2013年12月27日(金)
サガコ:『DOD3』は、初報を見た時から“またトバしてきたなぁ”というのが正直な感想でした。『ニーア』は思っていたよりもずっと多くの人に愛される結果になっていたから、ついつい忘れていたんですけど、そうそう『DOD』ってこうだったよなって思いだしたんです。
今回の登場人物たちも、ものすごいキャラが立ってますよね。オクタの“セルフジョイ”とか、あいかわらず名言も多いですし。
映島:あの名言が『DOD1』の時代にあったなら! だって、ヨコオさんに「レオナールは裏の林で何してたんですか?」って質問を投げたら、そのものズバリの単語で返事が返ってきて。とんでもない仕事を受けてしまった、どうしようって、当時メール画面の前で頭を抱えたもの。
名取:シナリオでは触れていませんが、レオナールについて“××××をしていました”って説明はズバリ書いてましたからね、ヨコオさんは。私もそのままシナリオ書いた記憶が。
サガコ:名取さん、そういうのって抵抗ないんですか?
名取:そういうのって、どういうの?
サガコ:いや、だからこう、下ネタ的なとか、セックス的なアレコレとかです。
名取:いやー、もう慣れちゃった。ねぇ?(笑)
映島:うん。女子としてどうかって思いますけど、確かに慣れました、ええ!! 今は慣れたけど、当時はキツかったなぁ。今回はヨコオさんがセルフジョイという単語を作ってくれて本当によかったです、はい。
サガコ:便利な言葉ですよね、セルフジョイって。これはどこから出てきたんですか?
名取:私は最初、そのままの単語でシナリオ書きました。
サガコ:そのままはヤバイ(笑)。
白本:そのへんについては『ドラッグ オン ドラグーン 10周年記念BOX』の資料集に掲載されている、ヨコオさんとスクウェア・エニックスの倫理担当さんとの対談に細かく書いてあるんですが……。やっぱり、そのままの単語は倫理的にちょっと問題があるらしくて。
サガコ:そりゃそうだ。そりゃあそうでしょう……。
白本:それで、なぜか私が窓口として、シナリオや内容については倫理担当さんと各種調整をすることに……。すごく真面目な口調のメールに、品のない単語があふれかえっていて、ちょっとしたトラウマですよ。
一同:あー……。
白本:ヨコオさんはキャラに直接、それらの単語を言わせたい。でも、ゲームとしては倫理的に許可できないっていう問答が延々繰り返されまして。そのうち、少しずつ単語や表現が婉曲的になっていったんです。
名取:婉曲的になって、ようやく製品版のセルフジョイですもんね。
映島:シナリオの初期段階を知ってるだけに、複雑ではあるんですけど。
サガコ:でも、規制や倫理に関しても『DOD1』が出た頃とはずいぶん状況が違います。昔はできたけど、今はできないっていうことはたくさんあるのでは。
映島:そのとおり。どんだけ交渉したって、アラレもないシモ語(マルC名取佐和子)そのままは絶対無理だったと思うよ!?
白本:そうなんです、そうなんですけど、その出せるギリギリのところを探る作業の繰り返しでがんばっていたんですよ~。倫理担当さんへのメール内容はすごく真面目なんです。文章も硬い口調で「こういった描写は、これこれこういう理由でダメです」とか指摘されて。
それに対して、私が「これは違うんです!」とか、浮気した男の言い訳みたいなやり取りを何度も交わしていました。
サガコ:浮気した男の言い訳って……絶望的すぎる(笑)。
白本:それで最終的に生まれた単語が、セルフジョイ。
サガコ:至高の名言になっちゃって、もうたいへん! ベンリすぎる。
白本:すっかり育ってしまった単語ですね、セルフジョイは。仕事でこれほど下ネタに接することになるとは思ってなくて、よくわからない階段を上っちゃったな、って。
上ってよかったのかはわからないですけど、自分の中で新しい階段を上ったと思います。確実に。
▲もはや、ファンにとっては忘れられないオクタの名言「セルフジョイ」は、やはりヨコオタロウ氏によって生み出されたものだった! |
映島:それにしても、オクタのせいですっかり“ジョイ”の意味が変わっちゃったよね。
名取:ええ。悔しいほどのナイスワード。自力で発明したかった……!!
