2013年8月23日(金)
――3DSで初の『逆転』シリーズ作品となりますが、制作する上でこだわった点はありますか?
山﨑:3DSになって変わったところは、3Dになったキャラクターや背景という絵的な部分が一番大きいと思います。そのあたりは、どちらかというと布施さんの領分ですが。
システム的には、UI(ユーザーインターフェイス)の一新や、バックログの導入、セーブデータの複数化など、基本的なシステム面をフルモデルチェンジしています。『逆転裁判』はDSで発売された『蘇る逆転』の時のシステムをそのままずっと使ってきているので、1作目から10年以上たった今、現在のアドベンチャーゲームの水準に合わせて再構築したかったんです。この先も今回の基本システムをベースに続編が作られていったらうれしいなと思います。
――キャラクターや法廷などを3Dで表現するにあたって、苦労したことなどはありますか?
江城:僕からは、「3Dだけど2Dらしい見た目のビジュアルにしてくれ」と最初からオーダーしていました。この甘酸っぱいナルホドくんは、その名残です。
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――甘酸っぱいナルホドくん!(笑)
山﨑:3Dだけど2Dに見えるというビジョンが固まるまで、それはもう大変でした。ナルホドくんで実験していったので、最初の甘酸っぱい描写から変わっていく過程が、キャラクターモデルの方向性が決まる過程そのものでした。また、『逆転裁判4』までにいたメインキャラは、2Dのイメージにそろえながら3Dにしていくのが難しくて、最後の最後まで細かく調整していましたね。それこそキャラクターチームや我々だけでなく、いろいろな人にチェックしてもらいました。
江城:最初はこの甘酸っぱいナルホドくんが本当に出てきましたからね。「違う! コレじゃない感が満載だ。俺が作ってほしいのはコレじゃない!」って(笑)。
山﨑:他には、これまでは2Dならではの表現が随所に入っていたので、そこをどうするかも苦労しました。ただ公式ブログでも書いていたように、現場がいろいろと工夫を始めまして。例えばパーツの切り替えとかですね。
江城:あれは僕からの指示ではなかったんですよ。僕が見て違和感を覚えないものは、たぶんユーザーさんも大丈夫なはずと思っていたみたいで、僕には「こうやります」ということを言わずに、「できたので、見てください」って出してくるんですね。
――プロデューサーの知らないところで、どんどん変わると。
江城:上がってきたものを見ながら「ああ、ええやん、ええやん」って言っている時は、例えば腕を別のパーツにしていることに気づいていないので、正解なんです。そこはうまく考えてくれましたね。顔についても、「なんか違うな~」って言って具体的に言わないので、いつも怒られていました。
山﨑:「何がダメか言ってくれ!」って声が出ていました。本作でモデルやモーションを担当した人は、他のタイトルではしない苦労をしたりノウハウをためたりしたと思います。
江城:そうですね。『逆転裁判5』オリジナルのテクニック。他のタイトルではあまり役に立たないかもしれませんね(笑)。
――法廷パートのカメラワークにもこだわりを感じました。
山﨑:本作では3Dになっているので、カメラを使った演出を入れていこうと最初に決めました。ただ、ずっとカメラが動いていると元々シリーズで描かれていたイメージと変わってしまうので、弁護席や検事席のカメラカットは固定にしておいて、時々盛り上げるところで3Dにするようにしました。
江城:先ほどの話に近いんですが、メリハリを考えてほしかったんです。3D独特のぬるぬるとしたアニメーションは大事ですが、ぬるぬる動きすぎるのは逆に『逆転』らしくない。2Dのアニメーションがパンパン切り替わるというテンポのよさを求めていたんです。
最初に上がってきたものは、全部の動作がつながっていたんですね。手をバンとバンと叩きつけて、そのまま体を起してから手を戻すとか、「異議あり!」と手を突き出した後に手を下ろしてもとの場所に戻るとか。
――いわゆる通常の3Dポリゴンらしい作りになっていたと。
