2011年12月24日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第17回となる今回は、『ギフテッド』の作者・二丸修一先生のインタビューを掲載する。
▲りょう@涼先生が描く『ギフテッド』の表紙イラスト。 |
本作は、平均以上の能力に高いIQ・目的達成意識・創造性を持つ、天才を超えた天才“ギフテッド”たちの姿を描いた作品。世界最高峰の企業“天子峰”の幹部となるため閉鎖都市に集められたギフテッドたち。しかしそこで彼らを待っていたのは、人権のないZランクの市民という扱いだった。
そんな状況で、主人公の少年・加納弥助(かのう やすけ)は、勘で必ず正解を当てることのできる小学生・黒田枝流夢(くろだ えるむ)、不自然なほど完璧な才色兼備の女子高生・光明寺綾芽(こうみょうじ あやめ)たちと行動をともにするのだが……?
二丸先生には、この作品の特徴や小説を書く時にこだわっているポイントなどを話していただいた。また、電撃文庫新作紹介ページから『ギフテッド』の試し読みができるので、まだ読んでいない人はこちらも一緒にご覧あれ。
――『ギフテッド』を書いたキッカケをお教えください。
あとがきで一部触れましたが、“頭がいい奴らを集めてみよう”と思ったのがキッカケです。ただ“頭がいい”というところが引っかかる人もいると思うので、もう少し補足を。頭がいい人って、定義が難しいですよね。私が想像する人と皆さんが想像する人って違うと思います。例えば専門用語を多く使う人は頭がよく見えると言う人もいるでしょうし、むしろわかりにくい言葉を使うのは頭が悪い証拠だ、と思う人もいるでしょう。
そのため上記の“頭がいい奴らを集めてみよう”というのは、私が想像できる範囲内での頭がいい人(現在はすごい人的な意味もかなり入っていますが)を集めてみようというものです。しかしあくまで今回の話が“候補生試験”という一番ぺーぺーの状態ですし、突き抜けた人がいたら即合格で終わる試験でもあるので、一般的に頭がいいと言われる人のさまざまな方向性とバランスを意識した結果となりました。それと、頭がいい奴らが多いですよーといいわけしておけば、会話をサクサク進めても許してもらえるではないかという意図が密かにあったりします。
――『ギフテッド』はどんな作品ですか? 特徴やセールスポイントを教えてください。
特徴は今のライトノベルっぽくないところでしょうか。投稿を意識してストーリーを組み立てる際、萌えで勝負したら勝てる気がしなかったので、まずメインテーマから外し、設定作るの苦手だし造語のセンスがないから異世界ものや能力系バトルは外し、そうして残った中から自分の得意そうなものを鍋にぶちこんでいった結果が現在の惨状だったりします。そのためジャンルは“心理戦を中心としたバトルサクセスストーリー”と勝手に定義してますが、自分自身でも怪しんでおり、逆にその辺りが最大の特徴であり売りなのかな、と。
シリアスもおちゃらけも恋愛も痛快もごちゃまぜにして、あまりない文章力で煮込んだので、たっぷりと毒が入った一品となっております。毒と薬は紙一重。あなたにとって毒となるか薬となるか、一度試していただければ幸いです。
――作品を書く上で悩んだことはありますか?
文章力のなさとページ数です。文章力がないからページ数で困ると言うべきでしょうか(笑)。投稿の際は全体の2割を切っていますし、今回出版されている状態のものも、改稿当初にどーんとページを増やしたせいで、キャラを1人消し、シーンも多数切るハメとなりました。切ったところ以外にもやりたい展開はいくつもあったので、力のなさが悔しいですね。
――執筆にかかった期間はどれぐらいですか?
原案から考えれば数年。構想が固まって書き始めてからは1カ月前後だと思います。
――特にお気に入りのシーンはありますか?
エピローグとその3でみんなが集まって話し合うところです。私は最後を決めてから書くことが多く、そしてもともと後半勝負のタイプなので、大量の伏線回収シーンは書いていて楽しいです。
――主人公の弥助と、ヒロインの綾芽はどんなキャラクターなのでしょうか?
