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2013年7月16日(火)

【ほぼ毎日特集】自動ドアの1日の電気代や設置価格は? 意外と知らないマメ知識満載のインタビュー(第18回)

文:そみん

 どうも、なぜか自動ドアによく無視されて、「お前は影が薄くて、存在感がないからだ」と茶化される、編集者のそみんです。そんな長年の悩みを含めて、自動ドアに関するお話をお聞きするため、全国自動ドア協会(Japan Automatic Door Association)を取材してきました。

 このコーナー“俺得取材旅”は、電撃オンラインの“ほぼ毎日特集”の一環で、編集者のそみんが個人的にピンと来たものを取材してくるというもの。ある意味で職権濫用的に、自分が好きなものを気ままにインタビューしてくる“俺得”な記事となっております。

自動ドア取材
▲全国自動ドア協会の事務局長・服部潤資さん。

 お菓子の『じゃがりこ』を取材した前回に続き、今回は普段使っているのに意外と知らない“自動ドア”に興味が湧いて、ちょっと取材に行ってきました! インタビューのお相手は、全国自動ドア協会の事務局長である服部潤資さん。自動ドアの歴史や裏話を中心に、さまざまなお話をお聞きしてきました。


■世界に誇る日本の自動ドア普及率の高さ!

――まずは全国自動ドア協会について教えてください。

 昭和49年(1974年)4月に設立され、今年で創立39年目となります。来年2014年には40周年を迎えます。

 目的としては、自動ドアをより安心して使ってもらい、より普及できるような体制作りを目指しています。具体的には、“安全”、“安心”、“快適”をキーワードに、安全指針、品質や施工、保守基準などの技術基準を整備しています。

 “全国自動ドア協会”と聞くと耳慣れないかもしれませんが、自動ドアに貼られたステッカーはおなじみなんじゃないでしょうか。

自動ドア取材
▲“全国自動ドア協会”を運営する9種類のブランドのステッカー。

――あ、どれも見覚えがあります!

 協会の運営は正会員14社、賛助会員8社、特別会員3社で行っていますが、当協会の会員会社による2012年度の自動ドアの総生産台数は、139,000台で、国内での総据付台数は約122,000台でした。当協会のブランドでだいたい国内の自動ドアの約90%を占めているので、ほとんどの方がこのステッカーを見たことがあると思います。

――ちなみに年間でどのくらいの台数が生産されているんですか?

 毎年、だいたい14万台くらいです。

――なんとなく多いとは思うのですが、世界的にはどうなのでしょうか?

 大前提として、自動ドアの普及率は日本が世界一です。数字で見ると、2012年度の北米における自動ドアの生産台数は約15万台でした。先ほどもお話ししたように、日本では当協会の生産台数だけで約14万台。国土の広さを加味して考えると、いかに日本の生産台数が多いか、想像していただけると思います。

――アメリカはもっと多そうな印象があったので、意外に感じます。

 アメリカは日本とは違い、スイング式の自動ドアが多いので、文化的な違いがあるんだと思います。例えばホテル1つをとっても、アメリカは自動ドアではなくドアマンが開けることがおもてなしにつながる場合がありますし。

 余談ですが、日本の自動ドアは長く使用するようにメンテナンスをしっかりする傾向があり、海外では使いきりにする傾向が多いように思います。使いきりではなく、アフターケアに力を入れて長く使うという風潮は、日本特有の文化が反映されていると思いますね。

■自動ドアを発明した人物とは?

――世界、および日本における自動ドアの誕生と歴史について教えてください。そもそもどのような目的で誰によって作られ、どのような場所でブレイクスルーしたのでしょうか?

 これについては、当協会の会員会社であるナブテスコの構井克典さんが、『建築防災』(2011年6月号)に寄稿した“国産自動ドアの普及と発展”を見ながら、ご説明していこうと思います。

 ちなみに、世界で初めての自動ドアは、いつごろ、どこで作られたと思いますか?

――かなり近代的なものだと思うので、18世紀後半のイギリスの産業革命ですかね?

 “世界初”として考えると、もっともっと前です。紀元前エジプトの発明家のヘロンが、蒸気を利用して神殿の扉を自動的に開閉させたと言われています。

 火で水を沸騰させて、その蒸気をバケツへと移動させ、その重みでヒモや棒を動かしてドアを開けるという仕組みなんですが、早稲田大学などが実際に実験してみたところ、ちゃんと扉を開閉できました。最近では、学校の授業や部活などで実験をしているところもありますね。

 ちなみにヘロンは、世界初の自動販売機を作ったとも言われています。聖水を売るものだったそうですが。

――そんなに昔からあったんですか!?

