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2010年10月4日(月)

【電撃攻略本・座談会】ゲーム攻略本の過去・現在・未来Vol.3-2

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 9月24日発売『電撃ゲームス Vol.13』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載されている座談会を、電撃オンラインで2回に分けてお届け。攻略本についての“ぶっちゃけトーク”も飛び出す!?

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【座談会 参加者紹介】

電撃攻略本編集部/デスク
多田羅洋平
攻略本編集部のキーマンで、いつもフル回転で働く男。そろそろ制作がスタートするビッグプロジェクトの攻略本に関して、日々深く悩んでいる。

電撃攻略本編集部
木原大輔
攻略本編集部・現場編集者の代表として参加。現在は『ファイアーエムブレム』の20周年記念本のほか、『ゼノブレイド』の究極設定本を制作中。

元・電撃攻略本編集部/副編集長
野村一真
本記事のライターで、電撃ゲームスの副編集長も務める(一応)。最近、多田羅が取り仕切るビッグプロジェクトの攻略本に携わることが決定した。

元・電撃攻略本編集部/編集長
倉西誠一
元・電撃PlayStation&電撃攻略本編集部の編集長で、現在は「狩られ道さん」と呼ばれるブロガーとして活躍。iPhoneアプリにハマり中。


Vol.3-1の続き)

多田羅 いやいや(笑)。楽しませる方向ですよね。

野村 楽しませる方向性こそ、雑誌の攻略記事に必要なのかもしれない。そう考えると、攻略本編集部と雑誌編集部がもっと連携して、記事をどう展開したらいいか、もっと考えるべきだとは思うけど……。

倉西 半年がかりで1冊の攻略本を制作するケースを考えると、攻略本編集部と雑誌編集部は時間の感覚とか記事の方向性の感覚が、まったく異なっている。何度も両者で連携しようという話はあったけど、結局まともにうまくいったことは一度もない。

野村 まさにそのとおりです(笑)。

倉西 隔週誌の『電撃PlayStation』と、ものにもよるけど3カ月とか半年単位で作る攻略本で考えると、制作期間の問題は今でもある。でもここ最近、両者の方向性が近いものになってきた印象を受ける。

木原 これは私が読者の頃の疑問なのですが、電撃の攻略本を『電撃PlayStation』のライターが作ればいいのでは? と思っていました。『電撃PlayStation』の記事をまとめた攻略本が、なんでないんだろうと。電撃に限らず、そう考える人はいると思います。

野村 雑誌には情報解禁のタイミングで内容がある程度固定化されるという側面があって、再録に関しては実は手間がかかるという問題もある。

倉西 シンプルに考えると人手の問題だよね。まとめるだけでは本にならないから、どうしても手を加えなければならない。でも、それをする人がいない。また、実際にまとめたとしても、こんなもん出せるか! というレベルのものにしかならないと思う。

木原 自分が実際に攻略本を作るようになってから、そのまとめ方こそが、攻略本で最も大切だとわかりました。記事を単にまとめるだけでは、不親切極まりなくて、使えないものでしかないんですよね。

倉西 少し話題を戻すけど、さっきさ、雑誌の攻略記事と攻略本の目指す方向性が相当近いものになってきているって話をしたよね。

野村 ええ。でも、現段階では雑誌も攻略本もやってることは本質的に一緒で、先に進む・クリアを目指すという、古い体制の攻略が記事の主流です。

倉西 でもさ、ちょっと前に軽く話した「ゲームを終わらせない」攻略記事が、これからのテーマだと思うんだよ。その方向性に当てはまるのが、ウチの『モンハン』の攻略本と『FFXI』の旅団本。この2つはゲーム自体も終わらないけど(笑)。でもって、攻略本編集部の編集長だった俺の中で最も印象に残ってるのが『パワプロ』なんだよね。

野村 あれはホント辛かった(笑)。

倉西 いろいろ大変だったのは知ってるけど(笑)。あの本で最初に野村が「都市伝説を全部検証する」って言ったんだよ。『パワプロ』では、このスキルが有効だとか、いろいろいわれているけど、実際はどうなのかわからないから、それが都市伝説なんだと。もちろん、雑誌・攻略本・ネットにも正解がない。だから200万試合もやって検証しますと。なるほどと思って、数カ月後に完成した本を見たら、開発スタッフもひっくり返るぐらいの内容だった。別にこじつけじゃないけど、今思えば、あの本はゲームを終わらせないための本だったよね。まあ、新作が出るまで『パワプロ』自体が終わらないゲームなんだけど(笑)。で、『モンハン』もそういう系統のゲーム。その逆で考えると、終わらせるための攻略本の頂点が『スパロボ』で、やり込み要素や隠し要素をやり尽くすための本が完全本となる。

野村 そうですね。

倉西 『モンハン』や『パワプロ』の攻略本がゲームを終わらせないための本、言い換えると終わらないゲームをやり続けるための本だよね。一方の『スパロボ』とか、そういうゲームに共通するのは、タイトルごとではあるものの、物語の本編をクリアするのにだいたい1カ月かかること。そして、その1カ月ですべての要素が消費されないために、やり込み要素やサブシナリオ的なものが用意されている。でも、これらは消費のスピードを遅らせる意味で存在しているわけだから、今後の攻略本のテーマは、やっぱり「ゲームを終わらせない」になるんだよ。

木原 今までの話を聞いて、ふと思ったんですけど、終わらないゲームってスポーツ的なんですよ。ルールに乗っ取ってやるもので、答えがないから終わらない。まさにスポーツですよね。『モンハン』や『パワプロ』、あと『ウイイレ』がそうです。

野村 私もPCの『フットボールマネージャー』をここ数年ずっとやっている。日本語版が出なくても。

木原 先ほど話題に出たもう一方のゲーム、ストーリーが軸になっているゲームに関して、『スパロボ』に限っていうと、ストーリーを消費するんですけど、そこから派生して原作に興味が移っていく。そして、それらを知りたくなって、『スパロボ』が出ると収録作品のDVDとかが売れたりします。また、収録作品のすべてを知りたいとなると、小説、漫画などにどんどん広がっていきます。その点で考えると、『スパロボ』は終わらないゲームになるんですよ。

野村 そこまで広がると、人生を大きく消費しないと知り尽くせないよね。10年とか消費する(笑)。

多田羅 話題を戻してしまいますが、攻略本でやはり多いのは、現時点だとストーリーが軸のゲームにおけるクリアするための本です。クリアすることが、ユーザーの1つの形になっていますから。

野村 形の話もそうだし、実はストーリーを消費するゲームのほうが瞬発的に攻略情報が欲しくなる。

倉西 瞬発的と考えると、まさにそうだよね。

野村 実は私の中で、今までの攻略本とは違う「将来図のアイデア」があるんですよ。それを実行すると、たぶんそれが攻略本の未来になる。

倉西 ストップ。スペースの都合もあるので、その話は次回以降にしよう。ところでさ、俺達が今回を含めて計3回で話してきたことって、実は机上の空論なのかもしれない。ちょうど、電撃オンラインで攻略本に関するアンケートを集めたわけだから、この集計を見つつ、今まで話してきたことがユーザーの感覚と合っているのか、次回分析してみよう。


『電撃ゲームス』

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データ

▼『電撃ゲームス Vol.13』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2010年9月24日
■価格:650円(税込)
 
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