2013年3月28日(木)
▲ディースリー・パブリッシャー・岡島信幸氏。 |
――PS4についての率直な印象をお聞かせください。
発表が行われた時、実はインフルエンザで倒れてたんです。高熱でうなりながら見てました。率直に言ってすごいマシンだと思いましたよ。無理してよかった。『Killzone:Shadow Fall』なんて、完全に実写だと思えるほどでしたし。とにかくすごいハードで、リッチなエンターテイメントを作れそう、ということは伝わりました。
もちろんビジネスとしてはどうなのかな、という気持ちでも拝見しました。誰もが10億円を投資して大作を開発できるわけではないですし、エンドユーザーの誰もが高価なハイスペックマシンを購入できるわけではありませんからね。イメージとしては、PS2ほどの価格からローンチしてくれると、ユーザーも増える可能性が上がり、われわれも投資しやすい土壌になり得るのではないかと考えています。
――従来はグラフィックの進化など、アピールポイントがわかりやすかったですが、今回のPS4の発表は、あえてそこは前面に出しませんでしたし、わかりやすいイメージは持ちにくかったかもしれませんね。
メーカーやユーザー、地域によって、期待することが異なっているように見えます。多種多様な可能性を示しているとも言えますね。ただし、まだピンときていない人も多く、そういった人たちこそお客様なので、どう取り込んでいくかが重要になると思います。
――日本ですと、ユーザーはクラウドに対して今ひとつピンと来ていない印象です。
クラウドに関してはサービスの1つとして、PS、PS2、PS3のゲームがプレイできる(構想がある)とされていますね。これらは高速通信可能なインフラ次第という面もあるでしょう。シビアなボタン入力を求められるアクションなど、気になっちゃいますね。とはいえ、セーブデータの存在など、いちいち意識する時代が終わるのかもしれません。
――DUALSHOCK 4の可能性については?
心ひかれたのは“SHAREボタン”です。常時録画している動画を公開できる機能のボタンですね。これは賛否両論あると思います。たとえば「ボスキャラを倒した!」という動画をいきなり見せられても、単なるネタバレですから、なんでも自由にシェアできればいいということでもないでしょう。
コンテンツ提供側が、プレイ動画の公開に対しても、気づかいを必要としたモノ作りをしなくてはならない時代になったということです。これについては、実はすでになっているのかもしれませんが。後はタッチパッド。結構すごいところに付いてますね。マルチタッチにも対応しているとのことですから、遊びの幅は広がっていくと思います。
――発表では、5つのキーワードが提示されました。これについては、どういった印象を持ちましたか?
まず“Simple”。シンプルと言ったら、われわれですよ(笑)。
――ディースリー・パブリッシャーは『SIMPLE』シリーズを展開していますからね(笑)。直観的にゲームをプレイできるという部分が気になりますか?
スタンバイモードが付いていて、ゲームを中断してからの起動も早い。PS Vitaやスマートフォンと連動する(構想がある)ので、外部からのコントロールもできる。他のデバイスとの連携は、ゲームのアイデアとして非常におもしろく活用できると思います。
例えば『地球防衛軍』シリーズですと、ゲームがあまり得意ではないユーザーには、高難易度がとにかくキビしい。体力が足りないので経験値稼ぎをしたくなるんですよ。でも私を含め、勤め人はずっと据え置きハードで遊ぶことはできないので、出勤途中にPS Vitaだけでなくスマホでも経験値稼ぎが可能とか、そんな連動が実現するといいですね。
――PS4ならより広くそういったことができそうですね。
スマホアプリとゲーム内部が連動するような仕組みはおもしろいですね。最強ハードであるスマホを味方にして、スマホ決済で購入したものとの連動とか、そういうのを実現できるとさらに夢は広がると思います。あらゆる壁を取り払えるといいですよね。
――PS4では“Social”が1つの軸となりそうですが、これについてはいかがでしょう?
PS4が提示したソーシャルの意味とは違うのかもしれませんが、近年はゲームのダウンロード販売比率が増えています。PS4はネットワーク接続を想定したマシンなので、さらにダウンロード購入率が上がると思います。スマホの無料エンターテインメントが全盛の今、「すごいゲームを作ったから買ってください」という時代から、まず体験版をプレイしてもらって、それに対するユーザーの意見を吸収しながらバージョンアップを重ねていくという、広義のソーシャル式ゲーム開発が主流になってくるかもしれませんね。
もちろん、PS3時代の今でもアップデートはできますが、完成したゲームに対して微調整をユーザーの意見を取り入れて行なうというやり方から進化して、ゲームのサービス自体の商品性や方向性にまでソーシャル機能を活用していけるようになれば、より快適な商品をお届けできると思います。モノ作りに取り入れてこそ、真のソーシャルですからね。
――ユーザーの声のフィードバックも、しやすくなりますか?
そうですね。Facebookなどとの連動は、そういう声を常に吸い上げやすいということですからね。
――ゲームの販売形態や課金形態も、新しい形に変わっていくと思われますか?
とにかくPS4が安価でリリースされることを祈っています。スマホ特需で、カジュアルゲームで満足するユーザーが増加した今、5万円以上のゲーム機は誰もが敷居が高いと感じるでしょう。高級で高価な趣味では深みは出せても、幅広く浸透していかない気がします。
――後々値下げされてもいったん“高価”という印象が付くと?
イメージは後を引きますからね。印象面の障害までも徹底排除できると、ユーザーがスッと入っていけると思います。たとえば、買わなくても遊べるレンタルという手法もあるかもしれない。飲料水のサーバーのように2カ月無料など(笑)。とにかく、まず触ってもらって判断してもらう。「月額制で貸与とか無理なのかな?」と思います。ソフトはお試し版が全盛なのですから、ハードウェア込みでもお試しできたら素敵ですよね。
――ユーザーのアカウント情報がクラウド上にあれば、データは本体に依存しませんしね。
われわれにとっては、どれだけ多くのユーザーにPS4を触ってもらえるかが大事です。どんどん普及してもらって、おもしろい未来を見たいですね。再び『SIMPLE』シリーズをノンストップでリリースする時代が来るかもしれない(笑)。
――『SIMPLE』シリーズは、ダウンロード販売と相性がよさそうです。
そうですね。とりあえず10タイトルくらい『SIMPLE 0円』シリーズをリリースしてみましょうか(笑)。初めは無料で、気に入ってもらったら対価をいただくというモデルですね。妙にリアルな『ドリームクラブ』も作れますね。人気の女の子は予約待ちとか、上客がログインしたら「ゴメンね!」って席を移っちゃうとか。これもユーザー体験の共有ですよね(笑)。いろいろなアイデアを実現できるハードだと思いますので、広く普及してほしいと心から願っています。
データ