2011年2月15日(火)
短編小説『シースルー!?』で第17回“電撃大賞”の電撃文庫MAGAZINE賞を受賞した天羽伊吹清(あもう いぶきよ)先生のインタビューをお届けしていく。
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▲こちらは『電撃文庫MAGAZINE Vol.18』に掲載されている『シースルー!?』のイラスト。 |
『シースルー!?』は、好きな女の子の服が1枚だけ透けて見えてしまう能力を身に付けてしまった純情少年・速水柾の懊悩(?)の日々を描いた、肌色成分多めのラブコメディ。そんな本作を、どうして書こうと思ったのか? 天羽先生と、担当編集にお話を伺っていく。
――この作品を書こうと思った経緯を聞かせていただけますか?
天羽:実は、『シースルー!?』とはまったく別の作品を書いていた時に思いついたアイデアが元になっているんです。「こういう作品のほうが楽に書けるんだよなぁ……」なんて考えて、突発的にできました。
――ちなみに、その時書いていた別の作品はどういう内容だったんですか?
天羽:格闘モノです。ちょっと前に、TVドラマで女の子が相撲を取る……といった内容の作品がありましたが、テイストとしてはそれに似ていますね。
――『シースルー!?』が書きやすかった、とおっしゃっていましたが、どのあたりが書きやすかったんでしょう?
天羽:ギャグで、しかも会話のやり取りで物語を展開していけるところですね。格闘シーンが出てくると、どうしてもその部分にこだわって描写しなければいけませんので、そこでうまくテンポを出しづらい、というところがあったんです。それよりは、やっぱり会話メインである『シースルー!?』のほうが、簡単に書けましたね。
――簡単に、ということですが執筆にかかった時間はどれくらいでしたか?
天羽:最初に書き上げた段階では、1カ月はかからなかったくらいでしょうか。応募したのは第2稿で、書き直しにかかったのは2週間くらいです。
――“好きな人の服が1枚だけ透けて見えてしまう”という設定やキャラクターについて聞かせていただけますか?
天羽:設定は他の作品でも時々見るものですが、自分が味付けしたらどうなるのかな……という感じですね。キャラクターについては、あまり人数が多くならないように気を配りました。多くしすぎてしまうと、あとで自分の首をしめてしまいそうだからです(笑)。
――この能力がらみで、ちょっと引きになるような終わり方をしていますが、この続きは何か考えているのでしょうか?
天羽:はい。こちらは『電撃文庫MAGAZINE』で連載することになりましたので、そちらをお楽しみに、ということで。もっととんでもないものが透けるようになってしまいます。
――“もっととんでもないもの”ですか? ちょっぴりヒントがあるとうれしいんですが……。
天羽:う~ん、あまり具体的に言ってしまうとネタバレになってしまうので、どれくらいとんでもないかだけ。打ち合わせでこのアイデアを担当さんに聞かせた時に「そこ透かしちゃったら、本当に後がないけど大丈夫!?」と念を押されたくらいにはとんでもないものが透けています。
担当編集:その部分は念を押しました。ただ、先生が「大丈夫!」とおっしゃるので、だったらやってしまおう! と。これを透かしてしまった後に、天羽先生が次に何を透かすつもりなのか……私も気になっています(笑)。
天羽:頑張ります(笑)。
――何を透かすのか、楽しみにしています。さて、本編の話に戻しまして。書いていて一番楽しかったのはどこですか?
天羽:それはやっぱり、プールのシーンです!!(笑)
――お色気シーンはやっぱり楽しかったんですね(笑)。
天羽:はい!
担当編集:でも、それを言ったらだいたいお色気シーンなんですけどね(笑)。
――今回はお色気多めになりましたが、今後はどういった作品を書いてみたいですか?
天羽:そうですね。ラブコメだけでなく、幅広いジャンルの作品を書けるようになりたいですね。
担当編集:実は今、『シースルー!?』と並行する形で長編にも取り組んでいただいています。
――そちらはどんな作品なんでしょうか?
天羽:こちらもラブコメではあるのですが、『シースルー!?』とは違い、バトル要素も盛り込んでいます。
担当編集:発表まではまだ時間がかかりそうですが、ちょっとひねった、楽しい学園モノを目指しています。(天羽先生は)持っているアイデアが豊富だし幅広いので、どんな作品に仕上がるのか私自身も楽しみです。
――その豊富なアイデアの元になっているものとは?
