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2012年11月21日(水)

【歴史的視点でレビュー】現実は小説よりなんとやら──史実と架空、過去と未来が交錯する『コール オブ デューティ ブラックオプスII』の世界

文:イトヤン

■“イラン・コントラ事件”の重要人物が、なんとゲームに登場!?

 さて、長々とニカラグアの歴史を語ってきましたが、実は『コール オブ デューティ ブラックオプスII』の中にはラウル・メネンデス以外にも、ニカラグアと米国の関係において、極めて重要な役割を果たした人物、しかも実在の人物が登場しているのです。

 米国政府がイランに武器を売却して、その代金をニカラグア反政府ゲリラのコントラに横流ししていたことが1986年に発覚した“イラン・コントラ事件”では、1人の軍人が大きくクローズアップされることになりました。事件の当時、アメリカ国家安全保障会議(NSC)に所属していた、アメリカ海兵隊のオリバー・ノース中佐です。ノース中佐はイランへの武器密輸の責任者としてアメリカ議会の公聴会に出席し、後に議会で嘘の証言を行ったとして告訴されました。最終的に無罪を勝ち取ったノース中佐は現在、保守派の政治評論家として、アメリカで活躍しているそうです。

 事件が発覚した当時、日本でもニュースなどで有名になったこのノース中佐が、じつはゲームの冒頭、主人公デイビッド・メイソンの父アレックスにCIAへの復帰を要請する士官として登場しているのです!

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲写真右側の人物がオリバー・ノース中佐です。顔の造形だけでなく、表情もかなり似ています。

 この場面の時代設定が1986年なので、おそらくは事件発覚の直前なのでしょう。ちなみにノース中佐の出番はあっという間に終わってしまうので、ほとんどの人がその存在に気がつかないかもしれません。それにしても、実際に事件の渦中にいた人物そのものを、こうして堂々とゲームに登場させるというのは、ちょっと日本では考えられないですよねぇ。

 なお、1980年代後半に“イラン・コントラ事件”の話題が日本のニュースでも繰り返し報道された結果、この事件にまつわる固有名詞が、日本のゲームの歴史に1つの影響を与えることになります。……古参のアクションゲームファンのみなさんなら、もうおわかりですよね!? 

■実在の人物はまだまだ登場! アフリカの闘士ジョナス・サヴィンビ

 本作に登場する実在の人物は、オリバー・ノース中佐だけではありません。ゲームの序盤、アレックス・メイソンがアフリカに赴いて参加した“アンゴラ内戦”のミッションに登場するジョナス・サヴィンビも、実在した人物なのです。正直言って、ゲームの中のサヴィンビは実に“濃い”キャラだったので、てっきり架空の人物だと思っていましたよ(笑)。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲装甲車で戦場を駆け巡り、配下の兵士たちを鼓舞して回るジョナス・サヴィンビ。いかにも軍閥のリーダーといった雰囲気の、エネルギッシュな人物です。

 ジョナス・サヴィンビはアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)の指導者で、米国からの支援を受けていました。当初は、アンゴラを植民地化していたポルトガルから独立を勝ち取るために戦っていましたが、1975年にソ連の支援を受けた政権によってアンゴラが独立を果たすと、自由主義を標榜する反政府ゲリラとして内戦を開始します。

 以後、サヴィンビは30年近くにわたってアンゴラで内戦を繰り広げましたが、ソ連崩壊後は米国の支援を失い、2002年に戦闘で死亡します。サヴィンビの死は米国が関与した暗殺との噂もあり、そのことを踏まえて、ゲーム中で彼がアレックスたちアメリカ人に接する際の陽気な姿を見ていると、なんとも複雑な気分になってきます。

→ゲーム中で描かれるパナマの独裁者ノリエガ将軍の逮捕劇(5ページ目)

(C) 2012 Activision Publishing, Inc. Activision and Call of Duty are registered trademarks and Black Ops is a trademark of Activision Publishing, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.

データ

▼『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2012年11月22日
■価格:オープンプライス

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