2011年11月19日(土)
【中澤工さんインタビュー 前編】『ルートダブル』ではテンポのよさと疾走感、緊迫感を重視! 何もしないと10分でバッドエンド!?
どうも、ギャルゲー番長ごえモンです。イエティが開発中のXbox 360用ソフト『ルートダブル -Before Crime * After Days-(以下、ルートダブル)』について、これまでキャストインタビューを3回に渡ってお届けしてきました。皆さん、読んでいただけました?
『ルートダブル』は、僕が今もっとも注目している期待のアドベンチャーゲームです。“infinity”シリーズや『I/O』などを手掛けたクリエイター・中澤工さんが原案・監督・プロデュースを務める新作サスペンスアドベンチャーゲームですから、期待をしている人も多いかと思います。そこで、まだまだ謎の多い本作について、ごえモンが中澤工さんにインタビューをしてきましたよ!
インタビューは3回に渡ってお届けし、前編では本作の制作経緯や脚本・月島総記さんの起用理由などをお聞きしました。中澤さんファンやAVGファンはぜひご一読を!
※この記事には、ゲーム本編の若干のネタバレが含まれています。ご注意ください。なお体験版をプレイされた人には、ネタバレにはならない内容となっています。
■『ルートダブル』は『Myself;Yourself』の没プロットから生まれた?
▲中澤工さん |
――まずは『ルートダブル』制作の発端について教えていただけますか?
発端となると、『Myself;Yourself』(※1)についてのアイデアをささきむつみさんに提示した時になるでしょうか。『Myself;Yourself』を制作する前に、一度恋愛モノや『Ever17-the out of infinity-』(※2)のようなサスペンス作品、ミステリーなどのフラッシュアイデアをささきむつみさんに持って行ったことがあったんです。そこでささきさんから「やっぱり僕の絵には恋愛系が合うよ」と言っていただいて、その時は『Myself;Yourself』を制作することになりました。
※1……2007年に発売され好評を博した学園純愛AVG。イエティ初のオリジナル作品で、プロデューサーを中澤工さんが、キャラクターデザインをささきむつみさんがそれぞれ手掛けた。同年にはTVアニメ化もされており、2009年にはスピンオフ作品『Myself;Yourself それぞれのfinale』も発売された。
※2……2002年にキッドから発売されたAVG。中澤工さんが手掛けた“infinity”シリーズの第2弾にあたる。海底にあるテーマパークに閉じ込められた男女7人の脱出劇が描かれ、2人の主人公の視点で事件を読み進めていくことで次第に真相が明らかとなっていく。物語後半の伏線回収で得られるカタルシスや、AVGならではのトリックでAVGファンから絶大な支持を得ている。
――その時に流れてしまった『Ever17-the out of infinity-』のような作品というのが、『ルートダブル』だったのでしょうか?
そうですね。その時は見送ったのですが、ミステリーやサスペンスをやりたいという思いだけはあったんです。そして『Myself;Yourself』が終わり、次に『シークレットゲーム -KILLER QUEEN-』(※3)という作品の制作に入りました。
制作に入る前に、同人版の『キラークイーン』をプレイしたのですが、すごくおもしろくてとても刺激を受けました。そこで「やっぱりサスペンスを作りたい」とウズウズしてしまい、「絶対に作るぞ!」というくすぶり始めた思いを、今回の『ルートダブル』で解放したという感じです。
※3……2006年に同人サークル・FLAT(現PCゲームブランド)から発売された『キラークイーン』のコンシューマ移植タイトル。本作では、全シナリオ&全グラフィックの一新、新システムの導入、新規オープニングテーマの採用など、多数の追加・修正要素が盛り込まれている。誘拐され、とある廃墟に閉じ込められた13人の男女が、生き残りをかけて72時間におよぶ命懸けのゲームに挑むサスペンスアドベンチャー。
――キャラクターデザインにみけおうさんを選んだ理由というのは?