天羽:今はやっていませんが、メールゲームという郵便を媒体にして行うTRPGのようなゲームを遊んでいたことがあるんです。それがアイデアの源泉になっているのかなと思います。あと、メールゲームをやっていた経験は、アイデアだけでなく文章を書く時にも生かされているかもしれませんね。
――それはどういったところでそう感じたんですか?
天羽:メールゲームって場合によっては便せん1枚、下手すればハガキ1枚で“このキャラクターがどういう行動を取るのか”ということを伝えなければならないんですよ。ですから、限られた文字数で伝えたいことを伝えるという点では、大変勉強になりました。
担当編集:天羽先生の文章にはその経験が生かされていると思います。また、最近のライトノベルにしては難しい言葉も入っているんですが、それをあまり読み手に感じさせないテンポのよさがありますね。
――他にはどんなゲームを遊んでいますか?
天羽:今はほとんど遊んでいませんが、スーパーファミコンで『テイルズ オブ』シリーズの作品をよく遊んでいましたね。RPGなのに、アクション要素も盛り込まれていて、テンポがよくて好きでしたね。それと『ファイアーエムブレム』シリーズですね。中でも『聖戦の系譜』はかなりやりこんでいました。
――RPGやS・RPGがお好きなんですね。
天羽:ええ。それと、先ほども名前だけ出ましたがTRPGも好きですね。10年くらいはやっています。最近はあまりやる機会がないのですが、ルールブックを見てキャラクターだけを作ったり……なんてこともよくします。
――キャラクターは、1人を作り込むタイプですか? それともたくさん作ってしまうタイプですか?
天羽:その中間くらいでしょうか。やっぱりTRPGには、電源系のゲームとは違う魅力がありますね。だからそんな感じでキャラクターを作ってしまうのかもしれません。
担当編集:そう言えば、先生は生活もかなりアナログなんですよ。
――授賞式でもすこし話題に上がっていましたが、本作は手書き原稿だったんですよね。
担当編集:ええ。今回の電撃小説大賞の中で、唯一の手書き原稿の受賞者です。また、応募作品全体で見ても今となってはかなり珍しいですね。しかも、携帯電話も持っていないんです。
――携帯電話を持たないというのは、今となっては確かに珍しいですね。
天羽:はい、特にこだわりというわけではないんですが、なんだか持っていると壊しちゃいそうな気がしているんですよ(笑)。
担当編集:これまでのやり取りは、封書や電話だったんです。ですから、「賞金でPCを買ってください!!」と、かなり強くお願いしました(笑)。
天羽:ええ。そういったこともあって、長編はPCで書かせてもらっています。実は、商業高校の出身ですのでワープロの扱い自体は経験あるんです。手書きだと、腱鞘(けんしょう)炎になったりもしていたので、PCは本当に偉大だなと思いました。ただ、今度は目が疲れそうですが(笑)。
――どんな作品ができあがるのか、楽しみにしています。では、すこし話題を変えまして、授賞式でのことを伺ってみたいと思います。式では、どなたかとお話しされましたか。
天羽:式の後に開かれたパーティで、佐藤ケイ先生にアドバイスをいただきました。いわく「締め切りは前倒しにしろ!」と(笑)。
――いいアドバイスをいただきましたね(笑)。
天羽:その他にもいろいろな人にいろいろとアドバイスをいただいたんですが……。もう緊張しまくっていたため大変申し訳ないのですが、記憶に残っていません(笑)。ただ、川原礫先生とお話できたのは、とてもうれしかったですね。本当にちょっぴりしか話せなかったので、「ファンです!」と伝えるのがやっとでしたが。次にお会いした時には、もっとお話できればと思います。
――次はもっとお話できるといいですね。それでは最後に、これから『シースルー!?』を読んでくれるであろう皆さんにメッセージをお願いします。
天羽:短編ですので、すごくお手軽にムフフなシーンをお楽しみいただけます。気軽な気持ちで読んでみてください! 第2話以降もカワイイ女の子たちが出てきますので、ぜひ読んでみてください。
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