2011年12月14日(水)
――キャラクターデザイン以外はどういった部分を担当されたのでしょうか。
柴 ガッツリと入ってもらいました。キャラクターはもちろん、背景なども含めてグラフィック関係はほぼ全部見てもらってますね。
――ステージのイメージボード的なものも全部担当されたんですか?
柴 ええ、そうですね。
――どのぐらいの枚数を描かれたんでしょうか?
高村 いや~、想像もつかないぐらいたくさん描きましたね。魔王とゴブリンに関しては、描き飽きました(笑)。設定画だけじゃなくて、例えばホワイトボードにイラストを描いて説明することも多かったので、すべて合わせるとおそろしい数を描いてると思います。
丹沢 高村さんは設定画と一緒にちょっとした落書きも書き添えてくれることが多くって、それがゲームを開発する際のアイデアにつながることも多かったんですよ。
――設定画の大半はちゃんと彩色されてますけど、デザインする際に色も一緒にイメージしているんですか?
高村 僕自身、色でイメージしてデザインする場合が多いので、大抵の場合は設定画の時点で色を入れています。それに開発スタッフの方に見てもらう時も、白黒で見せるより色がついているほうがイメージしてもらいやすいですからね。そこまでしっかりと塗るわけではありませんけど、ラフ画の際にある程度は彩色をしています。
柴 個人的には、高村さんのラフ画が好きなんですよ。
高村 完成イラストよりですか? なんか悲しいですね(笑)。
柴 ラフ画でも十分うまいってことですよ(笑)。でも、ラフ画の段階での色使いが好きですし、短時間でたくさん描いてもらえるのもうれしかったりして(笑)。
高村 高解像度のイラストはどうしても時間がかかりますし、真剣に頑張って描く分、小ぎれいに仕上がりすぎる部分はあるかもしれませんね。そういう意味では、自分で見てもラフ画や設定画のほうが生き生きしている部分はあると思います。
▲高村氏が描いた『地獄の軍団』のメインイラスト。海外のユーザー層も意識しながら、日本向けにも通じる独特のタッチのイラストとなっている。 |
――なるほど。ちなみに色使いの点で、『地獄の軍団』らしさとして意識した部分はありましたか?
高村 そうですねえ。赤というか、“赤と黒”のイメージはありました。最初のコンセプトイメージから“赤と黒”がバッチリと頭の中にあって、いろいろな部分で使いました。それから、もうちょっとソリッドなイメージとして“白と黒”も使っています。でも、あまりに赤を多用しすぎちゃって、最終的には周りから怒られちゃいました(笑)。
――それは実話なんですか?(笑)
柴 はい。一時期、とにかく赤が多すぎて、キャラクターなのか背景なのか、よくわかんなくなっちゃったりして(笑)。
高村 ちょっとミスりました(笑)。ただ。“赤と黒”というコンセプト自体は最後まで残しつつ、バランスを調整していった感じですね。
――その他にデザインの際に意識した点はありましたか?
高村 世界観を崩さないように、ちょっと濃い塗りを意識しました。普通に描くとポップになりがちなので、そうならないよう気をつけました。
柴 初期から、海外ユーザーもターゲットにするという話があったので、そこを意識してくれたんだと思います。
高村 そうですね、そこが一番大きかったです。そのうえで、個人的には何かブラックユーモア系に寄せられたらいいなと思いながらデザインをしていきました。
――ゲーム中のキャラクターはCGで3Dモデリングされてますが、デザインをする際にモデリング後の仕上がりまでイメージをしているのでしょうか。それとも、デザインはデザインと分けて考えてイラストを描いているのでしょうか。
高村 僕はイラストレーターであると同時に、実はモデラーでもあるんですよ。だから、モデリングをする際に必要な情報を把握したうえでデザインをすることもあります。例えばちょっと変な話、モデリングの予算を加味してデザインをすることもありますよ。
――モデリングの予算ですか?
高村 どんなにお金をかけてでも細かい部分まで作り込んでモデリングする場合は、それだけ細かい部分もしっかりとデザインします。逆にモデリングの予算が少ない場合は、細かい部分よりも大きな部分で見せるデザインにしたほうが、モデリングの際に再現しやすかったり、特徴が際立ったりするんですよ。ただ、モデリング後の仕上がりまで考えて作ると、デザインの幅がなくなっちゃうこともあるんですよね。だから、基本的にはイラスト単体として描くんですけど、“もし自分がモデリングするなら、こうするんだけどなあ”という部分も加味している部分もあります。
▲2体の異なるボス敵の設定画を公開。ラフ画の時点でしっかりと彩色されているのがわかる。 |
――主人公である魔王のデザインは、どのようにして決まっていったんですか?
