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2009年4月10日(金)

電撃小説大賞・選考委員奨励賞『神のまにまに!』の作者・山口先生インタビュー

文:電撃オンライン

 “第15回電撃小説大賞”で選考委員奨励賞を受賞した『神のまにまに! ~カグツチ様の神芝居』(※投稿時のタイトルは『語り部じんえい』)の著者・山口幸三郎先生にインタビューを行った。

 本作は、カワイイ(?)神様・ヘッポコ様に取り憑かれた青年・品部人永(しなべじんえい)のちょっぴり不幸でにぎやかな日常を描いた作品。「疲れた」を理由に人間に加護を与えなくなってしまった神様たちを説得すべく東奔西走する、人永&ヘッポコ様の奮闘ぶりが楽しめる。

▲こちらは、本作の表紙。黒髪のちっちゃくてカワイイ女の子(?)がヘッポコ様だ。

 以下に、山口先生のインタビューをお届けしていく。『神のまにまに! ~カグツチ様の神芝居』は、4月10日に発売となっているので、記事を読んで興味を持った人は、ぜひ書店で手に取ってもらいたい。

――最初に、本作を書くにいたった経緯を教えてください。

山口先生:作品の中で、まず最初に神様が「疲れた」と言うんですけど、コレは自分の発言からきているんですね。仕事中に「疲れた」とつぶやいた時に、「それなりの地位にある人たちが「疲れた」って言い出したら大変なことになるんじゃないか?」と考えまして。そのアイデアを形にしていく時に、「神様に言わせたらおもしろいんじゃないか?」と思い付いたんですね。それがキッカケです。まさしく、神が降りてきた感じですね(笑)。

――なるほど(笑)。そのアイデアを形にしていくまで……作品を書き上げるまでには、どれくらいかかりましたか?

山口先生:アイデアを練っていた時間込みで1カ月くらいでした。

――1カ月ですか。分量に比べると、かなり早い気もしますね。

山口先生:この理由は簡単で、第15回電撃小説大賞の締切が1カ月に迫っていたんです。ですから、もう書くしかない!! って感じでしたよ。

――それでも1カ月はスゴいと思いますが……では、今回本作が出版されるに当たって、改稿作業があったと思うのですが、そちらは体験してみていかがでしたか?

山口先生:そうですね……。楽しかったです。

――“楽しかった”ですか。主にどのあたりを楽しく感じたのでしょうか?

山口先生:書いていて、自分の中でも「ココはどうなんだろう?」としっくりときていなかったところを指摘されたんですね。そのおかげで書き直そうという気になれたので、しっかりと意見を言ってもらったところですかね。

――修正はどれくらいだったんですか?

山口先生:そんなにガッツリ直したわけではないです。キャラクターの造形をちょっぴりいじったり、話の筋をより読みやすくしていった感じです。

――先ほど、自分でもしっくりときていなかったところがあるとおっしゃっていましたが、それはどのあたりだったのでしょうか。

山口先生:説明する文章が結構多かったものですから、「ここはいらないんじゃないかな?」というところですね。読みやすくしていく際に、削っていった感じです。書き足したのは、2~3ページくらいでしょうか。初めて書く時も楽しいんですけど、できあがったものを読んでもらって、感想と一緒に意見をもらうほうが個人的にはうれしいですね。

――今度は、キャラクターについて質問していきます。本作のキャラクターの性格などには、モデルがいるのでしょうか?

山口先生:モデルは……特にはないですね。細かくひも解いていくと、影響を受けていることはあると思いますが、明確なモデルがいるわけではないです。

――書いていて楽しかったキャラクターは?

山口先生:やっぱり、ヘッポコですね。ここで詳しく言ってしまうとネタバレになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが。

――ヘッポコですか……確かにカワイイですしね~。続いて質問です。本作には妖怪が出てきますが、昨年の大賞受賞作『ほうかご百物語』を意識したりはしませんでしたか?

山口先生:確かに、ちょっと意識はしましたね。ただ、物語の中での使い方といいますか、捕らえ方が別なものですから。まあ、いいんじゃないかな、と(笑)。担当編集さんも、「本当に同じ内容だったら困るけど、切り口が違うものであれば選考する側は気にしない」と言っていましたので。私自身も妖怪を使いつつも、あまりそこにこだわっていたわけではありませんでしたし。

――選考をされた時雨沢先生も、「妖怪退治などとは趣の変わった形で、仕事として神様や妖怪にかかわっているところがおもしろい」といった趣旨のコメントをしていたと思うんですが、そのあたりは意識していましたか。

山口先生:電撃小説大賞に出す以上、私も読者として電撃文庫を読んでいたものですから、バトルものが多いんだろうな、という意識はあったんです。でも一方で、電撃文庫って、“なんでもアリ”な部分もあると思うんですよ。ですから「こういう話があってもいいんじゃない?」くらいのノリで書きました。その点を、どう評価されるのかまではあまり考えていませんでした。好きな作品をありのままに書いて送った感じですね。個人的に、選考されることを考えながら書くと、おかしな感じになってしまいそうですので。

――タイトルが、『語り部じんえい』から『神のまにまに! ~カグツチ様の神芝居』に変わっていますが、これはどういった経緯だったんでしょうか?

