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2011年11月19日(土)

【中澤工さんインタビュー 前編】『ルートダブル』ではテンポのよさと疾走感、緊迫感を重視! 何もしないと10分でバッドエンド!?

文:ごえモン

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■バッドエンドにはラボ内で起きうる“最悪の結末”を網羅

――本作ではところどころで事件が発生して、しかもよくバッドエンドになりますよね。

 そうですね。バッドエンドも、あとからかなり調整した要素なんです。どんなにキャラクターが危機的状況に陥っても、ユーザーが「あぁ、絶対に助かるんだ」という前提で読んでしまうと、やはりどこか気持ちが緩んでしまうと思うんですね。ようするに“キャラクターは大変だけど自分は安全”というように、キャラとプレイヤーに距離が開いてしまいます。

――確かに、自分が危機感を感じるほど没入できるゲームって、少ないです。

 ユーザーにとっても、一瞬一瞬の判断力やどう行動するのが正しいのか、キャラクターが体験しているのと同じ難しい選択・判断を強いることによって、システム的にも緊迫感をユーザーに与えられます。なので、とにかくたくさんバッドエンドを作りました。

 序盤からいきなり即死するようなバッドエンドを配置して、それをユーザーにまずは知ってほしかったんです。ただ読んでいくだけではラボを脱出できないよと。なので、ゲーム開始5~10分でプレイヤーが何もしないといきなりバッドエンドです(笑)。

――バッドエンドはどのくらいの数があるのでしょうか?

 Aルートだけで、20に足りないぐらいだったと思います。僕の中で1つのバロメーターにしたのが『Remember11』です。あの時はひたすらバッドエンドを用意して、ユーザーから「緊迫感と緊張感をゲームが終わるまで維持できた」というご意見もいただきました。なので、最初から最後まで油断しないように満遍なくバッドエンドを配置し、しかも危機的状況もバラエティ豊かにしています。

 毎回、同じような内容だったら「あぁ、バッドエンドか」とユーザーもだんだん作業的になってしまいます。とにかくバリエーション豊かにして「今度はこんなバッドエンドだ!」「うわぁー!? どうやって回避しよう」みたいな、そんな気持ちでプレイしてほしかったんですね。なので、ラボ内で起きうる・考えられる“最悪の結末”のパターンすべてを入れています(笑)。

――個人的にバッドエンドが好きなんですが、それらを探すのも楽しそうですね(笑)。

 そうですね。実は僕自身もそうなのですが、中にはあえてバッドエンドをコンプリートしたがる人もいらっしゃるようなので(笑)。逆にバッドエンドを見ることによって、物語の補完になるようにしています。

 バッドエンドを見るということは、“正規のルートとは違う行動をした”ということです。あの時こうしてみたらどうなっていたか? という裏側が見られます。主人公が違う行動をとれば、他のキャラクターの動き方も変わります。それによって、キャラの思わぬ一面が見えてしまったり、キャラの背後が見えてしまったり、ちょっとした発見があると思います。もちろん最後のトゥルーエンドまで見てしまえば、物語の大筋は見えます。ただ細かいところは、バッドエンドを見ることで説得力が増したり、より鮮明に見えてきたりします。逆に、トゥルーを見なくても、バッドエンドを見続けることでだんだん何かが見えてくるという……そんな楽しみ方もあると思いますよ。

――バッドエンドでしか見られないイベントCGなどもあるのでしょうか?

 一部の“特に重要なバッドエンド”にはあります。用意した点数も多いです。ただ、実は僕のポリシーではバッドエンドにイベントCGを入れるのは否定的でした。なぜかというと、バッドエンドとはゲームオーバーであると。つまり、そこでしかCGが埋まらないということは、ユーザーに「バッドエンドを見ろ」と要求するみたいなものですよね。なので、あまり好きではなかったのですが、今回は2つの理由から“一部のバッドエンド”にイベントCGを入れています。

――その2つの理由というのは?

 1つは、バッドエンドを見た時に“もうこんなことを繰り返してはいけない” という悔恨の念をより強く持ってほしかったからです。そのためにCGを入れて演出面を強化しようとしました。もう1点は、先ほども言いましたが、“バッドエンドだからこそ見られるものがある”ということ。

 今回、バッドエンドと呼んでいいのかわかりませんが、いわゆる“ノーマルエンド”のようなものがあります。“脱出はできるが、悲劇は回避できなかった”というエンディングがいくつかあるんです。それが先程申し上げたCGのある“特に重要なバッドエンド”だと解釈してください。それらのエンディングは、かなり“くる”ものがあると思います。

 つまり、“最後までいられたのに、自分の目的を何も達成できなかった”という、ものすごく後悔の残る結末です。そういうところに、惜しみなくCGを割いています。そして……たぶん、多くのユーザーが最初にそのエンディングにたどり着きます。いうなれば、『かまいたちの夜』で全員死んでしまうエンディングですね(笑)。それを見ることで、なんとかしてクリアしたい、全員を無事脱出させてあげたいという気持ちになると思います。

――どこか切なさの残るような、哀愁漂うエンディングが好きな人にはたまりませんね。

 はい。でも、そういうエンディングがあるかと思えば、すごくマヌケで「なんだこいつは!」っていう終わり方なバッドエンドもあります(笑)。それは絶対に、その時のプレイヤーの判断が間違っていたためなんですが、音声収録の時にはみんなビックリしちゃっていました。

中編では、本作のコンセプトや魅力について聞く!

『ルートダブル -Before Crime * After Days-』

Xbox 360『ルートダブル -Before Crime * After Days-』特集ページ

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