サガコ:そこはやっぱり名取さん、悔しいところなんですね(笑)。
名取:そりゃもう! でも、最初のシナリオの時点で下手な単語に逃げて、ヨコオさんの目指している世界とズレちゃったら嫌だし。きっとヨコオさんならではの物差しがあるから、ドギツい表現をどこまで和らげるかは、ヨコオさんが決めてくれればいいかなって思っています
映島:それでも私、シナリオを読んでやっぱり名取さんとヨコオさん、スゴいと思った!
白本:なにもかもが……赤裸々でしたよね……。
サガコ:私はメディア側の人間なので、どこまでがヨコオさんの仕事で、どこからが名取さんの仕事かはわからないんですけど。あの狂気の世界は、けっこう名取さんが発信している部分もあるってことですか?
名取:もちろん、基本はヨコオさんですよ。でも、私もけっこう発信しちゃってるかも……(苦笑)。
映島:してるしてる! 名取さんの言葉はエッジが効いていて、鋭くて、真っ黒で。私自身の言葉は、黒よりはグレーっていうか、もう少し一般寄りのテイストを目指しているんですけど。
サガコ:名取さんと映島さんの発信している、女性ならではのエグいニュアンスって、ヨコオさんの作品にしっかりなじんでる気がするんですよね。そこに白本さんも世界設定の担当として、いろいろ味付けを足してるわけでしょう?
白本:いや、私はそんな……いや、その、だいぶ乗っけましたけど。でも、それも全部仕事ですから! 仕事に女子とか男子とか関係ないですよ。ないですよね?
サガコ:ないけども、あるように見られる場合もあるじゃない? “これを女性が書いたのか~”みたいなのって、少なからずあるんじゃないかなぁ。
映島:あるある。デカートのノベルが出た後だったかな。「これを書いた人は、どんな顔して書いたんだろう」ってツイートしてる人がいて。なんかね、ごめんなさいってなりました。
白本:仕 事 だ !
サガコ:そうだそうだ、仕事だもん。エロかろうがグロかろうが、仕事なんだからちゃんと作るっていう、ね。
映島:でも、客観的に見たらどんな顔して書いてたんだろうっていうのは考えましたよ。一人称なんで、本人の目になってみないと書けないんで。たぶん書いてる最中はデカートの目であの世界を見ていたし、オクタを書いてる時はオクタの目であの世界を見ていたんで。でも、楽しみつつ全員、一生懸命書きました。
こんなキャラ作んなよ、コノヤローって思いながら。
サガコ:あっ、本音出た。どうしよ(笑)。
白本:なんかゴメンナサイ。
サガコ:そして白本さんが謝ってしまった(笑)。確かにシナリオもノベルも、スゴかったですよね、あらゆる意味で。シナリオにはゲーム中では伏字のところとかも、バッチリすべて書いてあるんですよね?
白本:書いてありますよ。すべて書いてあって、この表現がダメならこっち~とか、伏字にすればOKだろうとか。いろいろ細かいんですよ。ゲーム中では“ピー”で消される音声も、声優さんには全部セリフとして言ってもらってますからね。
サガコ:その収録、取材に行きたかったなぁ。本当にいろんな意味で過激なゲームってところは変わってないんですよね。みんなの期待を全力で裏切ってなんぼっていう印象が強い。私、このゲームに出てくるメンズとは恋愛とかしたくないですもん。
映島:したくないというか、できない! 特に『DOD3』は無理!!
(一同、深くうなずく)
→アクションは女子的には難易度高め? 恐るべきリア充ブレイカー(3ページ目へ)
(C)2013 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Character Design : Kimihiko Fujisaka.
データ