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2013年10月1日(火)

【ほぼ毎日特集 ♯49】ZUNTATA・土屋昇平さんの未公開音源も公開! 「インタビュー企画“教えて!土屋昇平先生」前編(ミゲル)

文:ミゲル

■土屋さんとクリエイターによる“偶然が生み出すパワー”とは?

「おしえて!土屋昇平先生」
▲タイトー社内の土屋さんの制作デスク。電撃オンライン編集部員の凄惨なデスクと違い、キレイに整頓されています……。

――よく土屋さんの音楽は、“尖っている”だとか、“変態音楽”と評価が高いですが、それについてどう思われますか?

土屋:尖っているかどうかは僕にはわからないですが、ただ、もしかしたらいくつか理由がちゃんとあるのかなと思っています。僕は、“偶然性”というものを大事にしています。それは、作った音のパラメータを記憶しないことの理由の1つでもあります。

 音楽は、音楽の中にある“何か”と、僕の意思と、他の何かいろいろなものが一緒になって生み出されるものだと思っているんです。それを、知識とかで邪魔したくなくて……。平たく言うと、「予定調和がキライ!」ってことです。だからといって、狙って予定調和を崩すこともダサいので嫌いなんです。自然と何かが起こって生み出される音楽がいい。

 あまりいろいろな色眼鏡で自分の音楽にフィルターをかけて、変な塊にしたくない、自分で自分の音楽にレッテルを貼りたくないなってのはありますね。“偶然”が“必然”に変わる時というのが、音楽が生まれる準備ができている時だと思うんです。

――そうなると、浮かばないなどの生みの苦労が大きそうに思います。やはりそういう時もありますか?

土屋:あります、ありますよ! 書けない時は書けないです!! そう割り切っていますが、何かしらが出てくるので、今のところなんとかなっています(笑)。

――音楽の制作時に、客観的な視線(意見)を意識することはありますか?

土屋:僕は心が弱いんで、本当は考えたくないんですけれど、考えます(笑)。本当はそこから脱したい! でも、人から自分の作る音楽がどう思われているのかというものは、どうしても気になっちゃう。弱いですねぇ……。今後の課題です。

 というのは、その気持ちは制作する上で足を引っ張るんです。例えば、誰かに曲を聴かせた時に、他に「いい曲だ」と言ってくれている人がいるかもしれないのに、「ちょっとどうかな……」と(ネガティブな)感想を言う人のほうが印象に残ってしまうんです。その人に気に入ってもらえれば解決する問題でもなんでもないのに、気に入られる曲を作ろうと思ってしまうんです。それは足枷でしかない。僕は、僕が作りたいものを好きなように作れる状況を、常に自分の中で努力して作っておく。それこそがすべてだと思っています。

 でもやっぱり、誰かに気に入られるような曲を作ろうとしてしまったり、「これを作ったら嫌われるかな」と思ってしまったりして、自分の音楽をちっぽけな箱に収めようとしてしまうことはあります。それをするごとに、残念な気分になりますね。

 これは、タイトーの意見とは真逆なことになりますが、僕はできるだけ、お客さんや社内の誰かの意見を見ないようにしています。(作曲は)自分のためですらなく、ただ出てくるものを素直に表現したいだけのものなんです。結局のところ、どんなに他人を意識しても、その人の好みはわからないと思うんです。

――なるほど……。人類補完計画じゃないですからね……。

土屋:そうですね。10万人に好かれる曲や100万人に好かれる曲なんてものはわからない。想像できないです。もう、想像するのは時間がもったいないと思います(笑)。だからまず、“僕が好きな曲を書きます”

――それにユーザーの皆がついていく、と。

土屋:それが一番自然だと思うんです。

――しかし“ゲームの制作”となると、ビジュアルやシステムなどがあって、“皆で1つのものを作る”ことになると思います。その場合の意識合わせはどうされているのでしょうか。

土屋:“ゲームを皆で作る”というものの考え方も、皆で何かを妥協し合って、皆で落としどころを見付けるということが、本当にいいことなのだろうかと疑問に思うんです。「このゲームにはこの音が合うだろう」という、1人のちっぽけな考えにもとづいた、ちっぽけな物作りをしていいのかという思いがちょっとあります。

 そもそも僕は、“マッチさせる”ことに全力を注ぐ楽しさをあまり覚えていないんです。それはそれでいいんですが、それよりも、“偶然に生み出されるパワー”のほうがよっぽどおもしろいものになる時があるんです。ネタ1つに対して、皆のそれぞれの解釈が合わさった時のパワー。それは合っていないかもしれないですが、でもパワーはある。そんな作り方があってもいいんじゃないかなと、僕は思うんです。

 なので、マッチさせることは僕の中で最優先事項ではないです。それよりも、ゲームのネタ1つに対して、“僕なりの解釈をとにかく出す!”というだけです。

→土屋サウンドが好きな人は絶対にハマるはず!
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