2012年7月24日(火)
――メッセージウィンドウの色やデザインの変化は、どのようなタイミングで起こるのでしょう。
メッセージウィンドウのキャラ名の下にラインがあるのですが、そのラインの色は、誰の視点で見ているかを表しているんです。夏彦の目線で見ている場面ではオレンジ、渡瀬だと青です。実はこれ、キャラの目の配色とリンクさせています。つまり、“その人の目から見た世界”なんだと。これは、ウィンドウをデザインしたスタッフからアイディアをいただきました。割り当てるイメージカラーに迷っていたら、「それぞれの目の色をベースにしては?」と提案してもらったのです。。
▲ブルー | ▲オレンジ |
RAM中でも、例えば、風見に意識を完全に重ねている時は彼女の視点になりますし、一歩引いて客観的に見ている時は、能力者の夏彦や悠里の色に変わります。なので、ものすごくデバッグが大変でしたね。たぶんないとは思うのですが、色間違いのミスがないよう労力をかけました。
また、現在のリアルタイムな出来事が描かれているシーン(Aタイプ)と、センシズ・シンパシーによって記憶を見ているシーン(Bタイプ)、悪意や悠里による意図的な記憶改ざんシーン(Cタイプ)では、メッセージウィンドウのデザインが変わります。実は3種類あったんです。それが本当に起きていることなのか(=Aタイプ)、ただの回想なのか(=Aタイプ)、センシズ・シンパシーで見ている(または、見せられている)記憶なのか(=Bタイプ)、第三者に差し替えられた記憶なのか(=Cタイプ)、すべてメッセージウィンドウのデザインを見ればわかるようになっています。
また、ねつ造された記憶に入る時と終わる時には「ザザッ」というノイズが挟まれます。いわゆる編集ポイントですね。これはわかりやすかったので、体験版でも「なんだろう、これは?」と気になった人も多かったですね。
――メッセージウィンドウのデザインや色を確認するために、もう1回プレイしたくなりました!
どこからが現実でどこからがねつ造なのかは、再プレイした時に見てわかるようにしたかったんです。プレイする人にとっては見えているものが現実なので、それを後で「実はここは嘘でした」と言ってしまうのはフェアではありません。明らかに違和感を出したかったのでこのような仕様にしたのですが……体験版を出した時は製品発売前にバレないかとドキドキしていました(笑)。
こういったギミックでも、シナリオ中の伏線でも、キャラクターデザインに込められた外見的なヒントでも、とくかくフェアでいこう、と心がけました。「ずるい! そんなのわかるわけない!」というのはナシにしたい、と。真相が明かされるタイミングよりも少しだけ早い段階で、推理の材料はそろっている。極端なことを言えば、種明かしをする前でも、鋭い人は気づけてしまうかもしれない。一歩間違うと、何もかも先が読めてつまらなくなりますが、うまく作用すれば、プレイヤーが推理と答え合わせを楽しめるものになると思いました。すごく集中して注意力を働かせていけば、知的な快感を得る楽しみもできる。あと、本編には直接関係のない、もはや考察レベル、というか、こういう捉え方もできる程度のことなので詳しくは述べませんが……“プレイヤーが自発的に気づかされてしまう”とか、“プレイヤーが真実を先読みして、結果が追いついてくる逆転現象”とか、この作品の世界観的には興味深い現象なのかなと思います。
先ほど視点者の色についてお話しましたが、メインキャラは全部で9人なので9種類の色があります。それとは別に、10番目の色でグレーがあります。これは誰の色でもなく、完全な客観視──第三者視点の時に表示されます。ずばり言ってしまえば、ラボの中で芽生えた“意識さん”あるいは“自我情報力場”と呼ばれているものの視点です。なので、『ルートダブル』の本編はラボに閉じ込められた“自我情報力場”の視点を通した物語であり、すべてラボの中で展開している話です。Bルートなどはラボの外も描かれているではないかと思われるかもしれませんが、あれは夏彦の記憶を通して見ているだけです。
▲グレー |
――“自我情報力場”の視点を通した物語、という部分についてもう少し解説していただいてもよろしいですか?
『ルートダブル』は、ラボの事故発生をスタート地点として始まる物語ですよね。つまり、ラボの中に生じた“自我情報力場”の曖昧な記憶から始まり、それがだんだんと形になっていき、明瞭な意識を形作ったころからセンシズ・シンパシーが始まる。意識を通じ合わせる人たちに、少なからず影響を与えられるようになります。
Aルートは、“夏彦が渡瀬の目を通して見ている”というのはある意味正解なのですが、ある意味では間違いなんです。なぜなら、Cルートをプレイすればわかる通り、渡瀬たちの行動を夏彦はぶつ切りでしか観測していません。本当にAルートを見ていたのは、渡瀬の目を通して見ている夏彦の目を通して見ている誰かなんです。入れ子構造ですね。
その意識が、物語が進むにつれてますますキャラたちに関与していきます。そして徐々に情報を集積していきます。各キャラクターの過去を知り、気持ちを知り、周辺情報を知り……。TIPSに情報が増えていくのは、“自我情報力場”がいろんな人の記憶から情報の断片を集めて再構成している行為だと言えます。
そして出口が開いて9人が脱出した後に、意識はどんどん拡散していって世界に溶け込んで均一化していきます。熱力学の第2法則ですね。言ってしまえば、WX粒子増幅器の暴走によって意識がおぼろげに芽生えた断片的なプロローグから始まり、それが時間を置いて確固たる意識になって感情を操作できる本編になり、すべてが終わったエピローグでは解き放たれた意識が拡散して薄れていって、それ以降は彼には認識できなくなる、という構造なんです。
なのでプロローグからエンディングまで閉じた世界なんです。プロローグから前と、エンディングから後ろが見えないのは、彼が認識できないからなんですよ。もちろんエンディング以降も消えたわけではなく、広く行き渡り、どこにでもあまねく存在する……遍在する概念になったわけです。
――終盤で聞こえたテレパシーの残滓(ざんし)、エコーは彼によるものなのでしょうか?
あの現象には複数の解釈ができるようになっているので、どれも否定はしません。ひょっとしたら、悠里の言っていた“サードマン現象”かもしれませんし、高濃度のBC粒子がもたらした情報エネルギーの残滓なのかもしれません。“自我情報力場”の“意識さん”が必要な情報を拾い集めたのかもしれません。あの現象の解釈は、皆さんにゆだねたいと思います。一番納得できるものを選んでください。
また、TIPSをすべて見ることで確認できるもう1つの可能性があります。さらなる入れ子構造の考えです。その解釈をさらに拡大すると何が見えてくるのかは、本編には直接関係ない考察要素なので、興味がある人は考えを深めてみてください。
→タイトルでスタートボタンを押した瞬間からRAMが始まる(4ページ目)
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