 とはいえ、これはあくまでも起源の話で、そこからすぐに現代の自動ドアにつながっているわけではありません。16世紀の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが老後の余生にフランスで自動ドアを考案したなんて話もありますが、真偽は定かではありません。

 余談ですが、『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』の中の『アリババと40人の盗賊』の話にも、ある種の自動ドアが出てきますね。

――ああ、“開け、ゴマ!”というやつですね。

 そんなわけで、自動ドアの概念と言いますか、“ドアが自動的に開く”というのは、古今東西の人々の“夢”だった部分があると思います。

 そうした夢が実現したのは、19世紀末から20世紀の初めごろで、欧米のどこかで創られたと言われています。ただ、残念ながら、最初の自動ドアがどのようなもので、誰が創ったかについては記録が残っていないんです。

――自動ドアは大発明だと思うのですが、誰が発明したのかわからないんですか?

 不思議ですよね。アメリカを例に取ると、1950年代にはスーパーマーケットで自動ドアが採用され始めており、かなり一般化しています。

――短い時間であっという間に進歩・浸透していったため、最初に近代的自動ドアの仕組みを発明した人の存在が埋もれてしまったのかもしれませんね。

■日本における自動ドアの歴史を紐解く

――アメリカでは1950年代に一般化していたとのことですが、日本における自動ドアの歴史はいかがでしょうか。

 日本で最初の自動ドアは、1925年(大正14年)に国鉄のモハ31系列車の乗降口に採用されたものと言われています。このころの電車のドアは手動式で、駅員が戸締りの見回りをしてから発車していました。これを自動ドアにすることで、安全な輸送や定時運行を実現できたということです。

 このころの自動ドアは空気圧式で、コンプレッサーで動かす形です。普通にコンプレッサーを用意しようとすると大掛かりになりますが、電車自体にコンプレッサー的な機能もあったため、採用しやすかったんじゃないかと思います。

――なるほど。自動ドアといえば建築物に使われているイメージがありますが、最初は乗り物だったんですね。

 建築用としては、1930年代に銀座日劇前の東芝(マツダランプ)ショールームに、光電スイッチ起動による自動ドアが展示されていたようですが、詳しい記録は残っておりません。

――日本で本格的に自動ドアが開発され始めたのは、いつごろからでしょうか。

 基本的には第二次世界大戦後です。ナブテスコの記録として、1951~52年(昭和26~27年)に自社開発の鉄道車両用自動ドアを国鉄に納入したという記録が残っています。

 また、1953年(昭和28年)にはナブテスコがアメリカのナショナルニューマティック社との技術援助契約を結び、建築用自動ドアの国産化に着手しています。

 国産初の建築用自動ドアが設置されたのは1956年(昭和31年)7月で、当時のナブテスコ本社玄関(神戸市中央区)でした。この国産第1号機は1976年まで20年間稼働して、撤去後の現在はナブテスコ甲南工場に展示されています。空気圧式なので、かなり大きなものですね。

――当時、その他にはどのような建物に自動ドアが設置されていたのでしょうか。

 銀行や病院です。ナブテスコ製での社外設置第1号は、第一銀行(現:みずほ銀行)神戸支店の玄関だったそうですが、空気圧式だったので設置が大変だったそうです。既存の建物への設置だったため、コンプレッサーは建物の奥に置き、玄関から空気配管をずっと引き回して設置したとの苦労話が残っています。

 ちなみにこの第一銀行の自動ドアは、今の主流である横に動くスライド式ではなく、洋風の二枚戸を押し開く、開き戸式でした。

――開き戸の自動ドアですか? ……自分は見たことがないような気がします。

 たしかに今の日本ではスライド式が主流ですが、当時の自動ドアは欧米から伝わってきたものでして、そもそも欧米のドアは開き戸が主流です。スライド式の引き戸というのは、日本独特の障子の文化と合ってますからね。

 ちなみに先ほど、アメリカの自動ドア生産台数が約15万台と話しましたが、スライド式のものは25%、つまり約37,500台くらいで、残りはスイング式の開き戸になっています。

――なるほど、たしかに海外は開き戸が多いです! それにしても、なぜ銀行や病院が最初だったのですか?

