2013年11月5日(火)
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――ちなみに、そんな鬼束さんは楽曲を制作される際、まずは作詞から入ることが多いとのことですが……。
鬼束:今回は同時かな。5分でできたし。
――5分!? 5分でできちゃったんですか?
鬼束:そもそも、作るのに長くかかる曲はいい曲じゃないから。
――パッと浮かんだインスピレーションで作らなければダメだってことですかね? でも、それだと感情移入したりするのは大変なのでは!?
鬼束:平気。私、感情移入はしないから。
柴:なるほど……。
鬼束:なんだかおこがましいけど、私は自分がゼロだと思ったら、ゼロの気持ちで書けるので。そのままネイキッドな心を出せばいいわけじゃないですか? まぁ、それは勘違いかもしれないけど、その心で書いたからこそ、5分でできあがったわけです。
――感情移入すら通り越してる感があるというか、それってものすごいことだと思います……。でも、そうやって想いに任せたままに作った楽曲のほうが素晴らしいものに仕上がる可能性があるというのは、わかるような気がしますね。
柴:あなたも経験あるでしょう? 想いのままに書いたテキストのほうが、いいものに仕上がったりすることとか。
――言われてみれば……。文章としてはめちゃくちゃでも、感情の赴くままに書いたテキストのほうが読み手に伝わるというか、訴えかけるものになることはある気がします。僕はその境地にはなかなか至れませんが……。
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▲『This Silence Is Mine』の原案は、鬼束さんがゼロの気持ちになることで、5分で生まれたとのこと。 |
鬼束:ちなみに私のマンションの隣は、ボーカルやギター、ピアノなんかを教える教室です。よければ紹介しますけど?
――おっと!? それは音楽に触れることで感性を磨いたほうが、より素晴らしいテキストを書けるようになる、ということでしょうか?
鬼束:(無言でうなずく)
柴:それはおもしろい発想ですよ。松下さん、ぜひ音楽教室に通ってみたら?
――いやいやいや……。でも、うーん。それが僕にとってどんな影響を与えてくれるのか、たしかに興味はありますね。
鬼束:そんなに難しく考えなくてもいいんですよ。私は基本、いい感じに適当です。
――適当、ですか。肩に力が入っていると、いいものは作れないことってことですかね。自分自身がリラックスしていないといけないというか、楽しまないとダメというか。
柴:モノ作りの原点ですね。すごくいいお話を聞けました!
――いや、本当に勉強になります……。では、そんな鬼束さんや岡部さんにとって、収録時に印象的だったことなどはありますか?
岡部:僕から見て、鬼束さんはものすごく感性的な方というか、アーティスティックな方だと感じたことですね。僕は自分のことを、クライアントやリスナーの顔を見ながら作る“商業作家”ととらえているんですが、鬼束さんはスタンスが違うというか、見ているものが違うと感じました。
――計算して作り上げるわけではなく、ライブ感を大切に、生きた音楽作りをされるって感じでしょうか?
鬼束:いえ、そんな大層なものでも……。
岡部:でも、レコーディングではテイクによってニュアンスを変えたり、スケールや動きに違いがあったりと、かなり“生”な感じはありますよね?
鬼束:まず、岡部さんに尋ねたんです。「何回歌えばいいですか?」って。それで「5回くらいかな」って言われたので、私としては5回くらい、いろいろ試しながら歌ったんですね。で、それを彼に、「好きなところを使って」と投げたわけです。
――投げちゃったんですか!!
鬼束:うん。あとはお願いしますって(笑)。
岡部:まぁ、最初に話した通り、僕は鬼束さんの世界観と『DOD』の世界観を交わらせて具現化するのが仕事だと思っていたので。明確な指示があったわけではないですけど、自分の中ではある程度完成形は見えていて、それがブレない範囲内で、好き勝手にやらせてもらった部分はありますね。
――では、そんな岡部さんにアレンジされて戻ってきた楽曲を聴いて、どのような印象を受けたのでしょうか?
鬼束:単純に、あぁすごいなと思いました。
岡部:わぁ。光栄です。
鬼束:これをこうしてほしいって思っていたものを、しっかり使ってくれていたから。すごかった。
――ベタ誉めですね!
鬼束:私は今まで、たくさんのプロデューサーさんとお仕事をさせてもらってきましたけど、岡部さんは本当にすごい人だと思います。たとえば私が持っているものは、岡部さんは持っていないじゃないですか。逆に、私が持っていないものを、岡部さんは持っている。その差が激しすぎるんですね。だからこそ、素晴らしいものができたんじゃないかな。
岡部:おっしゃっていること、ものすごくわかります。
――岡部さんがおっしゃっていたことに通じるものがありますね。さながら、磁石のS極とN極が引かれあうような感じとでもいいますか。
鬼束:そう! マグネターです。ちなみに私、岡部さんのことは音楽業界のミスターマリックだと思ってます。
岡部:えっ? ハンドパワー的な?(笑)
――すごい褒め言葉じゃないですか。そう言われてみれば、ちょっと雰囲気も似ている気がしますしね。
柴:そうね。サングラスとかかければ、ちょっと似てるかもね。
岡部:本当に? これ、喜ぶべきとこですかね?(笑)
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▲インタビュー中も、鬼束さんが岡部さんに深い信頼を寄せていることが伝わってきました。 |
――ちなみに、そんなお2人の間に、柴さんが交わるとどうなるんでしょう?
柴:僕? 僕は何もないですよ。
鬼束:砂鉄、砂鉄。
柴:そうそう、砂鉄みたいなもんですよ。ひっついてヒゲみたいになってる……って、オチみたいに言うな!!(笑)
――でも、砂鉄がくっ付くことで体積が増えるって部分はありますし……。
柴:何その下手くそなフォロー(苦笑)。でも、一応褒めてくれたんですよね。ありがとうございます。
――いやいや(笑)。
鬼束:褒めなくていいよ。だってこの人、私たちが楽曲を作っている時、タイランドで泳いでたからね!?
柴:いや、違う。それは誤解。タイに行ったのはタイミングが違うじゃないですか。
鬼束:この前会った時も、金魚がいっぱい泳いでるシャツ着てたからね!
柴:僕の話は無視ですか(笑)。というか、金魚のシャツになんの関係が!?(笑)
鬼束:怒ろうと思って、プンプンプンってこの前この人に会いに行ったら、金魚が泳いでるシャツ着てたんですよ。草履とか履いちゃってて、まったくもう(笑)。
――意外とプライベートでも仲がよろしい感じなんでしょうか。
柴:僕としては、仲よくなりたかったんですけどね。電話番号を変えられちゃったんですよ。メールアドレスも教えてもらって、何回かメールも交換してもらっていたんですが、ある日急に届かなくになっちゃって。「あー、着信拒否されてる!?」って。
鬼束:それはね、電話を変えたから(笑)。でも、“No 柴、No Problem”です。
柴:“No 柴、No Life”じゃないんですね……。
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Character Design : Kimihiko Fujisaka.
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