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2010年10月25日(月)

【『ソラトロボ』インタビューVol.4】作品を華麗に彩るキャラ

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 バンダイナムコゲームスから10月28日に発売される、DS用ソフト『Solatorobo それからCODAへ(以下、ソラトロボ)』。『電撃ゲームス』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載された、本作の連載インタビューを電撃オンラインでお届け。Vol.4では、松山洋氏とキャラクターデザインを手掛けた結城信輝氏にインタビュー。『テイルコンチェルト』のエピソードや、ケモノキャラクターへの熱い思いなど、ファンにはたまらない話を盛りだくさんでお届けする。

※インタビューの文章は『電撃ゲームス』7月29日発売号で掲載した内容に一部修正を加えたもの。インタビュー中の名前は敬称略。

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【『ソラトロボ』インタビューVol.4】

エグゼクティブディレクター
松山洋氏(写真左)
 サイバーコネクトツーの“顔”を務める社長。『ソラトロボ』の開発には、世界設定や企画段階からかかわっており、作品への愛も人一倍。

キャラクターデザイン
結城信輝氏(写真右)
 アニメーター、イラストレーター、漫画家として活躍。過去のゲーム作品では『テイルコンチェルト』のキャラクターデザインも手掛ける。


●15年の歳月を経ても両氏の心はつながっていた

【『ソラトロボ』インタビューVol.4】

──本作のキャラクターデザインを結城さんが担当することになった経緯を教えてください。

松山:『ソラトロボ』は、“完全新作”として制作している作品です。でも世界観の設定は、弊社の記念すべき処女作『テイルコンチェルト』と共有しているんですよ。そこで、キャラクターデザインを誰にお願いしようかと考えたときに、『テイルコンチェルト』で担当してくださった結城さんと、もう一度この世界を作っていきたいなと思ったんです。

結城:実は、お話をいただいたときは、すでにゲームのデザインや、ゲームプレイができるROMがある程度出来ている状態だったんです。それを見て、自分なりの意見を言わせていただきました。

松山:結城さんへのプレゼンのときは、ゲームに触れられる状態になっていて、キャラクターも動いているし、デモもバッチリ動いていました。でもキャラクターデザインには、いくつか問題が残っていたんですね。結城さんには、それを『ソラトロボ』に合うデザインにしていただきたいというお願いをしました。

──『ソラトロボ』のゲームや、ディレクターの磯部孝幸さん(WAKA名義でイラストも担当)のイラストをご覧になって、結城さんはどのように思われましたか?

結城:もともと『テイルコンチェルト』のキャラクターデザインを引き受けた理由が、磯部さんの描くデザインや世界観にほれ込んだからだったんです。当時、僕はかなり忙しくて、それ以上仕事を増やす余裕がない状態だったのですが、磯部さんのイラストを見せてもらったら「これはいいな」と感じまして。確かに、15年前の磯部さんは今ほど絵が達者ではなかったですが、本当に魅力的な世界観を描いていたし、独特な味もあって「線を整理してこのまま使えばいいのでは?」と思うほどでした。もしも僕じゃない誰かが担当して彼が描く世界を壊すくらいなら、ぜひ僕がお引き受けして、このテイストを残したいと思いました。

──本作のようにベースがあってデザインするのと、イチからデザインするのでは違う点はありますか?

結城:いろいろと違いますね。まずベースがあるものは、作品において何が優れているのかを自分なりに判断して、そこを生かすように描いています。逆にイチからデザインを考えるときは、僕の絵のオリジナリティを買ってオファーをしていただいているわけですから、完成したイラストをひと目見たときに「結城さんのイラストはやっぱりコレだよね!」と思っていただける結城信輝らしい絵を描かなければいけないなと思っています。

【『ソラトロボ』インタビューVol.4】

──『テイルコンチェルト』と『ソラトロボ』のキャラクターデザインは、結城さんがデザインされた他の作品とは、かなり雰囲気が違いますよね。

結城:確かに、他のお仕事で僕が描くものは線が多いです。でも、昔から僕自身はそうじゃない絵も好きだし、他のタッチも描けると思っていたんです。そんな時に、『テイルコンチェルト』のキャラクターデザインに挑戦させてもらいまして。そこで描いたものが、アニメ制作会社マッドハウスの社長・丸山さんに気にいっていただけて、「結城君はこんなイラストも描けるんだ。これ、ウチでアニメ化できない?」なんて話をしたこともありました。そのときはアニメ化こそ実現しませんでしたが、数年経って『ソラトロボ』でマッドハウスがアニメ制作を担当するなんて、何か縁を感じますね。

