2009年9月14日(月)
小清水さん:私、小梅先生のマンガは『狼と香辛料』の前から拝見しているんですよ!
小梅先生:ラジオでもそのことに触れていただいて、本当にありがとうございます。
小清水さん:その中でいつも思うんですけど、小梅先生の描く女の子って、めちゃくちゃやわらかそうで、子どもっぽいかわいさがあって、しかもどこかセクシーですよね。
小梅先生:(笑)。
小清水さん:それがすごく大好きで、何か女の子を描く時に意識しているところはあるのかなと。
小梅先生:それについてはちょっと変な話になるんですけど、いいですか? 高校の倫理の授業で習ったんですけど、昔のギリシャの哲学者が考えたもので“イデア”というものがあるんですよ。これは、物の理想の形が存在している世界が存在して、人間のまわりの世界は、その理想の形が少しずつ劣化したものが並んでいると考えているんです。そして人間は、そのイデアの世界のものを意識しながら絵を描いたり、彫刻を造ったり、芸術をできる。そういうことができる人間はすごい! みたいな考え方なんですよ。僕は、僕のイデアにある女の子を常に描きたい、そういう風に思っています。アニメーターをやっている兄から聞いた話なんですが、どんどん上達すると、線を一本引くだけで、たとえば足のラインとか、腕のラインとかがパシッと描けるようになるということらしいんです。アニメーターさんはたいていそうらしいんですけど、僕もそうなりたいなって思っています。
小清水さん:すごいお話ですね。ちなみに今はどのくらい小梅さんのイデアに近づいているんですか?
小梅先生:10%くらいじゃないですかね(笑)。
小清水さん:マンガってアニメと違って、1コマ1コマのカットじゃないですか。小梅先生のマンガって、キャラクターの表情がそのカットごとで細かく変化しますよね。女の子の繊細な表情の変化とか、毎回すごいなぁと思いながら読んでいます。女子目線で小梅先生の描く女の子を見ると、ああ、この女の子はいま好きな人がいるんだなとか、そういう感情が表情から読み取れたりするんですよね。あと、なんでもないシーンでも、セリフじゃなく表情で語るとかそういうのも出ていますよね。
小梅先生:一応、コマごとにキャラクターには必ず何かの演技をさせようとはしているんですよ。コマが限られているので、物語のテンポを取るために背景だけを描くこともありますけど、ムダな表情やムダなコマは入れないようにしています。人物が入っている場合は、表情の演技はさせるようにしています。ホロなら、水を飲みつつもロレンスのほうを見ていたりとか、そういうのですね。
小清水さん:そうそう、そうなんですよね。マンガだからフィクションなのは当たり前なんですけど、どこかにリアルに感じられるものがあるんですよね。
(C)支倉凍砂/アスキー・メディアワークス/「狼と香辛料II」製作委員会
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