主人公は客観的に見てかなり変人でしょうね。狂気と紙一重的な。でも厨二っぽいところも多いかも(笑)。基本はクールな分析屋ですが、根はすごいヒューマニストだと思っています。投稿時にはダブルヒロインっぽくしており、その後一方をヒロインと定めましたが、恋愛メインの話ではないので、裏主人公としての役割のほうが大きいですね。何事もできて、理想は高く、情熱も人一倍ある。けどそういう女の子って恋愛が不器用だったり、妙に甘さがあったりするように思えるので、そこが魅力なんだと考えています。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはありますか?
とにかくプロローグでがっちり読者の心をつかむことです。これができなければ作者として負けだ、くらいに思ってます。少なくともプロローグを読んで相性が合わなければ内容を読んでもダメ、逆に合えば内容も楽しめるように、という方向性で書いています。私は自分の作品が万人にウケるものとは思っておらず、きらいな人には拒否反応が出ることもあると思うので、そういった皆さんの貴重なお金や時間を奪ったりしないよう配慮ができればと考えています。そのため他のシーンの10倍以上時間が掛かっています。
――小説を書こうと思ったキッカケを教えてください。
高校2年生の時、ふと書かなければと思ったことが原点だと思います。私は恥ずかしながら小説を書き始めるまではあまり小説を読んでおらず、国語に英語、読書感想文にいたるまで文字メインのものが基本きらいだったのに突然そんな気持ちになりました。
しかしその時に書いたのは小説ではなく演劇の脚本で、演劇部でもないのに高校の文化祭で仲間を集めて公演したりしました。結局初めて小説を書いたのは、大学1年生の時、劇を見ていた高校の先輩から小説勝負を持ちかけられて書くことになりました。
なんか訳のわからないキッカケで申し訳ありません。ただ突如わいた強迫観念から、こうして本を出せるという大変光栄なことに繋がっていると考えると、人生わからないものだなとしみじみ思います。
――アイデアを出したり集中力を高めるためにやっていることはありますか?
アイデアは出ない時には出ないので、モヤモヤしますが割り切って遊びます。そうやって熟成させるといいアイデアがぽっと出ます。
――現在注目している作家・作品がありましたら、教えてください。
漫画狂いかつゲーム黄金世代のため、そっちに浮気をしてばかりで、勉強のためにももっと読まなければとは思っているのですが、申し訳ございません……。
――高校生くらいの頃に影響を受けた人物・作品は何ですか?
ちょ……これはどういう罰ゲームでしょうか? 私の年齢を当ててもおもしろくありませんよ? ちなみに私の心は今も青春真っ盛りです。
――今熱中しているものは?
『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』はハマりましたね。ゲームクリアはもちろんのこと、アニメも翌週の放送までに最低3回は見ていました。あとボーカロイド全般。“週間VOCALOIDランキング”は欠かさずチェックし、そこでお気に入りの曲をストックしておき、小説を書く時にループで聞いてます。漫画は書き出すと止まらなくなりそうなので、直近の1つだけ。今さらですが『鈴木先生』、個人的にツボでした。
――初の商業作品を出されることになった感想をお聞かせください。
ようやくスタートラインに立った状態だと思うので、厳しいサバイバルレースを勝ち抜けるよう頑張りたいです。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
いろいろありすぎて難しいですが、読んだ後に3日間くらい夢でうなされる(または妄想に浸れる)ような作品を書いていきたいです。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
『シヴィライゼーション IV』に以前ハマりましたが現在は特にないですね。ただ『ファイアーエムブレム』シリーズと『逆転裁判』シリーズは新作が出れば必ずやります。
――電撃オンラインを見ている読者に、『ギフテッド』をおすすめするコメントをお願いいたします。
私自身が小説より漫画やゲームに親しんできたので、ライトノベルをたくさん読んでいる人にはもちろんのこと、「ライトノベルはあまり読まないけど漫画やゲームは好き!」という人にも読みやすい作品のはずです。一度、プロローグだけでも読んでみてください。それで判断できると思います。また大人の人には学生の人と違った感慨がわく話だと思うので、ぜひご一読ください。
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表紙イラスト/りょう@涼
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