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2011年12月15日(木)

【地獄の軍団 集中連載 Vol.4】キャラクター誕生秘話の後編をお届け! で、サチコさんって誰よ!?

文:電撃オンライン

■開発スタッフインタビュー~キャラクター誕生秘話(後編)

 前回に続いて今回も、『地獄の軍団』のキャラクターや世界観に関するインタビューを掲載します。魔王が戦うことになる巨大なボス敵を中心に、そのデザインにまつわる秘話などをお届けします! ……で、サチコさんって誰ですか!?

◆『地獄の軍団』開発スタッフ

●柴 貴正●丹沢 悠一●高村 英彰
▲『地獄の軍団』のプロデューサーを務めたクリエイター。代表作は『ドラッグオンドラグーン』『ロード オブ ヴァーミリオン』など。▲本作のディレクターを担当した開発スタッフ。最終的なゲームバランスの調整やアドバイスなど、開発現場でさまざまな調整作業を行った。▲キャラクターデザインを中心に世界観の制作に携わったイラストレーター。今回のインタビューは、ご本人の希望によりゴブリンの姿で登場!

◆“サチコさん”って誰のこと? ボス敵に関するデザイン秘話を紹介!

――ここからは魔王の敵となるボス敵のデザインについてお聞きします。まずはギガデモンからお願いします。

圧殺懲罰魔ギガデモン
▲地獄を我が物顔で闊歩(かっぽ)する巨大な悪魔。外見に違わず、性格は尊大で傲慢。さらに気性も荒いため、手のつけようがない。その巨体を生かして、強烈なパンチや衝撃波を繰り出してくる。背中の羽根で飛び回ることが多いので、ほかの部位に比べて足腰が弱い。

高村 地獄というテーマになって悪魔が出ることになった時、自分が悪魔と言われて想像するものを描いてみたら、こうなりました。もう、こいつはなんて愛らしいんだろうって描いてしまった感じです(笑)。最初に描いた悪魔だけあって、“『地獄の軍団』といえばコレ!”っていう主軸の部分を決めたキャラですね。牛だったりライオンだったりと勇ましい要素を入れながら、バカっぽい要素もちょっと入れたいなと考えて、こういう感じに仕上がりました。初期デザインのころから、ほとんど変わっていませんね。

――ギガデモンは最初の方に出てくるボスですね。

 ゲームをプレイした際の流れとして、“地獄にきました。さあ、大きい敵と戦います”となるわけですが、そこでいきなりドラゴンとかだと、なんだか違うゲームを想像しちゃうと思ったんですよね。『地獄の軍団』らしいインパクトがある巨大な敵と考えた時に、ここはギガデモンしかいないだろうと。これはもう、初めから誰からも文句が出なかったですね。

高村 ちなみに自分の脳内の世界観では、主人公の前にいつも現れるライバルだったんですよ。何度も戦うことになる敵だと聞いていたので、負けるたびにボロボロになって出てきてもおもしろいかなと。アホ寄りにも振れて、カッコイイ寄りにも振れるキャラクターを目指して、そんなイメージで描いていましたね。

▲こちらはギガデモンの初期デザイン。上の完成イラストと比べても違いは少なく、最初からデザインの方向性がブレなかったことがわかる。

――次にクインマウスはいかがでしょうか。

食欲虐殺女帝クインマウス
▲浮き島で獲物を待ち構える怪物。その半身は人間で、半身は巨大な大蛇となっている。言い伝えによれば、その昔、魔女の呪いによって姿を変えられた美しい女性の成れの果てらしい。6つある蛇の頭は常に捕食対象を探し回っており、距離を置けば本体が放つ稲妻を食らうことになる。非常に好戦的な蛇の頭をなんとかできれば、本体に近づくこともできるはずだが……。

高村 もともと僕がやりたかったのは、とぐろを巻いている巨大な蛇女そのものがステージになっているイメージだったんですよ。蛇の体の上にギミックを乗せて遊ばせたらおもしろいんじゃないかっていうのが出発点だったんですけど、どんだけデカいモデルになっちゃうんだと(笑)。さすがに実現は難しいということで調整をしていったんですが、出発点である“デカい”という部分はどこかしら残っていった気がします。

 岡本さんとも、デカくて記憶に残るキャラクターにしたいと話していました。

高村 デザインする際に、「もうこれ以上ないっていうくらいデカいキャラにしたい」という岡本さんの天の声が来まして、かなり試行錯誤しました。それに加えて「残虐性も欲しい」「気持ち悪くてもいいから、とにかくインパクトが欲しい」とも言われましたね。最終的には「この敵との戦闘を見た時に、『地獄の軍団』というゲームがどういうゲームなのかをはっきりと位置づかせることができるようにしたい」とのことで、それに応えるようにデザインをしていきました。

▲とにかく巨大でインパクトがあるクインマウス。魔王の大きさと対比してみると、大蛇の部分の大きさがはっきりとわかるはずだ。

――クインマウスの人間部分は、ゲーム中では紅一点になるんですかね?

