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2010年6月22日(火)

子どもたちを応援したくなる! 忘れられない夏の物語『宇宙ショーへようこそ』

文:kbj

 6月26日より新宿バルト9、シネ・リーブル池袋他で全国ロードショーされる劇場アニメーション『宇宙ショーへようこそ』。本作を見た感想、見どころを電撃オンラインスタッフのkbjがお届けする。

『宇宙ショーへようこそ』

 どうも、電撃オンラインで普段はゲームの紹介をしたり、メーカーさんと打ち合わせしたり、遊んだりしているkbjです。今回、自分が紹介するのは、話題のアニメ映画『宇宙ショーへようこそ』。普段から、アニメを浴びるように見ている他のスタッフと違い、そこまでアニメに精通しているわけでもない自分が、なぜ本作について述べているのかというと、理由は単純です。試写会で見て感動したから! というわけで、本作の魅力について、簡単に書いて行きたいと思います。

 なお、この感想はネタバレは基本的にありません。あくまで自分の主観を交えつつの勝手な分析です。しかし、もし可能なら公開中の本編冒頭22分を見ておくと、よりわかりいいと思います。「興味があるけど、劇場に行くか迷っている」という人の後押しをできればと幸いです。どうか、温かい目で見てください。

 この『宇宙ショーへようこそ』は、5人の小学生と1匹の宇宙人が、宇宙狭しと駆けめぐるSF冒険ファンタジー。監督を舛成(ますなり)孝二さんが、脚本を倉田英之さんが、キャラクターデザイン・作画監督を石浜真史さんが担当するなど、とにかく実力派スタッフが並んでいる作品です。個人的に、監督を舛成さんが担当していることと、イラストを見た時の期待感、そして設定で「この作品を見てみたい!」と興味を覚えました。

 まあ、冒頭でもふれたことからもわかるように、本作は非常にすばらしく、おもしろい作品だったわけです。今回は、そのポイントを、美術・グラフィック、音楽、物語・キャラクターの3つに分けてみました。

『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』

 グラフィックの美麗さには、冒頭から心を持っていかれました。地球の舞台となった村川村の透き通った朝の空気や、裏山に残る土臭さなど、日本人のDNAに染み付いているような田舎のよき風景が、画面一杯に広がるわけです。ため息が出るほど心地よく、見入ってしまいました。

 ちなみにkbjが感動したのは、主人公・夏紀と周が暮らす家のリアルさです。美術がしっかりしているという証明なのかもしれませんが、この家が自分の従兄弟が以前に住んでいた家にそっくりで、冒頭2分くらいで泣きそうになりました。最近足腰が立たなくなった婆ちゃんが脳裏に浮かんできて(ヨヨヨ)。

『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』
▲夏の暑さ、田んぼのニオイなど、初めて見る風景にもかかわらず、懐かしさを覚える村の描写。この部分は、本編冒頭22分の先行放送でも見ることができます。

 もう1つ印象的だったのは、惑星ごとのデザインです。本作のデザインは、さまざまなクリエイターが場面ごとに担当しているんですが、どのグラフィックも特徴的で見ていてワクワクしました。村川村から月に行った直後も、画面の雰囲気、色味が大きく変わりますが、その後も惑星に応じた変化を楽しめたので、細かいところをもう一度見たいと思ったほどです。個人的には、月の近未来的な街並みも好きですが、その後に出てくる自然と文明があわさったような惑星のデザインも好みです。

『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』
『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』
▲宇宙一の海賊放送『宇宙ショー』を観るために集った人々や遊園地を思わせるパレードの描写などは、きらびやかでインパクトがあるかと。色が多いだけで個人的にはワクワクしました。

 音楽も印象的だった1つ……なんですが、音楽はいくらテキストで「この楽曲がよかった」「このシーンのBGMが印象的だった」といっても、安っぽくなってしまいます。ただこれだけは言わせてください。シーンごとに大きく変わるメロディ、そしてさまざまな楽器を使ったにぎやかな演奏は、耳に残り爽快でした。ぜひご覧になる際は、その音楽にも注目していただければと思います。

