2011年4月16日(土)
小高:ちなみに、成田さんがお好きなキャラクターはやはりジェノサイダーですか?
成田:ジェノサイダーももちろん好きなのですが、今まではネタバレで話せなかった、終盤に秘密が明らかになる戦刃むくろが大好きなんです!
小高:あぁ、あのちょっと残念なキャラクターですね。
成田:私の周りの人たちもみんなあのキャラクターが好きという人が多くて。それで、よく「あの人物が最後まで残るストーリーを作るなら、どのような形が美しいか」ということをよく話しています。
小高:それは個人的に読んでみたいですね。というか、その秘密会議に参加したいです。
成田:二次創作欲求が強すぎたので、エイプリルフールにWebサイトで二次創作を書いてしまおうかと思ったんです。でも、ゲーム本編のネタバレなしには書けないのでやめました(笑)。
小高:そうなんですか。もったいない!
成田:戦刃を主役にしたストーリーは、自由行動パートのラストイベントを見て浮かんだんです。じつは、あのセリフは他人ではなく、本当の自分のことを比喩して言っているのではないかと思ったんです。
小高:「外の世界に出たら~」という部分ですね。
成田:そうです。あの話を聞いた苗木なら、惨劇が起きる直前に感づくと思うんですよね。それで、その後に訪れる死を回避するんじゃないかなぁと。
小高:それで黒幕との対立が成り立つと。
成田:ええ、それに戦刃は最初から苗木に特別な想いがあった気がします。というのも、集合写真で苗木のほうを見つめているように見えるんですよね。
菅原:そんな細かいところまでチェックを!
成田:それにいつもは全然カメラ目線じゃないのに、苗木が写真を撮っているときだけはしっかり彼のほうを向いていますしね。
小松崎:すいません。正直そこまで考えて描いていませんでした(笑)。
小高:もう、そのアイデアをオフィシャルで採用したいですね(笑)。じつは最後の隠しムービーも本当はきちんとストーリーを用意していたんです。ファンブックにも載らなかったので完全にお蔵入りになってしまいましたが、このように成田さんをはじめ、さまざまな方が世界観を広げてくださるなら、この形がよかったのかもしれません。
成田:イラスト投稿サイトのpixivなどをのぞいても、さまざまな二次創作が行われていますね。特に戦刃は、本編でそれほど語られないのに、さまざまな作品が投稿されていました。「これはすごい」と思わせる作品も数多くありましたよ。
小高:ありがたいです。あまり語らなかったことが、逆に皆さんの想像をかき立てたのでしょうね。
小高:成田さん自身は物語を書いているうちにキャラクターの設定が変わったりすることはありますか?
成田:私の場合は設定書などを作らずにすべてライブ感覚で書いていくので、思わず設定を忘れてしまうことがありますね(笑)。でも、ゲームの場合はスタッフの共通認識を作らないといけないので、設定を固めておく必要がありますよね。
小高:ただ、設定だけでおもしろさを伝えるのは難しいんですよね。十神が完全な人間に見えて実はかませ犬だったりするところとか、ジェノサイダーがぶっとんだ性格をしているところなどは、実際にテキストを読んでもらわないとわからないですから。
成田:それはわかりますね。私も『デュラララ!!』執筆前に編集部からプロットが欲しいと言われたので、「池袋に首なしライダーの美女がいて、自分の首を探して街を大暴れ! これは新しいですよ!!」と送ったら、「ちょっと何を言っているのかわからないから、もう本文を書いて送ってくれ」と言われました(笑)。
小高:確かに『デュラララ!!』の世界観を口だけで説明するのは難しいですね。でも、『デュラララ!!』は群像劇でたくさんの登場人物がいるのに、それぞれのキャラクターがしっかり立っているのが素晴らしいと思うんです。そこは『ダンガンロンパ』を作るときも見習わなければならないと感じた部分でした。
成田:いえいえ。知り合いの作家さんとも話したのですが、『ダンガンロンパ』こそ作品作りの手本になります! 1人1人が本1冊書けちゃうぐらいの魅力があるのに、大胆に舞台から退場させていくじゃないですか。私はそこもすごいと思っています。
小高:そこはゲームだということが強みでした。システムやグラフィックがあったからこそ、このキャラクターたちをこういった形で表現できたのだと思います。
成田:『ダンガンロンパ』はキャラクター全員が綱渡りを全力疾走しているようなゲームですよね。そして気がつけば自分も一緒になって走っているような感覚に陥る。まだプレイしたことがない人はぜひ、この爽快感を味わってみてもらいたいですね。
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