2009年8月7日(金)
花札に込められた想いとは? 『サマーウォーズ』細田監督らにインタビュー
8月1日から公開中の映画『サマーウォーズ』。その公開前に、本作の監督を務める細田守さんと、主人公・小磯健二役の神木隆之介さん、ヒロイン・篠原夏希役の桜庭ななみさんにインタビューを行った。
『サマーウォーズ』は、突然起こった世界崩壊の危機に、とある大家族が立ち向かうアクション映画。監督は上記の通り細田さんが、キャラクターデザインは貞本義行さん、脚本は奥寺佐渡子さんと、『時をかける少女』のスタッフが再び集結し製作を手掛けている。
細田監督たちは、3人そろってインタビューを受けるのは初めてとのことで、作品を演じてみた感想などについて雑談を交えながら自由に話してもらった。細田監督たちの意外な一面も見られるインタビューになっているので、劇場に足を運んだ人もまだの人も、ぜひご覧いただきたい。
▲写真左から、細田監督、神木さん、桜庭さん。ざっくばらんな楽しい雰囲気の中でのインタビューになった。 |
――まず細田監督にお伺いします。プレスシートを拝見したところ、『時をかける少女』が終わってすぐこの作品に取り掛かったそうですが、具体的にいつごろから構想を練られていたんですか?
細田監督:(『時をかける少女』は)2006年の夏に公開されたんですけど、それからずっとこの作品しかやってないですね。
――すぐまた同じスタッフで次の作品をやろう、ということになったんですか?
細田監督:そうですね。ありがたいことに、「また付き合ってやるよ」と言われ。3年前の夏ですよね……。(2人は)3年前の夏って何やってた?
神木さん:3年前……中1でしたね。『遠くの空に消えた』の撮影をやっていました。なので3年前の今ごろは、北海道に行っていましたね。
――ロケですよね?
神木さん:はい。2カ月ぐらい行っていました。
細田監督:桜庭さんは3年前の夏何やってた?
桜庭さん:私はずっと部活をやっていました。
細田監督:何部?
桜庭さん:テニス部です。
細田監督:じゃあ夏合宿とか行ってたんだ。
――劇中で“花札”が重要なアイテムとして登場しているのですが、花札を題材に選ばれたのはどうしてですか?
細田監督:うーん……。桜庭さん、家で花札ってやった? おじいちゃんとかおばあちゃんから教えてもらってない?
桜庭さん:全然教えてもらってないです。
細田監督:神木くんは?
神木さん:僕は『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』というドラマで花札をやっているシーンがあったので……。
細田監督:あったね! オカンがやってるんだよね。
神木さん:はい。それでルールを教えてもらったんです。なので遊べますね。
細田監督:なるほど。花札を選んだ理由なんですが、花札って“家族でやるゲーム”というイメージがあると思うんですよ。おじいちゃんやおばあちゃんが孫にこっそり教えるとかね。花札って賭博(とばく)のイメージもあるので、学校には持っていきづらいじゃないですか。するとね、遊ぶ場所が家族の中だけになっちゃうんだよね。それで、お盆やお正月の時に親戚で集まって花札をやるという感じが僕の中であって。あとまぁ、もう1つあるのは、花札って言ったらやっぱりあれだよね。僕の大好きな任天堂の元にあるものだから(笑)。
――任天堂がお好きなんですか?
細田監督:えぇ。任天堂のゲームがキライな人なんていないでしょう(笑)。そんな人間がいたら見たいぐらいですよ。花札があったからファミコンがあって、ファミコンがあったから今、子どもたちもこうしてキャッキャ言える。その大元は花札なんですよ。……って、こんな話でいいんですかね?(笑)
――電撃オンラインはゲームサイトなので、ゲームの話は大歓迎です(笑)。
細田監督:あ、そうだよね。ゲームサイトだもんね! 神木くんって待ち時間とかゲームで遊ぶの?
神木さん:最近はあまりやっていないんですけど、DSで言うと『大合奏!バンドブラザーズ』とか、『クイズマジックアカデミーDS』とか持ってます(笑)。
細田監督:桜庭さんは?
桜庭さん:私最近ゲームやるんですよ。
細田監督&神木さん:何やるの?