 病院については、衛生面でのメリットがあります。汚れた手でドアを開閉するのはよくないということで、初期は手術室を中心に設置されていました。自動ドアが設置される前は、手術室のドアを開閉する専門の看護師を用意していたほどでしたから。

 衛生面で言うと、最近では給食センターの自動ドア化も進んでいます。医療や飲食は、衛生が大事ですからね。

 その一方、銀行での利用は広告・宣伝的な意味合いが強かったようです。当時は自動ドアに高級なイメージがあり、また物珍しさもあったので、わざわざ自動ドアを見物に来る人も多かったようです。

 これはちょっとした裏話なんですが、当時の銀行は大蔵省からの指導で広告宣伝費に限度が設けられていて、広告を打ちたくても自粛しなければなりませんでした。自動ドアの設置は表向きには店舗の回収費用となるので、堂々とお金を使うことができたという説もありますね(笑)。

 こういった流れを受けて、帝国ホテルや大阪グランドホテルなど、ホテルでの自動ドア設置も増えていった経緯があります。ナブテスコの販売数記録によると、1956年は17台、1957年は113台、1958年は153台、1959年は457台とされています。

――先ほど“高級イメージ”という話が出ましたが、どのくらいの価格だったのですか?

 1950年代当時、同じ価格で“土地付き県営住宅が買えた”とも言われています。やはり、相当なステータスであったことは間違いありませんね。

――一戸建てと同じ値段ですか!? せいぜい車1台分くらいかと想像していましたが、とんでもない値段ですね。

 ベンツやスーパーカーを超えるくらいの値段ですね(笑)。

■日本で自動ドアが普及したのはエアコンと関係があった!?

――初期の自動ドアは洋風の開き戸だったとのことですが、これがスライド式になっていったのはいつごろですか。

 1960年ごろから、日本式の引き戸に近いスライド式の自動ドアが増えていきました。普及の理由として、日本人が使い慣れていることもありましたが、安全性の部分も大きかったと言われています。というのも、開き戸を開ける場合は、向こう側に人がいるかどうかをちゃんと確認しないと、開けたドアが人にぶつかってしまいます。また、そもそもドアを開閉するために充分なスペースを用意しないといけません。

 昔の開き戸は、左の扉は押すと開き、右の扉は引くと開くなど、左右それぞれで入口専用と出口専用になっている場合もありました。そのくらいしないと、開き戸はぶつかりやすいんですよね。

 ちなみに引き戸式が増えてきた最初のころは、自動ドアを使う人が戸惑ってしまうこともあったようです。でも、ちょうど同時期に強化ガラスで向こうが見えるスライド式の自動ドアが実用化されたこともあり、しだいに浸透していったようです。

――スライド式の登場で、自動ドアが一気に普及した流れでしょうか?

 それも理由だと思いますが、爆発的に自動ドアが普及するきっかけになったのは、やっぱり1964年(昭和39年)の東京オリンピックですね。この時の爆発的な建築ブームと自動ドアの設置が結びつき、一気に普及していきました。

 この時代は、ちょうどエアコンも一般に普及し始めた時代でした。それまでのお店は入口を開きっぱなしにしているのが当たり前でしたが、エアコンの普及によって、入口を閉める必要性が出てきたんです。この部分も自動ドアとの相性がよく、エアコンをつけたお店は自動ドアも設置する流れとなり、さらに普及が進んでいったんです。

 こうして1970年代にもなると自動ドアは一般店舗でも広く使われるようになり、先ほどもお話ししたように日本の自動ドアの普及率が世界一に達することになったんです。

――スライド式が登場したころは、もう現代の自動ドアとほぼ同じ仕組みだったのでしょうか。

 見た目は似てきていますが、仕組みは違いますね。そもそもの自動ドアは空気圧式か油圧式で、これが現在の電気式に移行したのは1980年代です。

 電気式に移行した際、設置機器がとてもコンパクトになったことも、普及の一因だったと思います。それまではコンプレッサーなどの大規模な機器の設置が必要で、かなり大掛かりでしたから。

 また、ドアを開くためのセンサーについても、先ほどお話しした国産初の建築用自動ドアが設置された1956年のころは足踏みマット式が主流でしたが、現在は光線センサーが一般的です。これらの移行も、1980年代以降になりますね。

自動ドア取材
▲協会発行のパンフレットより。1980年代ごろ、現在の自動ドアの仕組みがほぼ完成した。

――足踏みマット式の自動ドアは、すごくなつかしい感じがします。

 ドアの前のマットに人や物が乗ると、その重さでマット内部のスイッチが切り替わり、ドアを開く信号を出すタイプですね。初期の自動ドアを代表するものなので、未だに“自動ドアはマットを踏めば開く”と思っている方はいらっしゃいますね。

 ただ、足踏みマット式はここ20~30年、ほとんど使われていないので、マットで検知されているように見えても、実際は光線センサー式を使っているという場合が多いと思います。

――自分が子どものころには、まだまだ足踏みマット式があった気がしますが、もしかしたら錯覚だったんですかね?