松山:結城さんにとって、『テイルコンチェルト』のお仕事は、それまでにご自身が手がけてきたどの仕事にも似ていなくて、愛着があったそうなんです。そんな経緯を知らない私たちが『ソラトロボ』のキャラクターデザインのお願いをしたら、「ぜひ僕にやらせて!」と言ってくださいまして。『テイルコンチェルト』の制作からだいぶ時間は流れましたが、我々と結城さんの心の中に、この世界に対しての想いがずっとあり続けていたんだなぁと思って、すごくうれしい気持ちになりました。

結城:とっても素敵な世界観なので、もっといろいろなことができるんじゃないかなという想いがずっとあったんです。ただ今回、本格的なSF要素や起源(ルーツ)に迫る冒険を描くというお話を聞いたときは、反対しましたけどね。僕としては、世界の秘密に迫って物語を完全燃焼させるよりも、膨大な世界設定を生かして「この地域にはこんな場所があって、この時代にはこんなことがある」というように世界観を広げていってほしいという想いがあったので。この作品で世界の秘密が明かされて物語が完結してしまうと寂しいなぁと思ったんです。

松山:そのお話を聞いたときに、結城さんが『テイルコンチェルト』を本当に大切にしていただいているのがわかって、とてもうれしかったのを覚えています。でも、『テイルコンチェルト』は、それ単体で物語が完結しています。この作品と同じ世界観を共有しているとはいえ、新作の『ソラトロボ』は、新しい魅力で勝負するべきだと思ったんですね。その魅力を、本作では“自分たちの生まれた起源(ルーツ)を知る旅”というSF要素に決めたわけです。しかし、本格的なSF要素だけを全面に押し出すのではなく、物語の第1部は世界を知ってもらう『テイルコンチェルト』に少し近いような冒険、第2部はいよいよ世界の謎に迫っていく戦い……という2部構成にしました。私たちが思い描いているこの世界には、他にも物語の舞台となるような国がたくさんあります。ほのぼのとした冒険はまた次の機会をご期待いただくとして、『ソラトロボ』では、浮遊大陸を舞台にしたSF世界の熱い物語を楽しんでいただけたらなと思います。

結城:そのぶん、キャラクターのデザインは、ほのぼのした世界観とシリアスなストーリーのクッションになるように調整しました。ベースのデザインとして提示されたイラストより線を少なくしたり、等身を下げたりして『テイルコンチェルト』のデザインに近づけています。


●ベースから“引き算”されて生まれた洗練されたデザイン

──『ソラトロボ』のキャラクターデザインは、どのようにしてでき上がっていったのですか?

結城:『ソラトロボ』は、10年近くディレクターの磯部さんが設定を練っていた作品です。そのため世界観はすごくいい感じに広がっていたのですが、キャラクターのデザインは複雑になりすぎていました。僕は、近年のゲームの傾向として、パーツを増やしてキャラクターを差別化するのが主流になっているように思います。はじめに見せてもらった『ソラトロボ』のデザインにも、いろんなパーツを付けては外しの試行錯誤の跡が見られました。そこで自分なりにキャラクターの線を減らして、複雑になっていたデザインを整理しました。そういう意味では、大元となる磯部さんのベースから、引き算していくようにデザインを決めていった感じです。

松山:設定に凝ったために、それをデザイン面にも反映させようとして、パーツや線が過剰に多くなっていたんです。私たちのようなゲームを作る人間は、“足し算”をしたくなる性質でして、ゲームのスペックが上がっていくと「描写できるならとことんやろう!」とつい考えてしまう(笑)。3年前にベースとなる磯部のイラストを結城さんにお見せしたとき、結城さんは「僕ならこうするよ」と、その場でサラッと線画を描いてくださったんです。それを見て「あ、なるほどな」と私たちもモヤモヤが晴れた感じがしました。その打ち合わせからは、すぐに方向性が決まりましたね。ただ、全部のキャラクターが描き上がるまでに、2年くらいかかりましたが(笑)。

