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2010年6月29日(火)

初音ミクが歌う『*ハロー、プラネット。』のsasakure.UKさんにインタビュー!

文:電撃オンライン

 セガから配信されている、PSP用ソフト『初音ミク -Project DIVA-』の追加ダウンロードコンテンツ『初音ミク:ミクうた、おかわり』。その中に収録されているミニゲーム『*ハロー、プラネット。』の監修を務めた、アーティストのsasakure.UKさんにメールインタビューを行った。

 sasakure.UKさんは、“初音ミク”などボーカロイドを使った楽曲を動画コミュニティサイト・ニコニコ動画などで発表し、人気を博しているアーティスト。代表曲は初音ミクが歌う『*ハロー、プラネット。』や、巡音ルカが歌う『ワンダーラスト』などで、壮大なストーリーや8bitのメロディ、『*ハロー、プラネット。』のドット絵を使ったPVなどが話題になった。

 前述の『初音ミク:ミクうた、おかわり』では、追加楽曲の1つとして『*ハロー、プラネット。』が収録された他、楽曲の世界観をもとにしたミニゲームがsasakure.UKさん監修のもと制作され、実際にプレイできる。

sasakure.UKさんインタビュー sasakure.UKさんインタビュー
sasakure.UKさんインタビュー sasakure.UKさんインタビュー
▲『初音ミク:ミクうた、おかわり』に収録された、『*ハロー、プラネット。』のアクションゲーム。全4ステージをプレイでき、2種類のエンディングが用意されている。

 インタビューでは、ミニゲームの話題を中心に、『*ハロー、プラネット。』の制作秘話や、sasakure.UKさんの楽曲に対する想いを聞くことができた。ぜひご覧いただきたい。

sasakure.UKさんインタビュー

――ミニゲームの監修を引き受けた時の感想を教えてください。

 以前からゲームなどを手掛けてみたいと思っていたもので、お話をいただいた時はまさかこんな形で実現するとは……! と感動するかたわら、非常に驚愕(きょうがく)していたのを覚えてます。

――具体的にどういった点を監修されているのでしょうか?

 BGM制作や敵キャラクターのデザイン、ゲーム全体の監修を行いました。

――ゲーム化するにあたって、苦労した点はどこですか?

 ゲームに落とし込む際に、ここはゲーム性を優先すべきだとか、楽曲を優先すべきだとか、の線引きでしょうか……! あまり楽曲を重視してしまうとゲームとしておもしろくなかったり、ゲーム性を重視してしまうと楽曲が成り立たなくなってしまったりするという恐れがあったからです。

 実際できてみたものを見ると、苦労したかいもあり、とてもよいバランスでゲーム化することができたのではないかと思っています。

――ゲームには、原曲にはいないオリジナルキャラクターが登場しますが、彼らは『*ハロー、プラネット。』の物語の中でどういった存在意義があるのでしょう?

 オープニングやマスターの日記などでルカとルカのマスターが登場しますが、これは僕の楽曲『ワンダーラスト』の話と絡めてあります。『*ハロー、プラネット。』は、もともと『ワンダーラスト』の続編という形で制作したので、ゲームでうまく表現できないものかと思いデザインしました。

 また、敵キャラもそうですね。人間が居なくなってしまった世界の話なので、敵キャラはミクと同じ機械なんです。かろうじて生き残った機械たちも暴走してしまっているという設定です。

――ゲームオリジナルの、2つ目のエンディングはどのような経緯で追加したのでしょう?

 もともと『*ハロー、プラネット。』の楽曲が完成した時に、2通りのエンディングを構想していたんですよ。ゲーム化する際に、エンディング分岐を作って、公にされていなかった方のエンディングもフィーチャーできたらおもしろいな、と思って追加しました。

――実際にゲームをプレイしてみていかがでしたか?

 自分の監修したキャラクターがかわいらしく動いたりアクションを起こしたりするのを見て、何とも言いがたい感動がありました……! ああ、動いてる……! って(笑)。

――『*ハロー、プラネット。』は、どのように生み出されたのでしょう。曲を作った経緯などを教えてもらえますか?

 作曲を始めた当時から、人間以外のキャラクターにスポットを当てた楽曲を作りたくて、自分の原点とも言えるSF+童話風のストーリーを煮詰めて作ったものが『*ハロー、プラネット。』だったんです。初めにレトロフューチャーなストーリーのプロットができていたので、8bitサウンドと絡めてひたすら落とし込んでいきました。

――『*ハロー、プラネット。』に込められたメッセージや、曲を作る上で大切にしていることは?

