【まり探】『逆転裁判5』開発者ロングインタビュー後編！ 開発初期の甘酸っぱい3Dナルホドくんとは!?

文：まり蔵

　新作旧作問わず、さまざまなミステリー・ホラー・サスペンス系のアドベンチャーゲームを紹介していく“まり蔵探偵事務所”。7月25日にカプコンから発売された3DS用ソフト『逆転裁判5』の開発陣に、所長のまり蔵がインタビューを行いました。その後編をお届けします。

　お話を伺ったのは、本作のプロデューサーの江城元秀さん、シナリオディレクターの山﨑剛さん、アートディレクターの布施拓郎さんの3名。前編では、本作の制作経緯やシナリオ、新キャラクターについて伺いました。後編では、ナルホドくんやミツルギ検事といったおなじみのキャラクターに加えて、ゲームシステム、そして気になる続編についてお聞きしました。トリックにかかわるネタバレはありませんので、未プレイの方も安心して読んでください。（※インタビュー中は敬称略）

⇒前編はこちら

▲江城元秀プロデューサー		▲山﨑剛シナリオディレクター		▲布施拓郎アートディレクター

■ミツルギ検事はエレガントに、ナルホドくんはイケメンに？

――ナルホドくんやミツルギ検事など、今までのデザインから変えるにあたって、こだわったところはありますか？

布施：オドロキくんやガリュウなどは『逆転裁判4』から1年しか経っていないので、トンデモないことがない限りは同じ服装で出てくるだろうと。『逆転裁判』から『逆転裁判3』までのキャラクターについては、それなりの時間がたっているので変化もあると思うんですよね。でもナルホドくんやミツルギなどはユーザーさんの中でしっかりイメージが確立されているのでへたに変えられない……そこのバランスが難しかったですね。

　ナルホドくんは“弁護士として復活する”が一番重要なキーワードでしたので、弁護士の姿に戻すのに注力しました。ただ、そのまま戻してしまうと『逆転裁判4』のナルホドくんとはなんだったのかとなりますので、3ピースやオシャレに気を遣って着崩したりといった要素を取り入れて、大人っぽさを表現しました。

――ナルホドくんは、「イケメンになった」って声をよく聞きましたね。

江城：そうですね、結構な歳なんですけどね（笑）。

山﨑：ナルホドくんは元々イケメンですよ！

布施：ゲームの中ではイケメンではない扱いですけど、元々イケメンですよね。

江城：結果的に、無精ひげをやめてよかったと思っています。僕は『逆転裁判4』のころの無精ひげのナルホドくんが好きなので推していたんですが、女性スタッフ陣から「絶対ダメ！」って暴動を起こす勢いで反対されまして（笑）。

――確かに無精ひげはないほうがカッコイイですね（笑）。ミツルギ検事のメガネはどなたのアイデアなのでしょうか？　お父さんの信さんに似ていますよね。

江城：僕はメガネ反対派だったんですけどね。「おっさんくさくなるから、止めようよ」って。でも現場が「ぜひメガネをしたい！」と言うので、「そこまで言うならやればいいよ」って。

布施：僕も『逆転検事2』にかかわっていて信の話も知っていましたし、描いてもいました。今回ミツルギが34歳で、お父さんの信とほぼ同じ年になった時に「メガネをかけるのでは？」というアイデアが自然と出てきました。チームの中でも「いいね」という意見があったので、その方向で進めました。

――他にはジャケットの裾が伸びているように思えるのですが。

江城：そうなんですよ。フロックコートっぽくなりました。

布施：ゴージャスなイメージでデザインしていくと狩魔豪（かるま ごう）の弟子だったころの印象に戻ってしまうんですよ。むしろ、どんどんその影響は減っているはずです。どういう雰囲気にするかアイデアを出していくなかで……表現がちょっと違うかもしれないのですが、検事局長の威厳を出すためにエレガントな方向にしました。礼服をモチーフにしているのですが、フロックコートだったり、中のベストがダブルだったりしています。日本人だと似合う人はなかなかいないのですが、彼はナチュラルに着こなしています。そこはミツルギならではですね。

江城：袖の折り返しやカフスの数が、まさにそうですね。

布施：ナルホドくんでは服に着られてしまって、着こなせない服ですよね。ミツルギらしさは残したままデザインできたと思います。

――はみちゃんは、きれいになりましたね。編集部のスタッフの中には「以前の幼い彼女のほうがいい！」と言っている人もいましたが（笑）。

布施：そういうご意見が出るのはわかっていたのですが、7年もたっているのに子どものままにはしたくなかったんです。

江城：倉院で育ったので、すれていないんですよね。ブランド品が売っているような店がない里で育って自然とこうなった。でもおしゃれに気をつかっているので、髪飾りにそれが出ている。ここが春美オリジナルのオシャレポイントです。

山﨑：この歳になっても、昔のピュアな感じが出ているのがすごくいいですね。一服の清涼剤のような。

布施：イメージを変えず、成長させるようにしました。身長が伸びて全体的なバランスが変わっているので、帯などの長さのバランスも調整しています。

――これまでに、他の方々がデザインしたキャラを、デザインし直すことについて、プレッシャーや苦労はありませんでしたか？

布施：キャラクターは世に出た時点でユーザーさんのものになっているので、それを変えなければいけないという点ではもちろんプレッシャーも苦労もありました。とにかく、自分が実際に受け入れる側だったらという意識をつねに持つようにしつつ、お話の中であるべき姿をイメージして調整していきました。

――これまである世界観に新キャラをなじませるようにするために、どのようなことを心がけましたか？

布施：シリーズで踏襲されているデザインとタッチを、自分なりに解釈して反映しています。キャラクターの立ち位置によって違うのですが、作品全体でリアルと漫画の中間、実写ドラマにも漫画にも調整次第で振れそうなイメージというか……実際に実写映画や宝塚、舞台にもなっていますしね。とはいえ、ユーザーさんからの反応には、発売した今でもずっとドキドキしています（笑）。

→ゲームシステムについて伺いました。（2ページ目へ）

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