2013年6月14日(金)
分析小説『赤村崎葵子の分析はデタラメ』執筆の理由を分析すると……? 十階堂一系先生インタビューをお届け【Spot the 電撃文庫】
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第80回となる今回は、『赤村崎葵子の分析はデタラメ』を執筆した十階堂一系先生のインタビューを掲載する。
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▲霜月えいと先生が描く『赤村崎葵子の分析はデタラメ』の表紙イラスト。 |
本作は、あらゆる事象を分析しては正体不明の結論を導き、周囲を混乱と混沌のどん底へと誘う少女・赤村崎葵子が活躍する“分析小説”だ。彼女にかかれば結論はいつも藪の中。ムダにこんがらがった分析の先に葵子が導く驚愕と脱力の結論を、キミは把握できるか!?
十階堂先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
それについて語るには、ことのはじまりから説明をはじめなければならない。あれは15年前の夏の日、僕らにとって一番便利な移動手段が自転車だったころのことだ。
いつものようにジャイアンツの帽子をかぶった僕は、お菓子が入っているだけのリュックサックを背負い、友人の家へと向かっていた。その友人は普段から大人しく、あまり目立つところのない少年だったが、前日に発売したばかりのゲームを手に入れたという情報が広まり、その日はにわかに人気者となっていた。
そう、“ゲーム”だ。
僕らにとってはじまりは、ただの“ゲーム”だった。たった1つのテレビゲーム。それが僕らの未来を根こそぎ変えてしまったんだ――。
そこからいろいろあって、なんやかんやを繰り返して、僕は少しだけ大人になって、気付けば15年後、僕はこの作品、『赤村崎葵子の分析はデタラメ』を書いたのだった。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
それについて語るには、ことのはじまりから説明する必要はない。
……すみませんもうやめます。真面目に答えます。ごめんなさいでした。作家というものは、“論理的整合性を保つ”とか、“スキのないプロットを組み上げる”とかいったことに作家としての能力を感じ取ろうとするものだと思うんですけど、この作品のコンセプトはその真逆です。“一見正しいように見えるけど、実は論理的にぐちゃぐちゃでデタラメなものを書く”――という誰が得をするのかよくわからない方向を目指して書きました。
でも、あえて指摘されるような点を残して書くっていうのはとてもおもしろくて、新鮮な体験でした。
目を皿のようにして読みふけり、「この話、疑問点や矛盾点がたくさんあるんじゃないか?」と気付いていただけたら幸いです。
――作品を書くうえで悩んだところは?
だいたいにして悩んでいたと思います。それまでは常に直感に従って書くというスタイルを取っていたんですけど、直感で分析小説は書けないと気付き挫折しました。どんな話にするか、どんな内容にするか、こんなに悩んだのは初めてのことじゃないかなと思います。
特に悩んだのは、そうですね、論理的整合性を保つこととか、プロットのスキをなくすこととかでしょうか。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
12月に打ち合わせをして作品の方向性を決め、出版までやっとこぎつけたのは5月なので、つまりはそういうことです。
ただ1つ注意していただきたい。この質問には罠があります。単純に執筆が遅いから時間がかかるのか、執筆速度自体は速いが作品の精度を上げるためにあえて長い期間をかけているのか――作家がそこに言及しない限り、どちらを意味するのかはインタビューを読んでくださった人に判断を任せてしまうことになりますよね。つまりこの質問は情報収集の手段として適切ではなくうんぬんかんぬん……。
こういう分析をする小説を書きました。こんなどうでもいいことを分析しているうちに時間がかかりました。すみません、いつも締切ギリギリで本当にすみません。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
電撃文庫の表紙にはあらすじがない、ってネタを使って文章を書いていたんですが、本作が発売する直前に帯にあらすじが書かれるようになってしまいました。タイミング的にピンポイントな攻撃だったので困りました。
だがそれがどうした。座右の銘は起死回生、逆境が俺を強くする。そうさ向かい風に向かって飛べ。うん。
……あれっ? もしかしてこの質問、“作品を執筆している最中に起こったエピソードについて”じゃなくて“今執筆している最中のエピソードについて”答えるんですか? あれあれ?
――“作品を執筆している最中に起こったエピソード”で大丈夫です! 続いて、主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
皆さん、ライトノベルにおける主人公の条件ってなんだと思いますか? 人によって答えはいろいろあると思いますが、僕は“歯並びがいいこと”だと思います。古今東西、歯並びの悪い主人公というものを僕は見たことがありません。もし歯並びの悪い主人公をどこかで見かけることがございましたらぜひともご一報ください。
というわけで、主人公について思うことは、「歯並びがいいなぁ」。ちなみにヒロインが生まれたきっかけは、「ジト目ってかわいい」と思ったから。
――最初に小説を書こうと思ったキッカケは?
思いついちゃったから。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
なんかもう、すごいの。すごいの書きたい。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
タイトルには特にこだわるタイプなのですが、こだわりすぎてたいてい没になります。というわけで、特にこだわっているところはありません。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
どうでもいいことですが、アイデアではなくアイディアという表記の方が好みです。プリンターよりもプリンタ、エンジェルよりエンゼル。好きな表記ってありますよね。
僕の場合は携帯電話のことを“ケイタイ”といつも書いているのですが、「ケータイだろ普通は」とツッコまれたことがあります。 で、えと、集中力を高めるコツは、そうですね、すみませんわかりません。
好き勝手書いてるとそのうち、結果としていつの間にか集中していた、ということが多いように思いますが。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
『サマー/タイム/トラベラー』という小説が高校生のころから大好きで、今でもよく読み直しています。「何に影響を受けたのか」と聞かれるとよくわかりませんが、「何に影響を受けたいか」と問われるといつもこの作品の名前が挙がりますね。ちなみに今は、もっと推理小説を読んで影響されておけばよかったと後悔している最中です。
――現在注目している作家・作品は?
最近電撃文庫でデビューした十階堂一系さんに注目しています! ……こういうありがちなネタをはさんでくる人ってたくさんいるんですかね。ネタがかぶるのコワイです。
――今熱中しているものはなんですか?
犬。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
TVゲームなどのことでしょうか? ゲームは基本的に『ポケットモンスター』くらいしかやりません。好きなポケモンはゴルダックで、特殊受けド忘れ型が最近のお気に入りです。ハイポンを受けるために出てきた特殊受けに対してクロスチョップを当てるのが楽しいです。
負けそうになって急遽さいみんじゅつ連打に切り替えるのもまた楽しいです。 そのうち、ラノベ界最強のゴルダック使いとして“ゴルダッカー”を名乗る予定なので皆さんよろしくお願いします。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
買って中を見ていただくと、表紙に書いてある文章の全文が読めます。
(C)十階堂一系/アスキー・メディアワークス
イラスト:霜月えいと
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