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2013年10月19日(土)

『リペットと僕』でコミュ症な少年少女とカワイイ生き物“リペット”の触れ合いを描いた松下彩季先生インタビュー【Spot the 電撃文庫】

文:てけおん

 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第91回となる今回は、『リペットと僕』を執筆した松下彩季先生のインタビューを掲載する。

『リペットと僕』
▲春藤佳奈先生が描く『リペットと僕』の表紙イラスト。

 本作は、コミュ症改善のためにやってくる、かわいい生物を巡る物語。政府にコミュ症と認定された人の元にやってくる、様々な動物の姿を模した愛らしい生物“リペット”。ある日、引きこもりの高校生・相田颯太の家に、突然宅配便でドールハウスが届く。こんなもの頼んだ覚えはないぞ……と思っていると、中から出てきたのは手の平サイズの人型生物、というかおっさんだった。いきなり説明を始めるおっさん――名前はオモカゲ……、ってこれ、俺のリペットなの!?

 松下先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 電撃小説大賞に長編を書いて応募しようとしたけど、間に合わなくて短編になり、応募したのはいいけれど最終選考に届かず、懲りずにまた来年も~! と思っていたところで連絡をいただいて、応募作を長編に仕上げたのがありがたくもこのデビュー作『リペットと僕』になりました。連絡をもらえていなかったら、普通にお蔵入りしていたように思います。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

 セールスポイントはとにかくもう春藤先生の描く女子組のかわいさ、ひいては彼女たちのおっぱいのかわいさ……そこに尽きるのではないでしょうか。打ち合わせで「それぞれの乳感(ちちかん)には、こだわりたい。でもいやらしくなりすぎず、健康的に!」と大きさや感触についての擬音を連ね、あれこれと連絡したのを覚えています。それをきちんと表現していただいて、それぞれにすごく健康的でかわいい場面を描いていただきました。今にもそのページから飛び出してこっちこいよ! みたいな!! 動き出しそうなむっちりリアルをぜひ本書でどうぞ。

 あ。

 乳の話しかしていない!!!!

 物語の特徴は、あんまり電撃文庫らしくないところのように思います。コミュ症と判別された少年や少女たちのところに“リペット”と呼ばれるヘンテコな生き物がやってくる物語なんですが、設定も昔からのSFでよく見かけるようなものかなと思いますし、登場人物もさほど極端ではありません。目に見える派手さというものが、ない!(笑)

 でも、ホロリとするようなシーンもあって、まるでアニメーションのように頭のなかで再生してもらえたらいいなぁと思いながら書きました。リペットと呼ばれる相棒たちが何をしに主人公たちのところへやってきたのか……? いろんな意味で優しいお話だと思うので、男女問わず読んでもらえたらうれしいです。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 書いてる間、ずっと「これでいいのか、これおもしろいのか!?(汗)」と不安が募り、編集さんに何度も相談した記憶があります。むしろその記憶しかありません……。ですが、そのたびに「大丈夫です。伝えたいことがあって、それが物語の中にきちんと描けていれば伝わるものはありますよ」と励ましてもらいました。おかげで貫きとおして、最終的に自分が楽しんで作品を仕上げられたことが、なにより幸運でした。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 短編自体は2週間ほどで仕上げた突貫作業のものでした。刊行に向けて、短編から長編へとふくらませるのには4カ月以上かかっています。長編はまだ書き慣れず、筆が遅いので、そのあたりは今後の課題ですね。世の作家さんたちの筆の速さにただ驚くばかりです……。

――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

 夢の中でオモカゲに追いかけられました! ヒューマンサイズ・185cmくらいの彼に壁ドンされて「早く書けよ? 本が出ないと、俺がいなかったことになっちゃうんだからな。ソータだって千乃だってマキアだってかわいそうになっちまうから、なんとかしろよ?」(CV:○◯◯◯)ってすごまれて、汗だくになって起きたことがあります……。

――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 『リペットと僕』のタイトル通り、奇妙な生き物であるリペットと人間が対になって展開するお話なのですが、昔から相棒(バディ)もののドラマやアニメ、漫才などが大好きで。その憧れから生まれたのが主人公の颯太とオモカゲ、千乃とマキアだったりします。友達でもなく、恋人でもない、相棒という存在はなかなか得がたいもの。彼らが今後、どんなふうに成長していくのかを私自身すごく楽しみにしています。

――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?

 会話や地の文のリズムには気をつけて書いているつもりです。気持ちよく読んでもらえるといいなと。あとは難しい単語を使いすぎないように、とか。中学生の自分だったらこれ読めるかな? 大学生だったらどうかな、とか、その都度過去に戻るような気持ちで読み返したりしています。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 たまに深呼吸を繰り返すだけの時間をとって、脳内をクリアにしてみたりとかしますね。

――小説を書こうと思ったキッカケは?

 ちゃんと書いてみようと思ったのは、たった1本のアニメにめぐり逢ったことがキッカケでした。大好きになって、主人公たちが頑張っている姿を見て、共感し「生きてる限り、あきらめなくてもいいんだ!」とバカ正直に思えてしまったことが最大のキッカケでした。

――初の商業作品というところで、その感想は?

 今はもう、なにがなにやらです。どうかよろしくお願いしますと本屋を行脚して、五体投地したいぐらいの勢いです。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

 読んだ人の世界が変わるような物語が、いつか書けたらいいなと思っています。自分自身がそうやってテレビや漫画、芸、小説、ゲームといったさまざまな作品から影響を受け「人生が変わった!」という体験の積み重ねで、今ここにいるのだと思うので。大それた夢です。

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 ゲーム好きです! 流行りものには食いつくほうなので、現在進行形でちまちま遊んでいるのは『パズドラ』『ときめきレストラン』『艦これ』ですね。最近、押し入れからラブデリックの『UFO』を引っ張り出してきて、ちょこちょこ進めてます。いい感じに攻略を忘れているので新鮮な気持ちで遊べていて、自分の記憶回路のリセット機能の優秀さに感謝するしかありません! どうしても執筆に疲れたら『風ノ旅ビト』を起動して泣きます。あ、『ドラッグオンドラグーン3』はもちろん予約しました。『モンスターハンター4』もね。

 おや、編集さんがコワイカオでこちらを睨んでいますよ……。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 『リペットと僕』は、まだ誰からも注目されていない物語です。生まれたばかりでレベルも低く、知名度もありません。1人でポツンと誰かを待っている、リペットのようなものかと思います。

 どうか、このよちよち歩きの『リペットと僕』を手に取ってみてください。作品にとって最強の相棒は、読者の皆さんに尽きると思っています。どうかよろしくお願いします。

(C)松下彩季/アスキー・メディアワークス
イラスト:春藤佳奈

データ

▼『リペットと僕』
■発行:KADOKAWA
■発売日:2013年9月10日
■価格:641円(税込)
 
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