで削る。ナシフ選手は続けて《神の怒り》で《雲山羊のレインジャー》を除去するが、続々と湧き出てくる《苦花》のトークンの前では時間稼ぎにしかならなかった。この戦いはルイス選手が取り返し、1-1のイーブンとなる。

 3戦目は、ナシフ選手がダブルマリガン、ルイス選手がマリガン1回と、お互いに消耗した状態から始まった。先手のナシフ選手は土地が2枚でストップしてしまう。ルイス選手も土地の引きが十分ではないものの、とりあえずはデッキが回る3マナに到達し《台所の嫌がらせ屋》を2ターン連続で召喚する。これに対し、なんとか3枚目の土地を引き当てたナシフ選手はアタックを受けながらも《火山の流弾》と《蔓延》による合わせ技で《台所の嫌がらせ屋》を除去。ここでナシフ選手がフルタップの隙にルイス選手は《幽体の行列》をキャスト。攻め手を緩めない。ナシフ選手も続いてルイス選手がプレイした《栄光の頌歌》を《否認》すると、自分のターンで待望の5マナに到達。《熟考漂い》をプレイして、デッキを回転させ始める。しかし、返す刀で4枚目の土地を引き込んだルイス選手はここで《黄金のたてがみのアジャニ》。《幽体の行列》のトークンを強化して攻撃を仕掛ける。このまま押し切られるかと思ったところでナシフ選手のドローは《真髄の針》。即座にプレイして《アジャニ》を無効化して堪える。だが、ここでルイス選手が《頭脳いじり》をプレイ。ナシフ選手の手札を土地に変え、心置きなく攻めを継続する。ナシフ選手は次のターン《若き群れのドラゴン》、さらに《砕けた野望》とドローに恵まれるものの、ルイス選手は《雲山羊のレインジャー》《栄光の頌歌》とそれを上回る展開を見せつけ、このゲームを自分のものとする。