柴 比較的早い段階でバッチリ決まったと思うんですけど、高村さん自身は細かく悩んでましたよね。
高村 う~ん、当時は着地点がわからなかったんですよ。初期にはすごくガッチリした、ボス敵のギガデモンみたいなシルエットのデザインも検討してみたんですけど……。魔王って、自分では攻撃しないじゃないですか。
丹沢 マッチョなデザインだったら、絶対自分で殴りたくなっちゃいますよね(笑)。
柴 主人公が攻撃をできちゃうと、ゲーム性が変わっちゃいますから。そうなると部下のゴブリンがいらないゲームになっていくんで、それはないよねっていう話をしました。
高村 そうそう、そうなっちゃうんで。ゲームシステム的には自分では戦わずに部下を指揮して戦うって聞いた時に、“じゃあなんだろう、コイツ”って思っちゃいまして。そこで考えた方向性が、“弱い人”でした。
――そう考えると、確かに不思議なイメージの主人公ですよね。
高村 のちのちには“錬金術師”や“魔法使い”みたいなキーワードも加わっていったんですけど、そもそものイメージとしては“弱い人”から始まったキャラクターですね。あとは、あくまでメインが“軍団”ということも悩みの種で、“じゃあ、この主人公はどんなスタンスのキャラクターなの?”って。いっそ、しゃべるだけでいいんじゃないかと、頭だけの存在としてデザインしたこともありました。
丹沢 ありましたね(笑)。
高村 もう本当に顔というか頭部だけで、首から下はマントがゆらゆらしているだけという。でも、それだと主人公が何をしているのかわからないから、「せめて手だけは入れましょう」「手だけは欲しい」という意見が多くなって、じゃあどうしようかと考え直したりして……。そんな流れから、魔王が肉体を失ったという設定にしようとか、なくなった体を取り戻していくという物語もおもしろいかも、みたいにストーリー的な部分の想像が膨らんだりもしましたね。
▲かなり方向性が定まってきた時期に描かれた魔王のイメージイラスト。やや重厚な雰囲気で描かれている。 |
――魔王は、意外とデザインに苦労されたキャラクターなんですね。
高村 もうゲームが発売されるというのに、いまだに“弱そうに見え過ぎないかなあ”なんて心配してたりしますからね(笑)。そもそもゲーム的にも、主人公は単なる指示役なんで、別にいなくてもいいんじゃないかって話もあったぐらいなんですよ。
――え? 主人公がいないゲームですか!?
高村 プレイヤー自身が主人公というか、画面上には姿はなく、神の手で動かすようにゴブリンに指示を出すような感じですね。そのくらい影の薄い存在だったので、キャラクター性をどういう風に出せばいいのか難しかったんですよ。最終的なデザインに近い方向性が固まったあとも、細かい部分がなかなか決まらずにいろいろな案を出しました。
――どういった部分のデザインに苦労されたのでしょうか?
高村 頭のサイズと体のバランスと足のサイズとかっていうのを全部トータルすると、バランスが難しいんですよね。だから、ものすごく何度も書き直しました。足が長すぎると細く見えすぎるし、短すぎるとバランスが悪くなるし……。それから、意外と難しいのが角。この長さとかの比率が難しくって、実は毎回描くたびにちょっとずつ違っちゃうんで困ってます(笑)。
――ちなみに公式Twitterでは、自由奔放な魔王様のキャラクターが大人気ですが、デザインをされた高村さんとしてはいかがですか?
柴 あ、どうなの? それ聞きたかったんですよ!(笑)
高村 いいと思いますよ。魔王様のコメントを見て、自分も笑っちゃいますし(笑)。むしろ僕が思い描かないようなキャラクター像になってきているんで、変な化学反応が起きていておもしろいなって思います。
丹沢 この怖そうなキャラクターと言動のギャップが、不思議な化学反応を起こしてますよね(笑)。
柴 まだゲームが出ていないのに魔王を応援してくれる方が多くて、不思議な部分もありますけど、とにかくうれしいですね。
高村 今回みたいなTwitterを使った試みは新鮮でした。イラストレーターというか、イラストだけではできない、不思議な形でのキャラクターの育て方というか、定着のさせ方だなあと思って。僕的にはすごくおもしろくて、いいと思います。
本日のインタビューはここまで! この続きは、明日の記事でお届けいたします!
▲魔王のデザインに関するバリエーション案。角や肩当ての部分が変わることで、全体的な印象も大きく変わることがよくわかる。 |
→錬金のシステムとボス戦をクローズアップ!!
動画を見ながら細かい要素を解説!!(4ページ目へ)
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