2013年1月12日(土)
【Spot the 電撃文庫】『魔遁のアプリと青炎剣』は“高校生がバイトでニンジャをする話”から生まれた――天鴉蒼先生インタビュー
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第65回となる今回は、『魔遁のアプリと青炎剣(アウローラ)』を執筆した天鴉蒼(あまから そう)先生のインタビューを掲載する。
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▲ねりま先生が描く『魔遁のアプリと青炎剣』の表紙イラスト。 |
本作は、特殊な力を持ち、魔法のような力を使える超高性能端末“スマートギア”を操る少年少女の姿を描いた“異能ガジェットストーリー”だ。対立する巨大メーカーの影響で東西2区に分裂した都市。その中央に位置する高天原学園では、両メーカーが開発するスマートギアと専用アプリを駆使して、能力者が互いの個人成績(ランキング)を競い合っていた。
東区傘下の青龍院に所属する祇堂拓真(しどうたくま)はそんな学園の生徒で、通常の人間の数倍に匹敵する強靭な肉体と、高い身体能力を持つ“素戔嗚(トレイザー)”の1人。そんな彼の前に現れた謎の転校生・奏咲(かなさき)ユマは、学園生に不可欠な能力を失っていた。ユマの所属する西区傘下の白虎院では、そんな彼女の秘められた能力をめぐり、黒い陰謀が渦巻いていて──。
天鴉先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
ある日突然、電撃小説大賞の応募原稿を読んだ担当さんから直接お電話をいただきました。はじめのうちは訳がわからず、かなりおとぼけな対応をしてしまったような記憶があります。あ、それは今でもですが……。いくつか作品のアイデアを提案した中で、“高校生がバイトでニンジャをする話”がよいということになり、そこから作品作りがスタートしました。ただ、何度もやり取りをしていくうちに、結果的には大きく違った話になっています。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
30種近く登場するアプリやガジェット類、街や学園の仕組みなど、お話の土台になる設定作りに一番時間をかけました。その分、造語がてんこ盛りですが、ありふれた日常とワクワクするような非日常を、うまく両立できたのではないかと思っています。
――作品を書くうえで悩んだところは?
設定を作りこみ過ぎたところでしょうか……。シーン間の因果関係や伏線の辻褄が合わなくなり、修正のたびに自縄自縛でした。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
一番最初、企画書とも呼べない雑なA4の紙1枚から数えると、丸1年近くかかりました。
手元には、全編書きあがった状態のボツ原稿が5バージョンほど残っています。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
モスキート音について調査していた時、耳年齢が50代並みという診断がくだり、ショックを受けました。自分の耳が20年以上も生き急いでいたなんて……。脳年齢は怖いから測りません。
――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
主人公の拓真は、とにかく明るく元気に。バカだけど決める時は決める、という主人公らしい主人公を心がけました。ユマのほうは、今のキャラに落ち着くまでに色々な変遷がありました。書くたびにどんどんあほの子になっていったような……。名前の由来は某ハリウッド女優から。今では影も形も残っていませんが、最初は日本刀使いでした。
――初の商業作品というところで、その感想は?
これを書いている現在、まだ実物を見ていないのでさっぱり現実感がありません……。しかしイラストラフをいただいた時など、深夜なのに部屋で悶えていました。自分の書いたものが置いてあるかと思うと、当分は照れくさくてラノベコーナーに近寄れないような気がします。
――小説を書こうと思ったキッカケはなんですか?
書きはじめたのは小学生の時だったと思います。某F文庫のドタバタファンタジーが暴れていたころです。「自分もこういうのが書きたい!」という、いたってありきたりな動機からでした。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
細部が気になってしまう性分なので、気付くとちょっとした描写に何時間もかけていたりします。そういう箇所は自己満足なことが多いので、おおむね担当さんにバッサリ切られます。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
机のうえにブドウ糖のボトルが置いてあります。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
夢のような楽しさと、現実味のある重さ。そんな甘くてからいお話を書き続けられたらいいな、と思います。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
小説版『ガンダム』シリーズを読んで富野由悠季さんを。エッセイを読んで声優の林原めぐみさんを勝手に尊敬していました。僕の中では何も矛盾していません。
――現在注目している作家・作品は?
最近見た映画でもっとも衝撃を受けたのは『インセプション』。第2位が『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』で、3位が『ブラック・スワン』です。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
数年前に発売された『ミラーズエッジ』というタイトルが好きで、かなりやりこみました。あの疾走感や世界観からはとても影響を受けています。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
現実の世界でも、ハイテク技術の進歩はすさまじいです。“SFが現実に”どころか、SFを超えた技術がどんどん登場してきます。あの高揚感をなんとか形にできないかと思って書きました。
もしもこのスマホに世界を変える力が秘められていたら――。『魔遁のアプリと青炎剣』は、そんな小説です。とか言いつつ、僕はスマホ持っていないのですが。
(C)天鴉蒼/AMW
イラスト:ねりま
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