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2012年2月22日(水)

【G-netプレイレポート】PSP『車輪の国、向日葵の少女』を7年ぶりにプレイ! やはり名作は時を経ても名作だった

文:ごえモン

 どうも、ごえモンです。電撃オンラインでは、5pb.(MAGES.)から2月23日に発売されるPSP用ソフト『車輪の国、向日葵の少女(以下、車輪の国)』の特集を展開しています。

PSP『車輪の国、向日葵の少女』

 特集ページでは、前回『車輪の国』の世界観、義務、キャラクターについてご紹介いたしました。今回は、皆さんよりひと足お先にマスターROMをプレイさせていただき、改めて感じたことや本作の魅力についてお伝えしようと思います。

 さてこのゲーム、2005年に発売されたPCゲームの移植作なんですが、7年前……僕はどんな生活をしていたんでしょうかね? まったく覚えていません。ホント、0.1mmたりとも記憶にございません。そんなわけで軽く危機感を覚えてしまいましたが、まあそんなことはどうでもいいですね(笑)。とにかく、7年前にプレイして感動したことだけは強く覚えていますよ。

■物語の軽快さの秘訣は変態超人の主人公

 とにかくシナリオがものすごくおもしろい、と評判の本作。前回の記事では、“衝撃”という言葉を使ってお伝えしましたが、ただそれだけのゲームではありません。

 7年ぶりに本作をプレイして改めて感じたのは、テキストが軽快で非常に読みやすいということ。本作は主人公・森田賢一(もりた けんいち)の1人称で進んでいきますが、とにかくこの主人公の人間性がおもしろく、日常シーンでも退屈しづらい内容になっていると思います。

 例えば、賢一が起床したシーンで“朝のダンスを踊ってムダ毛の処理をした”、なんて描写が出てきたり、「自分、ハードMなんで」というようなセリフをさらっと発言したり……。彼はそんな飄々(ひょうひょう)とした性格で、基本的にはテキトーなことしか言いません(笑)。なのでプレイヤーと彼の波長さえ合えば、物語が動かない日常シーンでも楽しみながら読み進めることができるはずです。僕は彼とバッチリ波長があったようで、場をかき回す主人公の言動がおもしろくてしょうがなかったです。

PSP『車輪の国、向日葵の少女』 PSP『車輪の国、向日葵の少女』
▲ヒロインや脇を固めるサブキャラクターも個性派(?)ぞろい。まともな人間のほうが少ないかも(笑)。

 また、古きよきAVGのように、主人公は終始「あんたもそう思うだろ?」と、まるでプレイヤーと会話をしているような論調で語りを入れてきます。これのおかげで、主人公が近しい人間のような気がして親近感が沸くんですよね。

 それでいてどこか影があり、脳ある鷹は爪を隠すを地でいき、意図してピエロを演じている。普段は変態チックですが、やる時はやるめちゃくちゃカッコいい青年です。たぶん、ギャルゲー界でも上位に君臨するほどの超ハイスペックな主人公でしょう。

 優柔不断で情けない主人公はヤダ! という人には特にオススメできる主人公ですね。男が惚れるタイプの主人公だと思います。彼なら、「アッー!」となってもイイかも、そう思えるほどカッコいいんですよ(笑)。……あくまで例えですよ?

PSP『車輪の国、向日葵の少女』
▲普段は飄々としていてやる時はやる! 中二病をこじらせている僕は、こんな人間にあこがれちゃいます。

■コミカルとシリアスが程よく盛り込まれた起伏あるシナリオが魅力

 本作は、全5章に物語が分かれて構成されています。選択肢はありますが基本的にルートの分岐はなく(選択肢によってエンディングは分岐しますが)、章ごとにメインとなるヒロインが決まっています。イメージ的には、普通のAVGにある個別ルートをすべて共通ルート内に収めてしまったような感じ。

 そのため、1周のプレイで物語の9割くらいは体験できるので、エンディングまでのプレイ時間が長大。おそらく平均20時間弱はかかるのではないでしょうか? 1周のプレイ時間が長い場合、プレイヤーにとってはプラスとなる面が大きいですが、場合によってはマイナスになる場合もありますよね。

 それは、内容が単調だった場合。長大で単調な物語を読み続けるほどつらいものはありません。しかし前述した通り、本作にはコミカルな部分が多くテキストも読みやすい。それに加え、“義務”や“特別高等人・法月将臣”の存在のおかげで、コミカルから一転、一気に場面がシリアスに転換するのです。弛緩と緊張が交互に訪れるため、プレイヤーの感情に起伏が現れダレにくくなります。

 また、章内に必ず1回は山場/見せ場が登場するのも秀逸なところ。ライトノベルでもコミックでもアニメでも、1話ないし章内に山場があるのとないのとでは、おもしろさが段違いだと僕は思っていますから。

PSP『車輪の国、向日葵の少女』 PSP『車輪の国、向日葵の少女』
▲1章に数回は事件が発生するため、プレイヤーの感情が停滞しないのがAVGとして◎。▲法月が登場すると、場面が一気に緊張状態に陥ります。つい数分前まで変態だった主人公が、即座に真剣な表情を見せてくれるんです。

■そこかしこに散りばめられた伏線、ミスリード……真相に気付ける人はいないかも?

 この作品の最大の魅力は、やっぱりすべての伏線が回収されていく後半の展開。そんなところまで伏線だったの? と多くの人が衝撃を受けるはずです。たぶん、事前情報をまったく集めずにプレイした場合、真相に気が付く人ってほとんどいないんじゃないかと思います。少なくとも僕は、ボケーっとプレイしていたので当時まったく気が付かず、ものすごい驚きと感動を得られました(笑)。

 このシナリオのスゴさは、どうしてもネタバレを含んでしまうのでこれ以上の説明は不可能です。ぜひ、最高の主人公と最高の敵役、最高のシナリオが三位一体となってプレイヤーの感情を揺さぶる本作を体験してほしいです。すでにPlayStation Storeで体験版が配信されているので、序盤だけでもプレイしてみてください。本格的に物語がおもしろくなるところまでは進められませんが、作品の雰囲気や主人公のおもしろさだけでも体験していただければ幸いです。

 今回は7年ぶりに本作をプレイしてみましたが、今なお色あせないおもしろさがあったと思います。また、すべてを知ってから改めて最初からプレイすると、何か“くる”ものがありますね。何気ない主人公のセリフ1つとっても、きっといろんな感情が渦巻いているんだろうなとか、とっつぁんの心情だったりとか……。セーブ&ロードを使えば、何周もするゲームではないので、クリア後、しばらく置いてから再プレイしてみるのもおもしろいんじゃないでしょうか。(ごえモン)

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