 その可能性はありますね。ごく少数の足踏みマット式は今でも使われているので、可能性がゼロとは言えませんが、床を飾るためのドアマットをマット型のセンサーと勘違いしているケースは多いと思います。

――なるほど(そう言われてみると、昔見たマットはかなり雑に扱われていたし、センサーじゃなかったのかも……)。現代においては、電気式の光線センサー型がほとんどということですね。

 一部の工場などでは、空気圧式や油圧式を使っている場合が少なくないですね。工場なら、大型のコンプレッサーを備えている場合が多いので、空気配管の引き回しさえ対応すれば、問題なく自動ドアを利用できますし。また、電気式と比べて耐久性が高いというメリットもあります。

■自動ドアの事故をふせぐために

――乗り物や建築物以外では、どのような場所で自動ドアが使われているのでしょうか。

 よく知られているところでは、駅のホームドアですね。安全面的にも、これからさらに増えていくと思います。バリアフリーの流れで、改札とホームを直結するエレベータの設置が進んできましたし、次はホームドアになるのかなと思っています。

――たしかに地下鉄やモノレールなどでは、かなり増えてきたと思います。

 1つのホームに複数の種類の路線が乗り入れる場合、それぞれ停車時のドアの位置が違うため、対応が難航している部分があります。同じ路線でも、6両編成と8両編成で停車位置が異なる場合もありますしね。

 ちなみに電車や船のような乗り物用の自動ドアは、人や荷物による重みや、揺れた際の歪みも考えて作らないといけないので、建築物用よりも大変な部分があるそうです。

――自動ドアを開発する際に、もっとも意識しているポイントはどこですか?

 当たり前ですが、安全が第一です。機器の開発においてももちろんですが、利用者の方が事故を起こさないようにパンフレットなども作っています。

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▲協会発行のパンフレットより。昔から子どもの衝突事故などは多いが、最近はスマホなどを見ながらの事故が増えているという。

――どのような事故が多いのでしょうか。

 かけこみによる接触や転倒がほとんどです。小さいお子様の場合は、戸袋に体や手が挟まれて大きなケガにつながってしまうこともあります。戸袋の隙間は狭いので、大人の事故はほとんどないんですけど、お子様はそういうところに指を入れてしまったり、手をついてしまったりしますから、ぜひ保護者の方は目を離さないようにしてほしいですね。

 自動ドアに接触すると、すぐにドアが開く安全機能もついていますが、それでも利用者の方自身に勢いがついていると、思わぬケガにつながりますので、気を付けてください。

――こちらのパンフレットを見ると、斜め侵入は危険なんですね。初めて知りました。

 自動ドアは原則的に正面からの使用を前提としているので、斜めや真横から侵入しようとすると、ドアの開閉のタイミングが遅れて、追突してしまうことがあるんです。

 自動ドアの開閉のタイミングや速度というのは意外と重要で、これは自動ドアが日常的になりすぎたがゆえの問題になるのですが、大半の方々は「自動ドアはこんな感じに開くだろう」という先入観を持っていることが多いんです。それゆえに、ドアが思ったよりもゆっくりと開いてぶつかってしまったり、逆に思ったより早く閉まって挟まってしまったりすることがあります。

 極端な例では、スマホをいじりながら歩いていて、普通のドアを自動ドアだと思い込んで、そのままぶつかってしまうこともあります。

――この10年、もしくは20年単位で考えた場合、自動ドアでもっとも進化したのはどの部分でしょうか。

 一番の進化は、今から25年くらい前になる1980年代に電気式に移行したことでしょうね。これにより、大型のコンプレッサーなどを設置する必要がなくなり、コンパクトになったため、設置できる場所の自由度が大きく上がりました。

 センサーの感度や機器の小型化、耐久性の高度やコスト削減、省エネルギーの部分など、細かい部分は進化を続けていますが、実は近代自動ドアは1980年代にほぼ完成形となっていて、そこまで目立った進化はありません。

 ただ、もちろん進化がないわけではありません。マイコン制御が基本となったため、速度や全開・半開といった細かな設定変更が容易になりましたし、ドアが何かを挟んだ際に素早く反転全開するセイフティリターン機能も一般的になりました。