結城:そうですね(笑)。アナログでの作業は、1点の納品なら楽しく描けるんですが、枚数が多くなると結構大変なんですよ。僕は、イラストのお仕事を請けるときは、最初にアナログとデジタルのどちらで描くかを相手に確認するようにしているんですが、松山さんが「絶対にアナログで!」っていうものだから……。

松山:あれは結城さんが「アナログでの作業は時間がかかりますけど、この世界を描くならアナログだと思います!」っておっしゃったからじゃないですか(笑)。思ったとおりに時間はかかりましたが、でき上がったデザインを見たときは、本当にテンションが上がりました。『テイルコンチェルト』の制作にかかわったメンバーと「これだよこれ!」という話で盛り上がったものです。

【『ソラトロボ』インタビューVol.4】

──本作の登場人物は、ほとんどが“ケモノ”の姿をしています。結城さんは、ケモノキャラクターを描くうえで注意されていることはありますか?

結城:まず、普通の人間の頭に耳がポコッと付いているのはちょっと違うだろうと思うんです。この耳の付き方についての話は、松山さんと意気投合しましたね。

松山:うん、うん。

結城:たとえば、いわゆるケモノキャラクターを描いたイラストの中には、普通の人間のように、顔の横に耳が生えていそうなデザインであるにもかかわらず、頭部にもケモノの耳が付いているものがありますよね。それを見ると、「じゃあ頭の上に付いているのは付け耳?」と思っちゃうわけです。自分が描くときは、そうした不自然さが出ないようになるべく気をつけています。

──ケモノのキャラクターが登場する作品で、特に印象的なものやお好きだったものはありますか?

結城:僕がケモノキャラクターに目覚めたのは、幼いころに見た手塚治虫さんの作品の影響が大きいです。『ワンサくん』というアニメ作品の登場人物は基本的に犬や猫なのですが、作中で彼らがミュージカルをする場面とかがありまして。そこでは、みんな二足歩行で着物を着て踊り出すのですが……グラマーな犬や猫のお姉さんが、フレンチカンカンとかを踊っているわけですよ! それを見て、子ども心にズキュンときてしまいました(笑)。あと、中学生のころに読んだ手塚さんの漫画作品『きりひと賛歌』もかなりの衝撃でした。この2つがおそらく僕にとってのケモノ作品のルーツでしょう(笑)。


●色にもこだわりがあるオープニングアニメーション

【『ソラトロボ』インタビューVol.4】

──結城さんはオープニングアニメの総作画監督も担当されていますが、そちらの作業で何か印象に残っているエピソードはありますか?

結城:“色”に関してはちょっと難しかったですね。アニメの制作現場はスケジュールがタイトなので、彩色が完成していない状態の絵でも、それをダミーとして制作を進めることが多いんです。こうした制作スタイルの場合は、フィニッシュする直前に本物の色に差し替えるんですよ。TVアニメや劇場版を制作するときは、設定の段階でベースの色や昼夜の状況に合わせた色を決めてから作り始めるので、このスタイルでも問題ありません。でも、ゲームのオープニングアニメの場合は、1カットしか登場しないシーンが多いので、そのあたりは細かく設定せずに作っていく場合があるんです。今回の制作にあたってはそのやり方で作業を進めていたものですから、途中で完成したときの色がどうなるかわからなくなって、とても心配になってしまったんですよ。そこで、僕がチェックする段階で、全体的にカラーバランスを調節させてもらいました。本当は監督が見る前に僕が画面にフィルターをかけたり、色の調節をするのは反則なんです。そこで制作に口出ししてしまったことについては、申し訳ないことをしたなと思っています。

──それでは最後に、発売を楽しみにしている読者の方に、メッセージをお願いします。

結城:僕自身も、発売をとっても楽しみに待っている作品です。まだプレイをしていないので、発売のあかつきには存分に楽しみたいなと思っています。皆さんも期待していてください!

松山:長らくお待たせしましたが、ついにゲームの発売日と正式タイトルが決定しました。今回は通常版のほかに、限定版も発売します。限定版はサントラの他、皆さんがきっと欲しがっている完全設定資料集が同梱されます! 数量限定生産なので、予約は急いだ方がいいですよ(笑)。発売日も特典も決まり、ここから『ソラトロボ』のカウントダウンがスタートといったところです。ぜひ、楽しみに待っていただければと思います!

→10月27日掲載のVol.5は、谷口欣孝氏にメカニックデザインについて聞く!

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