2009年12月16日(水)
本日12月16日に発売された小説『[映]アムリタ』で、第16回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞を受賞した野﨑まど先生にインタビューを行った。
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『[映]アムリタ』は、井の頭芸術大学の学生・二見遭一(ふたみあいいち)が、とある自主映画に出演するところから始まる。その自主映画の監督は、1年生にして天才とウワサされるつかみどころのない性格の女性・最原最早(さいはらもはや)。遭一は、彼女が撮る映画、そして彼女自身への興味から、撮影にのめり込んでいくが……。
以下に、担当の湯浅編集を交えて行った、野﨑先生へのインタビューを掲載する。先生こだわりのシーンなどについて伺ったので、ぜひご覧いただきたい。
――では最初に、この作品を書いたキッカケを教えてもらえますか?
野﨑先生:ある日突然、母が小説を書いて、それを僕にくれたんですよ。で、何でコレをウチに送り付けてくるんだと電話で聞いたら「それは私が書いた小説で、ガ●ガ大賞に送ったから」と言われたんです。ところが「そうですか頑張ってください」と言おうと思ったら、「アンタの名前で送った」と(笑)。まぁその作品は、その後何の連絡もなかったので、残念な結果になったんだと思いますが……。それで、こんなブ厚い小説を60近い母でも書けるんだから僕でも書けるかなと思い書き始めたのがキッカケですね。
――映画を題材に選んだのはどういう理由がありますか?
野﨑先生:あまり詳しくは言えないんですが、職業柄です。映像に携わる仕事をしているので。
――映画はお好きなんですか?
野﨑先生:深夜映画を観たりとか、その程度です。
――この作品はいつごろから書き始めたんですか?
野﨑先生:2月の終わりか、3月の頭ぐらいからですね。
――ひと月ぐらいですか。構想の時間を入れるともう少し掛かっているのでしょうか?
野﨑先生:構想は長いと思うんですが……ちらほら考えていたものなので、具体的な期間はないですね。プロットを作ってから書くタイプでもないので。いずれにせよ、3月中旬にダイナミックな方向転換がありまして、それまでの構想は全然アテにならなくなりました。(表紙の)この子とか、最初はすごくいい子だったんですよ。
――え、そうなんですか? ということは大幅に書き直したりしたんですか?
野﨑先生:そこまで大幅にではありませんでしたが。少しずつ手を加えて、今の形になりました。
――今回から“メディアワークス文庫賞”が新設されましたが、書いている段階で賞を意識されたりしましたか?
野﨑先生:特になかったです。賞の存在を知ったのが応募した後だったので……。賞がいっぱいあったので、何かに引っ掛かればいいなと思いました。
――実際に映画を製作されたご経験などはありますか?
野﨑先生:ないです。(映画の)サークル活動などもしていなかったので……。
――作中で映画製作について詳しく書かれていますが、取材はどのようにされたんですか?
野﨑先生:ハウツー本を少し読んだぐらいです。外国の方が書いた本で、“このポーズ(指でフレームを作るポーズ)は現場でもっともきらわれるので、決してやってはいけない”と書かれていたんですが、もうそれくらいしか覚えていないですね。
――執筆するうえで苦労されたことなどはありますか?
野﨑先生:出先で、よくインターネットカフェなどを使って書いていたんです。インターネットカフェに行くと、マンガがいっぱいありますよね(笑)。
――誘惑が多いんですね(笑)。
野﨑先生:読むぶんには気分転換になったりしていいんですけど、影響を受けやすいタイプなので、すぐ反映させたくなるんですよ。中盤を書いていたころに、“バレリーナ”を出したいなと思ったりもしました。
――その時は何を読んでいたんですか?
野﨑先生:『昴』です。
――なるほど(笑)。好きな作品などはありますか?
野﨑先生:いしいひさいちさんの本などは楽しく読んでいます。電撃レーベルだと……。この間『よつばと!』を買って読みました。
――お気遣いいただきありがとうございます。
野﨑先生:あと今『華麗なる一族』を読んでいるんですが、おもしろくなってきました。次の作品に影響が出てくるかもしれないです。いい影響が出て、1,800ページとかになるといいんですが。
――それは次の作品が楽しみですね。劇中でお気に入りのシーンなどはありますか?
野﨑先生:47ページの、“フェムト”のくだりはこの小説の中で一番よくできているところだと思います。わからない方は、ぜひググっていただきたいですね。自画自賛になっちゃうんですが、美しいところだと思います。ここよりよく書けているところはないんじゃないかなぁ……。
湯浅編集:いやいや、そのネタ絶対誰もわからないですから(笑)。
――今度“フェムト”でググってみます。この作品は、ストーリーの構成もよくできているなと思ったんですが、キャラクターたちの会話もすごくおもしろいですよね。キャラクターを作るうえで何か意識をされましたか?
野﨑先生:特に会話を増やしたりといったことはしていないです。キャラクターも、オチから考えて作ったので、必要に迫られて1人ずつ作っていったという具合ですね。中でもこの画素(かくす)さんは、最初友人に読ませた時に「ウザい」と大不評でした。
――そうだったんですか(笑)。かわいいと思いますけどね。会話の内容などは、自分の学生時代の経験などが生きていたりするのでしょうか。
野﨑先生:どうでしょう。こんな話をしていたことはあると思うんですが、さすがにここまで裏の裏まで考えてしゃべるような人はいませんでしたね……。さっきのフェムトのくだりを話せるような人がいたら気後れしてしまいます。
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