2013年6月8日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第79回は、『おんたま!』でデビューした翡翠ヒスイ先生のインタビューを掲載する。
▲ちり先生が描く『おんたま!』の表紙イラスト。 |
本作は、妖怪と人間の架け橋になろうとする少年の熱血ストーリー。小さな村にある高校に、篝火御霊(かがりび みたま)という少年が転入してくる。実は彼は、“憑きもの筋”――妖怪の血を引いている者だった。妖怪が暮らす世界“天邪神宮”からやってきた御霊は、「人間らしい暮らしが、妖怪に出来るのか?」という試みのため、人間界で生活することになる。愉快な妖怪仲間の応援もあり、闊達な少女・七緒美久地(ななお みくじ)と、人間らしい青春を楽しむのだが……。
翡翠先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――小説を書こうと思ったキッカケは?
初めて小説を書いたのは中学2年生のころです(笑)。当時はLEGOにはまっていて、自分の作った城や基地などを舞台にした物語を頭の中に描く程度だったのですが、ある時ネットで知り合った友人にそれを話したところ、小説みたいだと言われたのが一番大きいキッカケだと思います。“そうか、書けばいいんだ。”と自分の中で歯車が合った感覚を覚えています。
――本作を書いたキッカケを教えてください。
元となる作品は20歳の春に書き上げたものです。それまではミステリー寄りの作品ばかり書いていたので、節目となる1年を始めるにあたり、一度笑って泣ける青春ストーリーを書いてみたかったんです。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
妖怪の身でありながら大きな夢を胸に、悩みながらも前へ前へと進んでいく主人公の変化と成長を是非見ていただきたいです。あとは、支えてくれる仲間たちとの楽しい日常や絆も大きなテーマとして考えています。
――作品を書くうえで悩んだところは?
やはり主人公を中心としたパワーバランスでしょうか。『おんたま!』は、主人公が受け継いだ強力な武器をめぐる物語でもあるので、設定や舞台背景を整えるのにとても苦労しましたね。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
元の作品は2週間くらいで書き上げたのですが、改稿には5カ月くらいかかったと思います。1つの作品にこれだけの時間をかけたのは初めてで、プロとして意識が変わっていく期間でもありました。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
執筆作業は本当に時間を忘れるほどに大好きで、朝10時に執筆を始めて、そろそろお昼ご飯でも食べようかと時計を見たらとっくに日が沈んでたことがありました(笑)。ちなみにその時に書いていた作品がデビュー作の『おんたま!』の原型です。
――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
青春を1つのテーマにしようと考えた時から、主人公は誰もが共感できるような、ヒロインは一緒にいると元気になれるような明るいキャラクターにしようと決めていました。いつだって希望を胸に秘めている姿を描ければなと、そんな風に考えています。
――初の商業作品というところで、その感想は?
もちろん、たくさんの人に読んでもらえるんだという喜びはありますが、自分はまだまだ未熟(温泉卵のように)だと思っているので、ここからさらに成長しなければという気持ちがとても大きいですね。作品を通して沢山の人とつながっていく訳ですし、これまで以上に自分を見つめ直さないといけないのかなと思っています。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
子供のころからカッコいい悪役が大好きだったので、愉快で痛快で爽快な、悪者が活躍する物語を描いてみたいですね。自分の好きな要素を徹底的に詰め込んだ作品で読者を楽しませられればいいなと考えています。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
特にこれといったものはないのですが……あえて言うなら、自然体で書くことでしょうか。作者自身が楽しんで書くことが、まず大事なことだと思っています。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
世界中の幻想的な絶景写真を探して、それを頭の中で自分の作品と重ねたり照らし合わせて世界観を広げたりしています。あとは執筆中のシーンや、気分に合わせた曲をかけることでしょうか。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
高校生の頃に初めて読んだライトノベルは『終わりのクロニクル』でした。あの重厚感に惹かれてライトノベルに興味を持ちましたね。物語を描く上で影響を受けたのは『ペルソナ4』と『コードギアス』です。前者からは明るいミステリーという作風を、後者からは先の読めない緊迫感と悪の魅力を学ばせていただきました。
――現在注目している作家・作品は?
好むジャンルにこだわりなどはあまり無いので、おもしろそうな作品は片っぱしから手に取ってみたいと思っています。
――今、力を入れていることはなんですか?
もちろん、自分の作品をよりよくする作業が中心ですが、最近は各方面の神話や伝承などの資料を集めています。今後のために、少しでも知識を蓄えておきたいと強く思うようになってきました。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』をやりこんでいたのですが、先日プラチナトロフィーまで取ってしまったので……(苦笑)。はまり症なところがあるので、やりこめるオススメのゲームがあればぜひ教えてください。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
主人公の御霊は誰もが持っている不安や弱さを抱えた少年です。そんな御霊がどう弱さと向き合い、乗り越えていくのか。ひた向きな御霊の姿が、ほんの少しでも読んでくれた方の勇気になればうれしいです。
少しでも楽しめる物語を描いていけるよう精一杯頑張ります。これからよろしくお願いいたします!
(C)翡翠ヒスイ/アスキー・メディアワークス
イラスト:ちり
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