 自分たちの居る世界がどんな形になっていたとしても、大切なものや、大切な人に対する感情や前向きな気持ちってなくしてはいけないと思うんです。『*ハロー、プラネット。』は歌詞が暗いものであるので、オケを明るいマーチ調の楽曲にしようと決めました。逆境の中、この歌の主人公のようにまっすぐ突き進める純粋な心を持ち続けていたいという気持ちを込めています。

 もしかしたら、ひたすらマスターに逢いたいと願う主人公に対しての僕なりのエールが入っているのかもしれないですね。楽曲を作る上では、そういった気持ちにつながる要素って大切にしたいのです。僕が選ぶ音色、歌詞1つを取っても、曲の奥行きを考えた上での選択だったりするので……。

――アルバム『ボーカロイドは終末鳥の夢を見るか?』では、表題にもある通り“終末”をテーマにした楽曲が収録されましたが、ゲーム版『*ハロー、プラネット。』は“終末”をテーマにした作品群の中ではどういった位置付けになるのでしょうか。

 一度、人間の世界が終末を迎えた後で、1体のアンドロイドが世界を再生させるキッカケを作るまでのお話です。アルバムの中での時系列的には一番後の、未来のストーリーになります。

――『*ハロー、プラネット。』は現在110万再生を突破していますが、率直な感想を教えてください。

 正直ここまでたくさんの方々に評価いただけるとは思いませんでした! こういったたくさんの視聴者さんが居てくださったからこそ、このような企画のお誘いをいただけたり、自分の作りたい曲を作っていけるのだなあとしみじみ思います。

――ご自身の作品の中で、『*ハロー、プラネット。』以外でゲーム化するとしたらどれですか?

 往年のシューティングゲームに影響を受けて作った『ニジイロ*アドベンチュア』を推したいところですね(笑)。

――『*ハロー、プラネット。』のゲーム化が発表・配信され、sasakure.UKさんの周辺の方たちや、ファンの方からはどんな反応がありましたか?

 ファンの方々からはたくさんお祝いメッセージをいただいてうれしかったです! また、地元の友人とか普段ボーカロイドを聞かない知り合いから反応があったりしましたね。

――他のボーカロイドクリエイターで、好きな方やライバル視している人はいますか?

 ぶっちぎりPさんやすずきPさん、millstonesさんやOSTER Projectさんの楽曲が好きで、iPodに入れて持ち歩くほどです。また、DECO*27さん・Treow(逆衝動P)さんとは最近ご一緒する機会が増えて、とてもいい刺激になってます!

――ボーカロイドとの出会いについて教えてください。

 “初音ミク”が発売されて少し経った時に、何気なく聴いてみたボーカロイドのオリジナル楽曲たちが非常に完成度が高くて感動したのを今でも覚えてます。“キカイが流暢(りゅうちょう)に歌う楽曲を聴き評価する人類”これは立派なクラシックSFの世界だなあ……と(笑)。それからは僕も見事にボーカロイドの虜(とりこ)になってしまいました!

――sasakure.UKさんはミク以外にもさまざまなボーカロイドの曲を発表していますが、初音ミクのアペンド(※)なども含めて、他に歌わせてみたいボーカロイドはいますか?

 個人的にミクのアペンドがとても気に入っていまして、これまでとはちょっと違った新しいアプローチができるのではないか、と期待に胸を膨らませております。

※2010年4月30日に、クリプトンから発売された初音ミクの追加音声ライブラリ。SWEET、DARK、SOFT、LUGHT、VIVID、SOLIDの6種類の異なる歌声が用意されており、より表情豊かな表現を可能にしている。

――sasakure.UKさんの楽曲は、曲調・歌詞ともに特徴的ですが、どのように発想するのでしょう?

 まずはストーリーや展開、楽曲の方向性を大まかに決めてしまって、そこから形を整えていきますね。曲の方向性は僕が昔から読んでた本などから大きく影響を受けていると思います。

 曲も歌詞も大体同時に制作し始めるんですが、そのままだととても難解な作品になってしまう。だから僕の場合必ずわかりやすい入り口のようなものを作るんです。楽曲にせよ歌詞にせよ。なんでしょう、開けにくいポリ袋などによく付いてる“開け口”のような……(笑)。あとは曲の軸がぶれないように全体を整えながら一気に完成させますね。

――よく聴く音楽や、好きなアーティストは?

 ZUNTATAさんのようなゲームミュージックのサウンドトラックは今でもよく聴きます。また、昔から聴いてるアーティストさんではP-MODELさん、ピチカート・ファイヴさん、たまさん、矢野顕子さんの音楽が好きです。

――ゲームがお好きと聞いたので、好きなゲームを教えてください。

 『魔界塔士 Sa・Ga』や『メタルマックス』、『真・女神転生』など、ちょっと殺伐とした世界観のゲームがたまらなく好きです。

――ファンへのメッセージをお願いします。

 いつも僕の楽曲を聴いてくれてありがとうございます!

 そして、3月3日にはThird-Ear/UMAAさんより、僕のデビュー・アルバム『ボーカロイドは終末鳥の夢を見るか?』が発売となりました!

 多くの方々にご協力いただいて完成させることができた大事な作品なのですが、特に手もとに置いておきたいパッケージというのを心がけて制作したので豪華な仕様です!

 イラストレーターの茶ころさんが、1つの楽曲につき1枚のイラストを、コンセプトに沿った形で描き下ろしていただきましたので、こちらもあわせてご覧いただけるとうれしいです。これからも自分の方向性ややりたいことを追求していきたいと思います。

 どうぞよろしくお願いします…♪ |’ω’|三|’ω’|シババーン

 なお、7月1日に配信される『初音ミク -Project DIVA-』追加楽曲集デラックスパック第2弾『もっとおかわり、リン・レン ルカ』には、sasakure.UKさんが手掛ける人気曲『ワンダーラスト(A.R.MAGE-EDIT)』と、『モバイリ:センセーション(C.A.LLME-EDIT)』が収録されている。こちらもぜひチェックしてみてほしい。

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(C) SEGA / sasakure.UK / UMAA

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