江城:戻りの動作も一連の流れの中に組み込まれていたんですが、テンポが悪いので切ってくれと言いました。「異議あり!」の後、間のモーションは飛ばしていきなり普通の状態に戻っていいと。ただ、現場としては手抜きに見えるのが嫌だということで議論になりましたね。
ただ、絶対に飛ばしたほうがいいはずなので、説得して戻りを取ったものを用意してもらったら、やはりテンポがよかったんです。すると今度は、それを前提にしてモーションを作るようになるので、極端に間が飛びすぎないようなモーションを意識し出すんですよ。方向性が決まってからは、ある程度飛んでもいいようなアニメーションを作るのが、すごくうまくなったと思います。
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――裸眼立体視もすごく自然に表示されていて、遊びやすかったです。
山﨑:文字が読みやすいのはかなり重要なので、多少正面からずれてもそこまで見にくくならないように、気をつけて開発しました。なので、3Dボリュームを上げて遊んでいただいても、そこまできつくならないようになっていると思います。
江城:裸眼立体視は個人差があるんですが、その個人差を少なくする見え方を考えてほしいという、無茶なオーダーを開発にしました。ユーザー全員が3Dをマックスにして遊んでも気持ちよく見える角度や奥行きに調整してほしいと。なので、ぜひ3Dで遊んでいただきたいですね。
山﨑:開発が始まった時は3DSが出たばかりで、立体視で迫力が出るのはアクションゲームだと勝手に思い込んでいました。このシリーズはそこまで動くわけではないので、立体視にして映えるかなと心配していたんです。ところが、実際に作ってみると奥行きが出ることでキャラの魅力や存在感が増すことがわかった。それによって動きがより印象的に見えるようになり、マッチしているのがわかりました。カメラの動きが多いタイトルだと3Dボリュームを下げる方が多いと思うのですが、このタイトルは固定カメラが多いので相性がいいと思います。
江城:現場スタッフのこだわりなので、ぜひ立体視で見てください。
山﨑:探偵パートも3Dになっています。立体視にすることで、現場で調査している雰囲気が出ているので、試していただけるとうれしいです。
――シリーズ作品に登場した“サイコ・ロック”や“みぬく”を採用した経緯について教えてください。
山﨑:探偵パートにも遊びの要素が欲しいと思い、まっさきに“サイコ・ロック”が浮かびました。ただ、今回プレイヤーキャラクターになるのが決まっていたオドロキは“サイコ・ロック”が使えません。それならば、みぬくを探偵パートに持ってきて、ナルホドは“サイコ・ロック”、オドロキは“みぬく”とそれぞれの能力で捜査する形にしようと思いました。
――ゲーム中の随所にアニメシーンが挿入されますが、今回アニメシーンを採用した経緯についてお聞かせください。
江城:『レイトンVS逆転裁判』でアニメーションを採用しており、そこで初めてナルホドくんがアニメに登場したので、『逆転裁判5』でもアニメーションを採用しようと思いました。ただ、各話の冒頭と最後だけにアニメーションを入れるのではなく、ゲームプレイの邪魔にならない程度に、各話の途中でも重要なシーンや盛り上がるシーンについては、尺が短くてもアニメーションを入れるようにしているので、ぜひプレイして確認してください。
――新キャラクターの声の選定でこだわった点がありましたら教えてください。
江城:過去のTGSなどで放映した“特別法廷”に登場しているキャラクターについては、すでに決まっている声優さんがいらっしゃるので、そのまま今回もお願いしました。ココネなど新キャラクタ-の声優さんを選定するにあたっては、事務所からサンプルボイスをいただいて、山﨑をはじめ、開発現場のリーダーと何度も聞いて、キャラクターのイメージに合う声優さんを選びました。
山﨑:僕が声優さんに詳しくないせいもあるのですが、サンプルをいただいた中から、キャラクターに合った声質と演技力だけで選びました。ココネ役の選考が一番難航し、いくつもサンプルを聞かせていただきました。潘めぐみさんは、演技力がすばらしいのはモチロンなのですが、それに加えて“声に華がある”と感じたのが決め手になりました。
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