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2010年12月7日(火)

【洋鯨亭 38回】『Fallout: New Vegas』ローカライズ裏話を聞く!(後編)

文:電撃オンライン

【洋鯨亭 38回】『Fallout: New Vegas』ローカライズ裏話を聞く!(後編)

【洋鯨亭 38回】『Fallout: New Vegas』ローカライズ裏話を聞く!(後編)
▲ローカライズ現場の全般を任される岩本けいプロデューサー。今までさまざまなタイトルのローカライズにかかわっていて、そのタイトル数の多さに驚かされました。

 こんにちは。洋ゲー紹介所“洋鯨亭”のRONです。今回も『Fallout:New Vegas(フォールアウト: ニューベガス)(以下、FONV)』のローカライズに関するインタビューをお届けします。

 後編は音声とテキストの翻訳についてのお話を中心に、裏話などをお伺いしました。ご協力いただいたのは、前回に引き続き、ローカライズを担当するゼニマックス・アジアのプロデューサー・岩本けいさんです。それでは興味深いお話の数々をご覧ください。

■今回のスタジオ収録は?

──以前、御社のゼネラルマネージャーである高橋さんにインタビューさせていただいた時に、「『Fallout 3』の音声収録は、4つのスタジオを1カ月以上借り切って行った」とうかがいました。今回はどうでしたか?

岩本さん(以下略):今回も4つのスタジオを使って、同じぐらいの日数で収めました。

──今作では使用しているボイスが増えているそうですが、そう考えると同じ規模で作るのはかなり大変だと思いますが……?

 そうですね。テキストと収録する音声は、前作よりも2割ぐらい増えているんですよね。なので、収録中は、結構死ぬかと思いました(笑)。それでも前作と同じぐらいの規模と期間で済んだのは、前回の反省点を生かして効率がよくなったからでしょう。全スタッフが本当に頑張ってくれて、彼らがいなかったらとても実現できなかったと思います。

──『Fallout 3』のローカライズでは、どのへんに課題があったのでしょうか?

 色々とあるんですけど、まず収録しなければいけない音声が膨大な量で、開発元からエクセルデータで送られてくる会話と会話の文脈など、関連性がつかみきれていなかったことも大きかったですね。それだけに、かなり手探りで検証しながら作業をしていた部分が多かったんです。

――たしかに、会話の途中でいきなりテンションが変わったりなど、多少気になる点はありました。

 そうですね。で、今回はさすがに慣れまして、データをざっと見て「これは会話の流れとして間違っているんじゃないか?」と誤りを発見できるぐらいになっていました。開発中にバージョンアップをしてデータが変更になることはよくありますし、結局は人間の作業ですから。そういった間違いがあるのは仕方がないんですけどね。ただ、そのへんの経験はしっかりと今回の作業には反映されているので、このスピードでできたんだと思っています。

 また、収録スタジオのスタッフさんも「なるべく同じ人を集めて!」って感じで、前作の作業と課題をわかっている人にお願いできたことが大きいですね。

──なるほど。スタッフのコーディネートにまで、しっかりと気を配った結果というわけですね。では、今回の収録に声優さんは何人ぐらい参加されていますか?

 正確な数字は覚えていないんですが、40人弱ぐらいはいると思います。

──ちなみにユーザーさん側から「この声優さんを使ってほしい」という要望が寄せられたりしますか?

 直接はないんですけど、インターネットの書き込みを見た感じでは、色々とありましたね。書かれている声優さんのお名前を見て「この方の声に合うようなツンデレ美少女キャラは、『FONV』には登場しないんだよなぁ……」と思ったりしていました(笑)。

──『Fallout』シリーズの世界だと、ちょっと萌え系の声は入り込む余地はなさそうですね……(汗)。

 そうですね。逆におっさんキャラの声に合いそうな声優さんを挙げていた方のご意見は、結構参考にさせていただきました。ちなみに、海外版ではエミー賞(アメリカのTV関連の功績に関する賞)を取るような俳優さんも出演されているんですよ。

――海外でもゲームに有名な役者さんを起用することがあるんですよね。

 注目されますからね。で、前回は予算の面などで難しかったんですが、今回は声の部分にも力を入れようということになりまして。こちらでも有名な声優を起用してはどうだ、という議論がありました。ならば、いっちゃいますか! というわけで、今回は有名声優さんに多数ご参加いただいています! ……と言っても今作はNPCも含めて登場人物が多いですから、全員を豪華にする予算と時間はなかったんですけどね。なので、重要なキャラクターを中心にお願いをしています。

──たしかに、印象に残るキャラクターは聞き覚えのある声の声優さんが担当されていますね。

 でしょ? わかる人にはわかる声優さんを起用しているつもりです。実は前作では、制作のタイミング的なこともあって声優さんのお名前を公表できなかったんですよ。そうしたらインターネットの書き込みで、このキャラは声優の誰々さん、このキャラは誰々さんというように、みんなで推測をしているのを見かけたんです。そのやりとりがとても楽しそうだったので、その後もあえて公表しなかったんですよ。そういう点では、今回は前作よりもわかりやすくなっているかも知れないですね。

──とはいえ、声優さんのお名前を公開してほしいというような要望もありますよね?

 弊社のユーザーサポート宛には、そういったご要望もありました。ただ、参加されている声優さんのお名前は公開していますが、誰がどの役を担当されているかは秘密にさせてください(笑)。それは、声優さんのリストを頼りにその方の声が聞けるキャラはどこにいるんだろうかとゲーム世界を探索してほしいから、という理由ですね。そういう楽しみがあってもいいですよね。

──ちなみに、岩本さんお気に入りのキャラクターはいますか?

 全員! と言いたいところなんですが、しいて何人かを挙げるとすれば、コンパニオン(仲間)として冒険に連れて行ける“キャス”と“ベロニカ”いう2人の女性ですね。キャスはニューベガス地域の一大勢力・NCRの前哨基地のバーにいるカウボーイ風の女性、ベロニカはBrotherhoodの資材調達員です。2人ともおてんばな性格なんですよねぇ。

──なぜその2人なんですか?

 連れて歩くなら女の子のほうがいいに決まってる! ってだけです(笑)。

【洋鯨亭 38回】『Fallout: New Vegas』ローカライズ裏話を聞く!(後編)
▲バーにたたずむ“キャス”。非常に勝気な性格で、戦闘時にはショットガンを持って敵に突撃することも。

──あー、そこは重要です(笑)。自分は、今は小山力也さんの声のキャラクター(名前は伏せておきます)が仲間になっています。

 あぁ、あのキャラクターですね。あの声はキャラクターにピッタリだと思うんですよ。実は裏話になるんですが、開発元からキャストのイメージリストのようなものが送られてきまして。そこには、「○○のキャラはエルビス・プレスリーのような声」だとか、色々と書いてあるんですよ。その中で「あのキャラクターのイメージはキーファー・サザーランドの出演した作品の△△という人物」みたいなことが書いてあったんです。それを見た瞬間「じゃーそうしよう!」と、配役が決まりましたね(笑)。

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▲小山さん演じるキャラがこの人物。24時間くらいなら平気で走り回れそうな風貌です。

──それならバッチリです、間違いないです(笑)。では、先ほどの2人以外には好きなキャラクターはいますか?

 あとはMr.ハウスですね。彼は様々なルートを通って出会う方法があって、その分色々な会話パターンがあるんです。ケレン味たっぷりのキャラクターにもなったり、時には単なるエロおやじになっているパターンがあったりして、非常に楽しいんですよ。

→言葉の“なまり”にまでこだわったローカライズがしたい(2ページ目へ)

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