2012年8月18日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第50回となる今回は、『スクリューマン&フェアリーロリポップス』を執筆した物草純平先生のインタビューを掲載する。
▲皆村春樹先生が描く『スクリューマン&フェアリーロリポップス』の表紙イラスト。 |
本作は、強烈に危険で凶悪にキュートなお姫様(ロリポップ)が巻き起こす、異世界改革系ファンタジック・アクション。ある雨降りの日。玖堂卓巳に突然の口づけを与えたのは、旧態依然とした異世界“妖精郷(ティル・ナ・ノーグ)”を改革する野望を抱く"翅族(アルフ)"の王女ロロ──ロロット・ニエンテ・アートレイアだった。
改革を目指す彼女は向かうところ敵だらけ。そして、彼女とのキスをきっかけに不思議な力を得た卓巳もまた、“保守派”に狙われることになり……。
物草先生には、本作のセールスポイントや小説を書くようになったキッカケなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
妖精、というものに昔から興味がありました。天使や悪魔だと風呂敷を広げ過ぎで、ちょっとお堅いイメージがあるけれど、民間伝承と関連深い妖精の逸話は、どこかユーモラスで突拍子もないものが多いんです。人の生活に身近であるがゆえ、より残酷さが際立つ一面もありますし。当初から考えていたヒロインともイメージばっちりだったので、これを期に妖精をテーマに据えた作品を1本書こうと決めました。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
ヒロイン、ロロットの強烈なインパクト。そして“イット”と呼ばれる使い魔的な妖精を用いた、登場キャラたちの異能バトルですね。特に後者は、主人公のイットを若干複雑にし、バトルにゲーム的な側面を取り入れてみました。真っ向からぶつかるのではなく、知恵をしぼって相手の裏をかくっ! みたいな。
――作品を書くうえで悩んだところは?
主人公とヒロインの心情の機微をどうやって描くか、です。何しろテーマの1つに2人の“初恋”を置いている作品なので、あまり踏み込み過ぎた書き方をすると野暮になってしまう。誰もが1度は体験したことがある初めての恋、その甘酸っぱさやら、ある種の怖さやらを、どこまで明確に言葉にするか……迷いました。
また、イットを用いたバトル描写や舞台設定にも気を遣いました。個人的に“アクションもののキモは、シチュエーション!”って考えてるところがあるので、エンターテイメント性にもこだわったつもりです。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
2カ月半から3カ月です。いや、もっとかな? これでも自分的には早いほうです。……すいません、遅筆で(汗)。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
特筆すべきことは何も。電撃大賞に出す前は割とまったりと、編集さんにお電話をいただいて改稿作業に入ってからは死に物狂いでまったりと執筆していました。
――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
まず何よりヒロインのロロットありき、でした。カワイくてお騒がせで破天荒で、でもそれだけじゃなくて自分のなかに絶対に譲れないものも持っていて、だからときにひどく過激な面も見せる……そんな凶悪なお姫様が、ある日突然、僕のなかで暴れ出したんです。で、「なら、もしコイツをヒロインに据えて物語を書いた時、その相方になる男の子は一体どんな奴だろう?」と、そう考えて出てきたのが、主人公の卓巳です。爆誕したロロットが作者の僕でさえ手を焼くお転婆なので、卓巳は精神年齢の高い理性的なキャラになることが初めから決まっていました。
――本作で愛着のあるキャラクターは?
みんな愛着がありますが、それだとズルイので敢えて主要キャラクター以外で答えてみます。まぁ、敵役のミューニシアさんですかね。駄目な女の人がけっこう好きなんで。
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
作中、卓巳とロロットが洋館のテラスで語らうシーンがあるのですが、そこで卓巳が好きになった女の子の予想もつかない一面を見せられ、いたく衝撃を受けます。良くも悪くも意外性の塊であるロロットの個性が、よく出ている場面ではないかと思います。あくまで僕的には、ですが。男の子はいつだって女の子に振り回される運命なのです。
――今後の予定について簡単に教えてください。
本作は妖精郷(ティル・ナ・ノーグ)という異世界が根幹に大きくかかわってくるのですが、現時点ではまだ“アヴァロン”という一国の概要が作中でわずかに語られているのみです。掘り下げが必要なのはもちろんのこと、“異世界変革ファンタジー”と銘打ってあるからには、当然、アヴァロン以外の国の視点からも妖精郷の内情を解き明かしていかねばなりません。そのうえで人間世界との関係や政治的衝突も絡めて、徐々にワールドワイドな展開にできればいいな……と思っています。
――小説を書こうと思ったキッカケは?
純粋に本が好きだったからです。もっと突っ込めば、僕の親が無類の“本の虫”だったからです。なので、親の影響で小さなころから漫画やゲームよりも活字に慣れ親しんできました。そんな僕が、読むだけでなく「自分でも物語を書いてみたい!」と考えたのは、とても自然な流れだったと思います。
――初の商業作品というところで、その感想は?
夢のようです。実際「は~い、ドッキリで~す!」という夢を何度も見ました(笑)。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
100人の読者に「そこそこおもしろいよね」と評していただけるより、50人の読者に「すごくおもしろい!」と言っていただけるような作品が出せたらいいなぁと思います。
――座右の銘は?
石橋を叩いて壊す。そして鉄橋を掛ける。
――好きな妖精は?
レプラコーンです。靴職人の妖精なんですが、なぜか方っぽしか靴を作ってくれないんですよ、こいつ。
――妖精って本当にいるんですか?
いますとも。皆さんの心の中に。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
モンスターハンターのポータブル3ですね。いえ、もう熱中しているというほどではないのですが……ただ一番最後にやったゲームはこれです。当時はすごくハマりました。ちなみに太刀使いで、オトモアイルーの名前は『アニキ』。自分、不器用っスからニャ。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
いい台詞が思い浮かばなかったので、主演のロロットさんにコメントを貰ってきました。ではどうぞ。
ロロット:「ヒーホウ♪ にへへ、みんなぼくに会いたい? 会いたいのかな? じゃあ、今すぐ本屋さんにGOだ! 買ってくんなきゃイタズラしちゃうよ?」
……すいません、こんな子です。どうぞ末永く見守ってやってください。
(C)物草純平/AMW
イラスト:皆村春樹
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