 4戦目。先攻のナシフ選手はマリガンなし、ルイス選手はマリガン1回で始まる。またも土地が2枚でストップするナシフ選手だったが、ルイス選手のファーストアクション《台所の嫌がらせ屋》を《砕けた野望》で討ち取ると、激突でめくれたカードをライブラリの下に送り込み、続くターンで3枚目の土地にたどりつく。ルイス選手も4枚目の土地を展開し《黄金のたてがみのアジャニ》をプレイ。しかし場には強化すべきクリーチャーがいないため、1つ目の能力でライフを回復させるにとどまる。続くターン、4枚目の土地を引き込んだナシフ選手の手札は《謎めいた命令》《若き群れのドラゴン》《残酷な根本原理》が2枚ずつという非常にパワフルなもの。ルイス選手にターンを返し、ルイス選手がライフを回復するだけでターンを終えると、そのタイミングで《黄金のたてがみのアジャニ》をバウンスし、ドローを進める。次のターン、手札があふれたナシフ選手は《残酷な根本原理》をディスカードしてターンを渡し、ルイス選手が改めてプレイした《黄金のたてがみのアジャニ》を《謎めいた命令》でカウンターすると、さらにドローを進める。ルイス選手は続くターン《苦花》をプレイ、これが通る。続けて《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャストするが、ここに3枚目の《謎めいた命令》。《苦花》もルイス選手の手札へと戻される。しかし、ルイス選手は次のターン再び《苦花》をプレイし、通す。これに対してナシフ選手は《エスパーの魔除け》でドロー。とりあえずは《苦花》を放置する。ルイス選手は手札の膨れ上がったナシフ選手に対して《潮の虚ろの漕ぎ手》をプレイ。《若き群れのドラゴン》《若き群れのドラゴン》《残酷な根本原理》《否認》《羽毛覆い》《反射池》という手札から《残酷な根本原理》を抜き取るが、これはナシフ選手が引いてきた《蔓延》によってすぐにナシフ選手の元へと戻ることに。ナシフ選手は《蔓延》で一掃したものの、再び湧いてくる《苦花》のトークンに対処するためルイス選手のターン終了時に《羽毛覆い》をキャスト。さらに土地を置いたナシフ選手は《否認》を構えたまま《若き群れのドラゴン》をプレイ。ルイス選手も《雲山羊のレインジャー》でドラゴンへ睨みをきかせ、さらに《黄金のたてがみのアジャニ》。当然《否認》が飛んでくるものかと思われたが、ナシフ選手はこれを通し、ルイス選手の軍団が膨れ上がる。ナシフ選手は《若き群れのドラゴン》と、おとものドラゴン・トークンで攻撃。さらに《若き群れのドラゴン》を呼び出し、合計4体の4/4飛行を揃えてみせた。対してルイス選手はまず《恐怖》でドラゴン・トークンを除去。さらに《黄金のたてがみのアジャニ》で全体強化を行うが、ナシフ選手の手札に《残酷な根本原理》があることを知っているため、うかつに攻撃してしまうと《若き群れのドラゴン》がブロックにまわり、その後の《残酷な根本原理》でドラゴンを回収という流れになっているため動けない。ターンが返ってきたナシフ選手は3体のドラゴンで攻撃。ドラゴン・トークンは《雲山羊のレインジャー》に討ち取られるが、《黄金のたてがみのアジャニ》を破壊することに成功する。続けてナシフ選手は《否認》用のマナを残したまま《残酷な根本原理》をプレイ。《苦花》のトークンが生け贄に捧げられたため場に大きな影響はないが、ナシフ選手の手札は再び大きくふくれ上がる。自分のターンを迎えたルイス選手は、自分の手札から《遍歴の騎士、エルズペス》をプレイ。これをナシフ選手が《否認》すると、ルイス選手はクリーチャー3体での攻撃を宣言し、先ほどセットしていた《風立ての高地》から《頭脳いじり》をプレイ。ナシフ選手の手札をすべて土地に変える。これで優勢となったかと思われたルイス選手だが、ナシフ選手は構わずドラゴンでアタックを敢行。《苦花》のトークンでしのぎ、ルイス選手も殴り返す。ルイス選手はさらに《台所の嫌がらせ屋》でライフを補填、ナシフ選手は《熟考漂い》で手札を補充し、ルイス選手が再びプレイした《頭脳いじり》を《砕けた野望》すると《エスパーの魔除け》でドローを加速させる。ルイス選手は続けて《栄光の頌歌》で攻撃力の底上げを狙うが、これも《砕けた野望》で妨害される。そしてナシフ選手は《火山の流弾》でトークンを一掃し、ドラゴンでアタック。続くターンにも《火山の流弾》をプレイしドラゴンで攻撃すると、ルイス選手のライフは、自分のターンの《苦花》でちょうど0になってしまったのであった。

 ルイス選手の《頭脳いじり》が決まった時には、このままルイス選手が優勝を決めるかと思われたが、ナシフ選手は完璧なドローと緻密なダメージ計算でルイス選手のライフを削りきり、星を2-2のタイとした。

 そして迎えた最終戦。先攻のルイス選手がダブルマリガンしたのに対して、ナシフ選手は余裕のキープ。4戦目で得た勢いをそのまま反映したかのような出だしとなった。ルイス選手の先攻3ターン目《台所の嫌がらせ屋》をナシフ選手は《砕けた野望》すると、次のターンで攻撃してきた《変わり谷》に対しては《火山の流弾》で対処。5ターン目、ルイス選手が再び《台所の嫌がらせ屋》をプレイするとこれには《謎めいた命令》でカウンター。そして、この時のナシフ選手の手札は《若き群れのドラゴン》《残酷な根本原理》《否認》《霊魂放逐》《火山の流弾》と非常に充実したもの。続くルイス選手の《雲山羊のレインジャー》を悠々と《霊魂放逐》すると、次のターンには7マナまで土地が伸び、ここで《残酷な根本原理》。ルイス選手の手札をすべて捨てさせる。ルイス選手は《雲山羊のレインジャー》をトップデッキするが、ナシフ選手は《否認》用のマナを残したまま《若き群れのドラゴン》を召喚。ルイス選手がプレイした《栄光の頌歌》を通すと、攻撃してきた《雲山羊のレインジャー》を《若き群れのドラゴン》でブロックし、返すターンで再び《残酷な根本原理》! そして、ルイス選手の最後の望みであるドローを《エスパーの魔除け》が断ち切ると、この瞬間プロツアー京都の王者が決定した。

