2012年12月21日(金)
だいたい全部、鎌池和馬先生への愛です――『拡散性ミリオンアーサー』電撃プレイ日記その6“これが鎌池節だよ!”
電撃オンラインで展開しているiOS/Android用アプリ『拡散性ミリオンアーサー』の特集“電撃ミリオンアーサー”。この特集の一企画として、電撃の編集&ライターがリレー形式でプレイ日記をつづる“拡散性ミリオンアーサー 電撃プレイ日記”の6回目“これが鎌池節だよ!”をお届けします。
ゲームとラノベがあれば飯もいらない引籠型ライター・石田賀津男です。今回は攻略ではなくプレイ日記を任されたわけですが、ペロペロやらガチャやらの話は先のライター陣にやり尽くされているので、私は趣向を変えてストーリーに目を向けたいと思います。
ストーリーの話といっても、「このゲーム、物語の展開がおもしろいの!」とか言いたいのではありません。そんなもん、言うまでもなくおもしろいに決まっているのです。なぜなら――
シナリオを書いているのが鎌池和馬先生だから!
鎌池先生は、SF的な科学とファンタジー的な魔術が共存する世界で展開される『とある魔術の禁書目録(インデックス)』や、超巨大兵器に生身で立ち向かう少年を描いた『ヘヴィーオブジェクト』などを執筆する、電撃文庫を代表する作家の1人。多数の作品をハイペースで執筆する傍ら、『拡散性ミリオンアーサー』にも重厚なシナリオを提供しています。
今回は『拡散性ミリオンアーサー』のストーリー第1部より、鎌池先生の色を特に強く感じられる部分をピックアップして紹介します。「鎌池先生の作品は好きだけど、『拡散性ミリオンアーサー』は遊んでない」という人はぜひ見ていってください。……むしろ今回は私がいかに鎌池先生の作品を愛しているかを語るだけの内容で、鎌池先生の作品を知らないと話について来られないのでご了承ください。
なお本記事では、私がプレイしている“魔法の派”のシナリオから抜粋したシーンを紹介します。シナリオの柱となる部分はなるべく伏せていますが、若干のネタバレは含みますので、その点をご理解いただいたうえでご覧ください。
▲誤解のないよう最初にお伝えすると、本作では概ねこんな感じの話が続きます。 |
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■Scene 1:第一声
ゲームスタート後、最初に発せられるセリフです。初プレイでこれを見た瞬間、「おーし間違いないで、これ鎌池先生やでー!」と不必要にテンションが上がりまくった私がいました。このひと言がそこらじゅう鎌池節です。
エルは主人公であるアーサー(魔法の派)をサポートする妖精です。見た目は小さな女の子なのですが、“断絶の時代”と呼ばれる過去のロストテクノロジーにも詳しい名参謀です。で、その“かわいいけれどすごい子”を表現するために、見た目に合わない偉そうな言葉遣いになっています。
しかしそれだけだと見た目とのギャップがあるだけでかわいくないので、見た目相応の軽さや子どもっぽさを出すために、「どうにも」を「どーにも」にするなど音引きを使うのです。これは鎌池先生の常套手段。この音引きは、無気力っぽいキャラクターの表現にもよく使われます。
■Scene 2:エクスカリバー超ゆるゆる
ゲーム開始直後、エクスカリバーを抜いてしまったアーサーのセリフ。エクスカリバーとアーサーという名前は、ファンタジー作品の原点とも言うべき“アーサー王伝説”から来ています。もちろんあちらはシリアスな物語なわけで、それをイメージしてプレイし始めた方もいると思います。
でもこのゲームはそうじゃないよ? あくまでモチーフでありノリも全然違うからね? というのを、この“エクスカリバー”と“超ゆるゆる”のギャップで説明しているのです。もちろん先々にはシリアスな展開もありますが、そこを引き立たせるために、あえてこういう日常的な表現を使って読者を気楽にさせるのです。
ちなみにここで出てきたケイ兄さんは、いつまでたっても作中に出てきません。弟が無理やり王様させられていますけどお元気でしょうか……。
■Scene 3:神が騙せと仰っています
アーサー(魔法の派)とペアを組む騎士ガラハッドとの初対面のシーン。ガラハッドは強力な騎士なのですが、“断絶の時代”以外には興味を示さない性格で、どうやら「あいつが“断絶の時代”についておもしろいことを知っている」とかなんとか吹き込まれてアーサーのもとにやってきたようです。
そのいきさつを雰囲気から理解したアーサーは、ガラハッドの助力を得るために調子のいいことを言って勧誘するわけですが、その前にわざわざ「神が騙せと仰っていますので~」と言い放ちます。しかも満面の笑みで。こういう「どうせ相手には意味わかんないんだから好きなこと言っちゃえ」なノリは笑いのツボの1つです。
■Scene 4:行けアーサー!
リエンス王との戦いで勝敗が決した直後のこと。激しい戦いが続いた後、部下たちに命を捨てよと命じるリエンス。それに義憤を覚えたアーサーが「何と悪逆なる王であろうか! もはや生かしておくに値せず!」とかキレる場面が来るかと思いきや、目をキラキラ輝かせたガラハッドがすかさずヤジを飛ばします。
それまでは本当にシリアスな展開だったのに、いざというところでの急落っぷりが笑いどころ。しかしこれはそれだけでなく、実はリエンス王はこの先の敵に比べれば大した存在ではない、ということを印象付ける効果もあります。鎌池先生が見せる燃える展開はまだまだ先のようです。
■Scene 5:そんなの出ないんだからね!
これイチオシ。リエンス王にとどめを刺さなかったアーサーの甘さにキレるグィネヴィアに、ガラハッドが仲裁に入ろうとした時のセリフです。
ガラハッドがツンデレであるという設定はここまで特にないのに、グィネヴィアがいきなりこのフリをしたところ、ガラハッドがこう返した、という流れ。ツンデレじゃないけどそれっぽい言い回しがおもしろければ、そもそもこの世界にツンデレという単語が理解されているのがおかしいじゃん? というメタな展開も合わせて、ここだけ妙に浮いているのが印象的です。でも「そんなの出ないんだからね!」の言い回しは鎌池先生っぽいのです。
■Scene 6:テコ入れ的に
アーサーがエルから雑用を押し付けられそうになって、すったもんだした後のセリフ。物語の上ではこのセリフすべてがどうでもよく、「テコ入れ的に!!」とメタなことを言い放つのが笑いどころ。
あと句読点を入れずに一気に言い切るのも鎌池先生らしい表現手法。息継ぎなしでしゃべったという言葉の勢いや強さを感じさせる表現なのですが、これが使われたセリフは物語においては大抵どうでもいい内容だというのも鎌池先生の作品を読むうえで重要なポイントです。あとテコ入れお待ちしています。
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Developed by Mighty Craft Co.
データ
- ▼『拡散性ミリオンアーサー』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応端末:iOS/Android
- ■ジャンル:カードバトルRPG
- ■価格:無料(アプリ内課金)