2011年1月14日(金)
――先ほど移動中の視点に関する話がでましたが、学園生活パートの移動画面をFPS視点にしたのはなぜですか?
小高:まず舞台を閉鎖された学園、特殊で奇妙な空間にしたかったんです。それは、やはり3Dで歩きまわらないと伝わらないですし、初期段階からいろいろ歩き回りながら探索できるようにしたいと思っていました。3Dの移動がめんどくさいという方もいらっしゃいますが、そういう人のためにマップ画面から瞬間移動できる機能ももりこんでいます。
齊藤:よりハッキリ世界観を見せたかったのと、従来のアドベンチャーとは違った部分を見せたかったんです。自分で動きまわれるようにして、その2つを感じでもらいたいと思いました。FPSというスタイルにすることで、それは達成できたかなと思っています。
――“2.5Dモーショングラフィック”は、かなり独特な演出だと思うのですが、このシステムを採用した経緯は?
小高:『ダンガンロンパ』のシナリオやキャラクターを実際にどうやって見せるようかと考えた時に、2Dの風景に2Dのキャラクターをそのまま置いても新しさを感じなかったんです。ムービーのお仕置きシーンも、普通にセル画っぽいアニメで見ても別に新しくない。「何か新しいことをしたい!」と、ウチのムービースタッフに得意の丸投げをしたんですね(笑)。そうしたら、3Dの空間に2Dのイラストを配置するような表現法を見つけてきまして、これはまだゲームではやっていない表現だからおもしろいのではないかと。“飛び出す絵本”のようなイメージですね。サイコな世界観にポップな要素という意味でも合っているんじゃないかなと。
――マップ移動の際にキャラクターを横から見るとペラペラなのがおもしろいですよね。つい後ろ姿を見たくなります。
小高:結果はわかっているんですが、つい見たくなりますよね。2.5Dモーショングラフィックはゲームとして新しい表現だとは思っています。ただ、生み出すのにとても苦労しました。
齊藤:一度3Dに全部戻そうかという話が出て、グラフィッカーに作ってもらったんですが、でもこれじゃあインパクトないよねと、相当試行錯誤しましたね。
小高:どこからどこまでを3Dにして、どこからどこまでを2Dにするか、その線引きに苦労しました。過去の事例がなくて、グラフィッカーが参考にするモノがないのも、時間がかかった原因の1つですね。
――個人的には、お風呂場のシーンがすごく印象的でした。背景が出てきてお風呂ができた後に、イスが1個ずつススススーって動いたのを見て、「この表現すごい」って思ったんです。
小高:そこを見ていただいてありがとうございます!(笑) 部屋は、1つ1つ異なる出現パターンを用意しました。スタッフが楽しんでいろいろやってくれて、さまざまなバリエーションができました。
――次は、学級裁判パートにアクション要素を取り入れることになった経緯を伺いたいのですが。
小高:謎解きにしてもクイズを解くだけじゃなく、何か新しいゲーム性を出したくていろいろ練っていた時に、ポッと“ハイスピード推理アクション”ってキャッチフレーズが出てきて、いきなりジャンル名から決まりました。このジャンル名は、最初から考えていた“議論する”という要素とすごくマッチしまして、そこからシステムなどを作り上げていきました。
齊藤:アドベンチャーゲームという呼称でひとくくりにされてしまうと、どうしても既存のアドベンチャーゲームとイコールのイメージが抜けないんですよね。そこでアドベンチャーという枠を超えるといった意味で、推理とアクションを融合させてさらにスピード感が加わったら、新しいゲーム性をイメージしてもらえるんじゃないかと。
小高:アクション的な楽しさと言いますか、失敗して上手になるという推理ゲームにはなかった要素を入れようと頑張りました。ただアクションゲームの場合、失敗すると結構前に戻されちゃうじゃないですか。『ダンガンロンパ』は推理ゲームでもあるので、前に戻してしまうとストレスを感じでしまう。そこは今回のゲーム性を考えて、失敗する直前に戻してリトライさせてあげたほうがいいんじゃないかなと思い難易度を下げました。
――本作に“スキル”という概念を取り入れた理由を教えてください。
小高:基本は推理アクションなんですが、そこにRPG的な要素も入れてもっと新しいゲーム性にしたかったんです。企画の当初から、他のキャラクターと仲よくなったらスキルを手に入れられて、装備できるという要素は考えていました。
――スキルはさまざまな場面で活躍しますが、なにかオススメのスキルはありますか?
小高:探索で活躍する霧切の“観察眼”と、マシンガントークバトルで活躍する山田の“クラフトワーク”ですね。あと、一番最初に持っていたほうがいいのは、朝日奈の“ランニング”。あれはマストです。移動がすごく楽になります。あとは自分なりの装備を楽しんでもらえたらなと。スキルを手に入れる時、そのキャラクターのバックボーンを知ることができるので、ゲーム的にもストーリー的にもより深く『ダンガンロンパ』を楽しむことができると思います。
――でも、殺されたり処刑されたりしていなくなってしまったキャラクターからは、スキルを入手することができなくなってしまいますよね。ぶっちゃけた話、死ぬまでにスキルを手に入れないといけないですから、どのキャラクターと仲よくするかの判断が意外と重要に……。
小高:そうですね。好感度上げている最中に死んでしまうパターンもあると思うんです。でも、そういうところも味わってほしかったんです。「あのキャラクターに会っておけばよかった」って。もちろんゲームですので、リセットしてやり直すという手もありますが……人生はリセットできませんよ?(笑)
――そんな教訓が込められていたのですね……。殺人や処刑シーンについてですが、ゴア(残酷)表現で気を遣われた点はありますか?
小高:“サイコポップ”から外れないことですね。いきすぎてしまうとただのサイコになってしまうので、血をピンク色にするなど残酷な絵をいかに残酷じゃないように見せるかという部分は、グラフィックスタッフ全員が気を使ったところだと思います。CEROにも配慮しましたし。おしおきムービーもただ残酷に見せるだけなのもどうかなと思いまして、あえて違う方向性で見せていきました。単純に残酷なだけよりも、もっと深くユーザーさんを揺さぶることができるような映像にしました。
齊藤:残虐な処刑シーンで、グロい部分をスリリングに見せることを目指しているワケではありませんでした。内容的にはキツいことやっているけれど、見せ方としては多くの人に受け入れてもらえるように柔らかく、おもしろく、新しくというのを心掛けました。
小高:グロいモノをグロく見せたら『ダンガンロンパ』の世界観ではないですから。あくまで奇妙で“サイコポップ”的に見せようということで、ああいう処刑の形にしました。
(C)Spike All Rights Reserved.