2010年10月12日(火)
9月18日より全国で公開されている劇場アニメ『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』の公開スタッフ座談会が、10月11日に開催された。
本作は、昨年生誕30周年を迎えたアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの最新作として2007年~2009年に放送された『機動戦士ガンダム00』の、2年後の世界を描いたもの。『機動戦士ガンダム』シリーズの映画作品としては、19年前に上映された『機動戦士ガンダムF91』以来の完全新作にあたる作品だ。
座談会には水島精二監督、角田一樹副監督、柳瀬敬之メカニックデザイン、有澤寛メカニック作画監督、松浦裕暁CGプロデューサー、池谷浩臣プロデューサーといったスタッフが集結。治郎丸慎也さん司会のもと、制作する上で苦労した点や、劇場版で世界に危機をもたらした“ELS(地球外変異性金属体)”の設定などが語られた。以下で、その模様をお届けする。(※インタビュー中は敬称略)
――公開して時間も経ちますが、周りの反応などはいかがでしたか?
柳瀬:泣いたっていう感想をいただきましたね。
水島:わかんないとかなかった? いや、わかるように作ったつもりだけど。
有澤:僕は、動きが速すぎて見えないっていう声をいただきましたね。
松浦:ELSは速いですね。僕はもうお腹いっぱいで見たくないですね。
水島:CGはすごいって言われるよね。
松浦:CGカットがすごい多くて、多すぎて参っちゃったけど、かなり評価をいただいています。
水島:すごい数でしたもんね。
――サンライズ的にはいかがでしたか?
水島:初号試写を終えてからリテイクしたいと言ったら、もう大丈夫、やるなと言われました。サンライズからの反応もよかったですね。会長にもハグされました。よくここまでやったとほめていただきました。
――モビルスーツの戦闘シーンが話題になっていますが?
柳瀬:絵コンテ見た時に、「うわぁ」と思いました。
有澤:僕はもうだめだと思った。劇場版は量も多いし、最後になればなるほど壮絶……。柳瀬さんのデザインしたモビルスーツは、バンダイさんにも、もう少し装備減らせませんかと聞かれたくらいですよ。
水島:(グラハムが乗っている)ブレイブが小さいのがいっぱいで、(デカルトの乗っている)ガデラーザはでかいのが1つっていう。そういえばガデラーザのサイズは、逆算して絵コンテの中で比較していったら、めちゃでかかったね。
角田:それ僕のせいですね!
有澤:僕はメカのシーンをいっぱい書きました。1,900カットのうちの90カットほど描きました。ラファエルが初登場するシーンなど、自分のパートは自分で描きました。
柳瀬:プトレマイオスから出動するところと、映画『ソレスタルビーイング』もやってるよね。
水島:そういえば最初に1人あたりのカット数を決めたのに、守れてないよね。
角田:僕は守りましたよ。
松浦:僕は……軽いトラウマになりましたよ。ELSの描写はかなり多くて、厳しかったです。描ききれないので、制作が進んでいくうちに、「なんでこんなに多いんですか」と。ELSが後ろに何十万といるので。基本的にモビルスーツは手書きで、ELSはCGだったので、演出やコンテとのずれがあったりして、後半はほぼ演出さんとマンツーマンで合わせていく作業をしました。それは本当に大変でした。
水島:本当に対話をしながら作ったね。
松浦:いや、もうあんまり顔みたくない(笑)。嘘です(笑)。
――ライルのメガネは誰の趣味ですか?
水島:僕です! メガネフェチなんです。スタッフのメガネは僕が買ったんですよ。バカですね! メガネが似合わないっておっしゃる人いますけど、絶対に誰にでも似合うメガネがありますよ! メガネ雑誌にコラム書きたいけど、話来ないね。
――マリーの民族衣装は?
水島:僕です! アウトドア雑誌をめくりながら決めました。夏フェスにいるお姉さんの格好をマネました。
角田:高河ゆんさんのデザインは?
水島:ミーナの服は僕がイメージを高河さんに送って、それを高河さんが描いてくれた。高河さんは忙しいから、頼むのも申し訳ないんですよ。こんな仕事を頼んじゃって申し訳ないってね。デザイン頼むとタイミング的に厳しい時は、サンライズでやりました。そこはコントロールできるようにしたので、それで角が立つことはなかったですね。
――ライブ感ある現場ですね。
有澤:そうですね。
水島:夜中の2:00に来てね、とかね。まあ朝方の3:00や4:00に監督が現場にいるのはイヤでしょうね!
――続編の予定はありますか? 黒田さんがティエリアの名前の由来を劇場版で明かすと言ったのに明かされませんでしたが、どうなるのでしょう?
池谷:ティエリアの名前のことは、黒田さんが心に秘めているんです。続編は……声を多くいただいているけれど、今日この時点で決まっていることはないですね。でも、そういう声は大事にしていかなきゃいけない、と。天から声が降ってきたら考えようかな。
――可能性はゼロではないってことですね?
池谷:そうですね。
水島:サンライズに投書とかメールとかお願いします。
――ELSに取り込まれた人はどうなったんですか?
水島:成功例の1人はスメラギの艦長になったんだけど、年をとっていないんです。イノベーターになれる因子を持っている人たちの中でELSと融合した人は、成功例とダメな例があって。ELSの記憶を受け取りきれなかった人はだめになっちゃうけど、融合してもELSの思いをシャットアウトすることで成功する人、生き延びる人もいるんです。成功するということは、互いが相互理解することで、あの世界で共生しているということ。刹那の場合はその先を行っちゃったんですけどね。あ、よく言われますがメタルスライムになったわけではないです。
――最後の花については? 「なぜ花?」という声が多いようですが、いかがでしょう。
水島:花は万国共通で、平和の象徴だと思うんです。本編でも花を大事に描写していますが、本編の終盤、大きな花が咲いたら、それを見た人間たちが「ELSが人類を受け止めてくれた」と思えるようにしました。観客もそう思ってくれるだろうと思いましたが、中には愛のかけはしと思った方もいらっしゃって、逆に驚きました。ELSはとてもシンプルで、「他者のことを知りたい」と思って融合しようとするんです。それで融合するのに、死んじゃう人もいる。演出でルールを決めるまでは大変だったけどね。
松浦:最初は飛び方も悩んでましたよね。シンプルだけに、悩んじゃう。
水島:ELSの1個1個は頭がよくないから集団でくるんだよって。シューティングゲームみたいって言われたけどね。今回は1対1の戦いにならないシチュエーションを考えました。ELSが接触したら取り込まれる(融合する)、っていう方が緊張感があると思いました。緊張感を高めるためにそういうことをしました。先にそれを決めたから、絵コンテ描く人は大変でしたね。
――それでは時間になったので、最後にひと言ごあいさつをお願いします。
水島:今日みたいな感じで非常にざっくばらんに話ができる仲間たちと、約1年間真面目にひーこら言いながら作ってきました。上映もあと残り少ないとは思いますが、大きなスクリーンで見れる間に見ていただいて、サンライズに「なんか続編やれよ」と投書をしていただきたいなと思います。10年くらい経ったら急に外伝とかやるかもね。今回の劇場版の空白の時間について発表できるかもしれないしね。今後とも末長くよろしくお願いします。
(C)創通・サンライズ・毎日放送
■映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』
【公開日】2010年9月18日より全国ロードショー