桜庭さん:私『リズム天国』しか持ってないんですけど、ホントに楽しいんですよ。
細田監督:じゃあ1年ぐらい同じソフトを遊んでるの?
桜庭さん:半年ぐらいですね。
細田監督:じゃあそれまで遊んだことなかったの?
桜庭さん:全然やっていなくて、なんで弟がゲームやるのかわからなかったんです。東京にきてから電車に乗るようになって、そういう時にゲームをやるようになりました。
細田監督:確かに確かに。田舎だと自転車こいでたりしていてゲーム機を持てないじゃないですか(笑)。東京だとね、いくらでもやる時間あるもんね。あとこういう仕事してると待ち時間も多そうだけど、そういう時ってゲームやっててもいいの?
神木さん:ちょっと前はみんなで『マリオカートDS』をやってました。最近はしゃべってるか、お菓子食べてるか、うたた寝しているかですね(笑)。
細田監督:相当疲れてるね、それ。
神木さん:学校のテストがあったので……(笑)。
――キャスティングの時のことをお聞きしますが、神木さんと桜庭さんはすぐに決まったんですか?
細田監督:出会ってすぐ決まりましたね。映画の役者さんってたくさんいらっしゃいますけど、映画の主演とかヒロインやる人ってさ、その登場人物に近い人がやるべきじゃないかなって思うんです。主役やヒロインは特にね。そうした方が、映画の内容が誠実になる気がして。神木くんに最初に会った時、健二そのものだと思ったんですよ。天才性のようなものを持ちながら、一方で控えめなところもあって。普通天才って自意識過剰なものでしょう? それと対極にあるような人なんだよね。すごく勉強熱心で。それがすごく健二っぽいなと思って。逆に、他の誰に頼めるんですかという感じでしたね。
スタジオで“録りの声を聞かせてください”って確認するんですが、間違いないという感じでしたよホントに(笑)。
神木さん:ありがとうございます。
細田監督:(健二と)髪のハネ方までそっくりです。今はすごくキレイになっているんですけど。桜庭さんも同じように、会った瞬間に「これは夏希だ」と思ったんですよ。夏希って美少女だからカワイイ声を出す人っていっぱいいるんだけど、でも単に美少女なだけじゃ夏希を表現できないというか。夏希の罪のない素朴さのようなものがないといけなくて、そういう素朴さを持っている人をずっと探していて、出会ったという感じなんですよ。わけ目以外は全部同じだと思ったんです(笑)。夏希は(わけ目が)逆なんですよ。それ以外は寸分違わず夏希だと思いましたね。
――神木さんと桜庭さんにお伺いしますが、実際に役を演じてみて難しかったところなどはありますか?
神木さん:健二と僕は同じ年ぐらいなんですけど、いかに“普通”の男の子を表現するかというところが難しかったですね。どういうものが“普通”なのかわからなかったんですよ。“普通”って人それぞれだし。だから自分を参考にしようと思ったんです。いつも通りの自分を健二にリンクさせればいいのかな、と思いました。だから、今回は“僕だったらこうする”という芝居が多かったですね。親戚一同の前では基本恐縮するような言い方で、佐久間に対する電話の仕方は気楽になっているいつも通りの自分というか、友だちと話すような話し方でと、違いを出すようにしていました。
――桜庭さんはいかがでした?
桜庭さん:すべてが初めてだったので、難しいしわからないというか。まず、どのタイミングでしゃべっていいか、マイクとはどういう距離でしゃべればいいかもわからないし、口に声をあわせることもホントに難しくて……。
――夏希を演じるうえで心がけていたことなどはありましたか?
桜庭さん:最初オーディションの時に、監督から「夏希はお姉さんのような感じで」と言われたんですが、自分の中にお姉さんキャラを持っていなかったので、周囲を見て研究しました。収録初日はブースに(キャストが)全員で入って収録したので、ものすごく緊張したのを覚えています。
細田監督:他の役者さんとか激ウマなわけじゃないですか。そこに入ったら……確かにねぇ(笑)。でも俺、それがよかったと思うし、一生懸命やらきゃと桜庭さんが頑張るところが、夏希の一生懸命さにそのままつながっている気がするんですよね。くどくどと「夏希はこういう人で、こういう性格で、こういう趣味で」と言わなくても、選んだ時にもう夏希なんだから。夏希がやりたいようにやってくれれば(笑)。でもそのいっぱいいっぱいだったところが、夏希が一生懸命やっているように聞こえて、全然問題ないんですよ。問題ないどころかすごくかわいかったですよ。
――収録は何日ぐらい行われたんですか?
