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2012年11月21日(水)

【歴史的視点でレビュー】現実は小説よりなんとやら──史実と架空、過去と未来が交錯する『コール オブ デューティ ブラックオプスII』の世界

文:イトヤン

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『コール オブ デューティ ブラックオプスII』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
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 皆さん、こんにちは。最近、何かとアメリカの歴史について語るお仕事があり、うれしい悲鳴をあげているライターのイトヤンと申します。自分は元々、FPSやSLGなどミリタリー系のゲームが好きで、そこからゲームの題材となっている史実にも興味を持つようになった人間です。ですから『コール オブ デューティ』の新作とくれば、もう問答無用にマストバイなのです。

 そんな私はなんと、“アメリカの歴史から見た『コール オブ デューティ ブラックオプスII』”について語れ、との命令が上官殿から発令されました。そんなことならお安いご用、頼まれなくとも思う存分、ウンチクを語らせてもらおうじゃありませんか!

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』

 ちなみに今回の『コール オブ デューティ ブラックオプスII』主観レビュー企画、これまでの4本はわりとゆるめなノリの記事になっていたかと思いますが、私の記事はかなりガチです。歴史を語れと言われたら、ガッチガチにならざるを得ません。なので、歴史に興味がない方には退屈な内容となるかもしれませんが、「ガチの歴史記事だと? 望むところだ!」という気概のある方は、最後のページまでお付き合いいただけると幸いです。

■悪役が魅力的なストーリーはおもしろい!

 前作『コール オブ デューティ ブラックオプス』は、1960年代の米ソ冷戦時代が舞台となっていました。のっけからキューバのフィデル・カストロ首相の暗殺計画が登場した他、“ケネディ暗殺”“MKウルトラ”といった陰謀論者にはたまらないキーワードが続出して、個人的にはニヤニヤしながらクリアしたことを思い出します。

 『コール オブ デューティ ブラックオプス』のキャンペーンは、物語がミステリ仕立てになっていて非常におもしろかったものの、“洗脳”というテーマもあって、話の展開がややわかりづらいと感じた人もいたのではないでしょうか。しかし、『コール オブ デューティ ブラックオプスII』のキャンペーンは、前作とは対称的にストーリーの本筋が非常に明快で、プレイヤーをグイグイと物語の世界へ引き込んでいってくれます。

 皆さんすでにご存じかと思いますが、本作のキャンペーンは2つの時代に分かれています。まずは西暦2025年の近未来を舞台とした、巨大テロ組織のカリスマ的なリーダー、ラウル・メネンデスと、アメリカ海軍の特殊部隊SEALsに所属する主人公、デイビッド・メイソンが繰り広げる対決の物語です。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲2025年の物語で主人公となるのが、SEALsの兵士、デイビッド・メイソンです。

 そしてその合間には、デイビッドの父アレックス・メイソンの友人であるフランク・ウッズが、1980年代の出来事を回想するという形で、ラウル・メネンデスがアメリカに対して敵意を抱く理由と、彼とメイソン親子との間に存在する深い因縁が描かれることになります。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲1980年代の物語では、前作の主人公でもあったデイビッドの父、アレックスが主人公となります。

 今回のキャンペーンでは、主人公であるメイソン親子の敵となるラウル・メネンデスの存在感が素晴らしく、実に感情豊かな悪役として描かれているのです。2つの異なる時代を同時に語っていくことで、メネンデスが壮大なテロ計画を始動させた背後にある強い“想い”が立体的に浮き上がってきて、こちらとしては思わず彼に感情移入してしまうほどです。“おもしろい物語は悪役が魅力的”とよく言われますが、本作はまさにその定義にあてはまると言えるでしょう。

『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
▲テロ組織“コルディス・ダイ”を率いるラウル・メネンデスは、凶悪なテロリストであるにもかかわらず、数十億人もの人々から“救世主”として崇拝されている。

 ラウル・メネンデスの人物像を語る上で重要なのは、彼が中米のニカラグア出身であるという点です。彼の生い立ちには、ニカラグアをはじめとする中南米諸国がアメリカ合衆国という大国に対して歴史的に抱えている、ある種の“怒り”の感情が凝縮されているのです。逆に言うと、その点を見逃してしまうと、メネンデスは単なる個人的な怨念だけで、テロ計画を立案したように見えてしまうかもしれません。

 しかしラウル・メネンデスの生い立ちは、ゲーム中では短いセリフとイメージ映像だけで、サラッと流されてしまっています。アメリカ人ならこれでも理解できるかもしれませんが、中南米諸国とアメリカの関係についてあまり詳しくない人には、多少の補足が必要でしょう。というわけで次のページでは、ニカラグアとアメリカ合衆国の関係についてのウンチクを、勝手に語らせていただきます! 

→ここまではさわり。次ページからはガチの歴史語りです!(2ページ目)

(C) 2012 Activision Publishing, Inc. Activision and Call of Duty are registered trademarks and Black Ops is a trademark of Activision Publishing, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.

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データ

▼『コール オブ デューティ ブラックオプスII』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PC
■ジャンル:ACT
■発売日:2012年11月22日
■価格:オープンプライス

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