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2011年7月7日(木)

監督・錦織敦史氏が放送直前に語った! アニメ『アイドルマスター』を作る難しさ

文:電撃オンライン

■ビジュアル、シナリオ……どう作っていく?

『アイドルマスター』

――3Dのモデリングで動いている『アイマス』というゲームを、2Dのアニメで表現するということは、どんな難しさがありますか。

 3Dでも十分かわいらしくモデリングされているし、モーションも申し分なく付いているので、言ってしまえば「それを放送すればいいじゃん」って話もあるとは思うんですよ。ただ、長年2Dの手描きの絵を描いてきたアニメ業界の人間としては、やっぱり表情や線の質感など、ポリゴンにない“イレギュラーさ”というか、そういう描き手の見せたいものがダイレクトに出せると思うんです。それはコンテなどの演出的なところでもできると思います。

 ゲームはゲームで完全に作られたモデルで、しっかり崩れないように世界観が作れている。一方のアニメは多少凸凹にはなるだろうけど、そのなかでできる可能性の広がりがある。どちらが優れている、ではないと思うんですよね。アニメはアニメなりの表情や仕草の作り方があると思うので、そこを見せられたらいいな、と。ただ、先にも言ったように3Dの出来がいいのでハードルは高いです。「これだったらゲームの動画見ていればいいよ」って言われたら負けだと思うので、そこは張り合っていきたいです。

――今回のアニメは、あくまで原作『アイマス』ですが、ストーリーはゲームのものをそのまま使うわけにもいかないので、難しい題材なのでは?

 たぶん、みんなにとっての『アイマス』というのがあると思うんですよね。たとえば“スポ根”にすることもできるし“ドタバタギャグ”もできるし、まったりした日常を描くこともできて、幅が相当広いんです。たぶん何を作っても「こうじゃない」って言う人はいるんだろうと思うんですが、そこは自分の中の『アイマス』を見定めていかないと怖いと思っていて。

 ただ、ゲームのディレクターの石原(章弘)さんと確認したことは、アイドルがこういうことは言わないとか、こういうことはしない、みたいなルールをきちんと自分たちの中でわかっていれば、それは何をしても『アイマス』になるだろうという話です。アイドルだけは大事に描くようにしていますね。

――そのアイドルに、ちゃんと同じアイドルの魂が入っているか? と。最初はそういう“らしさ”みたいなものをとらえるのは難しかったですか。

 うーん……普通に会話させることはできるんですよね。そのアイドルのしゃべり言葉で会話することはできても、それをおもしろく切り取ることが大変で。どこを掘り下げてあげれば、この子のよいところ、カワイイところが出せるかなというところが難しいですね。会話のテンポや、他のキャラとの関係性など、いろんな要素があって。それこそ理屈ではないというか、お話を作ってみて「なんかかわいくない、おもしろくない」というところは、やっぱりキャラがただ会話しているだけになってしまっていて。そういうキャラを生かすシチュエーションとセリフというものを大事にしています。

『アイドルマスター』

――シナリオ作りはどういった部分からスタートしたのでしょうか?

 とにかくキャラの数が多いので、スタート地点では“群像劇”として作る。あとはキャラ全員にまんべんなく光が当たるように作る。この2つを方針としています。

 加えて、これは『アイマス』のよいところであり、ものすごい難しいところでもあるんですけど、キャラ間にヒエラルキーがなく、平等なんですよね。「春香が主人公!」みたいにしただけでも、ちょっと違うものになってしまうんです。それは外伝的なものになってしまって、公式の『アイマス』とは違うというのは最初から話し合っていて。試行錯誤の連続ですね。群像的に描きすぎるとキャラが弱くなるというか、平均化されちゃうんです。平等に描きながらも、ちゃんとアイドルたちの凸凹を見せてあげる。それをやるためのドラマ作り、構成を心がけています。

――今、実際にアイドルを描いていて、扱いが難しかったキャラや、すぐにとらえることができたキャラはいますか?

