2012年11月8日(木)
――実際にシューティングゲームを作られてきて、調整で大変だと思う部分はどこでしょうか?
浅田 ゲーム中の処理落ちについてなのですが、わざと落としているところと基板の性能によって落ちているところの2種類があるんですよ。この性能で落ちているところを見極めるのが大変ですね。しかもこれ、プレイヤーさんの腕前によっても処理落ちする場所が変わりますから。
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うちの調整の仕方だと、まずトップのプレイヤーさんに来てもらって、アーケード版をプレイしてもらいながら、Xbox 360版もプレイしてもらうんですね。そうすれば処理落ちの差がわかるので、アーケードの処理落ちに合わせて調整をしていきます。
――簡単に言っていますけど、すごい手間ですよね(笑)
浅田 プレイヤーさんの協力を得て、初めて実現できる調整といえますね。意図的に落としている部分は、こちらでパラメータを実際に設定していますので大丈夫なのですが、基板の性能で落ちているところは、リアルで見比べないとどうにもなりませんからね……。1日何十回もプレイしてもらって、それで合わせてといった感じで調整しています。
――それで毎回合うプレイができるプレイヤーさんもすさまじいですね。
浅田 自分の机の横に調整用の台を設置して、プレイヤーさんには1カ月近く調整に付き合ってもらうという感じです。処理落ちだけじゃなくて、アレンジやノービスなどの調整にも協力してもらうことがありますね。うまいプレイヤーの人って、初心者の動きなども結構わかっていることが多いんですよ。
――開発する側も遊ぶ側も職人技といった感じがします。
浅田 そうですね、シューティングは特に自分との戦いとも言える部分があるので、妥協したらそこで終わるものだと思っています。例えば同じ職人技を求められるジャンルとして対戦格闘ゲームなどもありますが、ワンミスに対する比重はシューティングのほうが大きいかなと思います。ワンミスが最終のスコアに響くこともザラにありますし。
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ですので、プレイヤーさんには驚かされることがたくさんありますね。こちらが想定しないプレイをしたり、避けきれない弾幕も避けていきますからね。こちらとしては、開発をしている時に15フレームや20フレームくらいまで描画速度を落として、それで避けれるかどうか、という感じで調整しているんです。これなら基本的には避けれるだろう、と言いながら(笑)。でも、一般の人にはこの“基本的には”という部分が難しくて通用しないのかな、とは思います。
ただ、プレイヤーさんにはゲームに挑戦してもらいたいと思っているので、あえて難しくしている部分もありますね。この調整は難しいところなのですが。
――初心者向けにはノービスモードもありますし。
浅田 ノービスモードをクリアできるようになって、その次にHDモードに挑戦してもらい、とりあえず3面まで行けるようになったら、ノービスモードとしては成功したかな、と思える調整を考えています。ノービスモードで伝えたいことって、まず“弾幕シューティングはこういうもの”で、“こう進んでいけばいい”ぐらいのところを学習してもらいたいということなんですね。
ただ、このノービスモードって手間をかければ手間をかけるほど、いい調整になるものなんですよ。『虫姫さまふたり』に関しては、1カ月くらいをかけて調整をしました。当時、僕とプログラマーの2人で調整をしていたのですが、やはり僕は開発側の人間なので、どうしても基準の難易度が高めになってしまうんですね。そこで弾をなるべく撃たないような制約をつけるなどで、試行錯誤しながら調整をしていました。
今回もノービスモードの調整にかける時間は多めに取れそうなので、久しぶりにじっくりと取り組んでみようかなと思います。
――再現の調整もそうですが、こういった難易度の調整も大変そうですね。
浅田 難しすぎるのもプレイヤーの層を狭くしてしまいますが、一方で初見で多くの人がクリアできてしまうのもはたしていいのか、とは思うんですよね。Xbox 360で初めて出したタイトルが『デススマイルズ』でしたが、あの3段階の難易度は比較的いいものだったかなと思います。このタイトルと同じ目線で難易度調整をしたいところですが、中間の難易度は比較的作りやすいんですね。やはり難しいのは簡単な難易度のほうです。
とはいえ、弾幕や敵弾の数を減らしたりすると、今度はその部分での楽しさが減ってしまいますから、ゲームとして問題になってしまう。調整の時間が足りなくて、ノービスモードを微妙に感じてしまったタイトルもユーザーさんにはあると思いますが、そこは申し訳ないと言うほかはないですね。今回はそういうふうに言われないようにはがんばりたいです。
――話は変わりますが、秋のアップデートでXbox SmartGlassの機能が追加されました。こういった新機能の導入は予定はありますか?
浅田 いろいろとできそうなことは考えてみたんですが、プログラマーに相談したら「この開発期間でそんなことは無茶振りすぎます」と却下されました。確かにもっともなので、そこにリソースを割くよりかは、ゲームとしてちゃんと作ったほうがいいのでそこは諦めました。
――その他、特徴的な機能やシステムなどはありますでしょうか?
浅田 今回はやり込み要素のようなものを入れています。累計撃墜数で壁紙が買えるなどのショップ的なものですね。あと、シューティングゲームとしてはKONAMIさんの『オトメディウスX』以来となるであろう、主題歌を入れています。さらに繋がるという意味でのソーシャル要素やクエストをこなしていくタイプのミッションも用意しています。
――結構盛りだくさんな感じですね。
浅田 入れられるものはかなり入れていますね。マスターアップギリギリまで作り込んでいくことになると思います。また、新モードについても、自機の仕様などをイラストレーターさんと詰めているところですが、これもなかなか大変そうでして……(笑)。
制作を担当している池田(IKDこと池田恒基さん)との打ち合わせでも、「頭の片隅には置いておくけど、それは結構難しい」みたいなことを言われているんです。自分も漠然と話を聞いている時でさえ、いやいやそれはちょっと……と思っていたので、可能であればユーザーの皆さんにお見せできればいいかな、という感じで考えています。
――では、新モードはやはり池田さんが担当することに?
浅田 別のインタビューでは「絶対にやらない」とは言っていましたけどね。いつものゴリ押しでやってもらうことになりました。とはいえ、注文を出すときっちりとその通りに出してくれる人ですから。きっと言ったことをシューティングにはどう当てはめればいいか、というのを頭の中で変換して具現化して見せてくれるはずなんですよ。そうして出してもらったものを、マスターアップギリギリまですり合わせていくというのがいつものやり方ですね。
→ケイブのXbox 360タイトルは今後どうなる?(4ページ目へ)
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