 それから、古くからの問題点として、通行量が多い道に面した場所に自動ドアを設置すると、お店に入るつもりがない人が通っても自動ドアが開いてしまうというものがあります。これについては、タッチスイッチを押すとドアが開く仕組みのものが一般的ですが、よくよく考えると、自動ドアなのにドアを開けるためにタッチスイッチを押すのは自動じゃない気がしますよね(笑)。

――コンビニなどでよく見るタイプの自動ドアですよね。たしかに、微妙に自動ではないですね(笑)。

 そのため、人の動きを感知して、店の前を素通りするような動きの時にはドアを開けず、店に入ろうと入口に向かってきた動きだけを察知してドアを開けるような、特殊なセンサーの研究が進んでいます。

 こういったように、安全や使いやすさの部分については、日々進歩や改善を進めている形です。

■意外と知らない自動ドアのマメ知識

――あのう、これは個人的なご相談なのですが、自動ドアの前に立っても反応してくれないことがあるんですよ。周りからは「お前は影が薄くて、存在感がないからだ」なんて茶化されることもあるんですが、何か対応策はあるのでしょうか。

 まじめにお答えすると、機器の劣化や、センサーの汚れなどの問題が大半でしょうね(苦笑)。だから、お答えとしては「こまめなメンテナンスを心掛けてください」ということになるんですけど、黒っぽい服がお好きでしたら、これからはできるだけ明るい色の服を着てみてください。そのほうがセンサーの反応がよい場合がありますので。

――ちなみに、もうほとんど使われていないという足踏みマット式の場合、体重が軽いと反応しないことは実際にあるのでしょうか?

 はい。重さで検知するので、歩き始めたばかりの赤ちゃんのように体重の軽い場合は検知できない場合もあります。

 足踏みマット式の少し後に、同じような仕組みで電子マット式もあったんですけど、これは厚底サンダルに弱かったんですよね。この電子マットは、マット内に埋め込まれたセンサーによってドアを開閉するんですが、ゴムでできた厚底サンダルには反応が遮断されてしまうので、うまく作動しないんです。

――普通の人が聞くと驚くような、意外と知られていないマメ知識などがあれば教えてください。

 難しい質問ですね(笑)。意外と知られていないという意味では、自動ドアの電気代は誤解されていることが多いです。1日いくらぐらいだと思いますか?

――うーん、うちのエアコンは半日で100円くらいなんですよね。自動ドアも、やっぱり100円くらいですかね?

 いいえ、もっともっと安いです。100円あれば、1カ月使ってもお釣りが来ます。

――え!? そんなに安いんですか!

 2012年12月時点のデータですが、1台の自動ドアを1日8時間使ってドアを1,000回開閉させた時の電気代は、平均で2.6円弱でした。30日=1カ月換算で平均約76円、1年換算で平均912円という値段になります。

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▲自動ドアの消費電力の少なさをアピールするポスター。まさか1年間使っても1,000円かからないとは!

――ほとんど電気を使わないんですね。

 自動ドア1台当たりの消費電力は、20ワットの蛍光灯1灯の消費電力とほぼ同じなんですが、あまり知られていないんですよね。

 それを痛感したのが、2011年の東日本大震災にともなう節電の動きの時でした。この時、自動ドアを切ることが節電につながるという誤解が広まってしまい、正しい情報を伝えるためにいろいろと展開を行ってきました。

――たしかに一時期は、ほとんどのお店が自動ドアの電源を切っていました。

 自動ドアの電源を切って扉を開けたままにすると、冷暖房の無駄になってしまい、かえって大きなエネルギーを無駄にしてしまうことになりかねません。こういった部分の正しい知識については、引き続きアピールを続けていきたいと思います。

――意外な場所で自動ドアが使われているという例はありますか?

 変わり種としては、動物用の檻(オリ)の自動ドアなんかもありますよ。ゾウの自動ドアは大変だったと聞いています。そもそも力が強いので、耐久性があるドアにしないといけないうえに、ゾウは頭がいいので、ちゃんと工夫をしないと鼻で自動ドアの点検フタを開けてしまうこともあったそうです(笑)。

 それから、トイレが自動ドアなのは、意外といいですよ。用を足して手を洗った後にドアノブに触ると、ちょっとイヤな感じがすることもあるじゃないですか(笑)。

 ちなみに当協会が入っているビルのトイレは自動ドアなので、帰りにぜひ試してみてください。

――取材後に寄ってみます!

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▲こちらが話題のトイレ。入る時はタッチスイッチ式で、出る時はセンサーで自動的に開く仕組み。たしかに衛生的で快適でした!

(C) Japan Automatic Door Association

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