みけおうさんには、イエティさんから「いつか仕事をしましょう」とずっとラブコールを送っていたのですが、今回ついに実りました。みけおうさんにとっては、これが初の家庭用オリジナルだったので、不安もあったみたいです。
みけおうさんと一緒に作品を作ることが決まった後に、では何をやるのかと企画書を作ることになりました。『Myself;Yourself』と『シークレットゲーム -KILLER QUEEN-』のことがあったので、今回は1回目からサスペンスの企画書を作り、それをもとに企画を詰めていきました。
――最初の企画書の段階で、すでに『ルートダブル』のような設定・世界観だったのですか?
最初の企画では全然違うものだったんですが、ジャンルはサスペンスで複数の男女が閉じ込められる、という設定は前提にありました。みけおうさんは美少女ものや学園ラブコメのような作品をメインで担当されていますが、実はチュンソフトのサウンドノベルなどもお好きなんですね。実際にみけおうさんと直接お会いして「僕はこういうゲームが好きで、こんなゲームを作りたいんです!」と語ったら、「私も大好きです!!」と意気投合してしまって(笑)。これならうまくやれそうだなと思いました。
――脚本に月島総記さんを起用した理由は?
当然、最初はシナリオライターが決まっていませんでした。じゃあ誰に書いてもらおうかと考えていた時に、やはり『ルートダブル』をすごくおもしろい作品にしたかったので、ライターを決め打ちで決めて、ただ書いてもらうというのはいやだったんです。なので、複数のシナリオライターを集めてコンペを行いました。
――その複数のシナリオライターさんはどのように集められたのでしょうか?
ライターさんから弊社にシナリオの持ち込みがあるんです。その中のサンプルを常に見て、この人はストックしておこうととっておくことがあるんですね。今回はストックしていた中の数名にお声がけして、サンプルのミニシナリオを書いていただきました。その中で月島さんの物語が、ボリュームは少ないのにおもしろさがすごく凝縮されていました。また、過去の持ち込み時の作品もおもしろかったので、きっと月島さんとならいい作品ができると思い、脚本をお願いしました。
――僕もたまたま、月島さんのデビュー作『emeth ~人形遣いの島~』(※4)を読んだことがあるのですが、非常におもしろかったです。
『emeth』の他にも、Flashアニメの原作やケータイの読み物の作品をたくさんこなしていて、どれもアイデアにひねりが効いていて、文章もおもしろいんです。聞いてみると、『Ever17-the out of infinity-』や『Remember11 -the age of infinity-』(※5)が大好きらしくて意気投合、みたいな(笑)。どういう作品がおもしろいのかなど、僕と同じ方向を向いていただけるので、コンセンサスがすぐにとれました。
実は、月島さん自身は『ルートダブル』ほど長編のゲームが初めてでした。また、これまで時代劇や現代モノ、ミステリーなど幅広く物語を書いていたのですが、本格的なSFサスペンスも初めてだったので、ある種の挑戦でもありました。
※4……第3回スクウェア・エニックス小説大賞の入選作品。自動で動く人形・ゴーレムの製造が主要産業となっている島を舞台にしたファンタジー作品。“ゴーレム造り”を目指す少年・クリフと、クリフのもとに現れた謎の少女ラヴェル、ラヴェルと同じ学院に通うエリーとその幼なじみヒース、2組の主人公の視点で物語が展開。ラヴェルの持つ赤い立方体を巡る壮大な物語が描かれる。
※5……2004年にキッドから発売されたAVG。中澤工さんが手掛けた“infinity”シリーズの第3弾にあたる。旅客機の墜落事故から生き残り、雪深い山脈内の非難小屋にいる冬川こころと、孤島で命を狙われ続ける優希堂悟の2人の“心”が時折入れ替わりながら物語は進行する。『Ever17』よりも、残酷描写や緊迫感が強く描かれているのが特徴。
(C)イエティ/Regista
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