一同 (笑)

 紅一点という言い方でいいのかな!?(笑)

高村 ただ、女性型のクリーチャーを入れたかった気持ちはありましたね。男性型ばかりになったら、なんとなくマズいかなあと。あまり後回しにすると入れそびれちゃうかもしれないから、早い段階でデザインに組み込んだ感じですね。女王っぽいイメージを入れたかったので、人間部分の近くはちょっとクラウン的な、王冠的なイメージを入れていたりします。

 余談ですけど、この人間部分はスタッフ内では「サチコさん」って呼んでたんですよ(笑)。

――サチコさんですか!? どうしてそんな和風な名前が?

高村 ええと、大きいステージの中心にいるイメージって、紅白歌合戦のトリを飾る女性歌手とちょっと通じる部分があるじゃないですか(笑)。

▲大蛇から生えた、人間の女性のような部分。開発スタッフの間では、サチコさんの愛称で親しまれていたそうだ。

――ああ、なるほど。納得しました(笑)。それでは最後に、巨大な蠅(はえ)の形をしたベルゼブーンについてお願いします。

腐敗堕落王ベルゼブーン
▲“蠅の王”と称される魔神。かつては“誇り高き王”という意味の別の名で呼ばれていたらしい。魔王のゴブリン軍と対を成すかのように、100匹ほどの小蠅を従えている。次々に生まれる小蠅が周囲を固めているため、近づくことは非常に困難。攻撃するためには、まず小蠅の発生を止める必要があるだろう。

高村 実は、前から蠅の王を出したいと思っていて、強くアピールしたキャラクターなんですよ。

 ええと、今だからこそ告白しますけど、自分はベルゼブーンのデザインをチェックした記憶ないんですよね(笑)。

高村 ちゃんとチェックしてください(笑)。

 この時期はもう、高村さんを信じていたので、好きに描いてもらって大丈夫だと思っていたので。きっともう、見ても何も言うことはないでしょって感じで(笑)。

丹沢 かなりスムーズにデザインが決まったキャラクターなので、デザインチェックの際には印象に残りにくかったのかもしれませんね(笑)。

高村 確かに決定が早かったんですよね。岡本さんに「蠅を出したいんですけど、いいですか?」って話をして、とりあえずササっとデザインを描いて提出したら、すぐにOKが出ましたからね。

 形がシンプルな分、比較的モデリングしやすそうに見えましたけど、実際はどうだったんですか?

高村 それが結構大変で。このダンゴみたいなフォルムを再現しようとすると、つじつま合わせが大変なんですよ。モデラーさんから、「これ、足が入らないんですけど、どうすればいいですか?」って言われて、「いやあ、どうにかして」って無茶振りをしたり(笑)。その辺のつじつま合わせのために三面図を描く必要がでて、かなり苦労しました。頭のサイズとかがちょっと変わるだけでも、バランスが崩れて気持ち悪いんですよ。“コミカルでいてむかつく顔”になるように、かなり蠅の写真とかを見て研究しましたね。

▲実際のゲーム画面上のベルゼブーン。一見するとシンプルなフォルムだが、モデリングする際にはつじつま合わせに苦心したとのこと。

――デザインの際に工夫した部分はどこですか?

高村 蠅のフォルムって、本来はひょろっちくて貧相な感じなんですよ。でもベルゼブーンは王という設定にしたかったので、貫禄が欲しかったんです。だから最初はマントを着せたかったんですけど、どうしても羽根との兼ね合いでうまくいきませんでした。でも貫禄を出したいということで、鎧を着せてみようとか、なんだかおかしな方向でいろいろと試していったんですけど、意外と鎧がマッチしたんですよ。そもそも昆虫には、硬いものをまとった甲虫もいるわけですし、その方向性で地獄らしさを加えてつなげていったら……と考えていった末にたどり着いたのが今の形ですね。半分は蠅のフォルム、半分は鎧のフォルムになっています。

――たしかに紫色の鎧の部分が目立っています。

高村 それから、これはベルゼブーンに限らないんですけど、ほとんどのキャラクターがピアスのような装飾品をつけています。キャラクターを見る際には、そういったちょっとしたオシャレな部分にも注目してもらえるとうれしいですね。

→開発スタッフのイチオシは?
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データ

▼『地獄の軍団』ダウンロード版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PS Vita
■ジャンル:ACT
■発売日:2011年12月17日
■価格:3,990円(税込)

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