 お話を作る上での引っかき回し役、問題を起こしたりするキャラは、わりと描きやすいんですよね。たとえば亜美・真美とか、伊織、律子、響とか。やかましくてツッコミも入れられるので扱いやすいと思いつつも、そういう面だけをどんどん押し出していくと、伊織とかもただ単にちょっとキツイ、いわゆるツンデレのテンプレになっちゃうという怖さもあって。そこはいつも気をつけようと思っています。春香は春香でちょっとぼんやりしているので、どこを春香らしさとして押し出していくかとか。

 あと、あずさや貴音、千早なんですけど、しゃべりのテンポが少し特殊なんですよね。ただ単に遅いだけじゃなくて、ブレスの位置だとか。「このセリフはさらっと言えるんだけど、このセリフだけはちょっとタメがないと千早にならないよね」みたいなのが発生するんです。こういう部分は、アフレコでも演者さんの方が気づくんですよね。「ちょっと言いづらい」みたいな。そういう時は、セリフを削ってでもしゃべりのテンポよくするようにしています。そのぐらい徹底して“アイドル感”みたいなものに向かい合っています。

――皆さんがアイドルたちを演じて、長い人はもう7、8年経ちますからね。

 そうなんですよね、僕なんかより付き合いが長いので。だからアフレコには毎回、石原さんにも入ってもらって、内容というよりセリフ……というかアイドル感みたいなところを見てもらっています。そういう部分が『アイマス』を形作っている――お話以上にキャラの“らしさ”が重要な作品なんだと感じています。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしょう?

 やっぱりキャラクターは、全部声優さんに宿っているんだな、と。さっき話したセリフの間だったり、しゃべりづらそうにしてるところは、セリフの方に問題があるんですよ。そこに対してはすごく正直ですよね。ただ、尺の都合があるアニメなので、ブレスの間隔とかもある程度は妥協してもらわないといけない。そのあたりを現場で折り合いをつけながらやっています。

 でも、ちゃんと声が吹き込まれるとそのアイドルになるのは、当然ではあるんですけどすごいと思います。この皆さん以外ではあり得ないんだな、ということを感じさせられますね。声優さんが何年も自分でキャラクターを温めて、守り続けてきてくれたものがあると思うので、そこはなるべく尊重できるように作っています。

――ビジュアル以外の面で『アイマス』らしさを出すために工夫しているところはありますか。

 たとえばですが、今回、挿入歌などはガンガンかけていきます。ゲームなどの『アイマス』曲を作っているスタッフの皆さんにも参加いただいて、アニメ用のオリジナル曲も用意しています。あとは、「この曲は入れなきゃ」みたいものは取り入れたり、ゲームを遊んでいる人がニヤッとするようなBGMを入れたりと、新規の人でも入りやすく、以前からのプロデューサーさんも楽しめる隠し要素みたいなものを入れています。曲以外の部分でも、バンダイナムコゲームスさんときっちり連携をとっていますね。ゲーム本編ともリンクするような作りにしています。

→錦織監督自身もプロデューサーさん(3ページ目へ)

(C)NBGI/PROJECT iM@S

■TVアニメ『アイドルマスター』
【放送局】TBS、MBS、CBC、RKB、BS-TBS
【放送日時】
 ・TBS……2011年7月7日より木曜25:25(翌1:25)~ (※初回放送は26:10~)
 ・MBS……2011年7月14日より木曜26:40(翌2:40)~
 ・CBC……2011年7月14日より木曜26:00(翌2:00)~
 ・RKB……2011年7月19日より火曜26:25(翌2:25)~
 ・BS-TBS……2011年7月30日より土曜25:00(翌1:00)~

【スタッフ】(※敬称略)
 原作:バンダイナムコゲームス
 キャラクター原案:窪岡俊之
 監督・キャラクターデザイン:錦織敦史
 シリーズ構成:待田堂子・錦織敦史
 シリーズ演出:高雄統子
 総作画監督:飯塚晴子・髙田 晃
 色彩設計:中島和子
 美術監督:薄井久代
 撮影監督:那須信司
 音響監督:菊田浩巳
 音楽:高田龍一(MONACA)
 音楽プロデューサー:中川浩二(NBGI)
 編集:三嶋章紀
 制作:A-1 Pictures
 オープニングテーマ:『READY!!』 歌:765PRO ALLSTARS 作詞:yura 作曲・編曲:神前暁(MONACA)

【キャスト】(※敬称略)
 天海春香役:中村繪里子
 星井美希役:長谷川明子
 如月千早役:今井麻美
 高槻やよい役:仁後真耶子
 萩原雪歩役:浅倉杏美
 菊地真役:平田宏美
 双海亜美・双海真美役:下田麻美
 水瀬伊織役:釘宮理恵
 三浦あずさ役:たかはし智秋
 四条貴音役:原由実
 我那覇響役:沼倉愛美
 秋月律子役:若林直美
 音無小鳥役:滝田樹里
 他

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