▲プロツアー京都を締めくくるにふさわしい名勝負となったガブリエル・ナシフ選手対ルイス・スコット・バーガス選手の決勝戦。ナシフ選手はこれで、念願であったプレミアイベントの個人優勝を決め、『MTG』の歴史にまた一つ、自分の名を刻むこととなった。

 優勝のセレモニーが終わった後、ガブリエル・ナシフ選手へのインタビューを行った。最後にその模様をお伝えしよう。

■ ガブリエル・ナシフ選手インタビュー ■

――プロツアー京都、優勝おめでとうございます。まず、優勝を決めた現在の気分はいかがですか。

ナシフ選手:本当に嬉しく思っています。『MTG』のキャリアは長いので、何度もカメラの前で戦うということはありました。しかし、最後の最後、決勝で勝てたことはありませんでした。前回、日本で行われた大会でも準優勝でした。なので、今回優勝できたというのは、本当に信じられないくらい嬉しいことです。

――ありがとうございます。では続いて、ナシフ選手は今回5色のコントロールデッキを選択していたわけですが、このデッキを選んだのにはどういった理由があったのでしょうか?

ナシフ選手:しばらく前まで『MTG』はフェアリーの一強状態でした。しかし、ここに『コンフラックス』が加わったことにより、今度は白絡みデッキが台頭してくるようになりました。今回、私が5色のコントロールを選んだのは、この白絡みのデッキに相性がよく、かつ他の想定したデッキタイプにも有利に戦えるということが一番の理由です。また、もう1つの理由としては、私はもともとコントロールデッキが好きで、特に昔から青をベースにしたコントロールデッキを使い込んできたので、そういった意味でも自然な選択だったと思います。ちなみに、決勝で当たったデッキ(白黒トークン)も白いデッキですが、これにはそこまで有利はつきません。しかし、勝てて良かったです。

――なるほど。では、最後に2009年の初のプロツアーで見事に戴冠ということになったわけですが、今シーズンにかける意気込みや、新たな目標などがあればお聞かせいただけますか?

ナシフ選手:私の一番の目的は、より強いプレイヤーになるということです。もちろん、勝ったという事実はありますが、私はまだ自分の実力に満足していません。たとえば『MTG』をプレイしていると、常に選択を迫られるわけですが、この選択をより正確に、より速く行えるようになりたいですし、さらに、勝てるチャンスというものをもっと確実にものにできるようにもなりたいです。そういった意味では、この早い時期にまず1つ優勝するということができたので、今年は海外遠征を増やし、活動の幅を広げていければとは思っていますが、それよりもやはり、この『MTG』というゲームでより高みを目指していきたい、より自分の理想像となるプレイヤーになっていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

▲ナシフ選手の『MTG』にひたすらストイックに取り組む、そんな姿勢が今回の優勝へとつながったのは間違いがなさそうだ。おめでとう、ガブリエル・ナシフ選手。おめでとう、プロツアーチャンピオン!!

 また、先週末に開催されたシンガポールグランプリでは、日本人プレイヤーが活躍! 斉藤友晴選手が見事優勝をもぎ取ったとのこと。さらに、準優勝は北山雅也選手、第4位は高橋優太選手と、日本人選手の躍進が際立つ大会となった。2009年の『MTG』イベントはまだまだ開催される予定となっている。この中で日本人選手はどんな活躍を見せてくれるのだろうか?

(TEXT by ねこひげ合同会社/ゆば)

■グランプリ神戸 概要
【開催日程】2009年4月18日~19日
【会場】神戸国際展示場

■プロツアー京都 概要
【開催日程】2009年2月27日~3月1日(※すでに終了)
【会場】京都市伏見区“パルスプラザ”


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