News

2013年9月25日(水)

ハートフルな紙の世界に干渉して楽しめる『Tearaway ~はがれた世界の大冒険~』はPS Vitaの機能をフル活用している【TGS2013】

文:電撃オンライン

前へ 1 2

■開発の要・James氏へインタビュー

――開発の経緯を教えてください。

James Spafford氏(以下、James):最初のコンセプトとして生まれたのが、PS Vitaの背面タッチパッドを利用して地面を突き破るというアクションでした。そのアイデアをもとに、リードデザイナーのRex Crowleが世界観を膨らませていったんです。「このゲームのなかに入り込めたら、どのような体験ができるだろうか?」と考えていったのがスタートですね。ゲームの中によくある、火やとがったものなどは、触ってもあまりうれしくないですよね。そこで本作では、紙という柔らかくて触ってうれしい媒体を選びました。その“触ってうれしい”という感覚が、本作のアイデアの根本となっています。

『Tearaway』
▲写真右がJames氏 左は通訳を担当していただいた、ローカライズ担当の片見氏。

――『リトルビッグプラネット』シリーズでは、さまざまなオブジェクトの質感が印象的でしたが、今回あえて紙という素材にこだわった理由とは?

James:もともとRexが紙というコンセプトに惹かれていまして、そこから「紙でできた世界を作りたい」という発想を経て開発が始まりました。そのため、ほかの素材を考えることなく、最初から紙ですべてのものを作ろうとしましたね。ただし、紙だけでなく“のり”もゲーム中に登場しますよ。PS Vitaの携帯性を生かして、“手の中におさまる世界”を実現したかったので、紙でできた世界というのは、そのイメージにピッタリだったんです。大きなプレイヤーの存在と、小さな紙の世界という、おもしろい関係性が生まれていると思います。

――PS Vitaの機能をすべて使ったとのことですが、とくにおもしろいアイデアはなんでしょうか?

James:背面タッチパッドに指を当てて、ゲーム内に指を突っ込む操作も好きなのですが、カメラの使い方にも注目してほしいです。PS Vitaの背面カメラを通じて現実の背景と、前面カメラを通じて自分の顔がゲーム内に取り込まれることで、本当に2つの世界がつながっているような感覚になるのは、おもしろいことだと思います。

 他にも、ささいことですが、大声で叫ぶと浮いている紙片がビューっと吹き飛ばされたり、アナログスティックの動きに応じてキノコが動いたりとか、さまざまなことが起こります。本当にささいなことなんですが、細かいところまで作りこんであるので、そういった部分にも注目してみてください。

――ゲーム内にプレイヤー自身の顔が登場するのは珍しいですね。これは、より現実世界とゲーム世界とのリンクを体感させるという意図があるのでしょうか。

James:プレイヤーは大きな存在として、強大な力を紙の世界に発揮できます。我々は、主人公と協力して進んでいく存在として、プレイヤーの顔を登場させるのは重要な要素と考えました。例えるなら、まるで絵を描いているような感じでしょうか。プレイヤーは大きな部分を描き、主人公は小さな部分を補完するかのように、2人で協力して遊んでいるような体験を得られると思います。

――『リトルビッグプラネット』では、ほかのプレイヤーと協力していく要素がありましたが、本作ではシングルプレイに注力したのはなぜでしょうか?

James:長い間『リトルビッグプラネット』の制作に携わってきましたが、今回は発想を一新して新たな試みに挑戦しようと思ったんです。今までできなかった、物語をメインにしたものをね。物語性の強いシングルプレイをフィーチャーしたものを作りたいと思ったので、ちょっとストレッチ気分で作っています(笑)。

――カメラで撮ったものがTwitterやFacebookにアップロードできるとのことですが、これが現実世界のコミュニティにどのような影響を与えると考えていますか?

James:ゲーム内のカメラには、遠近感を出すレンズやマイクロレンズなど、さまざまなレンズがあります。こういったレンズや、さまざまなフィルターを使うことで、プレイヤーはさまざまなユニークな写真を撮ることができます。それをアップロードすることで、ほかのプレイヤーのインスピレーションになればおもしろいですし、将来的には写真大会などをできるといいなと考えています。

――キャラクターをペーパークラフトとして出力できるのは画期的なアイデアだと思います。この要素は開発初期段階からあったものでしょうか?

James:はい、開発の初期段階から構想していました。開発にクリエイティブな人材が多いので、自然とプレイヤーにもクリエイティブなことを行なってもらいたいと考えていましたね。ただし、「作れるよ!」といってほったらかしにするわけにはいかないので、いいアプローチ方法を考えたすえに、ペーパークラフトのテンプレート化を思いつきました。

 すごくいいアイデアだったので、一致団結して「やろう!」という気勢になったのですが、試しに2つくらい作ったところで、自分たちがいかに難しいことをやろうとしているかを思い知りました(笑)。そこで、今回は特別にペーパークラフト用のスタッフを新たに雇い、それをゲームに反映させています。

 『リトルビッグプラネット』を振り返ってみると、困難な要素がたくさんありましたが、実際に挑戦してみることが大事だという経験を得られたので、今回『Tearaway』で実現できたことはうれしいですね。プレイヤーの方々が実際にペーパークラフトを作るにあたって、他の人が作ったペーパークラフトを見ることで、自分がまだアンロックできないテンプレートの存在に気づき、それを探してみる、というようにコミュニティを通じて広がっていけばベストですね。

――世界観に伝承や民話を取り入れているとのことですが、日本人になじみのあるものはありますか?

James:最初のステージはイギリスの伝承などに基づいています。なぜかと言うと、開発スタッフがイギリス出身のものが多いので、スタートしやすかったからです。ただし、ほかのステージに行くと、北米の伝説や、南米のアステカの伝承なども入れています。そういった民話や伝説は、あまり世界で知られていないものをわざと選んでいるので、日本の皆さんには知られていないものが多いかもしれません。

 その理由としては、自由度の高さがあげられます。わりと自由に演出できるので、『Tearaway』の世界として演出しやすいんですよ。あまり知らない民話があることで、プレイヤーが興味を持って調べたり、謎めいた雰囲気が醸し出されるので、世界観をより広げることになったのではないかと考えています。

――ステージによってかなり特色が異なる仕上がりになっているのでしょうか?

James:はい。『Tearaway』には3つの大きなエリアが存在していまして、最初のエリアはイギリスのような、緑豊かな森のようなイメージ。2つ目は大自然に囲まれたカナダ。3つ目が中米のような砂漠地帯など、大まかにそのような特色となっています。その3つのエリアのなかでも細かく分かれていて、同じエリアでも多彩なイメージを感じ取れるようになっていますよ。

――最後に、『Tearaway』の発売を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

James:ぜひみなさんには、このワクワクする新しい作品を楽しんでもらいたいです。制作していても楽しいプロジェクトだと思ったので、同じような体験をしてほしいですね。あと、ペーパークラフトを作るときは、紙で指を切らないように注意してください!(笑)

■東京ゲームショウ2013 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……2013年9月19日~20日 各日10:00~17:00
 一般公開日……2013年9月21日~22日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

関連サイト

前へ 1 2