 エンターテインメントである以上、いくら設定がすごくて、ビジュアルがキレイで、音楽がよくても、物語が心に響かないと、魅力としては半減してしまうもの。本作は、学校で夏合宿をしていた5人の小学生が助けた宇宙人(見た目は犬)によって、宇宙に行き、そこである出来事に巻き込まれていくという物語が展開します。前半こそ、ほのぼのとした描写ばかりですが、中盤以降は動きの激しいシーンが多く、壮大な展開に圧倒されました。息つく間もない……というのは多少大げさかもしれませんが、あっという間の2時間16分でした。

『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』
▲物語は、徐々に動き出します。中盤以降の見ごたえのあるアクション、スピード感も必見です。

 とにかく後半は、心を打たれるシーンやセリフが多かった印象です。特に、彼らが自分たちではどうしようもないような問題にぶち当たった時のやりとりが、胸に響きました。みんなのまとめ役である清が「僕たちはたかが小学生で、何ができる!?」と言います。そこで、夏紀は叫びます。

「私はヒーローじゃないけど、このまま帰っていいはずないよ!」

 そうだ、その通りだ! 頑張れ、夏紀!! 彼らのひたむきさに、勇気をもらいつつ、協力して一生懸命にがんばるメンバーを応援していました。王道な流れだとは思いますが、基本に忠実だからこそ、子どもでもグッときますし、昔子ども時代を通ってきた大人もハマれる展開になっていると思います。

 この記事を見ている人の中には、メインキャラの声を子役が担当していることに不安を覚えている人はいませんか? はい、白状します。自分もそうでした。しかし10分、いや5分もすればその不安は消えていました。演じているメンバーの印象がないからかもしれませんが、彼らがイキイキと動けば動くほど、5人のメンバーとイメージしていた声のブレがなくなっていくと思います。「声優でないメンバーの声が不安だから見に行くのを考えている」というのであれば、その概念を捨てて、見に行くことをススメます。

『宇宙ショーへようこそ』 『宇宙ショーへようこそ』

 小学校の時に自分が夢見ていた未来というのは、もっときらびやかでした。車は空中を走っているし、飲み物を飲めば食事の代わりになるし、世界は平和でした。でも現実は違います。多分、知る限り、修学旅行が月だったという小学生はいないと思います。

『宇宙ショーへようこそ』

 自分はポチに合うことがなかったので、宇宙には行けず、修学旅行は2泊3日の八ヶ岳でした。でも別に後悔はしていません。だって、あそこで過ごした3日間は何事にも変えられない、素敵な思い出だからです。でも、やっぱり少しだけ悔しいので、自分も宇宙に行こうと思います。5人と1匹と一緒に、劇場で。(発売されたら『わさびふりかけ』を食べたいkbj)。

(C)A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

■『宇宙ショーへようこそ』
【公開日】2010年6月26日 新宿バルト9、シネ・リーブル池袋、渋谷シネクイント、立川シネマシティ他全国ロードショー

【スタッフ】(※敬称略)
 監督:舛成孝二
 脚本:倉田英之
 キャラクターデザイン・作画監督:石浜真史
 場面設計:竹内志保
 メカニック作画監督:渡辺浩二
 プロダクションデザイン:okama、神宮司訓之、竹内志保、渡辺浩二
 サブキャラクターデザイン:薮野浩二、森崎貞
 演出:畑 博之
 色彩設計:歌川律子
 美術監督:小倉一男
 CG監督:那須信司
 撮影監督:尾崎隆晴
 編集:後藤正浩
 音楽:池頼広
 音響監督:菊田浩巳
 録音調整:名倉靖
 音響効果:倉橋裕宗
 原作:ベサメムーチョ
 制作:A-1 Pictures
 製作:『宇宙ショーへようこそ』製作委員会
 配給:アニプレックス


【キャスト】(※敬称略)
 小山夏紀役:黒沢ともよ
 鈴木周役:生月歩花
 原田康二役:吉永拓斗
 西村倫子役:松元環季
 佐藤清役:鵜澤正太郎
 ポチ・リックマン役:藤原啓治
 ネッポ役:中尾隆聖
 マリー役:五十嵐麗
 ボグナー役:小野坂昌也
 ヘストン役:竹田雅則
 ロビー役:宮本充
 インク役:飯野茉優
 ルビーン役:江川央生
 ヤブー役:斎藤千和
 タロー役:伊藤和晃
 ハナコ役:日髙のり子
 ゴーバ役:銀河万丈
 トニー役:飛田展男

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