山口先生:これについては、いろいろとあったんですよ(笑)。元のタイトルだと時代劇に勘違いされてしまうだろうと考えて、読者が入りやすいタイトルにしようと思ったんですよ。

――これ、候補数が相当あったんじゃないかと思うんですけど……。

山口先生:ええ。たくさんありました(笑)。まず最初に付けたのが『神んぐあうと』というもの。作品に出てくる神様にかけたタイトルなんですけど、実は母親が考えてくれたんです。

――先生本人が、ってワケじゃなかったんですね。

山口先生:ええ。聞かされた時には「これしかない!」って思ったんですけど……『神んぐあうと』つまりカミングアウトってもともとは英語なんですよね。ですから残念だけど見送りました。そんなこんながあって、今のタイトルに落ち着いたんです。

――ちなみに『神のまにまに』はどなたが考えたんですか?

山口先生:私です。山上憶良の歌からいただいたんです。詠んだ瞬間、ピンときたんですね。副題も、神と紙芝居をかけてあります。

――ああ! 確かに。いろいろと考えているんだなぁ、ってちょっと感心してしまいました。

山口先生:全部後付けなんですけどね(笑)。これも仕事中に考え付いたんです。

――仕事中によくアイデアが沸くんですね(笑)。では、質問の矛先をちょっと変えまして、好きな作品や影響を受けた作品を教えていただけますか?

山口先生:結構、幅広く読んでいますね。それとマンガは好きです。作家でいうと手塚治虫や……『北斗の拳』も好きですね。基本的に少年マンガが好きです。小説ですと、電撃文庫の作品はもちろん目を通しています。刺激的だったのは、秋山瑞人先生の作品ですね。好きな作品……とはちょっと違うんですけど、記紀は学生時代に読んだりしていました。古典の雰囲気が好きでした。

――ゲームを遊んだりすることは?

山口先生:はい、ちょこちょことプレイしますけど、RPGが好きですね。『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』は買いますね(笑)。1つのものをトコトン極めるというよりは、知り合いに勧められた作品を遊ぶって感じですね。

――創作活動に携わるようになったのは、いつごろですか?

山口先生:20歳になる少し前ですね。今、25歳ですから、だいたい5年くらいです。

――そのキッカケはなんだったのでしょうか。

山口先生:暇だったから……というのもありますね(笑)。もともと小説を書こうという気はあまりなかったんですが、家にPCがあって。長い期間かけて取り組むことをしてみようと考えたんです。どれくらい充実感があるのかなぁ、という興味もありましたし。

――また『神のまにまに』の話に戻りまして、本作の見どころはどこですか?

山口先生:そうですねえ……ヘッポコのウザカワイさをはじめとする、キャラクターですね。人永&ヘッポコのやり取りはぜひ読んでもらいたいです。それと、お話の入り口はコメディ仕立てですけど、作中では神様の悲哀みたいなものも多少出てきますので、そういったところでしょうか。

――ちょっと気の早い話なんですが、次巻の話などは動いているのでしょうか?

山口先生:まだいつになるのかは具体的に言えないんですけど、第2巻に向けて動いています。それと、4月10日に発売となる『電撃文庫MAGAZINE Vol.7』には、第1巻の前日譚にあたる短編が掲載されていますので、そちらも読んでいただけるとうれしいです。

――短編ですか。長編とはまた違った楽しみがありそうですね。

山口先生:依頼されて書くのも初めてですから、緊張しますね。それと、書き始める時にはすでにオチまで考えているんですけど、長編と短編ではページ数が違いますから、話のふくらませ方が悩みどころになっています。どうしても長編のような話のふくらませ方になってしまうので、注意しながら書いています。

――次巻の話も動いているということで、今後の抱負などをお聞かせいただけますか?

山口先生:受賞作家として、泥を塗らないように頑張りたいと思います。

――では最後に、これから本作を読んでくれるであろう読者にメッセージをお願いします。

山口先生:ちょっぴり古いですけど、“キレイなお姉さんは好きですか?” もしも好きならぜひ読んでみてください。キレイなお姉さんの他にもカワイイ神様も出てきますので、そちらも一緒によろしくお願いします!

――ありがとうございました!

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データ

▼『電撃文庫MAGAZINE』
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2009年4月10日
■価格:720円(税込)
▼『神のまにまに! ~カグツチ様の神芝居』
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2009年4月10日
■価格:577円(税込)

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