細田監督:メインで収録したのは6日間ですね。その後、ちょこちょこと収録しましたが。
――収録の初日と最終日で、アフレコは上達しましたか?
桜庭さん:最後になるにつれ、口に合わせられるようになりました。そして、“ここをこうやってみようかな”と思えるようにもなりました。
細田監督:神木くんどうですか、(桜庭さんが)最初と最後ですごく変わっていると思わない?
神木さん:そうですね。役に対して芯が通っているというか、自信がついたように見えましたね。
細田監督:うんうん。映画ってさ、同じ感じで行くよりも最初と最後で違う方がいいんだよね。特に桜庭さんのように新しい人はさ、その変化が魅力になるというか。
――その変化も見どころの1つということですね。東京国際アニメフェア2009のステージで、仲(里依紗)さんが「監督はすごく優しいですよ」と大プッシュしていたと思うんですが、収録中の監督はいかがでしたか?
桜庭さん:優しかったですね。少しでも何かしらいいところを探してテンションを下げないようにしようとほめてくださいました。
神木さん:ほめてほめてほめて……僕が間違った時も「今の感じすごくよかった。すごくよかった。じゃあもう1回行こう」といった感じで、怖いぐらいほめられました(笑)。でも、そのおかげでテンションは下がらずに「やってやろう」という気持ちになりました。熱い気持ちにさせてくださいましたね。
細田監督:楽しかったのって、他の役者さんたちの雰囲気もすごくよかったからじゃないかな。1人1人で録るよりもみんなで録る楽しさというか。アニメでは珍しいんですけどね。あのブースの楽しい雰囲気がうらやましかったな(笑)。
神木さん:楽しかったですね。映画の中の家族の中にいるような雰囲気でしたし、みんなで一致団結しました。
細田監督:仲さんが、僕がよくほめると言うんだけど、すごくいいなと思うからそれをそのまま言うだけなんだよね。いや、ホントですよこれ。「これちょっとまじぃなー」と思った時に、その気持ちを隠して「よかったねー」って言えないんだよ。なるべく思っていることを言おうとは思っているんです。でも「まじぃなー」とはあまり思わないんですよ。「ちょっと口と合わないねー」とかは言ってると思うけど(笑)。ホントにいいと思うので、いいとしか言えないんですよ。他の監督って違うの?
神木さん:あまりあそこまで毎回ほめてくださる方はいないかも……しれないですね(笑)。
細田監督:ホントに!? みんな監督然としてるの? 「お前ここちょっとどうなの?」メガネクイックイッ、みたいな?
神木さん:さすがにそこまではいかないですけど(笑)。でもやっぱり毎回いいって言ってくださる方はあまりいないと思います。だからうれしかったですね。
細田監督:みんなもっと言えばいいのにね。感動したって。
――ファンの方にメッセージをお願いします。
細田監督:この作品には親戚を含めたたくさんのとある家族が出てくるんだけど、その家族の中で、神木くんが演じた健二という男の子と、桜庭さんが演じた夏希という女の子が一番若い家族として頑張るという話なので、健二や夏希の気持ちと一緒になって楽しく観てもらえたらと思います。
神木さん:健二も夏希も、それ以外のキャラクターもそうなんですけど、作品の終わりに近付くにつれて力強くなっていきます。そういった成長していく姿も見ていただきたいですし、あと親戚それぞれのキャラクターもじっくり楽しんでいただけたらと思います。
桜庭さん:この作品の大きなテーマの1つに“家族”があるんですが、世界の危機に家族が立ち向かうパワーってすごいなぁと思います。皆さんもこの映画を見て家族の大切さを改めて感じてもらえたらと思います。
細田監督:すばらしい締めですね。
――ありがとうございました。
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
【公開日】2009年8月1日