2011年1月13日(木)
ここからは、伊東さんへのインタビューを掲載する。影響を受けた映画やゾンビへのこだわり、さらにはちょっとした攻略法もお聞きしたので、ぜひご覧いただきたい。
――変わった設定のゲームだと思うのですが、ゾンビを動かしていくというアイデアはどこから生まれたのですか?
もともとゾンビが好きということです。また、タッチ系のハードが出た時から、それで何かの集団を動かすゲームを作れないかと模索していたということもあります。もともと、サウンドノベルのシナリオディレクションをやっていたため、人間を描いてきました。ゾンビも元は人間なので、そこらへんを題材にできると思い、制作しました。
――タイトルの『ぞんびだいすき』というのも、伊東さんが好きということから決まったのでしょうか?
企画の段階から、このタイトルでプレゼンしていました。弊社の中村(チュンソフト・代表取締役社長の中村光一さん)も「そのままでいい」と話していました。最初はカタカナで“ゾンビ”だったのですが、ひらがなの方がマッチするかと思い、現在のタイトルになりました。
――少し不思議な世界観の本作を作る上で、こだわったのはどこでしょうか?
僕がもともとゾンビが好きということですね。しかし、誰でも楽しめるようなゾンビを表現することには注意しました。
――イラストを見た限り、低年齢向けなのかと思っていたのですが、大人でないとわからないようなネタもあり、驚きました。
20歳以上でゾンビの映画を見ている人を意識しています。しかし、低年齢を意識していないわけではありません。画面をタッチして、ゾンビが動くだけでもおもしろいと思うので、幅広い世代に楽しんでもらえるかと。
――影響を受けたゾンビ映画はありますか?
ガスによってゾンビになるということや、PVのカットは『バタリアン』の影響が強いです。しかし、社内にはゾンビに詳しくないメンバーもいます。そんな人には、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『ゾンビ』というオーソドックスなゾンビ映画を見てもらいました。バカバカしさは『バタリアン』で、切なさはロメロ作品に影響されています。
――そのゾンビですが、個々の設定がかなり細かいと感じました。何人くらいで考えていったのですか?
僕1人でやりました(笑)。というのも、たくさんのゾンビがいるのですが、人間の時につながりがあるゾンビもいる。たとえば、もともと恋人だったとか。それを描いていくなら、(設定の構築は)1人でやった方がいいだろうという判断です。ただ、ゾンビ70体、アイテム300個、そして市民の設定をすべてやったため、途中から少し大ざっぱになっています(苦笑)。でもその“ゆるさ”もゾンビらしいのかなと。
――ゾンビですが、移動している途中で他のことに気をとられたり、勝手に攻撃したり、思い通りにいかない面があるように感じたのですが、あえてそうしているのでしょうか?
あえてそうしています。ゾンビはそれぞれ状況を判断して動いているんです。実はゾンビは、それぞれ2フレーム(2/60秒)ごとに周囲を見ている。70体のゾンビが、1秒の間に何度も状況判断しているので、完全にプレイヤーの思い通りには動かないと思います。
――オススメの育成を教えてもらえますか?
スピードはダッシュで補えるので、スピード以外を育てることです。あと、序盤はボスに一直線で向かうのがいいのですが、スキルを覚え始めたら、市民から倒してボスにいき、スキルを使うのが重要です。
――アクションパートのバランスではどういったところを意識していますか?
自由にルートを決めてもらうことには、こだわりました。あと、誰でも進められるように注意しています。具体的に説明すると、ゾンビは倒れても次のステージでは使えますし、リタイアしても回収したアイテムは入手できてデメリットはない。つまり、クリアできなくても繰り返しプレイしていれば、いつかは進める作りにはなっています。
ただ、3ステージごとにつまづくくらいのバランスにしています。つまづくポイントではサブクエストが出てくるので、そちらをプレイしてから挑んでいけば、クリアできるかと。
――“おまかせバトル”を入れたのも、進んでもらえるようにという意図があるからでしょうか?
ライトな人でもクリアまでやれるように、ということです。あと、モニターした際の意見で「ゾンビを見ているのは楽しいけど、操作が忙しい」というのがありました。そんな人でも、“おまかせバトル”の動きをなんとなく見て、ゾンビが成長していけば、クリアできるようになるかもしれません。
――以前に『シレン・モンスターズ ネットサル』をリリースしていますが、ゾンビ同士がサッカーする“デッドサル”モードを入れたのと関係しているのでしょうか?
……すみません、関係ありません。もともとはダジャレだったんですよ(笑)。「フットサルとデッドサルって似ているな」程度の。うまく操作できないとおもしろさを完全に味わえないかもしれませんが、ワイワイ対戦できるモードになっていると思います。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
少し大味ですが、にぎやかなゲームになり、弊社としては異色なタイトルとなりました。ゾンビ作品は多くありますが、ゾンビ側のゲームという一風変わった『ぞんびだいすき』。切なくて、どこかコミカルな作品になっているので、ぜひ遊んでみてください。
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